数列の極限の性質:トピック一覧

・収束数列の性質:極限値の唯一性/収束列の部分列も収束/収束列は有界 
収束数列間の演算と極限定数との和/反数/定数倍///逆数/ 
発散数列との演算と極限:  
・数列間の大小と極限:収束列の大小と極限/発散列との大小と極限/はさみうちの原理
・数列の収束の十分条件:有界単調数列の収束定理/ボルツァノ・ワイエルストラスの定理
・数列の収束の必要十分条件:コーシー列/コーシーの判定法

→関連ページ:
  ・数列の定義/数列の極限の定義
  ・数列の上限sup下限infの性質 

総目次

収束数列の性質


1.  極限の一意性

収束列極限値は、存在するならば唯一つ。

 すなわち、
   anα (n→∞)  かつ anβ (n→∞) ならば、α=β





[文献]
 ・吹田・新保『理工系の微分積分学』定理1-1(p.7)
 ・杉浦『解析入門I』命題2.3(p.13)
 ・小平『解析入門I』§1.4-a(p.24)
 ・笠原『微分積分学』1.2命題1.7(p.9):証明付
 ・黒田『微分積分学』§2.5.2命題2.8(p.45)
 ・赤『実数論講義』定理5.2.1(p.118)
 ・斎藤『数学の基礎:集合・数・位相』2.5.3命題1(p.53):証明略。順序体一般において


 

 



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2.  収束数列の部分列の収束

収束する数列任意の部分列収束する
 
 すなわち、
   anα (n→∞)  an任意の部分列ak(n)について、
                  ak(n)α (n→∞)
 なお、この対偶も成り立つ。
 すなわち、
   an部分列に一つでも収束しないものがある anも収束しない。


 ※収束しない数列については、
  その部分列が収束しないこともあるが、
  収束することもあるので、注意。  
 
  cf. ボルツァノ・ワイエルストラスの定理:有界な数列は収束部分列を含む






[文献]
 ・吹田・新保『理工系の微分積分学』(p.11)
 ・杉浦『解析入門I』3.18(p.23)
 ・高木『解析概論』定理3(p.6)
 ・松坂『解析入門1』2.1-D-定理2(p.72):証明付。
 ・小平『解析入門I』§1.4-c(p.26):証明なし
 ・黒田『微分積分学』§2.5.9定理2.12(p.54)
 ・赤『実数論講義』定理5.7.2(pp.143-4):証明付。
 ・細井『はじめて学ぶイプシロン・デルタ』5章定理5.3(p.43):証明付。
 ・永倉・宮岡『解析演習ハンドブッ ク[1変数関数編]』3.2.6-i(p.106)
 ・斎藤『数学の基礎:集合・数・位相』2.5.3命題2(p.53):証明略。順序体一般において
 ・神谷・浦井『経済学のための数学入門』練習2.2.1(p.74)


 

 



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3.  収束数列は有界

収束する数列有界数列である。
 すなわち、 anα(n∞)  (M) ( |an|<M)


・逆に、有界数列が、収束するとは限らない。  

・対偶:有界でない数列は、収束しない。
    →発散の定義[; 杉浦『解析入門I』定義2,p.18]

  cf. 定理:有界な単調数列は収束する
    ボルツァノ・ワイエルストラスの定理:有界な数列は収束部分列を含む






[文献]
 ・吹田・新保『理工系の微分積分学』定理1 (2),p.7
 ・杉浦『解析入門I』命題2.4,p.13
 ・松坂『解析入門1』2.1-C-定理2(p.61)
 ・黒田『微分積分学』§2.5.2定理2.6(p.46
 ・赤『実数論講義』定理5.2.3(p.121):証明付
 ・高木『解析概論』定理4(p.6)
 ・細井『はじめて学ぶイプシロン・デルタ』5章定理5.5(p.45):証明付。
 ・青本『微分と積分1』命題1.23(p.18)
 ・小平『解析入門I』§1.5-a末尾(p.37)
 ・永倉・宮岡『解析演習ハンドブッ ク[1変数関数編]』3.1.5(p.91)


 
 

 


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収束列の演算と極限



 





【意義】

 「収束数列に四則演算をほどこしてから極限をとった値」と
 「収束数列極限をとってから四則演算を施した値」とが
 等しくなる
 ─このような極限と四則演算との交換可能性を
  収束数列において保証するのが、
  下記公式。









0.収束列に定数を加えた数列の極限

数列{an}が収束列ならば
 それに定数を加えた数列{an+c}も収束列

数列{an}が実数αに収束するならば
 それに定数を加えた数列{an+c}は、実数α+c収束する。
 
 記号を用いて表現すると、

    anα (n→∞)   an+cα+c (n→∞) 
 

 
 




      lim an=α    lim (an+c)=a+c=  lim an + c
n→∞ n→∞ n→∞

            [赤『実数論講義』§5.3問2(p.126)]

