米化学会 ES&T 2008年8月6日
新たな難燃剤が
屋内及び屋外環境で検出される


新たな研究は禁止又は中止されたPBDE難燃剤の代替として
市場に出されている難燃剤が家庭や屋外環境で見出されることを示唆している

情報源 ES&T Science News - July 23, 2008
New flame retardants detected in indoor and outdoor environments
New research suggests that a flame retardant marketed as a replacement for a banned and discontinued PBDE retardant
can be found in people' s homes and the outdoor environment.
Kellyn Betts

http://pubs.acs.org/cgi-bin/sample.cgi/esthag/asap/html/es8018463.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2008年8月7日

 ES&T (DOI 10.1021/es801070p ) に発表された新たな研究は、難分解性、生物蓄積性、有毒性を有するペンタBDE難燃剤の代替として導入された広範に使用されている難燃剤が北アメリカの家庭で見出される埃(ほこり)の中に存在することの最初の証拠を示した。この難燃剤はまた、屋外環境にも入り込んでいることも示し、この研究はその難燃剤の安全性についての疑問を提起している。

 デューク大学ニコラス校環境地球科学部門のヒーサー・スタプレトンと同僚らは、屋内の埃が、EUでは禁止されアメリカでは2004年に中止されたペンダBDEの代わりに用いられる難燃剤を含むかどうかを調べた。ガスクロマトグラフと電子捕獲負イオン質量分析計を用いて、研究者らはボストン地域の19の家庭から収集した埃の中に4つの臭素化合物を検出した。そのうち3つの化合物は、BTBPEとして知られるビス(2,4,6,トリブロモフェノキシ)エタン、DBDPEとして知られるデカブロモジフェニルエタン、及びHBCDとして知られるヘキサブロモシクロドデカンであり、よく知られた難燃剤であるが、4番目のものは不可解であった。

 次の8ヶ月間、スタプレトンと彼女の同僚らはこの未知の化合物が(2-エチルヘキシル)テトラブロモフタレート(TBPH)であることを突き止め、2-エチルヘキシル2,3,4,5-テトラブロモベンゾネート(TBB)が埃の試料中に存在することを確認した。これら二つの化合物は、ケムトラ社(Chemtura Corp)製のファイヤーマスター550難燃剤の活性成分である。しかし、TBPHはまた、他の製品中で難燃剤として用いられている。

 ケムトラ社からの書面による声明は、独立機関によるファイヤーマスター550のテストは、”ペンタBDEより優れた環境的特性を持ち、米EPAの毒性学的要求を満たしている”と述べている。同社は、”新たな代替難燃剤は、代替を意図する既存の難燃剤より環境と人の健康にとってより安全であることが示されるべきである”と述べ、”EPAと情報を共有する追加の毒性学的及び暴露テストの実施を続ける”としている。

 新たな ES&T 研究で、スタプレトンと同僚らは、家庭内埃中の難燃剤の相対的分布が、家庭内埃中のPBDE類について以前に示された対数正規分布(訳注:変数の対数が正規分布する)パターンに従うことを見出した。これらのパターンはある人々は他の化学物質よりはるかに多量にこの化学物質に暴露していることを示唆している。

 ボストン大学公衆衛生校の環境健康の副議長であり論文の共著者であるトム・ウェブスターは、科学者らは、そのような化学物質が非意図的に相対的に多量の埃を吸う可能性のある小さな子どもに及ぼす可能性のあるリスクについて特に懸念していると述べている。新たな論文中に記述されている暴露の可能性に照らして、ウェブスターはファイヤーマスター550の構成成分について入手可能な毒性学的データの少なさに驚きを示した。

 ポリウレタン・フォーム協会の会長ボブ・ルーデカは、難燃剤使用に関する公式統計は存在しないが、ファイヤーマスター550難燃剤は布(革)張り家具の難燃性に対応したアメリカ唯一の規制であるカリフォルニ州難燃剤基準を満たしていると理解していると述べている。約5年前までは、いくつかの家具製造者は全米の全ての製品でカリフォルニ基準を満たすフォーム形状のものを使用していたが、現在はこの方法は廃れてきていると彼は信じていると述べている。

 ルーデカは、個々の製造者は難燃剤についての選択を自身で行っているが、彼の協会では、世界中の製造者が消費者に対し、彼らの製品が既知の有害性に対する基準を満たしていることを保証するために、最近、CertiPURと呼ばれるプログラムを立ち上げたと強調した。しかし、CertiPURで受け入れることのできないと考えられる難燃剤は”全く禁止されている”とルーデカは述べている。それらはペンタBDE、オクタBDE、及びデカBDE(最後のものはEUでは禁止されており、アメリカでは一部の州で禁止されている)である。
 ルーデカは、EPA、産業、及び環境団体との共同事業である家具難燃剤パートナーシップにより2005年に発表された報告書が、布(革)張り家具のポリウレタン・フォームの詰め物に使うことのできる14種の難燃剤に関するある情報を提供していると述べている。しかし、ルーデカは、”我々は、これらが生殖や発達に影響をしないことを保証するためのこれらの難燃剤に関する環境健康と安全データがまだ不足している”と述べている。

 スタプレトンは彼女と同僚らは、どの消費者製品が彼らが見出した難燃剤の発生源であるかの情報を追跡することは非常に難しいことであったと述べている。”製造者らが、どの難燃剤が消費者製品に使われているのかリストすることが求められていればよかった”と彼女は述べている。

ケリン・ベッツ(Kellyn Betts)



化学物質問題市民研究会
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