国際環境法センター(CIEL)2009年5月11日
9化学物質がPOPs条約に追加
しかし免除がある


情報源:Center for International Environmental Law, May 11, 2009
Nine chemicals added to global toxics treaty, with gaping exemptions
http://www.ciel.org/Publications/CIEL_COP4_11May09.pdf

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2009年5月17日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/POPs/CIEL/090511_ICIEL_nine_chemicals_added.html


【ジュネーブ、2009年5月11日】 有害化学物質を抑制するための国際条約に関する重要な会議はジュネーブで土曜日の朝までもたついた。途上国に対する技術的及び財政的支援の長年の課題及び順守システムに関する継続する行き詰まりは、ほとんど会話をぶち壊しそうになった。

 残留性有機汚染物質(POPs)に関するスットククホルム条約第4回締約国会議(COP4)は、崩壊の瀬戸際でよろめいた。しかし、最終的には162か国と欧州連合(EU)は、当初の条約の”ダーティ・ダーズン(汚い12物質)”に新たな9種のPOPsを加えるという合意に達した。アメリカは、2001年にジョージ・ブッシュ大統領の下にPOPs条約に署名したが、米国内法で拘束力を持たせるための批准をまだしていない。

 新たなPOPsのうち5物質は、現在は用いられていない農薬と副産物を含んで、もはや製造されておらず、それらの条約への追加にはほとんど議論を引き起こすことはなかった。他の4つの化学物質に関する合意が難しく、POPsから人の健康と環境を守るためのこの条約の目標を潜在的に下げることになるいくつかの重要な免除をもたらした。

メキシコによって推薦され、まだいくつかの国々で使用されている農薬リンデンは廃絶の予定である。しかしシラミと疥癬の対策のための製薬用途に5年間、延長の可能性をもって除外が許される。もっと安全でもっと効果的なリンデンの代替がすでに多くの国で利用可能である。

 ペンタBDE及びオクタBDEとして知られる臭素化難燃剤の商業用混合物もまた、条約に加えられた。しかしEUは、携帯電話、コンピュータ、自動車などこれらの化学物質を含む製品が廃棄物になった時にどのように管理するのかについての懸念を提起した。ストックホルム条約の下ではPOPsを含む廃棄物は、回収、再生利用、回収利用、又は直接再利用をすることはできない。ペンタBDEとオクタBDEは、2030年までリサイクルすること許すという免除をともなった。他の加盟国はPOP化学物質のリサイクルという抜け穴に抵抗し、POPsを含む製品が途上国に投棄される可能性について深い懸念を表明した。この問題を解決するために、もし輸出国で販売が許されないならそのようなリサクル目的の輸出を制限するという修正がなされる。

 PFOSは、特別な非粘着性の特性をもつ化学物質の一族に属する。条約に加えられた他のPOPsとは異なり、PFOSは、半導体、医療機器、消化泡、金属メッキ、その他を含んで様々の用途のために、未だに大量に製造されている。多くの諸国は実行可能なPFOSの代替がないとして、既存の用途のほとんど全てをカバーする広範な免除を要求した。これらの広範な免除は、極めて残留性が高く有害なPOPであるPFOSの製造と使用の継続を許すことになる。

(訳注:免除は5年で有効期限が切れるが、期限延長を申請することができる)

Contact: ダリル・リッツ/Daryl Ditz, Ph.D., Senior Policy Advisor, +41 78.319.4353 (in Geneva)


更なる情報

About the Stockholm Convention: http://chm.pops.int/
About COP-4: http://www.iisd.ca/chemical/pops/cop4/
About U.S. POPs Ratification: http://www.uspopswatch.org/

新たな9種のPOPs

付属書A(廃絶)
  1. α−ヘキサクロロシクロヘキサン、リンデンの非意図的副産物
  2. β−ヘキサクロロシクロヘキサン、リンデンの非意図的副産物
  3. 商業用オクタ BDE (ヘキサブロモジフェニルエーテル及びヘプタブロモジフェニルエーテル)、難燃剤
  4. 商業用ペンタ BDE (テトラブロモジフェニルエーテル及びペンタブロモジフェニルエーエル)、難燃剤
  5. クロルデコン、農業用殺虫剤
  6. ヘキサブロモビフェニル、難燃剤
  7. リンデン、頭シラミ対策用クリーム;以前は農業用に使用
    (特定免除:頭シラミと疥癬用薬剤)
  8. ペンタクロロベンゼン、染料担体、抗菌剤、難燃剤
付属書B(制限)
パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)、その塩類、及びパーフルオロオクタンスルホン酸フルオリド(PFOSF)
  1. パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)、その塩類、及びパーフルオロオクタンスルホンフッ化物
    特定免除(specific exemptions):半導体及び液晶ディスプレー(LCD)産業用フォトマスク、金属メッキ、プリンター及びカラーコピー機用電子・電気部品、ファイアーアントやシロアリ用殺虫剤、油製造、カーペット、皮製品及び衣服、布製品及び室内装飾材料、紙及び包装、コーティング及びコーティング添加剤、ゴム及びプラスチック
    容認できる用途(acceptable purposes):写真感光剤、半導体用フォトレジスト及び反射防止膜、化合物半導体及びセラミックフィルタ用エッチング剤、航空用油圧液、閉鎖系の金属メッキ、医療機器のあるもの、泡消火剤、ハキリアリ(leaf-cutting ants)の駆除用エサ

訳注:日本政府の動き
2007年8月、経済産業省がストックホルム条約事務局に対し、日本国政府として代替困難な用途である旨を連絡したもの。
http://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/03kanri/c05temp4.htm
  1. 半導体用途(反射防止膜及びフォトレジスト)
  2. フォトマスク(半導体及び液晶ディスプレイ用)
  3. 写真感光剤用途
  4. メッキ(クロムメッキ等)
  5. 泡消火剤
  6. 医療機器(カテーテル及び留置針)
  7. 電気電子部品(プリンター・複写機用転写ベルト・ゴムローラー等)
今回の第4回POPs条約会議(COP4)に出席したNGOによれば、日本政府はPFOSを付属書Bにすること及び免除期限を10年にすることを強く主張した。結果は、付属書Bとなったが、期限は5年となった。


当初のストックホルム条約にリストされたダーティ・ダーズン(12 POPs)

付属書 A(廃絶)
アルドリン
クロルデン
ディルドリン
エンドリン
ヘプタクロル
ヘキサクロロベンゼン(HCB)
マイレックス
トキサフェン
ポリ塩化ビフェニル類(PCBs)

付属書 B(廃絶/免除付き)
DDT
特定免除(specific exemptions):疾病媒介動物駆除、地域限定、密閉系中間体

付属書 C(非意図的生成物/排出の削減または廃絶)
ポリ塩化ダイオキシン類
ポリ塩化フラン類
ヘキサクロロベンゼン(HCB)
ポリ塩化ビフェニル類(PCBs)


訳注:関連情報


化学物質問題市民研究会
トップページに戻る