有界数列 : トピック一覧


・定義:上に有界な数列/上界 
・定義:下に有界な数列/下界 
・定義:  有界な数列 

・性質:有界な単調数列は収束する /数列の上限下限と上界下界 
   有界数列における上限下限の存在
   有界数列だからと言って最大最小があるとは限らない 
   収束数列は有界だが、有界数列が収束するかどう かは分からない。



関連ページ:
 ・数列の定義、数列のタイプ、数列の極限 
 ・数列の性質:数列の上限sup下限infの性質/数列の極限の性質
 ・数列の一般化:R2上 の点列/Rn上 の点列/点列一般/sequence/family 
総目次


定義: 上に有界な数列 ・ 上界  upper bound 



【はじめに読む定義】
【厳密な定義−予備知識なしに】
【厳密な定義−論理記号を用いて】
【厳密な定義−「数列の項のつくる集合」を用いて】


【はじめに読む定義】


・「上に有界でない数列」とは、

  「この実数以下に、全項を押さえられる」

 と言えない数列


・「上に有界数列」とは、

  「この実数以下に、全項を押さえられる」

 と言える数列。

 この実数を、その数列上界と呼ぶ。

* 上界が存在する数列上に有界数列)もあれば、
  上界が存在しない数列上に有界でない数列)もある。

  上界が存在する数列上に有界数列)に限ってみても、
  その数列上界は、
  複数存在するかもしれないし、
  無数に存在するかもしれない。
  


【例】 どこまでも、0が続く数列0,0,0,0,…は、
   「100以下に、全項を押さえられる」
   「 10以下に、全項を押さえられる」
   「  5以下に、全項を押さえられる」
   「  1以下に、全項を押さえられる」
   「  0以下に、全項を押さえられる」
   などと言えるので、
   「上に有界数列」。
   上述の実数100, 10, 5, 1, 0は、どれも、
   数列0,0,0,0,…の上界
 

【例】 1ずつ増えて行く数列0,1,2,3,…には、
   「この実数以下に、全項を押さえられる」
   と言える実数がないので、
   上界は存在しない「上に有界でない数列」。

数列x1, x2, x3,…上に有界ならば
   数列x1, x2, x3,…上限 sup xnは存在するが[→詳細]、
   数列x1, x2, x3,…最大値 max xnが存在するとは限らない。
   [→詳細]

 





【性質】

 


 ・有界な単調数列は収束する /数列の上限下限と上界下界/有界数列における上限下限の存在
 ・有界数列だからと言って最大最小があるとは限らない 
 ・収束数列は有界だが、有界数列が収束するかどうかは分からない。

【関連事項】


・応用: 数列の上限 sup xn
・類概念:
 →「実数の集合」について:上界・上に有界/下界・下に有界/有界
 →実数値関数について:1変数関数が上に有界 /2変数関数が有界/n変数関数が有界/実数値関数が有界 
 →「点集合」ないし「実数ベクトル」の集合について:R2における有界な集合/Rnにおける有界な集合/距離空間一般における有界な集合 
 →点列について:R2における有界な点列/Rnにおける有界な点列/距離空間一般における有界な点列
 →ベクトル値関数について:1変数ベクトル値関数が有界/2変数2値ベクトル値関数の有界/n変数ベクトル値関数が有界










[文献─「数列の項のつくる集合」を用いて定義]
 ・小平『解析入門I』§1.5実数の性質-a)上限下限(p.37);
 ・赤攝也『実数論講義』§5.2数列の極限値定義5.2.3(p.121)
 ・杉浦『解析入門I』I-§2-命題2.4直前(p.13);
 ・笠原『微分積分学』1.2実数列の収束:定理1.10脚注(p.13)
[文献─「数列の項のつくる集合」の意味に遡って定義]
 ・松坂『解析入門1』2.1数列-B数列(pp.60-61)
 ・杉浦『解析演習』1.4(p.2)
 ・青本『微分と積分1』§1.3(a)(b)(pp.18-20)上界、下界、有界、上限、下限、最大、最小
 ・永倉・宮岡『解析演習ハンドブック[1変数関数編]』3.1.2(p.90)bounded sequence
 ・和達『微分積分』7章2節有界な単調数列(p.173)
 ・黒田『微分積分学』2.5.2-定義2.7(p.46)
 ・細井『はじめて学ぶイプシロン・デルタ』5章(pp.44-5)
 ・加藤『微分積分学原論』定義2.8(p.20):「上に有界」「下に有界」なしに「有界」「上限」「下限」
[文献─数理経済]


