数列の極限の性質 : トピック一覧

・収束数列の性質:極限値の唯一性/収束列の部分列も収束/収束列は有界 
収束数列間の演算と極限定数との和/反数/定数倍///逆数/ 
発散数列との演算と極限:  
・数列間の大小と極限:収束列の大小と極限/発散列との大小と極限/はさみうちの原理
・数列の収束の十分条件:有界単調数列の収束定理/ボルツァノ・ワイエルストラスの定理
・数列の収束の必要十分条件:コーシー列/コーシーの判定法

→関連ページ:
  ・数列の定義/数列の極限の定義
  ・数列の上限sup下限infの性質 


総目次

数列間の大小関係と極限操作


0. 収束数列の大小関係は、極限操作後も、保存される。

【表現1】

数列{an}、数列{bn}が
  [条件1] 数列{an}がαに収束
  かつ
  [条件2] 数列{bn}がβに収束 
  かつ
  [条件3] どの自然数nについても、anbnが成り立つ
 を満たすならば
 α≦β。
・つまり、
 「anα (n→∞)  かつ bnβ (n→∞) かつ (nN)(anbn)」 「αβ」 

【表現2】

収束列{an},{bn}について、  




 
   (nN)(anbn)   lim an    lim bn
n→∞ n→∞
なぜ?→証明 cf. 「数列の大小関係」と「数列の上限の大小関係」




[文献]
 ・『高等学校微分・積分』p.11. 証明なし
 ・杉浦『解析入門I』定理2.6(p.15):表現1
 ・神谷・浦井『経済学のための数学入門』定理2.2.1(5)(p.69.):表現2
 ・赤攝也『実数論講義』定理5.2.2(i)(p.119):背理法による証明付:表現2
 ・小平『解析入門I』定理1.14 (p.26)
 ・吹田・新保『理工系の微分積分学』定理1-3 (p.7)
 ・黒田『微分積分学』§2.5.3定理2.9(pp.49-50)
 ・松坂『解析入門1』2.1-E-定理4(p.65):証明略。
 ・岡田『経済学・経営学のための数学』定理1.3(p.8):背理法による証明付
 ・永倉・宮岡『解析演習ハンドブッ ク[1変数関数編]』3.1.9-ii(p.92)
 ・斎藤『数学の基礎:集合・数・位相』2.5.3命題4(p.53):証明略。順序体一般において。


 ・青本『微分と積分1』§1.2(b)命題1.18(i)(p.14):証明略。
 

  活用例:区間縮小法の原理の証明/

1. 「+∞に発散する数列」との大小関係

【表現1】

数列{an}、数列{bn}が
  [条件1] 数列{an}が∞に発散する
  かつ
  [条件2] どの自然数nについても、anbnが成り立つ
 を満たすならば
  数列{bn}は∞に発散する
・つまり、
 「an→∞(n→∞)  かつ (nN)(anbn)」bn→∞(n→∞) 」 

【表現2】





 
   (nN)(anbn) かつ  lim an=+∞   lim bn →+∞ 
n→∞ n→∞

2. 「−∞に発散する数列」との大小関係

【表現1】

数列{an}、数列{bn}が
  [条件1] 数列{bn}が−∞に発散する
  かつ
  [条件2] どの自然数nについても、anbnが成り立つ
 を満たすならば
  数列{an}は−∞に発散する
・つまり、
 「bn→−∞(n→∞)  かつ (nN)(anbn)」an→−∞(n→∞) 」 

【表現2】





 
   (nN)(anbn) かつ  lim bn=−∞   lim an →−∞ 
n→∞ n→∞
      




[文献]
 ・『高等学校微分・積分』p.11. 証明なし
 ・松坂『解析入門1』2.1-E-定理4(p.65):証明略。
 ・黒田『微分積分学』§2.5.3定理2.9(pp.49-50)
 ・吹田・新保『理工系の微分積分学』定理3 (p.9)証明なし
 ・青本『微分と積分1』§1.2(b)命題1.18(i)注意1.19(p.14):証明略。
 ・永倉・宮岡『解析演習ハンドブッ ク[1変数関数編]』3.1.10(p.92)

