論理記号∃  : トピック一覧

【記号∃の説明】
 ・論理記号∃の呼称
 ・論理記号∃の使用法
  x P(x) / xX P(x)
  x P(x,y) / xX P(x,y)
  x P(x1,…,xn) / xX P(x1,…,xn) 
  多重量化 
 ・論理記号∃の読み下し方
 ・論理記号∃の推論規則
  論理記号∃の導入則
  論理記号∃の除去則 
【用語別】
 ・存在量化記号
 ・存在記号
 ・特称記号
 ・existential quantifier 
 ・存在量化子 
 ・特称量化子
 ・存在作用素
 ・特称作用素



・対象領域
・議論領域
・変項の定義域

存在量化
存在量化子による量化 
・束縛する
・束縛変数(束縛変項)
・自由変数(自由変項)
量化関連ページ:述語・命題関数
          普遍量化・全称量化
          範囲限定の普遍量化・全称量化 
          存在量化 
          二重量化
論理関連ページ:古典論理/論理記号一覧  
総目次 

二項述語・2変項命題関数の存在量化 ∃xS P(x,y) 

 ・「∃変項∈集合 二項述語」の意味と読み下し方 
 ・「∃変項∈『内包的に定義された集合』 二項述語」の解釈 
 ・「∃変項∈有限集合 二項述語」の解釈 
 ・「∃変項∈集合 二項述語」の省略形「∃+条件式+一項述語」 
 ・「∃変項∈集合 二項述語」の読み下し例一覧 
 ・「∃変項∈集合 二項述語」の具体的な使用例 
 ・「∃変項∈集合 二項述語」のなかで用いられる用語 


「∃+変項∈範囲+二項述語」の意味 


【ざっくり】

 「x《変項が動く範囲を表す集合S》 『x,yは関係Pにある・条件Pを満たす』 」は、

   「yは、少なくとも一つ以上の『集合Sに属す元』にたいして、関係・条件Pを満たす」

  「yとの関係Pを満たす対象が、
      集合Sのなかに少なくとも一つは、存在する」

 という一変項yの命題関数(一項述語)を意味し、 

 「ある『集合Sに属す元xがあって、x,yは関係・条件Pを満たす 」

 と読み下される。



【きっちり】

P(x,y)を「変項xの議論領域X, 変項yの議論領域Yとする二項述語・2変数命題関数

 Sを「X部分集合」 

 とすると、 

 議論領域Yとする1変項yの命題関数 

 「 xS P(x,y)

   yとの関係Pを満たす対象が、
    X部分集合Sのなかに少なくとも一つは存在する

 は、

 議論領域Yとする1変項yの命題関数 「 x ( xSかつP(x,y) )
 関連事項:x P(x,y)の意味 / x P(x,y)の意味 / xX P(x,y)の意味  
 さらに量化すると:「∃xSyT P(x,y)/「∀xSyT P(x,y) / 「∃xSyT P(x,y) 




【文献−数学一般】
 ・中内『ろんりの練習帳』2.5存在命題関数(pp.99-100):n項述語を存在量化してつくった(n-1)項述語。動く範囲を明確にした書き方はp.100
 ・松井知己『だれでも証明がかける−眞理子先生の数学ブートキャンプ』2.6(pp.36-46)
 ・杉浦『解析入門I』附録2(pp.400-402)
 ・齋藤『日本語から記号論理へ』2章§3存在量化子(pp.56-7):範囲明示なしのケースだけ。
 ・本橋『新しい論理序説』3.2(pp.40-43);4.1量化記号の使い方(pp.64-83):述語と量化とその読み下し方について豊富な具体例。範囲明示表記を範囲明示なし表記に書き換えた例が取り上げられている。

【文献−数学基礎論】
 ●中谷『論理』6.3A多変数の命題関数の限定命題(p.141)
 ・井関清志『集合と論理』§1.2(pp.7-11);§1.5述語(p.26)。
 ・新井紀子『数学は言葉』2.3脚注8(pp.57-58):∃mNnN P(m,n);3.2.6例題3.2.10(p.90):3項述語の存在量化;例題3.2.15(p.98)(p.100);4.1(p.124);4.2(p.128)
 ・前原昭二『記号論理入門』第1章§7多変数(pp.20-23);§8自由変数束縛変数(pp.23-26):範囲明示なしのケースだけ。

【文献−分析哲学・論理学】
 ・戸田山『論理学をつくる』7.1.4多重量化(pp.167-9)
 ・野矢『論理学』2-2-2-多重量化(pp.96-99)範囲明示なしのケースだけ。
 ・野矢茂樹『入門!論理学』第6章(pp.218-222)∀x∃y P(x,y).∃y∀x P(x,y).範囲明示なしのケースだけ。
 ・岡田光弘『2008年度論理学I講義ノート』第4章述語論理(pp.29-32)

