EWG リサーチ 2008年9月4日
幼児と母親の体内の難燃剤レベル
幼児は母親より3倍高い

エグゼクティブ・サマリー

情報源:Environmental Working Group Rsearch, September, 2008
Fire Retardants in Toddlers and Their Mothers
Levels Three Times Higher in Toddlers Than Moms
By Sonya Lunder, MPH and Dr. Anila Jacob, MPH, MD, EWG Senior Scientists
http://www.ewg.org/reports/pbdesintoddlers
Full Report

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2008年9月8日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ewg/080904_ewg_Fire_Retardants.html


 親と子どもの体内の有害難燃剤の初めての調査で、エンバイロンメンタル・ワーキング・グループ(EWG)は、幼児と就学前児童は一般的に血中にこれらのホルモンかく乱化学物質を母親より3倍多く持っていることを見出した。

 難燃剤に関する世界の優れた科学的権威のひとつによってEWGのために実施されたラボテストは、アメリカの20家族のうち19家族で、PBDEsとして知られるポリ臭素化ジフェニールエーテルの1.5〜4歳の子どもたちの血中濃度が、彼らの母親より著しく高いことを見出した。合計で11の異なる難燃剤がこれらの子どもたちから検出され、それらの化学物質の86%が母親よりも子どもたちの方が高いことを示した。

 このテストはまた、デカBDEとして知られるPBDEsの一種を検出した。この物質は難燃剤として大量に使用されており、この物質について信頼性のあるテストを実施できる試験所がほとんどないので、大部分は制限を逃れている。このテストは母親より子どもたちに高い濃度でデカを検出した。生涯の早い時期にこれらの物質に高濃度で暴露すると、実証はされていないが、深刻で不釣合いなリスクを子どもたちに及ぼすことが指摘されている。

 我々がテストした20人中8人の母親は、母乳と家庭の埃中に高いレベルのPBDEsを見出した以前のEWG調査に加わっていた。臍帯血のEWGテストもまた、新生児10人中10人にPBDEsを見出していた。今回のテストは、アメリカの子どもたちは彼らの親よりも血中のPBDEsレベルがはるかに高いことを示し、実際に先進工業国における難燃剤の汚染の最も高いもののいくつかで体内を汚染されていることを示した最初のテストである。

 ”家具、コンピュータ、テレビ、及びその他の電子機器などの身の回り品中のPBDEsは、家庭の環境中に移動し、米環境保護庁(EPA)が勧告する安全レベルを超える濃度で子どもたちが暴露する可能性がある。子どもたちは大人よりPBDEsをより多く摂取するが、それはPBDEsは子どもたちが口にする手、おもちゃ、その他のものに付着するからである。

 子どもたちの脳と生殖系の発達は極端に有害化学物質に脆弱である。PBDEsの場合、ピアレビューされた研究におけるラボテストは、マウスの脳が急激に発達しているある一日にマウスに投与されたある用量は、多動症を含む行動の永久変化を引き起こすことができることを示している。子どもの体は大人のようには有害化学物質を代謝し、排泄しないのかもしれない。

PBDEs、すなわちポリ臭素化ジフェニルエーテルはヒトや他の生物の血中や組織中に蓄積する地球規模の汚染物質である。ペンタ及びオクタとして知られるPBDEsの二つの種類は健康と安全に対する懸念からアメリカでは最早製造されていないが、しかし、廃止が完了する以前に作られた家具やフォーム製品中からいまだに検出されている。PBDEsの最大量はデカとして知られる種類であり、電子機器の中で使われている。デカはヨーロッパ及びアメリカのいくつかの州で電子機器中での使用が禁止されている。

 化学産業界はデカを市場に残すために、健康リスクはないと主張して、利害の大きい取り組みを展開している。しかしEWGのテストは、デカはヒトの血液に入り込み、子どもの血液を大人よりはるかに高いレベルで汚染していることを示している。デカは子どもの65%、大人の45%で検出された。

 化学産業界がデカが安全であると主張しても、電子機器製造者は全ての化学的難燃剤の使用から離れつつあり、彼らはもっとスマートな製品設計を通じて火災安全を実現できることを見出している。ノキア、ソニーエリクソン、及びサムソンを含む主要な電子機器製造者らは、最早デカを使用せず、他の臭素ベースの難燃剤も廃止しつつある。

 PBDEsは有害であり、人々の血液を汚染しており、より安全な代替物質が入手可能であるという証拠があるにもかかわらず、EPAは子どもたちの現在進行している暴露に対し、ほとんど何もしていない。デカは広範に使用され続けており、規制の抜け穴が、すでに禁止されているPBDEsの一種ペンタが輸入家具を通じてアメリカに入り込むことを許している。デカが全ての消費者製品中で禁止されるまで、ペンタが輸入を禁止されるまで、火災安全法が非化学的解決を推進するために改正されるまで、アメリカの家族、特に子どもたちはこれらの有害成分に不必要に暴露し続けるであろう。

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訳注:PBDE関連記事


化学物質問題市民研究会
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