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対数微分法・相対変化率の活用例2:[吉川洋『マクロ経済学』岩波書店、1995年、p.18.]
 「実質GNP=名目GNP/物価水準」という関係から、対数微分法を用いて、
 「実質
GNP成長率=名目GNP成長率−物価上昇率」 という関係を導出。

[設定]  

   t:  時間(ここでは、単位が年だとする)、

   P(t): t時点における物価水準を示す指数(GNPデフレーター)、

   Y(t): t時点における実質GNP

   YN(t): t時点における名目GNP

  とすると、これらの間に、

   Y(t) = YN(t) P(t)     …@ 

  という関係が成り立つ。(というか、成り立つようにGNPデフレーター・実質GNPは定義されている) 

   なお、P(t), Y(t), YN(t)は常にプラスで、すべてのtの範囲で微分可能 …A  

   とする。

[対数微分を用いて、@を増加率間の関係の形に変形] 

    手順1. 等式@が成り立つなら、その両辺の絶対値対数をとった等式も成り立つ。  

     log| Y(t) | = log| YN(t) P(t) |  

       Aより、

     log Y(t)  = log { YN(t) P(t)}   

          = log YN(t) logP(t) ∵対数の性質    …B   

    手順2. Bの左辺をt微分する関数の対数の微分を適用。

     ( log Y(t) )’= Y ' (t)Y (t)  ∵Aのもとで関数の対数の微分 

                          …C 

    手順3. Bの右辺をt微分する関数の対数の微分を適用。 

      ( log YN(t) logP(t) )( log YN(t) )( logP(t) )  ∵関数の和の微分   

          = YN ' (t)YN(t)P ' (t)P (t) ∵Aのもとで関数の対数の微分,定数の微分   

                          …D        

    手順4.等式Bが成り立つなら、その両辺を微分した等式も成り立つ。

      ( log Y (t) )= ( log YN (t) logP(t) )       

      CDの結果を代入して、

       Y ' (t)Y (t) = YN ' (t)YN(t)P ' (t)P (t) …E               

   [Eの左辺の解釈] 

    t時点における実質GNP Y(t)導関数  

         ∵微分係数の定義 

    の意味を考えてみる。 

    まず、分子Y(t+t )Y(t)は、t時点の実質GNPが、瞬間的な時間の長さt経過後、

                どれだけ増えたのかを示している。      

    これを、瞬間的な時間の長さtで割ることは、

           tの単位あたり、ここでは「年次あたり」に、換算することを意味する。

    ゆえに、Y(t)の導関数全体は、t時点という「瞬間」における実質GNPの増大が  

     「年率換算」を施すと何ポイントの増大幅となるのかを意味している。   

    ということは、Y ' (t)Y (t)は、    

       t時点における実質GNPの「瞬間」的増大幅の年率換算値は、

       t時点における実質GNP

       何パーセントにあたるかを、意味している。     

    これは、t時点という瞬間の(年率換算)実質経済成長率にほかならない。 

    瞬間なのに、単位は「年」何パーセント、となることに注意。           

   [Eの右辺第一項の解釈] 

    t時点における名目GNP YN導関数  

         ∵微分係数の定義 

    の意味を考えてみる。 

    まず、分子YN (t+t )YN (t)は、t時点の名目GNPが、瞬間的な時間の長さt経過後、

                どれだけ増えたのかを示している。      

    これを、瞬間的な時間の長さtで割ることは、

           tの単位あたり、ここでは「年次あたり」に、換算することを意味する。

    ゆえに、YN (t)の導関数全体は、t時点という「瞬間」における名目GNPの増大が  

     「年率換算」を施すと何ポイントの増大幅となるのかを意味している。   

    ということは、YN ' (t)YN (t)は、    

       t時点における名目GNPの「瞬間」的増大幅の年率換算値は、

       t時点における名目GNP

       何パーセントにあたるかを、意味している。     

    これは、t時点という瞬間の(年率換算)名目経済成長率にほかならない。 

    瞬間なのに、単位は「年」何パーセント、となることに注意。           

   [Eの右辺第二項の解釈] 

    t時点における物価水準P(t)導関数  

         ∵微分係数の定義 

    の意味を考えてみる。 

    まず、分子P(t+t )P(t)は、t時点の物価が、瞬間的な時間の長さt経過後、

                    どれだけ上昇したのかを示している。  

    これを、瞬間的な時間の長さtで割ることは、

           tの単位あたり、ここでは「年次あたり」に、換算することを意味する。

    ゆえに、P(t)の導関数全体は、t時点という「瞬間」における物価変動が  

     「年率換算」を施すと何ポイントの上昇幅となるのかを意味している。   

    ということは、P ' (t)P (t)は、    

       t時点の「瞬間」的物価変動の年率換算値は、

       t時点における物価水準の

       何パーセントにあたるかを、意味している。     

    これは、t時点という瞬間の物価上昇率(インフレ率)にほかならない。 

    瞬間なのに、単位は「年」何パーセント、となることに注意。   

   [Eの右辺全体の解釈]      

    だから、Eは、実質経済成長率(%/年)は、

           名目経済成長率(%/年)からインフレ率(%/年)を差し引いたものである、 

    と主張していることになる。   

 

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