・収束数列の性質:極限値の唯一性/収束列の部分列も収束/収束列は有界 ・収束数列間の演算と極限:定数との和/反数/定数倍/和/積/逆数/商 ・発散数列との演算と極限: ・数列間の大小と極限:収束列の大小と極限/発散列との大小と極限/はさみうちの原理 ・数列の収束の十分条件:有界単調数列の収束定理/ボルツァノ・ワイエルストラスの定理 ・数列の収束の必要十分条件:コーシー列/コーシーの判定法 →関連ページ: ・数列の定義/数列の極限の定義 ・数列の上限sup下限infの性質 →総目次 |
0. 収束数列の大小関係は、極限操作後も、保存される。【表現1】・数列{an}、数列{bn}が[条件1] 数列{an}がαに収束 かつ [条件2] 数列{bn}がβに収束 かつ [条件3] どの自然数nについても、an≦bnが成り立つ を満たすならば、 α≦β。 ・つまり、 「an→α (n→∞) かつ bn→β (n→∞) かつ (∀n∈N)(an≦bn)」⇒ 「α≦β」 【表現2】・収束列{an},{bn}について、
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1. 「+∞に発散する数列」との大小関係【表現1】・数列{an}、数列{bn}が[条件1] 数列{an}が∞に発散する、 かつ [条件2] どの自然数nについても、an≦bnが成り立つ を満たすならば、 数列{bn}は∞に発散する。 ・つまり、 「an→∞(n→∞) かつ (∀n∈N)(an≦bn)」⇒ 「bn→∞(n→∞) 」 【表現2】
2. 「−∞に発散する数列」との大小関係【表現1】・数列{an}、数列{bn}が[条件1] 数列{bn}が−∞に発散する、 かつ [条件2] どの自然数nについても、an≦bnが成り立つ を満たすならば、 数列{an}は−∞に発散する。 ・つまり、 「bn→−∞(n→∞) かつ (∀n∈N)(an≦bn)」⇒ 「an→−∞(n→∞) 」 【表現2】
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3.「はさみうち」の原理【表現1】・数列{an}、{bn}、{cn}が、[条件1] 数列{an}はαに収束 かつ [条件2] 数列{bn}もαに収束 かつ [条件3] どの自然数nについても、an≦cn≦bnが成り立つ を満たすならば、 数列{cn}もαに収束。 ・つまり、 「an→α (n→∞) かつ bn→α (n→∞) かつ (∀n∈N)(an≦cn≦bn)」 ⇒ 「cn→α (n→∞) 」 【表現2】・収束列{an},{bn},数列{cn}について、
※なぜ?→ 杉浦『解析入門I』命題2.7(p.16)を参照。 |
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「有界単調数列の収束定理」その1−内容
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数列{an}が上に有界な広義単調増加列ならば、 | lim |
an= sup an | |
n→∞ |
(∃ M∈R)(a1≦a2≦a3≦…≦an≦…≦M) ⇒ | lim |
an= sup an | |
n→∞ |
数列{an}が下に有界な広義単調減少列ならば、 | lim |
an= inf an | |
n→∞ |
(∃ M∈R)(a1≧a2≧a3≧…≧an≧…≧M) ⇒ | lim |
an= inf an | |
n→∞ |
数列{an}が上に有界でない広義単調増加列ならば、 | lim |
an= +∞ | |
n→∞ |
数列{an}が上に有界でない広義単調増加列ならば、 | lim |
an= −∞ | |
n→∞ |
[文献−実数の連続性まで見通したスケールの大きな説明]
・赤攝也『実数論講義』§5.4公理6-3(p.129):(1)証明付;公理6-3'(p.129):(2)証明略; p.130,pp.133-4では、 「実数のデデキントの連続性公理」⇔「ワイエルストラスの実数の連続性公理」⇔「有界単調数列の収束定理」 ⇔「アルキメデスの公理+区間縮小法の原理」 が指摘。 p.129:「ワイエルストラスの実数の連続性公理」⇒「有界単調数列の収束定理」 pp.133-142:「有界単調数列の収束定理」⇒「アルキメデスの公理+区間縮小法の原理」 ⇒「実数のデデキントの連続性公理」 ・神谷・浦井『経済学のための数学入門』定理2.2.2(p.71.) :(1)(2)(3)すべてワイエルストラス連続性公理から証明。 注意2.2.1(p.76)で 「ワイエルストラスの実数の連続性公理」⇔「有界単調数列の収束定理」⇔「アルキメデスの公理+区間縮小法の原理」 ⇔「アルキメデスの公理+ボルツァノワイエルストラス」 ⇔「アルキメデスの公理+コーシー列の収束」 等を指摘。証明は略。 ・杉浦『解析入門I』I-§3-定理3.1(p.17)→R17実数の連続公理(p.7):(1)(2)証明付;I-§3定義2-3.5(p.19):(4)(5) 1章§3冒頭(p.17)注意4(p.27)で、 ワイヤストラス⇒有界単調増加数列の収束⇒「アルキメデス+区間縮小法」 ⇒ボルツァノ・ワイヤストラス⇒「アルキメデス+コーシー収束条件」⇒ワイヤストラス を提示。 ・斎藤『数学の基礎:集合・数・位相』2.5.8定理(pp.55-58): 順序体一般において 「ワイエルストラスの連続性公理」「有界単調数列の収束定理」「コーシー完備+アルキメデスの公理」 が同値であることを証明。 これら同値な条件を備えた順序体として実数体を定義[2.5.13(p.59)]、 これらの同値な条件を実数の連続性と呼ぶ。 ・黒田『微分積分学』§2.6.1定理2.13(pp.55-6):(1)(2)。(1)の証明付。 ・松坂『解析入門1』2.2-B単調有界数列の収束定理(p.69):(1)(2)。(1)のみ証明付。 ・岡田『経済学・経営学のための数学』定理1.4(pp.9-11) ・矢野『距離空間と位相構造』定理A.16(p.243):証明付; 定理A.17とA.18のあいだ(p.244):これ⇔ワイヤストラス⇔ボルツァノ・ワイヤストラスであって、 どれを実数の公理としてもよい。 ・高木『解析概論』定理6(p.8); 第1章5(pp.10-11)で デデキントの公理⇒ワイヤストラスの公理⇒ 有界単調増加数列の収束⇒区間縮小法⇒デデキントの公理 を証明したと主張 (区間縮小法⇒デデキントの公理は、「区間縮小法+アルキメデスの公理」⇒デデキントの公理の間違い?) (参考として) ・細井『はじめて学ぶイプシロン・デルタ』定理16.9(p.173):(1)実数の連続性公理からの証明付 (ただし実数がデデキントの切断として定義されている。); 系16.10(p.174):(2)証明略 ・青本『微分と積分1』§1.3(b)命題1.24(p.19):(1)(3):これを実数の連続性公理として提示。 ここから、 上に有界な数列には、つねに、上限が存在するを導出。 実数の連続性の説明:例(5)(p.2)→§1.3(pp.17-19):有理数列の極限としての実数。 ・志賀『解析入門30講』第2講(pp.10-11;13):単調有界数列の収束定理を定理ではなく「実数の連続性の公理」として提示。 p.11実数の十進小数展開との関連。 pp.13-14:単調有界数列の収束定理⇒区間縮小法 ・小林昭七『微分積分読本:1変数』 1章6実数の完備性-定理3(p.23): 「単調増加列が収束するための必要十分条件は上に有界」 [文献−実数の連続性まで見通さないスケールの小さい説明] ・小平『解析入門I』§1.5-b 定理1.20(p.37):(1)(2).証明は(1)のみ。 ・笠原『微分積分学』1.2定理1.10(p.13):(3)。証明は(1)。小平と同じ? ・和達『微分積分』7章2節有界な単調数列(pp.173-174).証明なし ・吹田・新保『理工系の微分積分学』定理4(p.10.) ・Lang, Undergraduate Analysis,Chapter2§1-Theorem1.1(pp.33-34)proof付。 ・De La Fuente, Mathematical Methods and Models for Economists, Theorem3.1(p.49) |
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実数体における「有界単調数列の収束定理」の位置づけ・「有界単調数列の収束定理」は、実数の連続性公理と同値。 つまり、実数の連続性公理の言い換えにすぎない。 実数体における「有界単調数列の収束定理」の位置づけの証明・「有界単調増加列の収束定理」⇒「アルキメデス」+「区間縮小法」の証明 ・「アルキメデス」+「区間縮小法」⇒「Bs-W」の証明 |
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「Bolzano-Weierstrassの定理」−内容【有界数列・部分列を用いた表現】・「実数列a1,a2,a3,…」が有界数列ならば、「実数列a1,a2,a3,…」のあらゆる部分列 ・a1,a2,a3,… ・a1,a3,a5,… ・a2,a3,a4,… ・a2,a4,a6,… : : のなかに、 少なくとも1列の収束数列を見つけることができる。 【標語】このことは、以下のキャッチコピーで言い表される・「有界数列には、収束部分列が存在する」[赤] ・「有界数列は収束部分列を含む」[吹田] ・"Every bounded real sequence contains at least one convergent subsequence." [deLaFuente:Theorem3.3(p.52)] ・「有界数列は常に収束部分列をもつ」[杉浦;永倉宮岡:黒田]。 ・"Every bounded sequence of numbers has a convergent subsequence." [Lang:Collorary1.4(p.36)] ※なぜ?→証明 【部分列の定義に遡った表現】・「実数列a1,a2,a3,…」が有界数列ならばある狭義単調増加自然数列 n1,n2,n3,…(任意のk∈N にたいしてnk∈N かつnk<nk+1) が存在して、
※なぜ?→証明 【有界数列と部分列の定義に遡った表現】・「実数列a1,a2,a3,…」に対して、ある実数m,Mが存在して、 任意のnについて an∈ [m,M]を成立させられるならば、 ある狭義単調増加自然数列 n1,n2,n3,…(任意のk∈N にたいしてnk∈N かつnk<nk+1) が存在して、
※なぜ?→証明 |