  ・神谷・浦井『経済学のための数学入門』2.2実数列とその収束(p.71)
 


【厳密な定義−予備知識なし】

 ・「数列x1, x2, x3,…上に有界bounded to the aboveである」とは、

   | この実数Mに代入すると、
   |  「どの自然数を選んでnに代入しても、 xnM が成り立つ」 
   | が真になる

  と言える実数が、

  数列x1, x2, x3,…に対して、最低一個は存在するということ。
 
    (→論理記号を用いた表現


 ・「実数Mが『数列x1, x2, x3,…上界upper bound』である」とは、

  実数Mが、
    「どの自然数を選んでnに代入しても、 xnM が成り立つ」
  を満たすことをいう。

    (→論理記号を用いた表現

  cf. 数列x1, x2, x3,…上限 sup xn


 





【注】
 


・『数列x1, x2, x3,…上界』は、 
    数列x1, x2, x3,…の項に含まれていなくてもよい。

・『数列x1, x2, x3,…上界』は無数に存在しうる。
    [和達『微分積分』(p.173);青本『微分と積分1』(p.18)]

数列x1, x2, x3,…上に有界ならば
   数列x1, x2, x3,…上限 sup xnは存在するが[→詳細]、
   数列x1, x2, x3,…最大値 max xnが存在するとは限らない [→詳細]。

bounded to the above :小平『解析入門I』§1.5-a(p.37)
  bounded above:『解析演習ハンドブック』3.1.2(p.90)








【厳密な定義−論理記号を用いて】


・「数列x1, x2, x3,…上に有界bounded to the aboveである」


      MR  nN  xnM
           [杉浦『解析演習』1.4(p.2)]

 *bounded to the above :小平『解析入門I』§1.5-a(p.37)
  bounded above:『解析演習ハンドブック』3.1.2(p.90)
 





【読み下し例】
 


 ・「数列x1, x2, x3,…に対して、ある実数Mが存在して、任意の自然数nについて   xnM
 ・「数列x1, x2, x3,…に対して、うまく実数Mをとると、すべての自然数nについて   xnM を成立させられる。」






 






【論理にこだわってみる】


 変項《数列》を組み込んだ一項述語・1変項命題関数 「《数列》が上に有界」 は、
  MR  nN 《数列》の第nM …(
    《数列》にたいして、ある実数Mが存在し、 《数列》, 実数M は、すべての自然数nにたいして、条件「《数列》の第nM 」を満たす
 で定義される。 

 ()は、
 変項 《数列》,M,n を組み込んだ三項述語・3変項命題関数《数列》の第nM」の変項 M, n を、MR nN  で束縛し、
 変項は《数列》のみとなった一項述語・1変項命題関数。   








・「実数Mが『数列x1, x2, x3,…上界upper bound』である」


     nN  xnM  

 





【読み下し例】
 


 ・実数Mが、任意(すべて)の自然数nに対して   xnM を満たす 






 






