EHN 2009年3月19日
難燃剤デカBDEが多動マウスを作る

解説:キム・ハーレイ、ウェンディ・ヘスラー

情報源:Environmental Health News, March 19, 2009
Flame retardant creates hyperactive mice
Synopsis by Kim Harley, Ph.D. and Wendy Hessler
http://www.environmentalhealthnews.org/ehs/newscience/flame-retardant-causes-hyper-mice/

オリジナル論文:Johansson N, H Viberg, A Fredriksson and P Eriksson. 2008. Neonatal exposure to deca-bromnated diphenyl ether (PBDE 209) causes dose-response changes in spontaneous behaviour, cholinergic susceptibility in adult mice. NeuroToxicology 29:911-919.

訳:安間 武(>化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2009年3月23日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ehn/ehn_090319_deca-BDE.html


 一般的に使用されており人々や家庭内ダスト中に日常的に見出される難燃剤はマウスの行動と脳の発達に変化を与え、加齢とともに悪化する多動症や適応障害を引き起こす。

 電子機器やその他の家庭用品を火災から守る化学物質がマウスの行動をかく乱し、そのことはその化学物質が脳の発達に変化を与えていることを示唆している。この行動影響はかなり低用量で観察され、用量が高くなると悪化し、マウスの加齢とともに強くなる。

 この発見は、デカBDEと呼ばれるこの化学物質への生涯の非常に早い時期(新生児)の暴露が脳に永続的な影響を残すことを示している。この化学物質は、アセチルコリンと呼ばれる神経系シグナリング分子である神経伝達物質を阻害することにより行動に影響を与えているのかもしれない。

 ポリ臭化ジフェニルエーテル類(PBDEs)は消費者製品中で使用されている一般的な難燃剤である。家具の発泡詰め物、室内装飾材料、電子機器などがこれらの難燃剤を含んでいる可能性がある。

 デカBDEは、ポリ臭化ジフェニルエーテル類(PBDEs)のうちのよく使用されている特定のタイプである。他の二つの商業用PBDE混合物であるオクタ及びペンタBDEsはアメリカ及び世界中で広く禁止又は廃止されている。

 この研究はデカBDEがどのように脳に影響を与えるかを検証した初めてのものである。他のいくつかの研究は他のPBDEsへの暴露による脳の発達への影響を発見している。

 一般的に、PBDEsは製品から放出され、屋内と屋外の環境を汚染する。成人と子どものほとんどの暴露は食品とダスト経由のようである。

 ダスト中のレベルはヨーロッパよりもアメリカの家庭の方が高く、家具の可燃性基準が最も厳しい州であるカリフォルニア州が特に高いかもしれない。最近の研究はカリフォルニア州の家庭のPBDEレベルは他の州の家庭よりも4〜10倍高く、ヨーロッパの家庭よりも最高200倍高いことを見出している。

 このことは人の汚染についても同様である。アメリカ人はヨーロッパ人及び日本人よりも10〜100倍PBDEレベルが高い。カリフォルニア人は他のアメリカ人に比べて血中濃度が2倍高い。

 この研究でオスのマウスは生後3日目に体重あたり1.4、2.3、14 又は 21マイクロモル デカBDEの単回投与を受けた。マウスが成獣となる2及び3ヶ月目にその行動と神経系が評価された。

 投与されたマウスは有意に多動症状を示し(運動、子育て、及び総合行動)、2及び4ヶ月目において新たな環境への適応能力が減少した。両方の月齢グループにおいて投与量が高くなるとその差異はより顕著となり、動物として年をとっているグループの方が悪化した。


訳注:難燃剤関連記事


化学物質問題市民研究会
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