※「収束数列は有界」であったが、逆(「有界数列は収束」)は成立しなかった(→定理)。 しかし、 「有界数列は収束」を、 「有界数列の部分列のなかには、収束数列が存在する」まで弱めると、 成立するーこれが、Bolzano-Weierstrassのメッセージ。 ※「有界な無限集合は、少なくとも一つ集積点を持つ」と言い換えることができる。 [吹田・新保:p.16;Lang:Collorary1.3(p.36)] Lang:Theorem1.2(p.35)は、別の言い換え表現を提示。 →点列コンパクト/ハイネ・ボレル・ルベーグの被覆定理 cf. 定理:収束する数列は(数の集合として)有界である。 定理:有界な単調数列は収束する。 |
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直感的な定義・「数列 { an } はコーシー列 である」「数列 { an } は基本列である」とは、 数列 { an } の「項の番号」nが大きくなるにつれて、 数列 { an } の各項が次第に密集していくことをいう。[→志賀] 厳密な定義の主旨 |
※概念「コーシー列」の活用上の意義 「数列{an}がaに収束する」という条件は、(1){an}は収束する、(2)その極限値はaで ある、という二つの部分に分けられるが、 (2)の極限値を求めることが面倒な数列について、とりあえず、 (1)の収束だけを示したいときがある。 そんなとき、(2)極限値を表に出さずに数列の収束のみを示せる条件があると便利。 それが、「コーシー列」。 「コーシー列」であることは、数列が収束する必要十分条件だが、極限値についてまったく触れないですむ。 ※概念「コーシー列」の理論上の意義 コーシーの収束条件とアルキメデスの原理をあわせると、実数の連続性公理と同値となる。つまり、コーシーの収束条件は、「実数の定義」の本質的要素の一表現。 |
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・「数列 { an } はコーシー列 Cauchy sequenceである」 「数列 { an } は基本列 fundamental sequence である」とは、 「数列{an}の項どおしの距離の目標」εをどのような『正の実数値』に指定しようとも、 その「項どおしの距離の目標」εに応じて、数列{an}のはじめの有限N個の項を選んで、これを無視することにすれば、 「(N+1)番目の項」に後続する任意の二項間の実際の距離を、「項どおしの距離の目標」ε以下に収めることができる ということ。 [笠原『微分積分学』;『岩波数学辞典』] |
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厳密な定義の正確な表現・「数列 { an } はコーシー列 Cauchy sequenceである」 「数列 { an }は基本列 fundamental sequence である」 とは、 数列 { an } において、 任意の(どんな小さな)正の実数εに対して(でも)、 (つまり、εを1でも、0.1でも、0.00…001まで狭めても) ある(十分大きな)自然数Nが存在して、 「 m,n≧Nならば、 | am−an |<ε 」 すなわち、「 m,n≧Nならば、 −ε< am−an<+ε 」 を満たす ということ。 論理記号で表すと、 (∀ε>0) (∃N∈N) (∀m,n∈N) ( m,n≧N⇒ | am−an |<ε) 記号・「数列 { an } はコーシー列 Cauchy sequenceである」 「数列 { an }は基本列 fundamental sequence である」 ということを、 以下の記号で表すことがある。
am − an → 0 (m,n→∞) [→吹田・新保] |
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・「実数の数列 { an }が収束する」ための必要十分条件は、 「実数の数列 { an }がコーシー列である」こと。 つまり、 ・命題P「実数の数列 { an }は収束列」⇒命題Q「実数の数列 { an }はコーシー列」 ・命題Q「実数の数列 { an }はコーシー列」⇒命題P「実数の数列 { an }は収束列」 がともに成立する。 ・「実数体Rはコーシー完備である」とは、 実数体Rの性質として、 命題Q「実数の数列 { an }はコーシー列」⇒命題P「実数の数列 { an }は収束列」 が成り立つという事実を指す。[→斎藤]。 ※命題P「実数の数列 { an }は収束列」⇒命題Q「実数の数列 { an }はコーシー列」 が成立すると言えるのは、なぜ?→証明 ※命題Q「実数の数列 { an }はコーシー列」⇒命題P「実数の数列 { an }は収束列」 が成立すると言えるのは、なぜ?→証明 ※赤攝也『実数論講義』は、 命題Q「実数の数列 { an }はコーシー列」⇒命題P「実数の数列 { an }は収束列」 を「カントルの公理」と呼ぶが、これは一般的なのか? →実数の公理における「数列についてのコーシーの収束条件・判定条件」の位置 →実数の公理における「数列についてのコーシーの収束条件・判定条件」の位置の証明 |
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