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  例4: コブダグラス型生産関数を時間について微分

          (中谷『入門マクロ経済学第三版pp.162;356. 岩田『国際経済学pp.79-80.)   

  [設定]  

   t:  時間(ここでは、単位が年だとする)、

   Y(t): t時点における産出量、

   K(t): t時点における資本ストック、

   L(t): t時点における労働投入量、

   A(t) : t時点における技術水準、

   α : tと無関係で一定。0<α<1。

  とし、コブ=ダグラス型生産関数

   Y(t) = A(t) Lα(t) K1α(t)   …@ 

  にしたがって、生産活動がなされているとする。 

   なお、Y(t), A(t), L (t), K (t) は常にプラスで、tのすべての範囲で微分可能 …A  

   とする。

  [対数微分を用いて、@を増加率間の関係の形に変形] 

    手順1. 等式@が成り立つなら、その両辺の絶対値対数をとった等式も成り立つ。  

     log| Y(t)| = log| A(t) Lα(t) K1α(t))|  

       Aより、

     log Y(t)  = log { A(t) Lα(t) K1α(t) }   

          = log A(t) log Lα(t) log K1α(t) ∵対数の性質      

          = log A(t) αlog L (t) (1α) log K (t) ∵対数の性質     

                        …B   

    手順2. Bの左辺をt微分する関数の対数の微分を適用。

     ( log Y(t) )’= Y ' (t)Y (t)  ∵Aのもとで関数の対数の微分 

                        …C 

    手順3. Bの右辺をt微分する関数の対数の微分を適用。 

    ( log A(t) αlog L (t) (1α) log K (t) )’   

       ={log A(t) }’+{αlog L (t)}’+{(1α) log K (t)}’∵関数の和の微分   

       ={log A(t) }’+ α{log L (t)}’+ (1α){ log K (t)}’∵関数の定数倍の微分   

       =A ' (t)A(t)α{ L' (t)L (t)} (1α){ K' (t)K (t) } ∵Aのもとで関数の対数の微分 

                        …D  

    手順4.等式Bが成り立つなら、その両辺を微分した等式も成り立つ。

      ( log Y(t) )’= ( log A(t) αlog L (t) (1α) log K (t) )’       

      CDの結果を代入して、

       Y ' (t)Y (t) = A ' (t)A(t)α{ L' (t)L (t)} (1α){ K' (t)K (t) } …E   

   [Eの左辺の解釈] 

    t時点における産出量Y(t)導関数  

         ∵微分係数の定義 

    の意味を考えてみる。 

    まず、分子Y(t+t )Y(t)は、t時点の産出量が、瞬間的な時間の長さt経過後、

                どれだけ増えたのかを示している。      

    これを、瞬間的な時間の長さtで割ることは、

           tの単位あたり、ここでは「年次あたり」に、換算することを意味する。

    ゆえに、Y(t)の導関数全体は、t時点という「瞬間」における産出量の増大が  

     「年率換算」を施すと何ポイントの増大幅となるのかを意味している。   

    ということは、Y ' (t)Y (t)は、    

       t時点における産出量の「瞬間」的増大幅の年率換算値は、

       t時点における産出量の

       何パーセントにあたるかを、意味している。     

    これは、t時点という瞬間の産出量の成長率にほかならない。 

    瞬間なのに、単位は「年」何パーセント、となることに注意。           

   [Eの右辺第一項の解釈] 

    t時点におけるt時点における技術水準A(t)導関数  

         ∵微分係数の定義 

    の意味を考えてみる。 

    まず、分子A(t+t )A(t)は、t時点の技術水準が、瞬間的な時間の長さt経過後、

                どれだけ増したのかを示している。      

    これを、瞬間的な時間の長さtで割ることは、

           tの単位あたり、ここでは「年次あたり」に、換算することを意味する。

    ゆえに、A(t)の導関数全体は、t時点という「瞬間」における技術水準の向上が  

     「年率換算」を施すと何ポイントの向上幅となるのかを意味している。   

    ということは、A ' (t)A (t)は、    

       t時点における技術水準の「瞬間」的向上幅の年率換算値は、

       t時点における技術水準の

       何パーセントにあたるかを、意味している。     

    これは、t時点という瞬間の技術の成長率とでもいえるものである。 

    瞬間なのに、単位は「年」何パーセント、となることに注意。           

   [Eの右辺第二項の解釈]      

    t時点における労働投入量L導関数  

         ∵微分係数の定義 

    の意味を考えてみる。      

    まず、分子L(t+t )L(t)は、t時点の労働投入量に加えて、瞬間的な時間の長さt経過後、

                労働がどれだけ新たに投入されたのかを示している。      

    これを、瞬間的な時間の長さtで割ることは、

           tの単位あたり、ここでは「年次あたり」に、換算することを意味する。

    ゆえに、L(t)の導関数全体は、t時点という「瞬間」において「新たに追加された」労働投入量が  

     「年率換算」を施すと何単位の増分となるのかを意味している。   

    ということは、L ' (t)L (t)は、    

       t時点における労働投入量の「瞬間」的増分の年率換算値は、

       t時点における労働投入量の

       何パーセントにあたるかを、意味している。     

    これは、t時点という瞬間の労働投入量の成長率にほかならない。 

    瞬間なのに、単位は「年」何パーセント、となることに注意。               

   [Eの右辺第三項の解釈]          

    t時点における資本ストックK導関数  

         ∵微分係数の定義 

    の意味を考えてみる。      

    まず、分子K (t+t )K(t)は、t時点の資本ストックに加えて、瞬間的な時間の長さt経過後、

                資本がどれだけ新たに追加されたのかを示している。      

    これを、瞬間的な時間の長さtで割ることは、

           tの単位あたり、ここでは「年次あたり」に、換算することを意味する。

    ゆえに、K(t)の導関数全体は、t時点という「瞬間」において「新たに追加された」資本が  

     「年率換算」を施すと何単位の増分となるのかを意味している。   

    ということは、K ' (t)K (t)は、    

       t時点における資本ストックの「瞬間」的増分の年率換算値は、

       t時点における資本ストックの

       何パーセントにあたるかを、意味している。     

    これは、t時点という瞬間の資本ストックの成長率にほかならない。 

    瞬間なのに、単位は「年」何パーセント、となることに注意。      

   [Eの右辺全体の解釈]      

    だから、Eは、産出量の成長率(%/年)は、

        その時点の技術の成長率(%/年)に、

        労働の成長率(%/年)のα倍と、

        資本の成長率(%/年)(1−α)倍を

        足し合わせたものである     

    と主張していることになる。 

 

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