1変数関数の導関数の計算公式 : トピック一覧

 ・定数の微分公式 
 ・k次関数(kは整数)の微分公式/k次関数(kは実数全般)の微分公式 
 ・対数関数の微分公式/指数関数の微分公式
 ・絶対値の対数の微分公式/関数の絶対値の対数の微分公式(応用:対数微分法/相対変化率/弾力性)

 ・関数の和の微分公式/関数の定数倍の微分公式/関数の積の微分公式/関数の商の微分公式
 ・合成関数の微分公式chain rule/逆関数の微分公式/媒介関数による微分公式 


 1変数関数の微分関連ページ:
  微分の定義 / 高階導関数
  ロルの定理・平均値の定理 / テイラーの定理 / テイラー展開・マクローリン展開 / 極大極小
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  1変数m値ベクトル値関数の微分法 / n変数m値ベクトル値関数の微分法
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定理:絶対値の対数の微分

 ( log|x| )=1/x ,  xR , x≠0       [『高等学校微分積分』p.62] 

 なぜ?→証明  

定理:関数の絶対値の対数の微分 logarithmic derivative 

 ( log| f(x) | )f ' (x)/ f (x) 、ただしf(x)≠0、f(x)微分可能xの範囲において。 [『高等学校微分積分』p.62]

 なぜ?→証明 
 活用例:対数微分法相対変化率   

関数の対数の微分の応用(1)――対数微分法 



 対数微分法とは、

   f(x)=(xを用いた具体的な数式)

 という関数を微分するときに、

 両辺の絶対値の対数をとって微分する計算法のこと。


 【具体的な手順】 


  手順1. 両辺の絶対値対数をとる。  
       log| f(x) | = log|(xを用いた具体的な数式)|  
  
  手順2. 両辺をそれぞれx微分する。左辺には関数の対数の微分を適用。
      ( log| f(x) | )= ( log | (xを用いた具体的な数式)| )   
        f ' (x)/f(x)=log|(xを用いた具体的な数式)|x微分してでてきた具体的な式 
                 ただしf(x)≠0、f(x)が微分可能xの範囲において。 

  手順3. 整理  f '(x)= f(x)・「log|(xを用いた具体的な数式)|x微分してでてきた具体的な式」 

 積の形の関数、根号を含む関数など対数をとると簡単な形になる関数で、有効。  
 対数微分法の利用例1 / 対数微分法の利用例2:ベキ関数の微分公式
 




[文献]
 ・竹之内『経済・経営系数学概説p. 93
 ・和達『微分積分p.51


 ・『高等学校 微分積分』p.63 

  


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 関数の対数微分の応用(2)―― 相対変化率 the relative rate of change  



 関数の絶対値の対数の微分公式   

    ( log| f(x) | )f ' (x)f(x)     
           ≡相対変化率 

 は、

  f(x)xにおける相対変化率the relative rate of change of f(t) 
         増加率 
         成長率
 などの名称で、

 経済学に頻繁に登場。

 経済学では、これを「変化率」と呼ぶこともあるようだけど、  

 数学書では、「変化率」という言葉は微分係数と同義に用いられることもあるので、

 この経済学の言い回しは、混乱のもとになるような気がするのですが・・・。 




[文献]
 ・竹之内『経済・経営系数学概説p. 93


 ・Goldstein,et.al, Calculus and Its Applications, pp.280-284.




相対変化率の具体例−自動車の速度計・加速度計 
 相対変化率の具体例―価格の変化
 対数微分法・相対変化率の活用例―[実質GNP]=[名目GNP]/[物価水準] とすると、[実質GNP成長率]=[名目GNP成長率]−[物価上昇率]
 対数微分法・相対変化率の活用例:素朴な貨幣数量説を対数微分を用いて増加率の関係に変形 
 対数微分法・相対変化率の活用例:コブダグラス型生産関数を時間について微分     
 

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関数の対数微分の応用(3)―― 弾力性 


 二通りの定義がある模様。

 どちらも等しくなるので、心配無用。

 【共通の定義】


  関数f(x)x=x0における弾力性
  η(x0)=[x=x0におけるf(x)の変化率]/[x=x0におけるxの変化率]          

  ところが、「変化率」の定義の違いから、
  以下に見るように、二種類の「弾力性」定義が生じてしまう。           

  二種類の「変化率」は、お互いに値もことなるが、
  そこから定義される二種類の「弾力性」については、
  どういうわけか、どちらの値も、等しくなる。           

  だから、正確に言えば、
    変化率の異なった二つの定義によって、
    ただ一様に定義された「弾力性」について、二つの解釈がなされうる、
  ということになるだろう。




[文献]
 ・高橋『経済学とファイナンスのための数学pp.66-67.
 ・奥野正寛・鈴村興太郎『ミクロ経済学p.278.


 ・Goldstein,et.al, Calculus and Its Applications, pp.280-284.



