Greens/EFA プレスリリース 2006年1月10日
臭素化難燃剤 Deca-BDE 欧州委員会の禁止解除に議会が提訴

情報源:Greens/EFA Press Release, Bruxelles/Brussel, 10 January 2006
Brominated flame retardants
Legal action against Commission for lifting ban of a hazardous substance
http://www.greens-efa.org/cms/default/dok/102/102332.brominated_flame_retardants@en.htm

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2006年1月16日
更新日:2006年8月31日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_06/06_01/06_01_10_greens_Deca-BDE.html

 Greens/EFA は電気電子機器内で使用される臭素化難燃剤 Deca-BDE の禁止を解除するという欧州委員会の決定に対し、先週、欧州議会によってとられた法的措置(提訴)を歓迎する。議会は欧州委員会に対し、2005年7月6日に採択された決議の中で、そのような委員会の決定は執行権限を越えるものであると警告していた。しかし、委員会は議会を無視したので、議会は欧州司法裁判所に法的是正を求める手続きを取った。2006年1月2日、デンマークも同様な法的措置を発表した。

 欧州議会環境委員会のスウェーデン議員カール・シュリターは、次のように述べた。

 ”私は、欧州議会と理事会が3年前に採択したこの非常に有害な物質の禁止を欧州委員会が解除するということは権力の乱用であるとして、欧州議会が許さないとしたことを喜んでいる。もし、委員会が立法府議員によってなされた決議を裏口でこそこそやって完全にひっくり返すことを許されるなら、立法府としての議会は店をたたまなくてはならないであろう。私は電気電子機器の製造者らが安全を確実にし、Deca-BDEの使用を中止することを求める。”

 この物質を禁止するための訴訟は、北極の最上位捕食動物や人間の母乳がら Deca-BDE が見出された後、2003年以来、かつてない強い措置である。テストにより、それは神経毒であり、もっと有毒で生体蓄積する物質に分解することが分かっている。欧州委員会の科学委員会ですらリスク削減措置を強く勧告しており、イギリスは最近の有害性発見をレビュー中である。責任ある製造者はデルやソニー、その他の会社の事例を見習って、法的裁定を待つことなく、今すぐに Deca-BDE の使用を中止すべきである。”


記者への備考:
 この禁止は、2003年1月に議会及び理事会によって、電気電子機器における特定有害物質使用制限に関する指令2002/95/EC (RoHS指令)で採択されており、2006年7月1日に発効する。しかし、この禁止は2005年10月13日にコミトロジー手続き(訳注1)により欧州委員会によって解除された。 2005年11月30日、法務委員会は環境委員会の求めに応じて、欧州司法裁判所において失効手続きを取るよう満場一致で勧告していた。

 議会の決議:
 http://www.europarl.eu.int/omk/sipade3?PUBREF=-//EP//TEXT+TA+P6-TA-2005-0274+0+DOC+XML+V0//EN&LEVEL=3&NAV=X

 このRoHS指令は欧州委員会が有害物質の特定の適用を禁止から免除することを許しているが、それはそのような適用のための有効な代替物がない場合に限られる。しかし、欧州委員会は Deca-BDE のより安全な代替物が長年、広く入手可能であることを完全に無視しした。そして消費者はリスクに曝されていないという主張に基づき、この禁止を解除した。このことは環境リスク評価での懸念ある結果を無視するだけでなく、コミトロジーでの物質免除においてリスクに対する考慮が払われないことを示すものである。


訳注1:コミトロジー手続き
 欧州委員会が加盟国の代表等からなる専門委員会のようなものを設けて、事実上その場で内容を決定し、欧州委員会指令として採択するプロセス。手続き的に議会や理事会の審議プロセスを経ない。

訳注2:参考記事/リンク


化学物質問題市民研究会
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