 

 







3.「はさみうち」の原理

【表現1】

数列{an}、{bn}、{cn}が、
  [条件1] 数列{an}はαに収束
  かつ
  [条件2] 数列{bn}もαに収束 
  かつ
  [条件3] どの自然数nについても、ancnbnが成り立つ
 を満たすならば
 数列{cn}もαに収束
・つまり、
 「anα (n→∞)  かつ bn→α (n→∞) かつ (nN)(ancnbn)」
  cnα (n→∞) 」 

【表現2】

収束列{an},{bn},数列{cn}について、




 
 (nN)(ancnbn) かつ  lim an=  lim bn
n→∞ n→∞




 
 

 
     lim an=  lim cn lim bn
n→∞ n→∞ n→∞

なぜ?→ 杉浦『解析入門I』命題2.7(p.16)を参照。 




[文献]
 ・『高等学校微分・積分』p.11. 証明なし
 ・杉浦『解析入門I』定理2.7(p.16):証明つき
 ・赤攝也『実数論講義』定理5.2.2(ii)(p.119;120-121):証明付.表現2
 ・笠原『微分積分学』1.2命題1.9(p.12):証明付
 ・黒田『微分積分学』§2.5.3定理2.9(pp.49-50)
 ・吹田・新保『理工系の微分積分学』定理3 (p.9)証明なし
 ・青本『微分と積分1』§1.2(b)命題1.18(ii)(p.14):証明略。
 ・永倉・宮岡『解析演習ハンドブッ ク[1変数関数編]』3.1.9-iv(p.92)
 ・松坂『解析入門1』問題2.1(p.67)


 

 








→[トピック一覧:数列の極限の性質]
総目次

数列の収束の十分条件 :「 単調有界数列の収束定理」 





 





「有界単調数列の収束定理」−内容
「有界単調数列の収束定理」−証明 
・実数体における「有界単調数列の収束定理」の位置づけ
・実数体における「有界単調数列の収束定理」の位置づけの証明







「有界単調数列の収束定理」その1−内容

上に有界な広義単調増加列は、その上限収束する
つまり、




 数列{an}上に有界な広義単調増加列ならば、  lim
ansup  an   
n→∞
もっと言うと、




 ( MR)(a1a2a3anM)   lim
ansup  an   
n→∞
なぜ?→証明
予備知識:上に有界な数列には、つねに、上限が存在する  
 →杉浦『解析入門I』I-§3-定理3.1 (p.17);
  青本『微分と積分1』§1.3(b)命題1.24(p.19);p.20中間;
  黒田『微分積分学』§2.6.1定理2.13(pp.55-6)
  Lang, Undergraduate Analysis,Chap2§1-Theorem1.1(pp.33-34)
 
「有界単調数列の収束定理」その2−内容

下に有界な広義単調減少列は、その下限収束する

つまり、




 数列{an}下に有界な広義単調減少列ならば、  lim
an= inf  an   
n→∞
もっと言うと、




 ( MR)(a1a2a3anM)   lim
aninf  an   
n→∞
なぜ?→証明
予備知識:下に有界な数列には、つねに、下限が存在する  
 →杉浦『解析入門I』I-§3-定理3.1 (p.17);
  青本『微分と積分1』§1.3(b)命題1.24(p.19);p.20中間;
  黒田『微分積分学』§2.6.1定理2.13(pp.55-6)

「有界単調数列の収束定理」その3−内容

 有界な広義単調列収束列である。    
    (単調でない有界な数列については、収束するかどうか、わからない)
 →笠原『微分積分学』1.2定理1.10(p.13)
なぜ?→上記の(1)(2)より。

「有界単調数列の収束定理」−参考1

上に有界でない広義単調増加列は、+∞に発散する
つまり、




 数列{an}上に有界でない広義単調増加列ならば、  lim
an= +∞   
n→∞
   [杉浦『解析入門I』I-§3定義2-3.5(p.19):+∞の定義より]

