述語、命題関数  : トピック一覧

 ・1項述語・1変項(1変数)命題関数の定義 / 1項述語・1変項命題関数の具体例  

           →集合表現:一項述語・1変数命題関数の真理集合     
           →量化:普遍量化・全称量化/範囲を限定した普遍量化・全称量化/存在量化/範囲を限定した存在量化

 ・2項述語・2変項(2変数)命題関数の定義 / 2項述語・2変項命題関数の具体例 

           →集合表現:二項述語・2変数命題関数の真理集合     
           →量化:普遍量化・全称量化/範囲を限定した普遍量化・全称量化/存在量化/範囲を限定した存在 量化/二重量化 

 ・n項述語・n変項(n変数)命題関数の定義 / n項述語・n変項命題関数の具体例

           →集合表現:n項述語・n変数命題関数の真理集合     
           →量化:普遍量化・全称量化/範囲を限定した普遍量化・全称量化/存在量化/範囲を限定した存在 量化/二重量化 

論理関連ページ::古典論理/論理記号
総目次


1変項の命題関数 propositional function ,1項述語 predicate  


1項述語・1変項命題関数とは? 
変項が動く範囲(変域・定義域・対象領域・議論領域)
1項述語・1変項命題関数を表す記号 : 文から記号への翻訳 
1項述語・1変項命題関数を表す記号 : 記号から文への翻訳 
1項述語・1変項命題関数の集合への翻訳
1項述語・1変項命題関数の具体例

命題関数・述語とは?

【命題関数・述語のかたち】

・「一変項(一変数)の命題関数propositional function
 「一項述語predicate」[高崎V-1][飯田編p.86]
 とは、
 様々な対象を代入できる変項(変数)を一つだけ組み込んだ
 
   「《変項》はである」
   「《変項》は〜という性質をもつ」
   「《変項》は〜という条件を満たす」

 というかたちの文のこと。

     ※前原は、p.5では、命題関数と述語を区別しているが、
       §7多変数命題関数(p.20)では、
       命題関数と述語は同義語だと述べている。 

・「命題関数」「述語」の変項は、通常、
 アルファベット小文字で表す。
 変項をxで表した場合、
 「一変項命題関数」「一項述語」は、
   「xである」
   「xは〜という性質をもつ」
   「xは〜という条件を満たす」
 という形になる。

 →1項述語・1変項命題関数の記号表現 
 →1項述語・1変項命題関数の具体例 

【命題関数・述語と命題】

 ・様々な対象を変項(変数)へ代入するに応じて、
  「命題関数」「述語は、様々な命題を表す。 [井関 p.24]

  ※「命題関数」「述語」そのものは命題ではない。
   「命題関数」「述語」の変項に対象を代入して、
   はじめて,命題になる。





【関連項目】

 ・一項述語の量化:普遍量化・全称量化/範囲を限定した普遍量化・全称量化/存在量化/範囲を限定した存在量化
 ・1項述語・1変項命題関数の具体例  
 ・1項述語の真理集合 / 1項述語の変項に対象を代入してつくった命題を集合に翻訳 

【文献−数学】

 ・前原昭二『記号論理入門』第1章§2(pp.2-3);§4(pp.5-8);§5(pp.8-9);§7多変数(pp.20-21);§9(pp.26-32)。
 ・前原昭二『数理論理学序説』U述語論理§1命題関数0-1(pp.149-151)
 ・竹内『集合とはなにか―はじめて学ぶ人のために』1章立場の変換-主語と述語(pp.13-15);翻訳語としての集合(pp.20-22):
     「性質というものを何かの属性としてではなくて、思考の対象として、主語として取り上げているのです。
       実はこれが集合の本質に外ならないのです(p.15)」
 ・中谷『論理』4.1命題関数(pp.75-77);5章命題関数と集合-5.1真理集合(p.99):述語から集合への橋渡し
 ・井関清志『集合と論理』§1.5(pp.24-30)。
 ・中内『ろんりの練習帳』2.1(pp.77-80);
 ・http://en.wikipedia.org/wiki/Predicate_%28logic%29
 ・http://cs.odu.edu/~toida/nerzic/content/logic/pred_logic/predicate/pred_intro.html
 ・高崎金久『数理論理学入門X.述語論理の意味論-1.述語論理は何を記号化したものか;[.自然演繹(その2)-2.述語論理の形式化  
 ・新井紀子『数学は言葉』2.2性質の表現(pp.44-49):対象が一個だと性質、対象が複数だと関係…。
 ・本橋『新しい論理序説』1.4(pp.13-20);2.1(pp.23-27);2.4(pp.31-34):自由変数と束縛変数。 
 ・松井知己『だれでも証明がかける−眞理子先生の数学ブートキャンプ』2.6(pp.36-46)
 ・http://de.wikipedia.org/wiki/Pr%C3%A4dikatenlogik