【論理にこだわってみる】


  ・「あらゆる数列をあつめた集合」を議論領域とする変項《数列》 
  ・R議論領域する変項M 
 を組み込んだ
 2項述語・2変項命題関数

 「Mが、《数列》の上界である」

 は、

 nN  《数列》の第nM …(
  実数Mが、任意(すべて)の自然数nに対して 《数列》の第nM を満たす
 で定義される。 

 ()は、

 変項 《数列》,M,n を組み込んだ三項述語・3変項命題関数

  「 《数列》の第nM

 の変項 n を、nN  で束縛し

 《数列》とMだけ変項として残った2項述語・2変項命題関数。   







数列x1, x2, x3,…上に有界ならば
   数列x1, x2, x3,…上限 sup xnは存在するが[→詳細]、
   数列x1, x2, x3,…最大値 max xnが存在するとは限らない [→詳細]。



数列のつくる集合の概念を用いた定義】

 ・「数列x1, x2, x3,…上に有界bounded to the aboveである」
  とは、

  「数列x1, x2, x3,…のつくる集合{ xn | nN }
             上に有界である
  ということ。

 ・「数列x1, x2, x3,…上界upper bound
  とは、

  「数列x1, x2, x3,…のつくる集合{ xn | nN }上界のこと。

 cf. 数列x1, x2, x3,…上限 sup xn

 ・数列x1, x2, x3,…上に有界ならば
   数列x1, x2, x3,…上限 sup xnは存在するが[→詳細]、
   数列x1, x2, x3,…最大値 max xnが存在するとは限らない [→詳細]。

 *bounded to the above :小平『解析入門I』§1.5-a(p.37)
  bounded above:『解析演習ハンドブック』3.1.2(p.90)







[文献─「数列の項のつくる集合」を用いて定義]

 ・小平『解析入門I』§1.5実数の性質-a)上限下限(p.37);
 ・杉浦『解析入門I』I-§2-命題2.4直前(p.13);


 ・赤攝也『実数論講義』§5.2数列の極限値定義5.2.3(p.121)


→[トピック一覧:有界数列]
総目次

定義: 下に有界な数列 ・ 下界



【はじめに読む定義】
【厳密な定義−予備知識なしに】
【厳密な定義−論理記号を用いて】
【厳密な定義−「数列の項のつくる集合」を用いて】


【はじめに読む定義】


・「下に有界でない数列」とは、

  「この実数以上に、全項維持できる」

 と言えない数列


・「下に有界数列」とは、

  「この実数以上に、全項維持できる」

 と言える数列。

 この実数を、その数列下界と呼ぶ。

* 下界が存在する数列下に有界数列)もあれば、
  下界が存在しない数列下に有界でない数列)もある。

  下界が存在する数列下に有界数列)に限ってみても、
  その数列下界は、
  複数存在するかもしれないし、
  無数に存在するかもしれない。
  

【例】 どこまでも、0が続く数列0,0,0,0,…は、
   「−100以上に、全項維持できる」
   「− 10以上に、全項維持できる」
   「−  5以上に、全項維持できる」
   「−  1以上に、全項維持できる」
   「   0以上に、全項維持できる」
   などと言えるので、
   「下に有界数列」。
   上述の実数−100, −10, −5, −1, 0は、どれも、
   数列0,0,0,0,…の下界

【例】 1ずつ増えて行く数列0,1,2,3,…には、
   「−100以上に、全項維持できる」
   「− 10以上に、全項維持できる」
   「−  5以上に、全項維持できる」
   「−  1以上に、全項維持できる」
   「   0以上に、全項維持できる」
   などと言えるので、
   「下に有界数列」。
   上述の実数−100, −10, −5, −1, 0は、どれも、
   数列0,1,2,3,…の下界


【例】 1ずつ減って行く数列0,−1,−2,−3,…には、
   「この実数以上に、全項維持できる」
   と言える実数がないので、
   下界は存在しない「下に有界でない数列」。

数列x1, x2, x3,…下に有界ならば
   数列x1, x2, x3,…には、下限が存在するが[→詳細]、
   数列x1, x2, x3,…最小値 min xnが存在するとは限らない。[→詳細]

 





【性質】

 


 ・有界な単調数列は収束する /数列の上限下限と上界下界/有界数列における上限下限の存在
 ・有界数列だからと言って最大最小があるとは限らない 
 ・収束数列は有界だが、有界数列が収束するかどうかは分からない。