「有界単調数列の収束定理」−参考2

 下に有界でない広義単調減少列は、−∞に発散する
 つまり、




 数列{an}上に有界でない広義単調増加列ならば、  lim
an= −∞   
n→∞
   [杉浦『解析入門I』I-§3定義2-3.5(p.19)]





[文献−実数の連続性まで見通したスケールの大きな説明]
 ・赤攝也『実数論講義』§5.4公理6-3(p.129):(1)証明付;公理6-3'(p.129):(2)証明略;
   p
.130,pp.133-4では、
   「実数のデデキントの連続性公理」⇔「ワイエルストラスの実数の連続性公理」⇔「有界単調数列の収束定理」
    ⇔「アルキメデスの公理+区間縮小法の原理」
   が指摘。
   p.129:「ワイエルストラスの実数の連続性公理」⇒「有界単調数列の収束定理」
   pp.133-142:「有界単調数列の収束定理」⇒「アルキメデスの公理+区間縮小法の原理」
                      ⇒「実数のデデキントの連続性公理」
   
 ・神谷・浦井『経済学のための数学入門』定理2.2.2(p.71.) :(1)(2)(3)すべてワイエルストラス連続性公理から証明。
  注意2.2.1(p.76)で
  「ワイエルストラスの実数の連続性公理」⇔「有界単調数列の収束定理」⇔「アルキメデスの公理+区間縮小法の原理」
                   ⇔「アルキメデスの公理+ボルツァノワイエルストラス」
                   ⇔「アルキメデスの公理+コーシー列の収束」
  等を指摘。証明は略。
 ・杉浦『解析入門I』I-§3-定理3.1(p.17)→R17実数の連続公理(p.7):(1)(2)証明付;I-§3定義2-3.5(p.19):(4)(5)
    1章§3冒頭(p.17)注意4(p.27)で、
          ワイヤストラス有界単調増加数列の収束⇒「アルキメデス+区間縮小法」
            ⇒ボルツァノ・ワイヤストラス⇒「アルキメデスコーシー収束条件」⇒ワイヤストラス
    を提示。
 ・斎藤『数学の基礎:集合・数・位相』2.5.8定理(pp.55-58):
   順序体一般において
    「ワイエルストラスの連続性公理」「有界単調数列の収束定理」「コーシー完備+アルキメデスの公理」
   が同値であることを証明。
   これら同値な条件を備えた順序体として実数体を定義[2.5.13(p.59)]、
   これらの同値な条件を実数の連続性と呼ぶ。

 ・黒田『微分積分学』§2.6.1定理2.13(pp.55-6):(1)(2)。(1)の証明付。
 ・松坂『解析入門1』2.2-B単調有界数列の収束定理(p.69):(1)(2)。(1)のみ証明付。
 ・岡田『経済学・経営学のための数学』定理1.4(pp.9-11)
 ・矢野『距離空間と位相構造』定理A.16(p.243):証明付;
             定理A.17とA.18のあいだ(p.244):これ⇔ワイヤストラスボルツァノ・ワイヤストラスであって、
                             どれを実数の公理としてもよい。
 ・高木『解析概論』定理6(p.8);
       第1章5(pp.10-11)で
          デデキントの公理ワイヤストラスの公理有界単調増加数列の収束⇒区間縮小法⇒デデキントの公理
       を証明したと主張
       (区間縮小法⇒デデキントの公理は、「区間縮小法アルキメデスの公理」⇒デデキントの公理の間違い?)

