EHP 2006年7月13日オンライン／アメリカの食品マーケット調査　ポリ臭化ジフェニルエーテル（PBDE）レベルと年齢別・性別の PBDE 食物摂取を推定

EHP 2006年7月13日　オンライン
アメリカの食品マーケット調査
ポリ臭化ジフェニルエーテル（PBDE）レベルと
年齢別・性別の PBDE 食物摂取を推定
（概要と序論の紹介）

情報源：Environmental Health Perspectives Online 13 July 2006
http://www.ehponline.org/docs/2006/9121/abstract.html

Polybrominated Diphenyl Ether (PBDE) Levels
in an Expanded Market Basket Survey of United States (U.S) Food
and Estimated PBDE Dietary Intake by Age and Gender
Arnold Schecter¹, Olaf Papke², T. Robert Harris¹, KC Tung¹,
Alice Musumba¹, James Olson³, Linda Birnbaum⁴
1. University of Texas School of Public Health at Southwestern Medical Center, Dallas, Texas, U.S.A.
2. Eurofins - ERGO, Hamburg, Germany
3. State University of New York Medical Center at Buffalo, Buffalo, New York, U.S.A
4. National Health and Environmental Effects Research Laboratory, U.S. EPA, Research Triangle Park, North Carolina U.S.A

Full Paper (PDF):
http://www.ehponline.org/members/2006/9121/9121.pdf

訳：安間　武　（化学物質問題市民研究会）
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日：2006年7月23日
このページへのリンク：
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ehp/06_07_ehp_PBDE_basket_survey.html

概要

背景と目的
　この調査は、以前に報告されたポリ臭化ジフェニルエーテル（PBDE）レベルを調べるためのアメリカにおける食品マーケット調査を、13種の PBDE 化合物（同属）／62品目サンプル分析の調査に拡大し、さらに、アメリカ国民のPBDEの食物摂取を性別及び年齢別に推定する。

結果と討議
　食品サンプル中で、PBDE 類の合計は、ミルク中の7.9 pg/g（又はppt）から缶詰イワシの3,726 pg/g まで変動した。PBDE 類濃度が最も高いのは魚で、平均値 1,120 pg/g、中央値 616 pg/g、範囲は11.14～3,726 pg/g であった。次に高いのは肉で、平均値 383 pg/g, 中央値 190 pg/g 、範囲 39～1,426 pg/g、そして乳製品は、平均値 116 pg/g、中央値 32.2 pg/g、範囲 7.9～683 pg/g であった。
　しかし、食物摂取の見積りを用いると、アメリカにおける PBDE 食物摂取は肉が最も高く、次に乳製品と魚であり、授乳中の乳児を除けば、双方ほぼ同等であった。
　体重あたりの PBDE 類摂取量は女性の方が男性より低かった。一日あたりの PBDE 食物摂取は、授乳中の乳児は 307 ng/kg、2～5歳の幼児は男女とも 2 ng/kg、成人女性は 0.9 ng/kg と変動した。

結論
　食物暴露だけでは、測定される PBDE の高い人体汚染を説明するようには見えない。食物に加えて、屋内環境（ダスト、空気）が PBDE の人体汚染に重要な役割を果たしていることを示唆している。

序論

　ポリ臭化ジフェニルエーテル（PBDE）は、残留性と生体蓄積性のある難燃剤であり、それらはアメリカ中いたるところに見いだされ、潜在的に有害であり、過去数十年の間に人体内の蓄積量が急速に増加しているので（Birnbaum and Staskal 2004; Hites 2004; Schecter et al. 2005b; Sjodin et al. 2004; Webster et al. 2005）、懸念されている。
　アメリカ人の体内及び食物中の高い PBDE 汚染は懸念を引き起こしているが、それはこれらの化合物が化学的に PCBs に似ており、多くの動物実験で有害性が示されているからである。それらには、高用量におけるがん（NTP 1986）、生殖及び発達毒性（Stoker et al. 2004）、内分泌かく乱性（Hallgren and Darnerud 2002）、及び中枢神経系への影響（Eriksson et al. 2002; Viberg et al. 2003）等がある。
　PBDE 類は、布製品、電子機器（コンピュータやテレビ）、プラスチック、ソファーや椅子、マットレスなどの家具に見いだすことができる。ダイオキシン類や PCB 類と違って、これらの化学物質は主に室内汚染物質であり、家庭内で採取したダスト・サンプルやその他の家庭内や職場の環境サンプルから高レベルで見いだされている（Schecter et al. 2005a; Stapleton et al. 2005）。

　非常に高いレベルの PBDE 類が最近、アメリカのミルク（Schecter et al. 2003, Schecter et. al 2005b）、血液（Mazdai et al. 2003; Morland et al. 2005; Schecter et al. 2005b; Schecter et al. 2004; Sjodin et al. 2004）、食品（Schecter et al. 2004）、及び脂肪組織（Johnson-Restrepo et al. 2005; She et al. 2002）から見いだされた。
　アメリカ人の血液とミルク中の濃度はヨーロッパで見いだされるものよりも10～20倍高かった（Bocio et al. 2003; Meironyte et al. 1999; Noren and Meironyte 2000; Ohta et al. 2002）。ダイオキシン類、ジベンゾフラン類、及び PCB 類のレベルとは対照的に、PBDE 類はアメリカでは、過去20～30年の間に血中レベルが大幅に増大している（Schecter et al. 2005b; Sjodin et al. 2004）。

　PBDE の一種であるペンタ BDE とオクタ BDEは、アメリカでは最早、製造も販売もされていないが、デカ BDE は、アメリカはもとより世界的に製造され販売され続けている。さらに、これらの化合物は環境中に残留するので、相当の期間、貯蔵源となるように見える。
　これらの貯蔵源は、食物やダストを汚染し続け、その両方は人のこれらの化合物の摂取にかなり寄与するものと信じられている（Birnbaum and Staskal 2004; Jones-Otazo et al. 2005; Webster et al. 2005）。

　いくつかの研究が PBDE の摂取及び吸入からの取り込みの見積りを開始しているが、アメリカの一般国民の食物からの摂取の量と割合は十分には特性化されていないばかりでなく、ダスト摂取及び吸入からの取り込み量も十分には確立されていない（Jones-Otazo et al. 2005; Stapleton et al. 2005; Webster et al. 2005）。

　今回の研究は我々の以前のアメリカでのマーケット食品調査、及び出生から60歳までの年齢別・性別の PBDE 食物摂取による暴露の推定を拡張し補完するものである。食物サンプルのサイズは以前の調査の約2倍であり、以前には公表されなかったの同属化合物のデータを含んでいる（Schecter et al. 2004）。この研究は初めて、アメリカ国民の食物からの PBDE 摂取を特性化するものである。