2012年4月17日 経済産業省宛 
IEC 国際基準 60065と62368の
テレビ筺体ロウソク耐火要求への反対投票の要請

(アメリカの科学者及び医師等からTC108国内委員会委員へのメッセージ)
(日本語pdf版英語pdf版

情報源:April 17, 2012
Message from American Scientists and Physicians to forward
to the TC108 voting committee members
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/IEC/
IEC_120417_Message_from_American_Scientists_and_Physicians_en.pdf


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2012年4月17日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/IEC/
IEC_120417_Message_from_American_Scientists_and_Physicians_jp.html

河村 延樹 殿

 私たち科学者及び医師は、テレビ筺体のロウソク耐燃要求を含んで提案されている国際電気標準会議(IEC)規格 60065 及び 62368の修正に反対を表明するために、このメールを書いています。

 私たちは、火災の危険低減にならないのにテレビでの有害難燃剤の使用をもたらすことになるであろう条項を含む108/478A/CDV 及び 108/479/CDVへの反対投票を検討いただくために、私たちの提言をTC108国内委員会に伝えていただきたく、 謹んでお願い申し上げます。

 2012年に更新されたグリーン科学政策研究所の報告書『テレビ筺体ロウソク耐燃の問題点(The Case against Candle Resistant TVs)(オリジナル英語版)』は、それらの規格、及びそれらに従うために使用される難燃剤の多くの有害影響の概要を示しています。第一に、提案されているこれらの要求は火災安全をなんら改善していません。歴史的にテレビ筺体中で難燃剤を使用してきたアメリカは、これらの化学物質が最近テレビに導入されたばかりの欧州連合(EU)に比べて、テレビによる火災発生率が低いわけではありません。

 さらに、現在のフラット・パネルやプラズマ・スクリーンのテレビは、古いモデルのものより電圧及び消費電力がはるかに低く、内部からの発火により火災が生じる可能性ははるかに小さいといえます。それらのテレビは、消費者がロウソクをその上に置くには薄すぎるし、裸火からは離れている壁掛けのテレビもあります。

 ハロゲンベースの難燃剤は、実際には火災をもっと危険なものにします。火災安全性に関する最近の研究は、プラスチック製テレビ筺体中でのハロゲン難燃剤の使用は燃焼中の有毒ガスの発生を増加させ、これらの火災をもっと危険なものにしています。炎ではなく、これらの有毒ガスが火災における主要な死亡原因となっています。

 有毒であり、テストされていない難燃剤の使用に関連する人と環境健康への大きな脅威があります。そのような要求に合うように使用されている難燃化学物質の有害な健康と環境への影響は、グリーン科学政策研究所のウェブサイトにある白書『ロウソク耐燃電子機器の問題点(The Case against Candle Resistant Electronics)(オリジナル英語版)』で報告されています。

 200名以上の科学者らにより署名された『臭素系及び塩素系難燃剤に関するサンアントニオ宣言』(オリジナル英語版日本語訳版)は、消費者製品中での難燃剤の使用による健康への有害性と、その使用からは火災安全へのベネフィットは証明されていないことを報告しています。それには、内分泌かく乱、生殖系へのダメージ(不妊の増加と精子数の減少)、甲状腺と代謝機能の障害、そして、神経系、行動系及び認識系の発達障害が含まれます。これらの有害難燃剤は胎盤を通過しますが、そのことは赤ちゃんはこれらの化学物質を体内にもって生まれることを意味し、またこれらの化学物質は母乳にも蓄積するので赤ちゃんはさらに曝露します。難燃剤は家庭のホコリにも見出されるので、幼児や子どもの手を口にやる行動は、両親に比べてはるかに高いレベルの難燃剤に曝露することになります。

 PBDEのように禁止された難燃剤の代替として使用され始めた”新たな”ハロゲン化難燃剤は、置き換わる前の有毒難燃剤と同族の化学物質であり、同じく残留性、生物蓄積性、有毒性を持っています。一旦これらの化合物が環境に放出されると、それらを回収することはできません。

 更なる健康への懸念は電子機器中に含まれる難燃剤の焼却の問題です。プラスチック廃棄物の非公式な焼却は発展途上国では普通のことであり、それは著しく有毒なダイオキシンやフランを発生させます。難燃剤が増量されると、不可能ではないにしても、テレビのリサイクルはもっと金がかかり難しくなります。

