エンバイロンメンタル・ワーキング・グループ調査報告
「アメリカの家庭の埃の中に有毒難燃剤」 の紹介 (エグゼクティブ・サマリー) 情報源:In the dust: toxic fire retardants in American homes by Renee Sharp and Sonya Lunder Exective Summary Environmental Working Group May 2004 訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会) 掲載日:2004年5月13日 このページへのリンク: http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ewg/04_05_ewg_PBDEs.html 家庭の埃の中の臭素化難燃剤に関する初の全国的テストにおいて、エンバイロンメンタル・ワーキング・グループ(Environmental Working Group (EWG))は、どの家庭のサンプルからも予想もしていなかった高い濃度の神経系有毒化学物質である PBDEs を検出した。 9家庭の埃から検出された臭素化難燃剤の平均濃度は 4,600 ppb を超えていた。最近、難燃剤を含んだ製品を撤去した10番目の家庭のサンプルには、41,000 ppb の臭素化難燃剤が含まれていたが、これは最近発表されている世界的な埃の調査での最高濃度よりも2倍高い値であった。 禁止されて久しい PCB 類と同様に、ポリ臭素化ジフェニール・エーテル PBDEs(polybrominated diphenyl ethers)と呼ばれる臭素化難燃剤は、環境中で難分解性で生体蓄積し、一生涯人間の体内に蓄積する。動物実験において微量でもこれら臭素化難燃剤は、集中力、学習、記憶、及び行動に障害をもたらすことが判明している。 EWG のテスト結果は、産業からの放出ではなく、消費者製品が、人間や動物、そして環境中に PBDEs が急速に蓄積する最大の原因らしいことを示しており、このことはすでにヨーロッパから北極にいたるまで調査結果が報告されている。科学者たちは、家庭の埃に蓄積する汚染物質など屋内環境中の汚染が人々に重大な健康リスクを及ぼしているということを認めている。 この調査結果は、子どもたちが有毒難燃剤を埃を通じて大量に吸入しているかもしれないという恐れを提起し、政府が実施しようとしている 2種類の PBDEs の禁止だけではアメリカ人を守るのに十分ではないということを示している。
EWG が調査した家庭の半分で、検出した PBDE の多くはデカ製品中にのみ含まれるタイプのものであった。また、デカが分解するという新たな重要な証拠が見出され、この事実は、もし連邦政府や州政府が有害な PBDEs を取り除こうとする取組みの中にデカが含まれていないなら、そのような取組みは無駄にになるということを強く示している。 2003年9月にEWG が実施した全国的調査により、アメリカの母親の母乳中には記録的なレベルの PBDEs が含まれてることが判明した(Mothers' Milk / Record levels of toxic fire retardants found in American mothers' breast milk September 2003)。 これをフォローアップする今回の家庭の埃調査は前回の母乳調査に参加した20人のうち10人の家庭を含んでおり、難燃剤の人々の体内での蓄積と家庭の埃中の濃度とを比較する初めての調査であった。 埃中の PBDE 濃度は、食品、水、空気、あるいは土壌中で検出されるものよりもはるかに高かったが、家庭の埃中の PBDE レベルと母乳中のレベルとの間にはなんら関係を見出さなかった。この事実は、ある人は他の人と比べて、より多くの PBDEs を吸収する、又は、これらの化学物質の代謝の仕方が異なる、又はそれらを除去するのが遅い、という未解明の問題の重要性を強調している。 アメリカの家庭の埃が PBDEs で汚染されていたことは驚くにあたらない。それらは、パソコン、車、テレビ、家具類など非常に多くの身の回り品に加えられている。しかしこのテストでわかった驚くべきことは、これらの化学物質が製品から漏れ出ているということである。今回、家庭の埃から測定された PBDE の濃度は、かつて人間や動物、環境中から検出されたと報告された濃度よりもはるかに高く、曝露する人々、特に埃をいつも吸い続けている子どもたちに対し、直接的なリスクを及ぼすものである。 ペンタとオクタは、欧州連合(EU)では今年中に、カリフォルニア州では2008年に法律で禁止され、アメリカではアメリカ環境保護局(EPA)と PBDE 製造メーカーとの合意の下に来年の初頭から製造されなくなることとなっている。さらに、PBDEs のうちの一つ以上の調査、規制、又は禁止が、ハワイ、メーン、マサチューセッツ、ミシガン、ニューヨーク、及びワシントンの各州で実施又はその検討が行われている。 EU 及びカリフォルニア州の禁止令にデカを加える規制案又は法制化案が今年、検討されている。先月米議会に提出された法案はペンタとオクタを2006年に禁止し、EPA は今年中にペンタとオクタの先駆(デカ等)を特定して禁止することとしている。 EPA は待つべきではない。もはやデカが健康と環境に脅威を及ぼすという証拠を無視することはできない。デカは2003年、EWG が実施した調査で母乳20サンプル中16サンプルで検出された。EWG の最新の調査では、アメリカの家庭において、デカは現在廃止されようとしている PBDEs と同等、あるいはそれ以上の濃度で検出されており、全ての証拠がデカはペンタとオクタの先駆(分解してペンタとオクタになる)であることを示している。 実験動物が示すデカの毒性は、それらが人間の体内に存在し、もっと有毒な成分に分解することを勘案すると、直ぐに行動を起こさなければならないことを示している。 EWG は下記を勧告する:
訳注:関連情報 「一連の証拠:有毒な難燃剤と我々の健康に関する新たな科学」 の紹介 (当研究会訳) |