パニック障害と漢方薬

パニック障害とは、普段の生活の中で突然、強い苦痛、不安感、恐怖感、動悸、過呼吸(過換気症候群)などが併発して現れ、人事不省となり、突然の発作で居合わせた周りの人も驚かされますが、短時間で治まる発作で、救急車で病院に搬送されても着いたころにはケロリと何もなかったかのような状態となり、医者に診断を受けても異常なしという結果になります。

 

 このパニック発作の症状は、身体的症状と精神的症状を伴い、発作は普段の生活の中で理由も前触れもなく繰り返され、その発作の軽重には波がありますが、パニック発作を繰り返す度に不安感を覚え、だんだんとその不安感が強くなり悩まされます。
 パニック発作の頻度には個人差があり、毎週、毎日発作を起こす人もいれば一か月~一年発作がない場合と様々です。また、軽度のパニック障害であれば自然と快復する場合もあります。
慢性長期化するパニック障害もあり、発作の軽重がありながら数年以上患っておられる方もいらっしゃいます。

 

 好発年齢は若い人に多く、男性より女性の方が2倍の頻度で発生します。
激しい動悸や不安感などから心臓や脳の病気ではないかと考えがちですが、心臓、脳、肺の病気でありません。

 

パニック障害の西洋医学の治療
 西洋医学では、セロトニンやノルアドレナリンが関係していろと考え抗うつ薬、抗不安薬、SSRIなどの薬が処方され、精神的な面からは認知行療法がおこなわれます。

 

パニック障害は心の病
 最近、西洋医学ではパニック障害をストレスから起こる不安神経症などとは別の独立した疾患として見ているようです。一般的には、抗うつ剤、抗不安剤などが処方されるように、西洋医学ではパニック障害を脳の病気と捉えている証拠です。

 

 漢方は「心の医学」とも言われ長い歴史に中、心の安定を保つための漢方処方や養生法が培われてきました。パニック障害に用いる漢方薬は病院では扱っておらず、漢方薬専門薬局の独擅場とも言えます。

パニック障害の症状

  • 心臓がどきどきする(動悸)、又は心拍数が増加する
  • パニック障害と漢方薬 漢方芍薬堂 上郡町

  • 下腹(臍周辺)から突き上げるような動悸
  • 汗をかく
  • 身体や手足の震え
  • 呼吸が速くなる、息苦しい(過換気症候群)
  • 息が詰まる(過呼吸)(過換気症候群)
  • 胸の痛み
  • 吐き気、胸部の不快感
  • めまい、不安感、ふらつき(ふわふわ感)
  • 非現実感、自分が自分でない
  • 狂ってしまうのではないか
  • 死ぬのではないか
  • しびれやうずき感
  • 寒気、又はほてり
  • 電車、エレベータに乗れない、高速道路を走れない(車に乗るのが怖い)(閉所恐怖症)

 不意に繰り返し発生するこれらの症状からパニック発作がまた起きるのではないかとの不安感が高まり予期不安と呼ばれる状態になります。

予期不安とは

パニック障害は、再びパニックが起きるのではないかとの不安が増幅し、さらに「予期不安」という形で現れ仕事も手に着かず、不安な毎日を過ごすことになり、QOLの低下にもつながりかねません。

  • 発作症状が又起きるのでは?
  • 発作により病気になるのでは?
  • 発作の原因は重篤な身体疾患では?
  • 死んでしまうのでは?
  • 気を失ってしまうのでは?
  • 気が狂ってしまうのでは?
  • 事故をおこすのではないか
  • 発作を起こしたとき助けてくれる人がいないのでは?
  • 発作を起こした場所から逃げられないのでは?
  • 人前で自分が取り乱してしまうのでは?
  • 人前で倒れたり吐いたり失禁するのでは?

この予期不安は慢性的な不安神経症とも言えます。

広場恐怖症

不安感やパニック発作に襲われた時、その場からすぐに立ち去れない、回避できない場所にいることを不安に思うことで、そういった場所へ行くことを避けようとします。それには恐怖感や不安感が根底にあります。
 不安感、不安障害などから広場恐怖症が起こることもありますが、30%~50%はパニック障害を併発している広場恐怖症です。

 

広場恐怖症の症状

  • バス、電車、飛行機などに乗れない(閉所恐怖症)
  • 店や映画館など閉ざされた場所に行けない
  • スーパーでレジに並べない
  • 高速道を走れない
  • 人込み、繁華街へは行けない
  • 家族のものや同伴者がいると外出できる

 この様な状況で、一度パニック発作を経験した人は、こういった場所を避けようとします。この広場恐怖症は、日常生活に支障をきたし、仕事、家事などうまくこなせず、引きこもりがちになってしまいます。

 

漢方薬での対応や養生法は、パニック障害と同じ方法で対処します。

 