【文献−分析哲学・論理学】

 ・戸田山『論理学をつくる』6.1.1(p.134)
 ・岡田光弘『2008年度論理学I講義ノート』第4章述語論理(pp.29-33)
 ・野矢『論理学』2-2-1命題関数(pp.90-91);2-2-2-用語と記号(pp.94-96);3-1-1命題関数と集合の同等性(p.127)
 ・野矢『入門!論理学』6章.「述語」(p.200);「領域」(p.207);「変項」(p.208);「多重量化」(p.219)
 ・飯田編『論理の哲学』第四章「完全性と不完全性」の前半(p.88)
 
【文献−数理経済】

 ・神谷浦井『経済学のための数学入門』1.2.3(pp.19-22);
 ・岡田『経済学・経営学のための数学』附録1(pp.252-3);



 

 
    ・古典論理は、(たとえ我々に現在把握できていないとしても)どの命題も真偽いずれかに定まっているという設定だから、
     古典論理において「命題関数」「述語は、
      変項に何が入るか決まると、
      《真の命題》《偽の命題》のいずれか一方に定まることが要請される。


    ※「命題関数」「述語」そのものは、《真の命題》でも《偽の命題》でもない(そもそも命題ですらないのだから)。
     「命題関数」「述語」の変項に対象を代入して、
     はじめて,《真の命題》《偽の命題》のいずれか一方に定まる[中谷『論理』(p.78)]。


    ・変項xが組み込まれた命題関数・述語のことを、
     「xを《命題の主語》にする述語」ともいう。
     [http://en.wikipedia.org/wiki/Predicate_%28logic%29]

 
    【変項が動く範囲】


    ・普通、我々が具体的な「命題関数」 「述語」を考えるときには、
     意識してであれ、無意識にであれ、

       「命題関数」「述語」の変項に代入する対象をどこから取ってくるか
         〜見方を逆にすると、「命題関数」「述語」の変項がどこを動くのか〜 

     をあらかじめ頭の中で描いておいたうえで、
     それを前提として、具体的な「命題関数」「述語」を考えている。



     具体的な「命題関数」「述語」を考える際に前提となる

       《「命題関数」「述語」の変項に代入する対象をとってくる範囲》
       ないし
       《「命題関数」「述語」の変項が動く範囲》

     を、その「命題関数」「述語」の

      ・議論領域 domain of discourse
        [野矢『論理学p.96;野矢『入門!論理学』(p.207);戸田山6.1.1(p.134)]
      ・対象領域 object domain, individual domain
        [新井p.90-91;前原記号論理入門p.70;p.142;『数理論理学序説』U§1-0(p.149)]
      ・話題世界 [本橋p.7p.29]
      ・変域 [中谷p.99)]
      ・変項の定義域 [松井p.36;p.154]
      ・全体集合 [中谷p.76]  

     等と呼ぶ。
    ※「対象object, individual」という表現→前原『数理論理学序説』U§1-0(p.149)  
    ※「命題関数」「述語は、議論領域から《命題の集合》への写像。「命題関数」「述語は、議論領域に属す各対象ごとに、それに対応する命題を一つずつ定めるから。[中谷p.77]

    ※ある具体的な「命題関数」「述語」が読まれる際に、その議論領域と解される範囲は、
       その「命題関数」「述語」が書かれた際に、その議論領域として前提された範囲と、
     一致する必要がある。

     読まれる際に議論領域と解される範囲が、
     書かれる際に議論領域として前提された範囲から
     ズレるおそれがあるなら、
     議論領域を明示して「命題関数」「述語」を書くべき。
     

    ・なぜ、ある具体的な「命題関数」「述語」について、
      読まれる際に議論領域として解される範囲が、
      書かれる際に議論領域として前提された範囲と、
     一致する必要があるのか?