 【「弾力性」の定義1】


     [ Goldstein,et.al, Calculus and Its Applications, pp.282-284.    ]
  [a-1] x=x0におけるf(x)の変化率     
      変化率を、前項の相対変化率で定義する。   
      単位は、「x一単位あたりで何パーセントの変化率」になる。 
     ゆえに、
     x = x0におけるf(x)の変化率は、
     ( log | f (x0) | )’= f ' (x0)f (x0)     
           ≡ 
      で定義される。     
        ここで、分子は、x = x0でのf微分係数であり、
         x = x0付近でのxのわずかな挙動に対する、f(x0)の反応幅の比率を、
        (実際にはxを単位量も動かしていないのだが)
         xを単位量動かしたとしたと想定した場合のf(x0)の増分で表示している。
        (瞬間速度は、「瞬間」に進んだ距離を、
          実際には為されていない1「時間」に進んだとした想定のもとでの距離で
          表示する。これと同じ。)
         したがって、このf(x0)の増分が、
         そのときのf(x0)の何パーセントにあたるのかを、
          相対変化率の全体は表している。

  [a-2] x=x0におけるxの変化率            
     x = x0 におけるxの変化率は、f(x)=xとおいたときの相対変化率
     ( log | f (x0) | )’= f ' (x0)f (x0)   
              
      で定義される。     
       x = x0 付近でのxのわずかな挙動に対する、xの反応幅の比率は、当然1。
      xを単位量動かしたとしたと想定した場合のxの増分は当然1。
      したがって、このxの増分が、そのときの x = x0 の何パーセントにあたるのかを意味する、
       x = x0 におけるx相対変化率は1/x0 。   
      

   [b] x=x0におけるf(x)の弾力性     
    関数f(x) の x = x0 における弾力性
       =[ x = x0 におけるf(x)の変化率]/[ x = x0 におけるxの変化率] 
        
        
           ∵絶対値の対数の導関数関数の絶対値の対数の導関数相対変化率)  
       
      

【「弾力性」の定義2】 


      [ 奥野・鈴村『ミクロ経済学』p.278、伊藤『ミクロ経済学』pp.31-37;pp.54-56.]  

  a. x = x0におけるf(x)及びx変化率     

    変化率を、[変化による増分][変化前の量]で、定義する。   

    したがって、x = x0におけるf(x)変化率は、  

      

      x = x0におけるx変化率は、           

                 

    一般に、x = x0におけるf(x), x変化率じたいは、概念としては描けるものの、

    ( f(x) がx = x0で連続なら ) 0に収束するだけで、関数の性格について何も語らない。

    しかし、この二つの変化率の比である弾力性は、関数の性格を捉える上で有力な手がかりとなる。  

  b. x = x0におけるf(x)弾力性     

    関数f(x)x = x0における弾力性

    η(x0)[x = x0におけるf(x)変化率][x = x0におけるx変化率]               
         
           ∵極限の商  
              
         
       
        
           ∵絶対値の対数の導関数関数の絶対値の対数の導関数相対変化率)  
         

  

    なぜ、異なった変化率の定義から出発しても、同一の弾力性定義へ行き着くのか?
       第一の変化率:相対変化率(「x一単位あたりで何パーセントの変化率」)、
       第二の変化率:[変化による増分]/[変化前の量](増分が0に限りなく近いのでゼロ)
       この二つの関係をよくみると、
          第一の変化率×=第二の変化率       
        つまり、  

          第一の[x = x0におけるf(x)変化率]

          
                 

          第二の[x = x0におけるf(x)変化率]   

                 

        なので、
          第一のf(x)の変化率×=第二のf(x)の変化率 。 


        第一の[x = x0におけるx変化率]1x0            

        第二の[x = x0におけるx変化率]    
        なので、
             第一のxの変化率×=第二のxの変化率 
        ゆえに、   
        第二の弾力性=[第二のf(x)の変化率]/[第二のxの変化率]   
         
        =(第一のf(x)の変化率)/(第一のxの変化率) ∵limxが分母分子で打ち消しあう    
        =第一の弾力性   
 

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reference

吉田耕作・栗田稔・戸田宏『平成元年3/31文部省検定済高等学校数学科用 高等学校 微分・積分 新訂版』啓林館、pp.49-52.
竹之内脩『経済・経営系数学概説』新世社、1998年、pp.92-93。
和達三樹『微分積分』岩波書店、1988年、pp.47-52.
高橋一『経済学とファイナンスのための数学』新世社、1999年、pp.49-55.
Chiang, Fundamental Methods of Mathematical Economics: Third Edition, McGraw Hill,1984. pp.155-173.
Goldstein,Lay,Schneider, Calculus and Its Applications (International Editions): Eight Edition, Prentice Hall, 1999. 
中谷巌『入門マクロ経済学第三版』日本評論社、1993年、p.110;162;356 
岩田一政『国際経済学』新世社、1990、pp.79-80.
岩田一政『現代金融論』新世社、1992、p.23.
奥野正寛、鈴村興太郎『ミクロ経済学』岩波書店、1985年、p.80;84;90:108;168;180;197:199;278.
伊藤元重『ミクロ経済学』日本評論社、1992年、pp.31-37;pp.54-56.
縄田和満『EXCELによる回帰分析入門』1998年、pp.6-7.