不安神経症も参考にしてください

パニック障害と漢方薬

パニック障害の改善や予防に漢方薬は大変有効で、日本人の体質、性格をふまえた日本漢方が大変お役に立ち、長い歴史の中、その有効性が現在まで継承されてきました。
パニック障害を含め様々な心身症を改善する漢方薬は江戸時代以降に大変発達し、その成果・実績が蓄積されてきました。それらの漢方薬処方が現代の私たちにも大変有効で、みなさまの日常生活を快適に過ごすお役に立っています。

 

 特に速効性のある動物性生薬「麝香」は、パニック障害の頓服としても予防薬としても大変有効で、長い歴史の中、パニック障害を始め「こころの病」に効果を発揮してきました。今やパニック障害の克服にはなくてはならない存在となっています。

 

古典(漢方)に見るパニック障害「奔豚病」
 パニック障害の症状はまさに、漢方で言う「奔豚気病」に当たります。
西暦200年頃、中国の医聖:張 仲景が著した漢方医書「傷寒論」「金匱要略」の中に「奔豚」として記載され、又その治療処方も記載されています。
パニック障害と漢方薬 漢方芍薬堂 上郡町
「傷寒論」
 「發汗後、其人臍下悸者、欲作奔豚、茯苓桂枝甘草大棗湯主之。」
 「発汗した後、病人が臍(ヘソ)の下から動悸するのは、奔豚が起きる前兆であるから茯苓桂枝甘草大棗湯で主治する。」
これは、予防的な処方といえます。働きは、心気の不足を治して、水気の滞りを流動せることにより、心身の正常化を図るものと考えられます。
※茯苓桂枝甘草大棗湯は現在では苓桂甘棗湯と呼ばれています。

 

「金匱要略」
師曰:「病有奔豚、有吐膿、有驚怖、有火邪、此四部病、皆従驚發得之」
師曰く:「疾病の中に奔豚、吐膿、驚怖および火邪が有るが、これらはいずれも恐れおびえることによって起きる。」
○奔豚の発病は、肝経と密接な関係があり、発作が起きたときには、気の塊が上部を突き上げ、発作が終わると気の塊は消滅している。
○奔豚の発作は、精神と関係があり、驚怖と書かれているが、喜怒憂思悲恐驚の七情を含んでいる。
 師曰:「奔豚病従小腹起、上衝咽喉、発作欲死、復還止、皆従驚恐得之」
  「奔豚気上衝胸、腹痛、往来寒熱、奔豚湯主之」
師曰く:「奔豚病の発作が起きるときには、気が小腹部(下腹)から起こって上方に突き上がって喉に到る感じがあり、発作が起こるときには死ぬかと思うほど苦痛を感じる。しかし、発作が過ぎると普通の人と全く同じようになる。この病気は、いずれも恐れおびえるなど精神的打撃から起こるのである。」
「奔豚の発作が起きたときには、上逆の気が胸部まで衝き上がり、同時に腹痛や悪寒と発熱が交互に出現するなどの症状がある。この場合は、奔豚湯で主治する。」
「発作後、臍下悸者、欲作奔豚、茯苓桂枝甘草大棗湯主之」
「発作後、病人が臍の下に動悸を感じたならば、それは奔豚病がまもなく起きる前兆であるから茯苓桂枝甘草大棗湯で主治する。」

 

 この奔豚に関して、日本漢方においては、江戸時代後期、徳川家斉の侍医を務めた多紀元簡の著書に「観聚方要補」があり、その巻五「奔豚」の項に「定悸飲」が記されており、明治天皇のご典医を務めた浅田宗伯の記した「勿誤薬室方函口訣」にも「奔豚を治す」と記載されています。日本人に向いた神経症状、身体症状を伴うパニック障害に役立つ漢方薬ではないかと思います。

漢方コラム
奔豚 「内科秘録」本間棗軒
奔豚気はハ五積(息賁<肺>、痞氣<脾>、胸氣<肝>、奔豚<腎>、伏梁ふくりょう<心>)ノ一ツニテ腎積ニ属スレ(ども)實ハ癇(神経過敏で痙攣性のもの)ノ一證ナリ 腹部の動悸築築(どきどき)ト起リ心胸惕惕(ぴくぴく)トシテ安セス病發スル(とき)ハ氣少腹(下腹部)ヨリ起テ心下及咽喉ヲ衝キ卒倒シテ手足躁擾(動かしもだえる)シ傍人ノ手ヲ握リ或ハ牙關緊急(歯を食いしばる)シテ人事ヲ省セス既ニ死地ニ墜タルヤウニ見ユレ半時(1時間)或ハ一時(2時間)ヲ過ルハ回復シテ輕快ヲ覺フ或ハ眩暈或ハ喜欠(たびたびあくびをする)一旦鎮マリテモ猶(なお)惕惕然(恐れるさま)トシテ安心セス再發ヲ恐レ卒死ヲ懼ル醫俗(医者も世間の人も)共ニ之ヲ積(腹腔内の腫れ物)ト稱ス 此證婦人多キユエ或ハ血積(慢性のうっ血によって腹腔内に塊を生じるもの)と稱ス