 (参考として)
 ・細井『はじめて学ぶイプシロン・デルタ』定理16.9(p.173):(1)実数の連続性公理からの証明付
                   (ただし実数がデデキントの切断として定義されている。);
                  系16.10(p.174):(2)証明略


 ・青本『微分と積分1』§1.3(b)命題1.24(p.19):(1)(3):これを実数の連続性公理として提示。
                     ここから、 上に有界な数列には、つねに、上限が存在するを導出。
                     実数の連続性の説明:例(5)(p.2)→§1.3(pp.17-19):有理数列の極限としての実数。
 ・志賀『解析入門30講』第2講(pp.10-11;13):単調有界数列の収束定理を定理ではなく「実数の連続性の公理」として提示。
         p.11実数の十進小数展開との関連。
         pp.13-14:単調有界数列の収束定理⇒区間縮小法

 ・小林昭七『微分積分読本:1変数』 1章6実数の完備性-定理3(p.23):
                 「単調増加列が収束するための必要十分条件は上に有界」

[文献−実数の連続性まで見通さないスケールの小さい説明]
 ・小平『解析入門I』§1.5-b 定理1.20(p.37):(1)(2).証明は(1)のみ。
 ・笠原『微分積分学』1.2定理1.10(p.13):(3)。証明は(1)。小平と同じ?
 ・和達『微分積分』7章2節有界な単調数列(pp.173-174).証明なし
 ・吹田・新保『理工系の微分積分学』定理4(p.10.)
 ・Lang, Undergraduate Analysis,Chapter2§1-Theorem1.1(pp.33-34)proof付。
 ・De La Fuente, Mathematical Methods and Models for Economists, Theorem3.1(p.49)





cf. 定理:収束する数列は(数の集合として)有界である。  
    ボルツァノ・ワイエルストラスの定理  
※活用例:有理数指数の累乗の大小関係/

 



実数体における「有界単調数列の収束定理」の位置づけ

 ・「有界単調数列の収束定理」は、実数の連続性公理と同値。
  つまり、実数の連続性公理の言い換えにすぎない。

実数体における「有界単調数列の収束定理」の位置づけの証明

 ・「有界単調増加列の収束定理」⇒「アルキメデス」+「区間縮小法」の証明
 ・「アルキメデス」+「区間縮小法」⇒「Bs-W」の証明 






cf. 定理:収束する数列は(数の集合として)有界である。  
    ボルツァノ・ワイエルストラスの定理  
※活用例:有理数指数の累乗の大小関係/



→[トピック一覧:数列の極限の性質]
総目次

ボルツァノ・ワイエルストラスの定理  theorem of Bolzano-Weierstrass 






 





Bolzano-Weierstrassの定理」−内容
Bolzano-Weierstrassの定理」−証明
実数の公理における「Bolzano-Weierstrassの定理」の位置
実数の公理における「Bolzano-Weierstrassの定理」の位置の証明







Bolzano-Weierstrassの定理」−内容

【有界数列・部分列を用いた表現】

・「実数列a1,a2,a3,…」が有界数列ならば
 「実数列a1,a2,a3,…」のあらゆる部分列
   ・a1,a2,a3,…
   ・a1,a3,a5,…
   ・a2,a3,a4,…
   ・a2,a4,a6,…
   :
   :
 のなかに、
 少なくとも1列の収束数列を見つけることができる。

【標語】

 このことは、以下のキャッチコピーで言い表される
 ・「有界数列には、収束部分列が存在する」[] 
 ・「有界数列収束部分列を含む」[吹田]
 ・"Every bounded real sequence contains at least one convergent subsequence."
          [deLaFuente:Theorem3.3(p.52)]
 ・「有界数列は常に収束部分列をもつ」[杉浦;永倉宮岡:黒田]。
 ・"Every bounded sequence of numbers has a convergent subsequence."
               
