血の道症とは

血の道症とは、日本において約250年前から使われだし、それ以降の日本漢方の古典書物の中に数多く登場します。それ以降一般的な言葉となり江戸時代以降漢方薬、和漢薬の効能として現代に至り脈々と受け継がれていますが、現代、一般的には理解されにくい言葉になってきています。
「血の道症」は日本独自の言葉で、大陸(現在の中国含むそれ以前の時代)では使われていない言葉であり概念で日本漢方の特徴とも言えます。近年になって日本に入ってきた中医学(中国漢方と表現している)にもない概念です。血の道症以外にも日本独自の表現として「冷え症」「気付け」「疳の虫」などがあります。

 

具体的には、20歳後半以降の女性の全ての年齢層においてみることができ、月経、妊娠、流産、産褥、更年期、老年期に心身に発症する様々な不定愁訴で主に自覚的症状で、更年期に最も現れ、更年期障害様症候群とも言われてきました。

 

血の道症の定義として龍野一雄先生は
「血の道症の症状は月経障害と自律神経の失調その他と精神症状の三つが組み合わさっており、その一つでも欠けていては血の道症とは云えないし、その一つだけを切り放して治そうとしても駄目だ。内科医は自律神経失調を、婦人科医は月経障害を神経科医は精神症状をバラバラに治そうとしても従らに混迷に陥るばかりである。必ず三角形のようにがっちり組合さっているものが特徴で、治すにもその三つを症候群として扱わなければいけない。」~漢方医学大系
と言っています。
まさに言い得て妙というか真髄を付いている言葉だと思います。

 

月経障害とは
生理不順生理痛PMSその他の月経異常

 

自律神経失調症とは
冷え症、のぼせ、動悸、めまい、耳鳴り、不眠、多夢、腰痛、肩こり、背中のこり、発汗、口喝、ムカムカする、吐く、食欲不振、下痢、便秘、頻尿、夜間頻尿など

 

精神症状とは
不安、イライラ、怒りっぽい、恐怖感、不眠、忘れっぽい、興奮、憂鬱、取り越し苦労など

 

血に道症は、精神的な症状を伴うことから一昔前は、ヒステリーと云われていましたが、現代で言うヒステリーとは別ものとされています。江戸時代中期以降から使われだした血の道症は、その時代の漢方の古典の中から次に紹介します。血の道症はその他「血の病」「血の道わずらい」「血の道持ち」「血の道筋の煩い」「次虫」(PMS)などの名前が使われていました。

古典に見る血の道症

香月牛山 「牛山活套」1740年
巻之下 婦人部
婦人産後は気血を補うべきなり、産後大抵気色もよく床につくこともなきに、ぶらつきありて気力不足あり 血の道持とて生涯病むのあり。逍遥散の加減方、八物湯の加減方、六君子湯の加減方を用う

 

原南陽 「叢桂亭医事小言」1815年
巻之五 婦人 産後諸病
婦人産後血熱退かね或は漏血の後よりし或は蓐(産褥)に在時の心労驚動などよりし上衝頭痛大に欠(あくび)し耳鳴眩暈心気乏少寒熱発作五心煩熱心中驚悸明を悪みて暗室に入或は人と対することを忌む等の症を一面に血の道と称す

 

水野沢斎 「養生弁」1841年
血の道とは日本の詞にして漢土(中国大陸)になき病名なり。方書(古典)にいえる産前、産後 経閉、崩漏など総てをいう名にして、経行(生理)の血の道筋の煩いという意味にて男子にはなき病なり。経水の変(月経異常)より三十六疾の病となり、千変万化に悩ますなり

 

尾台榕堂 「類聚方広義」1855年
柴胡桂枝湯 頭注
婦人故なく憎寒し、壮熱あり、頭痛眩運、心下支結、嘔吐悪心し或は支体酸軟(だるく痛い)し𤸷痺(麻痺)し、鬱鬱として人に対するを悪み、或は頻頻欠伸する者俗に之を血の道と謂う

血の道症の漢方的見方

血の道症の70%は精神症状であることから、漢方で言う気血水の「氣」にまつわる部分が重要な点を占めています。原因は、生理不順、PMS、更年期障害などがあっても、それだけにとらわれることなく精神面、気の異常に目を向けなければなりません。

 

気の乱れは、気うつ、気滞などとして現れます。その背景には人間関係、仕事関係、家庭関係など様々なストレスがあり、原因、背景をよく理解し気のめぐりを良くすること、また瘀血、補血など「血」の異常を解消する二本立てで対処する必要があります。

血の道症の効能を持つ漢方薬

温清飲 黄連解毒湯 加味逍遥散 加味逍遥散加川芎地黄 芎帰調血飲第一加減 
桂枝茯苓丸 桂枝茯苓丸加薏苡仁 甲字湯 香蘇散 柴胡桂枝乾姜湯 三黄散 
三黄瀉心湯 四物湯 逍遥散 川芎茶調散 女神散 抑肝散 抑肝散加芍薬黄連
抑肝散加陳皮半夏
一般用漢方製剤承認基準(厚生労働省医薬食品局)から

 

血の道症の但し書きには
「血の道症とは、月経、妊娠、出産、産後、更年期などの女性のホルモンの変動に伴って現れる精神不安やいらだちなどの精神神経症状および身体症状のことである」と説明されています。

 

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