1変数関数の多項式近似1−ロルの定理・平均値定理とその周辺 : トピック一覧 

 ・ロールの定理/平均値の定理  
 ・閉区間における広義単調の必要十分条件/閉区間における狭義単調の十分条件  
 ・導関数が常にゼロとなる関数は定数/コーシーの平均値定理 
1変数関数の多項式近似関連ページ:テイラーの定理/テイラー展開・マクローリン展開
2変数関数の多項式近似関連ページ:2変数関数の平均値の定理/テイラーの定理
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定理:ロールRolleの定理  


 関数y=f(x)閉区間[a,b]で連続

 開区間(a,b)で微分可能とする。

 (区間の端点では微分可能でなくてもよい)

 このとき、

 f (a) = f (b) ならば

 f '(c) =0 をみたすc

 開区間(a,b)内に少なくとも一つ存在する。




[文献]
 ・矢野田代『社会科学者のための基礎数学pp.76-77
 ・赤『実数論講義』§9.3(p.264):実数の連続性公理の言い換えとして。
 ・吹田新保『理工系の微分積分学pp.43-44
 ・和達『微分積分pp.54-55






 





【活用例】平均値定理の導出/コーシーの平均値定理の導出/テイラーの定理の導出  


【注】証明を見ると分かるように、開区間(a,b)で微分可能でないなら、結論はかわってくる。





 なぜ?→証明 

 【解釈】

  閉区間[a,b]で連続開区間(a,b)で微分可能関数y=f(x) 
  を考えると、

  x軸と平行な接線をひける点が
  開区間(a,b)内に少なくとも一つ存在する。


 


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定理:平均値定理 mean value theorem, law of the mean



 関数y=f(x)閉区間[a,b] で連 続

 開区間(a,b) で微分可能 
  (区間の端点では微 分可能でなくてもよい)

 ならば

 式    …(1) 
 
 をみたすcが、




[文献]
 ・矢野田代『社会科学者のための基礎数学p.7
 ・赤『実数論講義』§9.3(p.264):実数の連続性 公理の言い換えとして。
 ・吹田新保『理工系の微分積分学pp.44-45


 ・和達『微分積分pp.59-60
 





【活用例】閉区間における広義単調の必要十分条件の導出/閉区間における狭義単調の十分条件の導出/解析学の基本定理の導出   


【関数一般への拡張】2変数関数バージョンの平均値定理/n変数関数バージョンの平均値の定理

【積分バージョン】  積分の第1平均値定理





 
 開区間(a,b) 内に少なくとも一つ存在する。


※ (1)は以下のかたちにも書き換えられる。

  ・f(b)=f (a)+ (ba ) f '(c)  ( a < c < b ) 

  ・f(x)=f (a)+ (xa ) f '(c)  ( a < c < x ) 

  ・a < c < b をみたすcを、
     a +θ(b−a) ( 0<θ< 1 )
   と書いて、
   f(b)=f (a)+ (ba ) f ' (a +θ(b−a))  ( 0<θ< 1 ) 

  ・bを「aから増分hの点」と解釈して「a+h」と書き、
   a < c < a+h をみたすcを、
    ah ( 0<θ< 1 ) 
   と書いて、
   f (a+h) = f (a)+ h f ' ( ah )  ( 0<θ< 1 ) 

  ・axに代えて、bを「xから増分Δxの点」として「xx」と書き、
     x < c < xx をみたすcを、x +θΔx ( 0<θ< 1 ) と書いて、  
     f(xx)=f (x)+Δx f ' ( x +θΔx )  ( 0<θ< 1 )

なぜ?→証明

【解釈】


  [a,b]連 続(a,b)微分可能関数y=f(x)を 考えると、

  区間の両端を結んだ直線と平行な接線ををひける点が、

  (a,b)内に少なくと も一つ存在する。

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定理: 区間Iにおいて広義単調増加・減少の必要十分条件

    [吹田・新保『理工系の微分積分学p.44.]    

 f(x)閉区間[a,b]で微分可能とするとき、
 閉区間[a,b]で広義単調増加(減少)であるための必要十分条件は、
 閉区間[a,b]上 f ' (x) ≧0( f ' (x) ≦0)となることである。
 ※なぜ?→証明 

定理: 閉区間における狭義単調増加・減少の十分条件

  [『高等学校微分積分』p. 75;和達『微分積分』p.61; 高木『解析概論』49.] 

関数f(x)閉区間[a,b]で連続開区間(a,b)で微分可能
開区間(a,b)で常に、 f ' (x)>0 ( f ' (x)<0 ) ならば
関数f(x)閉区間[a,b]で狭義単調増加狭義単調減少)である。
※なぜ?→証明

定理:導関数が常にゼロなら、もとの関数は定数。

  f (x) が区間Iでつねに f ' (x) =0を満たすならばf (x)I上で定数である。 
※この命題の逆は成り立つか?→導関数の計算公式:定数の微分を見よ。
※なぜ?→証明 

定理:導関数が等しい二つの関数の差は定数

    
    

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・平均値定理の応用:関数の多項式近似 

  ・0次の近似  [ 高橋『経済学とファイナンスのための数学』p.61. ]  
    
    
    
  ・一次の近似式 [『高等学校微分積分』p.74.] 
    
    
    
  ・二次の近似式  [『高等学校微分積分』pp.101-102.] 



定理:コーシーの平均値定理  


 関数f(x), g(x)閉区間[a,b]で連続
 開区間(a,b)で微分可能
 開区間(a,b)で常に g' (x) ≠0
 ならば
    
 を満たすc(a,b)に存在する。 

活用例:テイラーの定理の導出 
なぜ?→証明 




[文献]
 ・赤『実数論講義』§9.3(p.264):実数の連続性 公理の言い換えとして。
 ・小平『解析入門Ip.123
 ・高木『解析概論p.48
 ・吹田新保『理工系の微分積分学p.51


 ・和達『微分積分p.62




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reference

岩波数学辞典(第三版)』. 項目333 微分法[pp.983-986]
吉田耕作・栗田稔・戸田宏『平成元年3/31文部省検定済高等学校数学科用 高等学校 微分・積分 新訂版』啓林館、pp.70-75;90-91;101-102.平均値定理を用いた二次の近似式まで。
矢野健太郎・田代嘉宏『社会科学者のための基礎数学 改訂版』裳華房、pp.76-77.平均値定理まで。
神谷和也・浦井憲一『経済学のための数学入門』東京大学出版会、1996年、pp.214-223(6.2.4節―6.2.6節).
高木貞治『解析概論 改訂第三版』岩波書店、1983年、pp. 47-49;61-67.
和達三樹『理工系の数学入門コース1・微分積分』岩波書店、1988年、pp.54-55.pp.58-69.
吹田・新保『理工系の微分積分学』学術図書出版社、1987年。pp.43-50.
杉浦光夫『解析入門』岩波書店、1980年、pp. 91-107.  
小平邦彦『解析入門I』 (軽装版)岩波書店、2003年,pp.119-126;132-138。
高橋一『経済学とファイナンスのための数学』新世社、1999年、pp.55-56;61-64.
Chiang, Fundamental Methods of Mathematical Economics: Third Edition, McGraw Hill,1984,pp.254-267.