IPEN 発表 2011年4月25日
あなたの居間に有害廃棄物が
情報源: IPEN For Immediate Release, 25 April 2011
Hazardous waste on your living room floor
Contacts:
Mariann Lloyd-Smith, PhD, IPEN co-chair +614-136-21557
Olga Speranskaya, PhD, IPEN co-chair +1-647- 866-9224
Joseph DiGangi, PhD, IPEN Sr. Science and Technical Advisor +1 510-710-0655
http://www.chemicalwatch.com/downloads/IPEN_BFR_Carpet_Foam_PR_22_April_2011[1].pdf

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2011年5月1日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/POPs/IPEN/IPEN_110425_Hazardous_waste.html



 アメリカや途上国で消費者によく売られているカーペット・パッドは、特に幼児や小児に神経系のダメージを引き起こすことができる危険な化学物質を含んでいる。

【ジュネーブ】この種のものとしては公的に入手可能な初めて研究( 訳注1)で、アメリカや途上国で消費者によく売られている発泡体(foam)カーペット・パッドは、人の健康についての懸念を引き起こすレベルで難燃剤を含んでいることが示された。ペンタBDE とオクタBDE(訳注2) は、構造と毒性がPCB類に似ている。

 有害物質に取り組む国際組織、IPENによって実施されたこの研究は、米国や開発途上国でよく使用されている発泡体カーペット・パッドのポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)のレベルを検証した。これらの化学物質を含んでいるにちがいないパッドの種類は多彩である。

 ふたつの難燃剤、ペンタBDE とオクタBDEは世界的な廃絶のために、170カ国以上が参加しているストックホルム条約に最近リストされた(訳注3)。

 カナダ、ハンガリー、アメリカからの発泡体パッドのサンプル26のうち23(88%)に、どちらか又は両方の化学物質が検出された。サンプルの半分が欧州連合規制の有害廃棄物制限値を越えるレベルでペンタBDE 成分を含んでいた。オクタBDEについてはサンプルの46%が制限値を超えていた。

 ペンタBDE とオクタBDEはダスト中に放出され、幼児や小児に著しい有害性をもたらす。

 これらの発泡体をリサイクルする人やカーペットを敷く人は、体内にこれらの化学物質を他の人より10倍多く持っていることが分かった。POP's条約専門委員会によれば、ペンタBDEは生殖毒性、神経発達毒性、甲状腺ホルモンへの有害影響に関連している。オクタBDEの有害性には、遅延性神経毒性及び免疫毒性がある

 両方の物質は、世界的な廃絶のためにPOP's条約にリストされているが、政府はそれらを含む発泡体とプラスチックのリサイクルを許す例外を与えている。アメリカではPCB類は禁止されており、ペンタBDE とオクタBDEの製造については、メーカーとの間に自主的な製造中止の「合意ができている。しかし、これらの物質を含む材料をリサイクルして新たな消費者製品にするという抜け穴が残されている。

 ”ペンタBDE やオクタBDE のような有害化学物質をリサイクルして我々の消費者製品での使用を許すことは、ストックホルム条約の健全性を危険にし脅かす”とIPENの共同議長オルガ・スペランスカヤは述べた。”我々の居間は有害な廃棄物の投棄場であってはならない”。

 世界中の政府は、4月25日〜29日までジュネーブで開催されるPOPs条約第5回締約国会議(COP5)で、これらの化学物質を含む材料のリサイクルを許し続けるかどうかを決定するするであろう。

 IPENの本研究は下記から入手できる。
http://ipen.org/ipenweb/pops/cop5.html

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 IPEN(www.ipen.org)は、109カ国以上で活動する700以上の健康環境団体の世界的なネットワークである。IPENは、全ての有害化学物質への曝露によって引き起こされる危害から人の健康と環境を守るための国、地域、及び国際的な取り組みを支援する。


訳注1:IPEN リサイクルされたカーペット・パッド中のポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDEs)の調査
A survey of PBDEs in recycled carpet padding
by Joseph DiGangi, PhD and Jitka Strakova, Dioxin, PCBs, and Wastes Working Group IPEN April 2011


エグゼクティブ・サマリー
 臭化難燃剤を含むポリウレタン発泡体(foam)は、発泡体カーペット・パッド( rebond として知られている)を作るために、ある国々ではリサイクルされている。ストックホルム条約残留性有機汚染物質(POPs)検討委員会は、条約にリストされている臭化難燃剤はリサイクル製品中に入り込み希釈され、人と環境曝露を引き起こす可能性があるので、このような実施についての懸念を提起した。カナダ、ハンガリー、キルギスタン、ネパール、タイ、及びアメリカからのリサイクルされた発泡体カーペット・パッドが、臭素についてハンドヘルドのXRF(蛍光X線分析)を用いてスクリーニングされ、ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDEs)についてはラボで分析された。ネパール、キルギスタン、タイからのサンプルでは臭素は有意なレベルでは検出されなかった。カナダ、ハンガリー、アメリカからの26サンプルのラボ分析では、23のサンプル(88%)がストックホルム条約でリストされているPBDEを少なくとも1種類を、1〜1130 ppmの範囲で含んでいた。その結果は、世界的な廃絶のためにストックホルム条約にリストされている物質への労働者と消費者、特にカーペット敷いた床を這い回る幼児の曝露をもたらす難燃剤を含むリサイクル材料について懸念を提起している。我々が知る限り、これは、リサイクル材料を含むかもしれないウレタン・カーペット発泡体中のPBDEsについての公的に入手可能な初めての調査である。


訳注2:化審法でのペンタBDEとオクタBDE
ペンタBDE(別名ペンタブロモジフェニルエーテル) とオクタBDE(別名ヘプタブロモジフェニルエーテル)はともに第1種特定化学物質である。
・26 ペンタブロモ(フェノキシベンゼン)(別名ペンタブロモジフェニルエーテル)
・28 ヘプタブロモ(フェノキシベンゼン)(別名ヘプタブロモジフェニルエーテル)

第1種特定化学物質
政令(「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律施行令」(昭和49年6月7日政令第202号)最終改正:平成21年10月30日政令第257号)により定められた、「難分解性」、「高蓄積性」及び「長期毒性(人又は高次捕食動物)」の性状を有している化学物質(第2条第2項)です。その化学物質の製造又は輸入の許可制(第6条、第11条)、使用の制限等の措置(第14条)等が課せられています。なお、試験研究用として用いられる場合は、この限りではありません(第7条、第11条、第14条)。ただし、輸入について輸入貿易管理令による事前確認が必要となります。

訳注3:スットククホルム条約第4回締約国会議(COP4)2009年5月 関連情報




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