【関連事項】


・応用: 数列の下限 inf xn
・類概念:
 →「実数の集合」について:上界・上に有界/下界・下に有界/有界
 →実数値関数について:1変数関数が下に有界 /2変数関数が有界/n変数関数が有界/実数値関数が有界 
 →「点集合」ないし「実数ベクトル」の集合について:R2における有界な集合/Rnにおける有界な集合/距離空間一般における有界な集合 
 →点列について:R2における有界な点列/Rnにおける有界な点列/距離空間一般における有界な点列
 →ベクトル値関数について:1変数ベクトル値関数が有界/2変数2値ベクトル値関数の有界/n変数ベクトル値関数が有界










[文献─「数列の項のつくる集合」を用いて定義]
 ・小平『解析入門I』§1.5実数の性質-a)上限下限(p.37);
 ・赤攝也『実数論講義』§5.2数列の極限値定義5.2.3(p.121)
 ・杉浦『解析入門I』I-§2-命題2.4直前(p.13);
 ・笠原『微分積分学』1.2実数列の収束:定理1.10脚注(p.13)
[文献─「数列の項のつくる集合」の意味に遡って定義]
 ・松坂『解析入門1』2.1数列-B数列(pp.60-61)
 ・杉浦『解析演習』1.4(p.2)
 ・青本『微分と積分1』§1.3(a)(b)(pp.18-20)上界、下界、有界、上限、下限、最大、最小
 ・永倉・宮岡『解析演習ハンドブック[1変数関数編]』3.1.2(p.90)bounded sequence
 ・和達『微分積分』7章2節有界な単調数列(p.173)
 ・黒田『微分積分学』2.5.2-定義2.7(p.46)
 ・細井『はじめて学ぶイプシロン・デルタ』5章(pp.44-5)
 ・加藤『微分積分学原論』定義2.8(p.20):「上に有界」「下に有界」なしに「有界」「上限」「下限」
[文献─数理経済]


  ・神谷・浦井『経済学のための数学入門』2.2実数列とその収束(p.71)
 


【厳密な定義−予備知識なし】

 ・「数列x1, x2, x3,…下に有界bounded to the belowである」とは、

   | この実数mに代入すると、
   |  「どの自然数を選んでnに代入しても、m xn が成り立つ」 
   | が真になる

  と言える実数が、

  数列x1, x2, x3,…に対して、最低一個は存在するということ。
 
    (→論理記号を用いた表現


 ・「実数mが『数列x1, x2, x3,…下界lower bound』である」とは、

  実数mが、
    「どの自然数を選んでnに代入しても、m xn が成り立つ」
  を満たすことをいう。

    (→論理記号を用いた表現

  cf. 数列の下限 inf xn


 





【注】
 


・『数列x1, x2, x3,…上界』は、 
    数列x1, x2, x3,…の項に含まれていなくてもよい。

・『数列x1, x2, x3,…上界』は無数に存在しうる。
    [和達『微分積分』(p.173);青本『微分と積分1』(p.18)]

数列x1, x2, x3,…下に有界ならば
   数列x1, x2, x3,…には、下限が存在するが[→詳細]、
   数列x1, x2, x3,…最小値 min xnが存在するとは限らない。[→詳細]

bounded to the above :小平『解析入門I』§1.5-a(p.37)
  bounded above:『解析演習ハンドブック』3.1.2(p.90)








【厳密な定義−論理記号を用いて】


・「数列x1, x2, x3,…下に有界bounded to the belowである」


      mR  nN  m xn
           [杉浦『解析演習』1.4(p.2)]

 * bounded to the above :小平『解析入門I』§1.5-a(p.37)
   bounded above:『解析演習ハンドブック』3.1.2(p.90)
 





【読み下し例】
 


 ・「数列x1, x2, x3,…に対して、ある実数mが存在して、任意の自然数nについて  m xn
 ・「数列x1, x2, x3,…に対して、うまく実数mをとると、すべての自然数nについて    m xn を成立させられる。」