パニック障害のまとめ

漢方的にパニック障害の原因を探ると、七情の乱れによるものと思われ、特にストレス社会が日常化している昨今、自己の実像と虚像が交錯し、コントロールが効かなくなったときにヒョッコリ発作が飛び出すのでないかと思われます。特に、リラックスしている時とか何も気にしていないとき突然発症します。

 

また、金匱要略の中で、奔豚は驚いたり恐れが原因だと言っており、驚・恐は五行論で言う「腎」に属しており、証に随い竜骨・牡蛎の配合された漢方薬を用いる場合もあります。

 

 先人の残した研究、漢方薬処方に私たちは、感謝し、この素晴らしい漢方薬を現代に生かしていきたいと思います。

 

 しかし、こういった、気の病、ストレスに更に即効性のある動物性生薬である「麝香」がなぜか傷寒論や金匱要略には記載がありません。
紀元1~2世紀に体系化された中国最古の薬物書「神農本草経」や1500年代、李時珍によって書かれた薬学書「本草綱目」には、「命を養う薬」として記載され、また、神農本草経の上薬に分類され記載されています。

 

 実際には、日本漢方の長い歴史の中「麝香」は面々と受け継がれ研究され使われてきました。江戸時代初期では、徳川家康が用いていた記録があるように一部の高貴な人しか使えない薬でしたが、吉宗の時代位から庶民でも使うことが出来るようになりました。
そして現代の私たちは、貴重な高貴薬ではありますが、この麝香を手軽に利用することが出来るようになりました。

 

 麝香は、精神安定の特効薬です。麝香は私たちの体の中で選択的に働いてくれ、交感神経亢進の時はその鎮静に、副交感神経亢進時にはその鎮静にと常に中庸を維持するよう働いてくれます。パニック障害の発作時の頓服としても、予期不安の予防薬としても大変有効で、即効性があります。
ストレス社会の私たちには、大変ありがたい生薬です。大切に有効活用したいものですね。

 

パニック障害のご相談はお気軽に
 パニック障害、自律神経失調、不安神経症などにはまさに「心の医学」である漢方薬が大変有効です。
私たちは、今までの数多くの経験の中からじっくりとパニック障害に苦しまれておられる人一人一人に向かい合い、丁寧にカウンセリングを行い、その人その人の体質に合った漢方薬をご提案することで心が少しでも楽になり一日も早く快適な生活が出来るようお手伝いをいたします。
お電話でのご相談には、限界がございますので、是非、ご来店ください。

 

 パニック障害・予期不安の漢方薬・養生法のご相談は、赤穂郡上郡町の漢方薬専門「漢方芍薬堂」へお気軽にどうぞ。
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パニック障害と気の上衝

漢方では、パニック障害を「気の病」「こころの病」ととらえ、症状としては気の上衝がその特徴的症候と言えます。

 

気の上衝 
異常感覚が腹部から起こって上部に衝き上げる状態。または、気がのぼせて気分が落ち着かない状態。
気のみが上衝する場合と気と水が上衝する場合がある。
気のみの場合は、頭痛、めまい、のぼせ、咳、吃逆(しゃっくり)、噫気(あくび)などとなり、水を伴えば、痰、喘などを起こす。
下腹部から咽喉への上衝
下腹部から胸咽への上衝
胸への上衝
下腹部から心に上衝
咽喉に上衝
などの場合があり、それぞれ対応する漢方薬があります。

パニック障害の養生法

パニック障害の場合も他の「心の病」と同じようにストレスが関与しますが、患者自身がストレスを感じない、または、認識しない場合も多くあります。ストレスは、自己の内因である七情の乱れ(怒・喜・思・憂・恐・悲・驚)が関係します。漢方的には恐・驚が深く関わっており、これらは五行論で言うところの「腎」に配当されます。日常に恐れたり驚いたりすることがその誘因となります。性格も関係してきます。几帳面、真面目、優等生感覚で自己意識が高く、うまくことが運ばなかったら自らを卑下してしまいます。理想と現実のギャップが受け入れられなかったりします。
また、外因としては、社会における自分との関係が自分が思っているほど認められていないと思い込んでしまっている場合など、様々な要因が絡み合っています。

 

養生としては、他の精神疾患と同じと言えますが

  • 規則正しい生活
  • 十分な睡眠
  • 生活にオンオフの切り替えメリハリのある生活をする
  • 休日は自然の中に身を置き五感で自然を感じる
  • 自分らしく生きる
  • 人の目を気にしない

食養生についての基本は、脾胃を玄米、豆類などで元気にし、腎を補う正しい塩(海の精)と腎を守る山芋など様々な食材を毎日取り入れる。また、気の上衝を鎮めてくれるシソの実、ハスの実、シナモンなどをうまく取り入れる。甘い物の食べ過ぎは腎の働きを抑制しますので控えましょう。

 

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