[Lang:Collorary1.4(p.36)]
なぜ?→証明 

【部分列の定義に遡った表現】

・「実数列a1,a2,a3,…」が有界数列ならば
 ある狭義単調増加自然数列
   n1,n2,n3,…(任意のkN にたいしてnkN かつnknk+1
 が存在して、
   数列 
a
, 
n1
a
, 
n2
a
, 
n3
a
, 
n4
a
, 
n5
 
 は収束列となる。  

なぜ?→証明 

【有界数列と部分列の定義に遡った表現】


・「実数列a1,a2,a3,…」に対して、ある実数m,Mが存在して、
       任意のnについて  an [m,M]を成立させられるならば
 ある狭義単調増加自然数列
   n1,n2,n3,…(任意のkN にたいしてnkN かつnknk+1
 が存在して、
   数列 
a
, 
n1
a
, 
n2
a
, 
n3
a
, 
n4
a
, 
n5
 
 は収束列となる。  

なぜ?→証明 






[文献−実数の連続性まで見通したスケールの大きな説明]
 ・赤攝也『実数論講義』§5.4公理6-5(pp.144-150):「アルキメデス+区間縮小法」⇒「ボルツァノ・ワイヤストラス」の証明;
 ・杉浦『解析入門I』I-§3-定理3.4(p.24)「アルキメデス+区間縮小法」⇒ボルツァノ・ワイヤストラス
            定理3.6(pp.26-7)⇒ボルツァノ・ワイヤストラス⇒「アルキメデスコーシー収束条件
 ・黒田『微分積分学』§2.6.1定理2.14(pp.57-8):証明付。コンパクト性。
 ・矢野『距離空間と位相構造』4.1閉区間は点列コンパクト(p.128);定理A.17B-Wの定理(p.243):証明付;
 ・神谷・浦井『経済学のための数学入門』定理2.2.3(pp.71-4) :証明付

 ・小林昭七『微分積分読本:1変数』 1章6実数の完備性-定理1theorem of B-W (pp.19-20):
                 「トポロジーの本では閉区間はコンパクトという形で述べてある」
 

[文献−実数の連続性まで見通さないスケールの小さい説明]
 ・吹田・新保『理工系の微分積分学』定理5(p.11.):証明付。1章§2-V-集積点(p.16):集積点の概念をつかった表現。
 ・笠原『微分積分学』1.2定理1.14(p.15):証明付(区間2等分
 ・細井『はじめて学ぶイプシロン・デルタ』演習問題16-2(p.177)「閉区間のなかで定義された無限数列は」;解答(p.213):区間2分
 ・永倉・宮岡『解析演習ハンドブック[1変数関数編]』3.2.6-iii(p.106)
 ・小平『解析入門I』§1.6-e 定理1.30(p.65):平面上の点列について。証明付(ハイネボレルの被覆定理から)。
 ・Lang, Undergraduate Analysis,Chapter2§1-Theorem1.2〜Collorary1.4(pp.35-36)
 ・De La Fuente, Mathematical Methods and Models for Economists, Theorem3.3(p.52)

[文献−Bolzano-Weierstrassの定理についての記述がみあたらない]
 ・加藤『微分積分学原論
 ・松坂『解析入門1』ない。コンパクトの話は、第三巻。
 ・和達『微分積分
 ・青本『微分と積分1








収束数列有界」であったが、逆(「有界数列収束」)は成立しなかった(→定理)。
 しかし、
 「有界数列収束」を、
 「有界数列部分列のなかには、収束数列が存在する」まで弱めると、
 成立するーこれが、Bolzano-Weierstrassのメッセージ。
「有界な無限集合は、少なくとも一つ集積点を持つ」と言い換えることができる。
                  [吹田・新保:p.16;Lang:Collorary1.3(p.36)]
  Lang:Theorem1.2(p.35)は、別の言い換え表現を提示。
     →点列コンパクト/ハイネ・ボレル・ルベーグの被覆定理   
  cf. 定理:収束する数列は(数の集合として)有界である。  
    定理:有界な単調数列は収束する。  


→[トピック一覧:数列の極限の性質]
総目次
 

定義:コーシー列 Cauchy seauence, 基本列 fundamental sequence


直感的な定義


・「数列 { an } コーシー列 である」「数列 { an } 基本列である」とは、
 数列 { an } の「の番号」nが大きくなるにつれて、
 数列 { an } の各が次第に密集していくことをいう。[→志賀]