 






【論理にこだわってみる】


 変項《数列》を組み込んだ一項述語・1変項命題関数 「《数列》が下に有界」 は、
   MR  nN m 《数列》の第n …(
      《数列》にたいして、ある実数mが存在し、《数列》, 実数m は、すべての自然数nにたいして、条件「 m 《数列》の第n 」を満たす
 で定義される。 

 ()は、変項 《数列》,m,n を組み込んだ三項述語・3変項命題関数m 《数列》の第n 」 の変項 m, n を、MR nN  で束縛し、
    変項は《数列》のみとなった一項述語・1変項命題関数。 






・「実数mが『数列x1, x2, x3,…下界lower bound』である」
     nN  m xn  

  cf. 数列の下限 inf xn
 






【論理にこだわってみる】


 「あらゆる数列をあつめた集合」を議論領域とする変項《数列》,
 R議論領域する変項m 
 を組み込んだ
 2項述語・2変項命題関数
 「mが、《数列》の下界である」
 は、

 nN  m 《数列》の第n …(
  実数mが、任意(すべて)の自然数nに対して m xn を満たす
 で定義される。 

 ()は、

 変項 《数列》,m,n を組み込んだ三項述語・3変項命題関数

  「 m 《数列》の第n

 の変項 n を、nN  で束縛し

 変項は《数列》,実数mとなった2項述語・2変項命題関数。 







数列x1, x2, x3,…下に有界ならば
   数列x1, x2, x3,…には、下限が存在するが[→詳細]、
   数列x1, x2, x3,…最小値 min xnが存在するとは限らない。[→詳細]
 





【読み下し例】
 


 ・実数mが、任意(すべて)の自然数nに対して   m xn を満たす 










数列のつくる集合の概念を用いた定義】

 ・「数列x1, x2, x3,…下に有界bounded to the belowである」
  とは、

  「数列x1, x2, x3,…のつくる集合{ xn | nN }下に有界である
  ということ。

 ・「数列x1, x2, x3,…下界lower bound
  とは、

  「数列x1, x2, x3,…のつくる集合{ xn | nN }下界のこと。

 cf. 数列x1, x2, x3,…下限 inf xn

 * bounded to the above :小平『解析入門I』§1.5-a(p.37)
   bounded above    :『解析演習ハンドブック』3.1.2(p.90)




数列x1, x2, x3,…下に有界ならば
   数列x1, x2, x3,…には、下限が存在するが[→詳細]、
   数列x1, x2, x3,…最小値 min xnが存在するとは限らない。[→詳細]





[文献─「数列の項のつくる集合」を用いて定義]

 ・小平『解析入門I』§1.5実数の性質-a)上限下限(p.37);
 ・杉浦『解析入門I』I-§2-命題2.4直前(p.13);


 ・赤攝也『実数論講義』§5.2数列の極限値定義5.2.3(p.121)

→[トピック一覧:有界数列]
総目次

定義:有界数列



【はじめに読む定義】
【厳密な定義−「上に有界」「下に有界」を用いて】
【厳密な定義−予備知識なしに】
【厳密な定義−論理記号を用いて】
【厳密な定義−「数列の項のつくる集合」を用いて】


【はじめに読む定義】


・「有界でない数列」とは、

  「この実数以上、あの実数以下に、全項おさまる」

 と言えない数列


・「有界数列」とは、

  「この実数以上、あの実数以下に、全項おさまる」

 と言える数列。

 この実数を、その数列下界と呼び、
 あの実数を、その数列上界と呼ぶ。

 ※閉区間の概念を用いて言い直すと、
  「有界数列」とは、
  「この閉区間全項おさまる」と言える数列。   
  

【例】 どこまでも、0が続く数列0,0,0,0,…は、
   「−100以上、100以下に、全項おさまる」
   「− 10以上、 10以下に、全項おさまる」
   「−  5以上、  5以下に、全項おさまる」
   「−  1以上、  1以下に、全項おさまる」
   「   0以上、 0以下に、全項おさまる」
   などと言えるので、
   「有界数列」。
   上述の実数−100, −10, −5, −1, 0は、どれも、
   数列0,0,0,0,…の下界
   上述の実数100, 10, 5, 1, 0は、どれも、
   数列0,0,0,0,…の上界