     →ズレがあると、以下のトラブルを招く場合がある。

       【トラブル−タイプ1】 

         書かれる際に議論領域として想定された範囲外から、読者が対象を選び、「命題関数」「述語」の変項に代入すると、
         《真の命題》でも《偽の命題》でもない命題ができてしまうことがある。→古典論理の枠組みから逸脱 

         ・具体例:命題関数述語xは偶数」 [松井p.36;p.154]
             ・「xは偶数」と述べるとき、普通、xは整数の範囲を動くことを想定している。
              実際、xが整数の範囲を動く限り、「xは偶数」は、《真の命題》《偽の命題》のいずれかにおさまる。
             ・読者が、「xは整数の範囲を動く」との了解のもとで、「xは偶数」を読んだ場合、トラブルは生じない。
             ・「xは整数の範囲を動く」という前提を共有せずに、「xは偶数」を読んでしまう読者がいたとする。
              彼は、整数でない対象をxに代入するかもしれない。
               たとえば
               ・2/3 
               ・2 
               ・さだまさし 
               ・戸川純  
              これらを、命題関数述語xは偶数」の変項xに代入すると、
               ・命題「2/3は偶数」  
               ・命題「2は偶数」  
               ・命題「さだまさしは偶数」
               ・命題「戸川純は偶数」
              ができるが、
              これらは、どれも、《真の命題》でも《偽の命題》でもなく、古典論理の枠組みから逸脱している。
             ・こうした事態を回避するためには、
              「変項が整数の範囲を動くこと」を読者に明示して、
               「xは偶数」と書かなくてはならない。

        【トラブル−タイプ2】
          
          《書かれる際に議論領域として前提された範囲》から、《読まれる際に議論領域として解される範囲》がズレると、
          「命題関数」「述語」の変項を量化子で束縛してつくった命題の真偽もズレてしまう場合がある。 [戸田山6.1.1(p.134);野矢『論理学』(p.103) ]

         ・具体例: [戸田山6.1.1(p.134)]
           ・議論領域を自然数の範囲に限定して、命題関数述語x<0」を考えて、
            《偽の命題》として「x (x<0)」すなわち「0より小さいxが存在する」を書いたとする。
           ・読者が、「xは自然数の範囲を動く」との了解のもとで、「x (x<0)」を読んだ場合、
            「x (x<0)」は、《偽の命題》だから、トラブルは生じない。
           ・「xは自然数の範囲を動く」という前提を共有せずに、「x (x<0)」を読んでしまう読者がいたとする。
            彼は、「xは整数の範囲を動く」という前提で、「x (x<0)」を読むかもしれない。
            このとき、整数の範囲を議論領域とすると、「x (x<0)」は《真の命題》となって、「x (x<0)」を書いた側の意図からズレてしまう。
           ・このような誤読を避けるためには、
            議論領域を自然数の範囲に限定していることを、読者に明示して、
            「x (x<0)」と書かなくてはならない。

         ・具体例: [野矢『論理学』(p.103)]
           ・議論領域を「人」に限定して、命題関数述語xは二本足」を考えて、
            《真の命題》として「x (xは二本足)」を書いたとする。
           ・「人」が議論領域だと了解した読者が「x (xは二本足)」を読んだ場合、
            「x (xは二本足)」は、《真の命題》だから、トラブルは生じない。
           ・「人」が議論領域だという前提を共有せずに、「x (xは二本足)」を読んでしまう読者がいたとする。
            彼は、「哺乳類」全体が議論領域だという前提で、「x (xは二本足)」を読むかもしれない。
            このとき、「x (xは二本足)」は《偽の命題》となって、「x (xは二本足)」を書いた側の意図からズレてしまう。
           ・「人」が議論領域だという前提を共有せずに、「x (xは二本足)」を読んでしまう読者がいたとする。
            彼は、「鳥」全体が議論領域だという前提で、「x (xは二本足)」を読むかもしれない。
            このとき、「x (xは二本足)」はたまたま《真の命題》となるが、「x (xは二本足)」を書いた側の意図からはズレている。
           ・このような読者の恣意的な解釈を避けるためには、
            議論領域を「人」に限定していることを、読者に明示して、
            「x (xは二本足)」と書かなくてはならない。





【文献−数学】
 ・前原昭二『記号論理入門』第3章§6(p.70)第8章§2(pp.141-2)。
 ・前原昭二『数理論理学序説』U述語論理§1命題関数0(p.149)
 ・中谷『論理』(p.76);5.1真理集合(p.99)
 ・新井紀子『数学は言葉』3.2.6(pp.90-91)
 ・松井知己『だれでも証明がかける−眞理子先生の数学ブートキャンプ』(p.36;p.154)
 ・竹内外史『現代集合論入門』2章1(p.140)
 ・本橋『新しい論理序説』1.2(p.7);2.3(p.29) 
【文献−分析哲学・論理学】
 ・戸田山『論理学をつくる』6.1.1(p.134)
 ・野矢『論理学』2-2-2-用語と記号-(10)(p.96);2-3-解釈(p.103)