【関連項目】

 ・数列{an}が収束しないケース 




[文献−解析]
 ・高木『解析概論』定理5(p.7):和差積商のみ。証明は積商のみ。
 ・小平『解析入門I』定理1.15; 1.19 (p.26;33)
 ・杉浦『解析入門I』定理2.5(p.14);
 ・笠原『微分積分学』1.2命題1.8(p.11)
 ・松坂『解析入門1』2.1-E-定理3(p.63):証明付
 ・黒田『微分積分学』§2.5.3定理2.8(pp.47-8):定数倍,和差積商。証明詳。商の証明は逆数。
 ・赤『実数論講義』§5.3定理5.3.1(p.123);問2(p.126)
 ・青本『微分と積分1』命題1.16(p.13):定数倍,和差積商。証明は数列の具体例についてのみ。
 ・吹田・新保『理工系の微分積分学』定理2(pp.8-9)
 ・永倉・宮岡『解析演習ハンドブッ ク[1変数関数編]』3.1.7(p.91):定数倍,和差積商。証明略。

[文献−数学−解析以外]
 ・斎藤『数学の基礎:集合・数・位相』2.5.3命題3(p.53):証明略。順序体一般において。和差積商。
 ・細井『はじめて学ぶイプシロン・デルタ』2章例2.3(pp.16-17):定数倍、符号反転、逆数。証明付。
                   演習問題2-3(p.18):和差積商。
                   5章定理5.1定理5.2(p.43):再録

[文献−数理経済]
 ・神谷・浦井『経済学のための数学入門』定理2.2.1(p.69):符号反転,和積,逆数。証明付。
 ・岡田『経済学・経営学のための数学』定理1.2(p.6)和差積商。証明付。商の証明は逆数。



 
 


※以下で、数列{an}、数列{bn}が収束しない場合→詳細 

cf.数列の上限下限と、数列の演算との順序交換 

1.収束列の符号を反転した数列の極限

数列{an}が収束列ならば
 その符号を逆転した数列{−an}も収束列

数列{an}が実数αに収束するならば
 数列{−an}は、実数−αに収束する。
 
 記号を用いて表現すると、

    anα (n→∞)   −an→−α (n→∞) 
 

 
 




      lim an=α    lim an=−α= − lim an
n→∞ n→∞ n→∞

 ※なぜ?→証明

・以上の教訓: 
  収束列については、符号反転と極限操作の順序は入れ替え可能。


【関連項目】

 ・数列{an}が収束しないケース 
 





2.収束列の定数倍の極限

数列{an}が収束列ならば
 それを定数c倍した数列{can}も収束列

数列{an}が実数αに収束するならば
 それを定数c倍した数列{can}は、実数cαに収束する。

 記号を用いて表現すると、

  cRにたいして、「anα (n→∞)   can→cα (n→∞)」 

 
 




  cRにたいして、「  lim an=α    lim cancα=c lim an 」
n→∞ n→∞ n→∞

 ※なぜ?→証明

【関連項目】

 ・数列{an}が収束しないケース 

 






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3.収束列の和の極限

・「数列{an}が収束列かつ数列{bn}が収束列ならば
 それらの和の数列{anbn}も収束列

・「数列{an}が実数αに収束かつ数列{bn}が実数βに収束ならば
 数列{anbn}は、実数α+βに収束する。
 
  記号を用いて表現すると、

    「anα (n→∞) かつ bnβ (n→∞)anbnαβ (n→∞)」  
 

 
 
 
 






   lim an=αかつ lim bn=β   lim (an+bn)=α+β= lim an+
lim bn
n→∞ n→∞ n→∞ n→∞ n→∞

※なぜ?→証明

【関連項目】

 ・数列 {an} {bn} が収束しないケース 
 





4.収束列の積の極限

・「数列{an}が収束列かつ数列{bn}が収束列ならば
 それらの積の数列{anbn}も収束列

・「数列{an}が実数αに収束かつ数列{bn}が実数βに収束ならば
 それらの積の数列{anbn}は、実数αβに収束する。
 
  記号を用いて表現すると、

  「anα (n→∞) かつ bnβ (n→∞)anbnαβ (n→∞)」  
 

 
 
 
 






   lim an=αかつ lim bn=β   lim (anbn)=αβ= lim an 
lim bn
n→∞ n→∞ n→∞ n→∞ n→∞

※なぜ?→証明 

【関連項目】

 ・数列 {an} {bn} が収束しないケース

 






5.収束列の逆数の極限

・どの項も0にならない数列{an}が実数α≠0に収束するならば
 その逆数をとった数列{1/an}は、実数1/αに収束する。
 
 記号を用いて表現すると、
 






    「『任意のnNにたいしてan≠0』  かつ anα (n→∞) かつα≠0」 「1/an→1/α (n→∞)」 

    ないし
  (nN) (an≠0) かつ 


lim an
n→∞
=α≠0    
lim
n→∞
1
 
1
 
1

an α
lim an
n→∞



 ※なぜ?→証明


6.収束列の商の極限

・「どの項も0にならない数列{an}が実数α≠0に収束
 かつ 
 「数列{bn}が収束列
 ならば
 それらの商の数列{bn/an}も収束列

・どの項も0にならない「数列{an}が実数α≠0に収束
 かつ
 「数列{bn}が実数βに収束ならば
 それらの商の数列{ bn/an}は、実数β/αに収束する。

 記号を用いて表現すると、
 





    「『(nN) (an≠0)』 かつanα (n→∞)』かつ『α≠0』かつbnβ (n→∞)』」   「bn/an→β/α (n→∞)

    ないし
  (nN) (an≠0) かつ 


lim an
n→∞
=α≠0    
lim
n→∞
bn β
lim bn
n→∞


an α
lim an
n→∞



 ※なぜ?→証明   



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