 最後に、提案されている要求は、化学物質製造会社とテスト会社だけに利益をもたらします。テレビ筺体にロウソクの炎への耐燃性を求める現在の提案は、なんら火災安全性の利益をもたらさず、むしろ人の健康と環境に不必要で許容できないリスクを及ぼします。

 ロウソク耐燃要求を含めるためのいくつかの提案がIECによって検討されてきました。これらの提案は、健康、環境及びその他の著しい懸念はもちろん、火災安全の便益の証明が欠如していることを理由として、2008年に31か国の代表団の過半数により否決されました。アンダーライターズ・ラボラトリーズ)(UL)及びカナダ規格協会(CSA)から提案されたいくつかの他の同様なロウソク耐燃性要求もまた2008年に否決されました。

 潜在的に有毒な難燃性化学物質の使用は、関与する化学物質製造会社とテスト会社だけを益するだけであり、製造者のコストを増大し消費者の健康と環境に容認できないリスクを作り出します。これらの理由により、私たちは、TC108国内委員会が108/478A/CDV 及び 108/479/CDV の両方に反対の投票をするよう要請します。

心を込めて

Arlene Blum PhD,
Visiting Scholar, Chemistry, University of California, Berkeley
Executive Director, Green Science Policy Institute

Misha Askren, MD
Family Physician
Southern California Permanente Medical Group
Inglewood, CA

Julie Billings, M.D.
Oakland, CA

Anne Brennan, M.D.
Gold River, CA

Lynn Carroll, Ph.D., Senior Scientist
TEDX (The Endocrine Disruption Exchange)

Theo Colborn, Ph.D., President
TEDX (The Endocrine Disruption Exchange)

Margarita C. Curras-Collazo, Ph.D.
Associate Professor of Neuroscience
Department of Cell Biology & Neuroscience
Graduate Advisor, Recruitment & Admissions
Neuroscience Graduate Program
University of California, Riverside

Kathleen Collins
Professor, Department of Molecular and Cell Biology
University of California at Berkeley

Kyle D'Silva, PhD
Product Manager GC/HRMS

Robert DeBare, M.D.
Oakland, CA

Dr. Michelle C. Douskey
Department of Chemistry
University of California, Berkeley

Deborah Freehling
Allergist
Mountain View, CA

Stephen A.Gardner, DVM, DABVP,
Albany Animal Hospital

Judith Graber, PhD
Epidemiology/Biostatistics Division
School of Public Health
University of Illinois

Bruce D. Hammock, Ph.D,
Distinguished Professor of Entomology & Cancer Research Center,
Director, NIEHS-UCD Superfund Basic Research Program,
UC Davis

Alastair Iles
Assistant Professor
Department of Environmental Science, Policy, and Management
UC Berkeley

Carol Kwiatkowski, Ph.D., Executive Director
TEDX (The Endocrine Disruption Exchange)

Lin Kaatz Chary, PhD, MPH
Indiana Toxics Action
Gary, IN

Elisabetta Lambertini
UC Davis
Pamela J. Lein, Ph.D. Professor, Department of Molecular Biosciences
Chair, Pharmacology and Toxicology Graduate Group
UC Davis School of Veterinary Medicine
Donald Lucas, Ph.D.
Lawrence Berkeley National Laboratory
Berkeley, CA

Jerry Manoukian, MD
Mountain View, CA

Mariam Manoukian, MD, PhD
Mountain View, CA

Erica R McKenzie
Postdoctoral researcher
UC Davis

Robert H. Rice
Professor, Department of Environmental Toxicology
University of California, Davis

Mary F. Roberts, Ph.D.,
Professor of Chemistry,
Boston College, MA

Cindy Russell, M.D.
Pesticide Alternatives of Santa Clara County
Santa Clara, CA

Roshni Sarala,
Research Scientist
Department of Toxic Substances
Berkeley, CA

Joshua Schechtel, MD MPH FAAP
Chief, Professional Staff Education
Kaiser Oakland Medical Center

Lynn Scholl PhD
Goldman School of Public Policy
University of California, Berkeley

Megan Schwarzman, MD MPH
Environmental Health Researcher,
University of California, Berkeley

Allen Silverstone, PhD
Professor of Microbiology and Immunology,
Department of Pharmacology
Upstate Medical University
Omotayo Sindiku
Department of Chemistry,
University of Ibadan.
Ibadan, Oyo State, Nigeria

Mary Turyk, Ph.D.
Research Assistant Professor
Division of Epidemiology & Biostatistics
School of Public Health
University of Illinois at Chicago



訳注:難燃剤関連情報(この関連情報は提出していない)


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