【例】 1ずつ増えて行く数列0,1,2,3,…は、
   「−100以上に、全項維持できる」
   「− 10以上に、全項維持できる」
   「−  5以上に、全項維持できる」
   「−  1以上に、全項維持できる」
   「   0以上に、全項維持できる」
   などと言えるので、
   「下に有界な数列」。
   
   けれども、
   「あの実数以下に、全項おさまる」とは言えないので、
   「この実数以上、あの実数以下に、全項おさまる」とも言えない。
   だから、「有界でない数列」。
   
【例】 1ずつ減って行く数列0,−1,−2,−3,…には、
   「100以下に、全項おさまる」
   「10以下に、全項おさまる」
   「 5以下に、全項おさまる」
   「1以下に、全項おさまる」
   「0以下に、全項おさまる」
   などと言えるので、
   「上に有界な数列」。

   けれども、
   「あの実数以上に、全項維持できる」とは言えないので、
   「この実数以上、あの実数以下に、全項おさまる」とも言えない。
   だから、「有界でない数列」。


 





【性質】

 


 ・有界な単調数列は収束する /数列の上限下限と上界下界/有界数列における上限下限の存在
 ・有界数列だからと言って最大最小があるとは限らない 
 ・収束数列は有界だが、有界数列が収束するかどうかは分からない。

【関連事項】


・応用: 数列の下限 inf xn
・類概念:
 →「実数の集合」について:上界・上に有界/下界・下に有界/有界
 →実数値関数について:1変数関数が有界 /2変数関数が有界/n変数関数が有界/実数値関数が有界 
 →「点集合」ないし「実数ベクトル」の集合について:R2における有界な集合/Rnにおける有界な集合/距離空間一般における有界な集合 
 →点列について:R2における有界な点列/Rnにおける有界な点列/距離空間一般における有界な点列
 →ベクトル値関数について:1変数ベクトル値関数が有界/2変数2値ベクトル値関数の有界/n変数ベクトル値関数が有界










[文献─「数列の項のつくる集合」を用いて定義]
 ・小平『解析入門I』§1.5実数の性質-a)上限下限(p.37);
 ・赤攝也『実数論講義』§5.2数列の極限値定義5.2.3(p.121)
 ・杉浦『解析入門I』I-§2-命題2.4直前(p.13);
 ・笠原『微分積分学』1.2実数列の収束:定理1.10脚注(p.13)
[文献─「数列の項のつくる集合」の意味に遡って定義]
 ・松坂『解析入門1』2.1数列-B数列(pp.60-61)
 ・杉浦『解析演習』1.4(p.2)
 ・青本『微分と積分1』§1.3(a)(b)(pp.18-20)上界、下界、有界、上限、下限、最大、最小
 ・永倉・宮岡『解析演習ハンドブック[1変数関数編]』3.1.2(p.90)bounded sequence
 ・和達『微分積分』7章2節有界な単調数列(p.173)
 ・黒田『微分積分学』2.5.2-定義2.7(p.46)
 ・細井『はじめて学ぶイプシロン・デルタ』5章(pp.44-5)
 ・加藤『微分積分学原論』定義2.8(p.20):「上に有界」「下に有界」なしに「有界」「上限」「下限」
[文献─数理経済]
 ・入谷久我『数理経済学入門2.3(p.33)


 ・神谷・浦井『経済学のための数学入門』2.2実数列とその収束(p.71)
 