厳密な定義の主旨

 ※概念「コーシー列」の活用上の意義 
  「数列{an}がaに収束する」という条件は、(1){an}は収束する、(2)その極限値はaで ある、という二つの部分に分けられるが、
   (2)の極限値を求めることが面倒な数列について、とりあえず、 (1)の収束だけを示したいときがある。
   そんなとき、(2)極限値を表に出さずに数列の収束のみを示せる条件があると便利。
   それが、「コーシー列」。 「コーシー列」であることは、数列が収束する必要十分条件だが、極限値についてまったく触れないですむ。
 ※概念「コーシー列」の理論上の意義
   コーシーの収束条件とアルキメデスの原理をあわせると、実数の連続性公理と同値となる。つまり、コーシーの収束条件は、「実数の定義」の本質的要素の一表現。


・「数列 { an } コーシー列 Cauchy sequenceである」 「数列 { an } 基本列 fundamental sequence である」とは、
  「数列{an}どおしの距離の目標」εをどのような『正の実数値』に指定しようとも、
    その「どおしの距離の目標」εに応じて、数列{an}はじめの有限N個のを選んで、これを無視することにすれば、
       「(N+1)番目の」に後続する任意の間の実際の距離を、「どおしの距離の目標」ε以下に収めることができる
 ということ。  [笠原『微分積分学』;『岩波数学辞典』]




厳密な定義の正確な表現

・「数列 { an } コーシー列 Cauchy sequenceである」
 「数列 { an }基本列 fundamental sequence である」
 とは、
 数列 { an } において、
 任意の(どんな小さな)正の実数εに対して(でも)、
        (つまり、εを1でも、0.1でも、0.00…001まで狭めても)
 ある(十分大きな)自然数Nが存在して、
       「 m,nNならば、 |   aman  |<ε 」
  すなわち、「 m,nNならば、 −ε< aman<+ε 」
 を満たす
 ということ。
 論理記号で表すと、
  (ε>0) (NN) (m,nN) ( m,nN | aman |<ε)


記号

・「数列 { an } コーシー列 Cauchy sequenceである」
 「数列 { an }基本列 fundamental sequence である」
 ということを、
 以下の記号で表すことがある。






lim
 ( am an )=0     [→杉浦;黒田;青本]  
m,n→∞

   am an → 0 (m,n→∞)     [→吹田・新保]






[文献]
 ・『岩波数学辞典』156B-5(p.418):やや文章化
 ・杉浦『解析入門I』I-§3-定義5(p.25):論理記号。表す極限風の記号。命題3.5で有界性。
 ・志賀『解析入門30講』第3講(p.21):文章化
 ・笠原『微分積分学』1.2定義1.12(p.14):文章化
 ・黒田『微分積分学』§2.6.3定義2.8(p.62):表す極限風の記号。
 ・青本『微分と積分1』§1.3(c)定義1.31(p.23) :表す極限風の記号で定義。ユニーク。
 ・吹田・新保『理工系の微分積分学』定理6(p.12.):表す極限風の記号(注)。
 ・斎藤『数学の基礎:集合・数・位相』定義2.5.4コーシー列;定義2.5.6コーシー完備;(p.54):実数の連続性公理との関連。
 ・永倉・宮岡『解析演習ハンドブック[1変数関数編]』3.2.7(p.107):有価異性も指摘。
 ・赤攝也『実数論講義』§5.8定義5.8.1(p.154);
 ・松坂『解析入門1』2.1数列-F-定義(p.76)
 ・小平『解析入門I』§1.4-b 定理1.13(p.24):「Cauthyの判定法」として。「Cauthy列」「基本列」は出ない。
 ・細井『はじめて学ぶイプシロン・デルタ』定義17.1(p.180):こなれた日本語にはしていない。;
 ・神谷和也・浦井憲『経済学のための数学入門』定義2.2.6(p.74) 
 ・岡田『経済学・経営学のための数学』定理1.6(pp.11-12):証明付
 ・Lang, Undergraduate Analysis,Chapter2§1(p.37)








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数列の収束の必要十分条件:コーシーCauchyの判定法、コーシーの収束条件、コーシー完備性