 ・野矢『入門!論理学』「領域」(p.207) 



    



→[1項述語・1変項命題関数:冒頭]
→[述語・命題関数:トピック一覧]
→[総目次] 





一項述語・命題関数の記号表現 : 文から記号への翻訳

xを《命題の主語》にする一項述語・命題関数
   「xである」
   「xは〜という性質をもつ」
   「xは〜という条件を満たす」
 を記号に置き換えて表すときには、
 以下の手順に従う。





例1/例2/例3/例4/例5/例6

 【step1】
   「xである」の「
   「x〜という性質をもつ」の「〜という性質
   「x〜という条件を満たす」の「〜という条件
   をP,Fといった《アルファベット大文字》に置き換えて、
   「xPである」「xFである」[前原p.5]
   「x性質Pをもつ」「x性質Fをもつ」[前原p.5;岡田光弘2008定義4.1脚注(p.30)]
   「x条件Pを満たす」「x条件Fを満たす」[前原p.8]
   などと表す 

 【step2】
  「xPである」「xFである」の「Pである」「Fである」の部分
  「xは性質Pをもつ」「xは性質Fをもつ」の「は性質Pをもつ」「は性質Fをもつ」の部分
  「xは条件Pを満たす」「xは条件Fを満たす」の「は条件Pを満たす」「は条件Fを満たす」の部分
  を
   P( )
   F( )
  などと表す。
   ※ P( ) こそが、述語predicateと呼ぶにふさわしいので[前原p.5]、
     P( )述語記号と呼ぶ[岡田光弘2008定義4.1(p.30)]。

 【step3】
 ・一項述語・命題関数xPである」「xFである」は、
  その変項x
  その「はPである」「はFである」の部分を表す記号 P( ) F( ) の( )内に入れて、   
   P(x) 
   F(x)
  と表す。
 ・一項述語・命題関数xは性質Pをもつ」「xは性質Fをもつ」は、
  その変項x
  その「は性質Pをもつ」「は性質Fをもつ」の部分を表す記号 P( ) F( ) の( )内に入れて、
   P(x) 
   F(x)
  と表す。

 ・一項述語・命題関数xは条件Pを満たす」「xは条件Fを満たす」は、
  その変項x
  その「は条件Pを満たす」「は条件Fを満たす」の部分を表す記号 P( ) F( ) の( )内に入れて、
   P(x) 
   F(x)
  と表す。

※「1変数命題関数」「一項述語」を集合の概念に翻訳:
   ・P(x)の真理集合 { x | P(x) } 
   ・命題関数P(x)aを代入してつくった命題P(a)





→[1項述語・1変項命題関数:冒頭]
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一項述語・命題関数の記号表現 : 記号から文への翻訳

xを《命題の主語》にする一項述語・命題関数を表す記号
  P(x)
 が、いきなりでてきたときは、

 これを、
   「xPである」
   「xは性質Pをもつ」
   「xは条件Pを満たす」
 などと読む。

※「1変数命題関数」「一項述語」を集合の概念に翻訳:
   ・P(x)の真理集合 { x | P(x) } 
   ・命題関数P(x)aを代入してつくった命題P(a)
 






【文献】
 ・前原昭二『記号論理入門』§4(p.5);§5(p.8)


 ・岡田光弘『2008年度論理学I講義ノート』定義4.1脚注(p.30)



 



→[1項述語・1変項命題関数:冒頭]
→[述語・命題関数:トピック一覧]
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古典論理における「命題」


 古典論理においては、命題は、真か偽のいずれかが定まる。(真偽いずれか定まらないものは命題として認めない)
 ここから、古典論理のみを論理として扱うテキストのなかでは、命題を、真偽いずかれであるものとして、定義する場合がある(目下のところ真であるか偽であるか未解決であっても、真偽のいずれかであることがわかっていれば命題として認める→神谷、)。
    →飯田編『論理の哲学』第5章:林p.50;『岩波入門数学辞典』「記号論理symbolic logic」(p.124),

 直観主義・構成主義の論理においては、「すべての命題が、真か偽のいずれかが定まっている」とは考えない。
 ここから、直観主義論理においては、排中律・背理法に慎重。
      (数学者のなかには、「背理法」を、論理学上の用語「背理法」よりも広義な意味で使うものがいる→飯田編『論理の哲学』第5章p.124)

命題変項・命題変数・論理式
 岡田光弘『2008年度論理学I講義ノート』3.1 命題論理の形式言語