【厳密な定義−「上に有界」「下に有界」を用いて】

 ・「数列x1, x2, x3,…有界boundedである」とは、

  
    数列x1, x2, x3,…上に有界
    かつ
    数列x1, x2, x3,…下に有界

  ということ、

  (→上に有界・下に有界の意味に遡った定義) 





[文献]
 ・松坂『解析入門1』2.1数列-B数列(pp.60-61)
 ・杉浦『解析演習』1.4(p.2)
 ・和達『微分積分』7章2節有界な単調数列(p.173)
 ・黒田『微分積分学』2.5.2-定義2.7(p.46)









【厳密な定義−予備知識なし】


・「数列x1, x2, x3,…有界である」とは、

  | この実数あの実数m,M に代入すると、
  |  「どの自然数を選んでnに代入しても、 m xnM が成り立つ」 
  | が真になる

 と言えるこの実数あの実数が、

 最低1ペアは存在するということ。

    (→論理記号を用いた表現

  [松坂『解析入門1』2.1-B(pp.60-61);黒田『微分積分学』定義2.7(p.46);
   杉浦『解析演習』1.4(p.2)]

ないし

・「数列x1, x2, x3,…有界である」とは、

  | この正の実数M に代入すると、
  |  「どの自然数を選んでnに代入しても、 xnM が成り立つ」 
  | が真になる

 と言える正の実数が、最低1個は存在するということ。
 
    (→論理記号を用いた表現

  [松坂『解析入門1』2.1-B(pp.60-61);『解析演習ハンドブック』3.1.2(p.90)]。

 





閉区間の概念を用いて言い直すと、
 


 「数列x1, x2, x3,…有界である」とは、

  | この閉区間I に代入すると、
  |  「どの自然数を選んでnに代入し ても、 xn  I が成り立つ」 
  | が真になる

 と言える閉区間が、最低1個 は存在するということ。
   [細井『はじめて学ぶイプシロン・デルタ』演習問題16-2(p.177)?]








【厳密な定義−論理記号を用いて】


・「数列x1, x2, x3,…有界boundedである」

      m,MR  nN (mxnM


ないし
 





【読み下し例】
 


 ・「数列x1, x2, x3,…に対して、ある実数m,Mが存在して、任意の自然数nについて  mxnM
 ・「数列x1, x2, x3,…に対して、うまく実数m,Mをとると、すべての自然数nについて   mxnM を成立させられる」 







・「数列x1, x2, x3,…有界bounded である」


     M>0  nN ( xnM

     「M(0,∞)  nN ( xnM )」
 
 





【読み下し例】
 


 ・「数列x1, x2, x3,…に対して、ある正の実数Mが存在して、任意の自然数nについて  xnM
 ・「数列x1, x2, x3,…に対して、うまく正の実数Mをとると、すべての自然数nについて   xnM を成立させられる」
 







 






【論理にこだわってみる】


 変項《数列》を組み込んだ一項述語・1変項命題関数 「《数列》が有界」 は、
   MR  nN  《数列》の第nM  …(
     ある実数Mが存在し、すべての自然数nにたいして、条件「《数列》の第nM 」を満たす
 で定義される。 

 ()は、変項 《数列》,M,n を組み込んだ三項述語・3変項命題関数《数列》の第nM 」 の変項 M, n を、 MR nN  で束縛し、
 変項は《数列》のみとなった一項述語・1変項命題関数。 










数列のつくる集合の概念を用いた定義】

・「数列x1, x2, x3,…有界である」とは、

  「数列x1, x2, x3,…のつくる集合
     { xn | nN }

  が
  有界である

  ということ。






[文献─「数列の項のつくる集合」を用いて定義]

 ・入谷久我『数理経済学入門2.3(p.33)
 ・笠原『微分積分学』(p.13)
 ・小平『解析入門I』§1.5実数の性質-a)上限下限(p.37);
 ・杉浦『解析入門I』I-§2-命題2.4直前(p.13);


 ・赤攝也『実数論講義』§5.2数列の極限値定義5.2.3(p.121)


→[トピック一覧:有界数列]
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