・「実数の数列 { an }収束する」ための必要十分条件は、

 「実数の数列 { an }コーシー列である」こと。


 つまり、
   ・命題P実数の数列 { an }収束列命題Q実数の数列 { an }コーシー列
   ・命題Q実数の数列 { an }コーシー列命題P実数の数列 { an }収束列
 がともに成立する。


・「実数体Rコーシー完備である」とは、

  実数体Rの性質として、

    命題Q実数の数列 { an }コーシー列命題P実数の数列 { an }収束列

  が成り立つという事実を指す。[→斎藤]。

  
命題P実数の数列 { an }収束列命題Q実数の数列 { an }コーシー列
  が成立すると言えるのは、なぜ?→証明 

命題Q実数の数列 { an }コーシー列命題P実数の数列 { an }収束列」 
  が成立すると言えるのは、なぜ?→証明 

赤攝也『実数論講義』は、

    命題Q実数の数列 { an }コーシー列命題P実数の数列 { an }収束列

 を「カントルの公理」と呼ぶが、これは一般的なのか?  


実数の公理における「数列についてのコーシーの収束条件・判定条件」の位置
実数の公理における「数列についてのコーシーの収束条件・判定条件」の位置の証明







[文献]
 ・『岩波数学辞典』156B-5(p.418)


 ・小林昭七『微分積分読本:1変数』 1章6実数の完備性-定理2(pp.21-22):
                 「トポロジーの本にはRは完備な距離空間という形で述べてある」

 ・杉浦『解析入門I』:定理3.6(pp.26-27):注意3で順序体一般で成立するのは「収束列⇒コーシー列」だけで、
        逆は順序体一般では成立しない、よって、有理数のコーシー列の極限は有理数体のなかには存在しない、と指摘。
 ・斎藤『数学の基礎:集合・数・位相』定義2.5.4コーシー列;定義2.5.6コーシー完備;(p.54):実数の連続性公理との関連。
    「収束列⇒コーシー列」は順序体一般(たとえば、実数体、有理数体)で成立するが、
    「コーシー列⇒コーシー列」のほうは、成立する順序体(たとえば実数 体)と成立しない順序体(たとえば有理数体)に分かれる。
    「コーシー列⇒コーシー列」の成立する順序体を、「コーシー完備な順序体」と呼ぶ。
    順序完備(ワ イヤストラスの公理が成立する)な順序体ならば、コーシー完備な順序体であるが、
    コーシー完備な順序体は、順序完備でないものと順序完備であるものに分か れる。
    コーシー完備であることに加えて、アルキメデスの公理を満たす順序体となって初めて、
    順序完備な順序体になる[定理2.5.8(p.55)]。
 ・赤攝也『実数論講義』§5.8定理5.8.1(p.154):PQ.収束の定義からの証明;カントルの公理(pp.155-6):QP.B-Wからの証明
 ・笠原『微分積分学』1.2定理1.13(p.14)
 ・永倉・宮岡『解析演習ハンドブック[1変数関数編]』3.2.9(p.107)
 ・細井『はじめて学ぶイプシロン・デルタ』定理17.2(p.180);定理17.4(p.181)
 ・小平『解析入門I』§1.4-b 定理1.13(p.24):「Cauthyの判定法」
 ・松坂『解析入門1』2.1数列-F-定理6(p.76)
 ・青本『微分と積分1』§1.3(c)命題1.32(p.23);定理1.33(p.23)
 ・黒田『微分積分学』§2.6.3定理2.16(p.62)
 ・神谷和也・浦井憲『経済学のための数学入門』定理2.2.4(p.74-5)
 ・吹田・新保『理工系の微分積分学』定理6(p.12.):証明付。
 ・岡田『経済学・経営学のための数学』定理1.6(pp.11-12):証明付
 ・志賀『解析入門30講』第3講(pp.21-22):証明つき
 ・Lang, Undergraduate Analysis,Chapter2§1(p.37)





   






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