【文献−数理経済】
 ●De La Fuente, Mathematical Methods and Models for Economists,1.2.a.Properties and Quantifiers(pp.8-9):二重量化。英語での読み下し例。


 


              「集合Sに属しかつyとの関係Pを満たす」xが、議論領域Xのなかに存在する」

 の省略表現。 

・だから、「 xS P(x,y) 」と「x ( xSかつP(x,y) ) 」とは、互いに言い換えてよい。

xS P(x,y)」と書くとき、S変項xの議論領域Xに設定しても構わない。つまり、「xX P(x,y)」という表現もOK
 この「xX P(x,y)」という表現によって、変項xの議論領域Xを読者に明示的に伝達することが可能[新井p.90;松井p.36]。

このように、二項述語・2変数命題関数P(x,y)の頭に「 xS 」をつける(普遍量化)と、 1項述語(1変数命題関数)Q(y) になる。

集合Xが『内包的に定義された集合』のときの解釈 
集合Xが有限集合であるときの解釈 

主要テキストの読み下し例一覧
具体的な使用例 


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「∃+変項∈『内包的に定義された集合』+二項述語」の解釈 

P(x,y)を「変項xの議論領域X, 変項yの議論領域Yとする二項述語・2変数命題関数

 Dを「X部分集合

 とすると、 


 具体例:「xS ( x loves y )」「yT ( x loves y )
 関連事項−二項述語の量化:  xX P(x,y) のケース  
 関連事項−二項述語の二重量化: 「∀xSyT P(x,y)のケース/「∃x∈S∃yT P(x,y)のケース  
 

 議論領域Yとする1変項yの命題関数 「 xD P(x,y) 」 (yとの関係Pを満たす対象が、「変項xの議論領域X部分集合Dのなかに少なくとも一つは存在する) 
   
 は、

 集合Dの内包Qであるとき、 つまり、 D{ x'X | Q(x') } であるとき、 

 議論領域Yとする1変項yの命題関数 「 x ( Q(x) かつ P(x,y) ) 」に言い換えてよい。

・すなわち、

  「 x { x'X | Q(x') }  P(x,y) 」 は 、
  「 x ( Q(x) かつ P(x,y) ) 」 へ

 言い換えてよい。

この場合に使われる略記法 

※なぜ?

 ・定義より
  「 x { x'X | Q(x') }  P(x,y) 」 は、
  「 x ( x { x'X | Q(x') }  かつ  P(x,y) ) 」 の省略表現。

 ・  x { x'X | Q(x') }Q(x)に言い換えてよい()から、
  「 x ( x { x'X | Q(x') }  かつ  P(x,y) ) 」
  は、
  「 x ( Q(x) かつ P(x,y) )
  に言い換えてよい。


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さらなる省略形「∃ 条件式 二項述語」   


P(x,y)を「変項xの議論領域X, 変項yの議論領域Yとする二項述語・2変数命題関数」とした際の、 

 「   xを先頭にした条件式Q(x) P(x,y) 」

    たとえば、 R変項xの議論領域とした際の 「  x>0  P(x,y) 」

 は、     





【文献−数学一般】
 ・中内『ろんりの練習帳』注2.4.8(p.96)略記法。


 ・杉浦『解析入門I』附録2(p.402)




 議論領域Yとする1変項yの命題関数 「 x { x'X | Q(x') }  P(x,y) 」  Q(x)の真理集合に属す任意のxに対して 、yは関係・条件Pを満たす

  上の例では、 x { 'xR |  x'>0  } P(x,y)  「 yとの関係Pを満たす対象が、x'>0」の真理集合のなかに、少なくとも一つは存在する。」

 の省略表現。
 
・さらにいうと、

 P(x,y)を「変項xの議論領域X, 変項yの議論領域Yとする二項述語・2変数命題関数」とした際の
 「 xを先頭にした条件式Q(x)   P(x,y) 」

        たとえば、R変項xの議論領域とした際の「   x>0  P(x,y)

 は、

  議論領域Yとする1変項yの命題関数 「 x ( Q(x) かつ P(x,y) ) 」 

        上記の例では、 x ( x>0 かつ P(x,y) )    

 に言い換えてよい。

   なぜなら、
    ・先述のとおり、
      「 xを先頭にした条件式Q(x)   P(x,y) 」
     は、
      「 x { x'X | Q(x') }  P(x,y) 」 の省略表現。
    ・「 x { x'X | Q(x') }  P(x,y) 」 は「 x ( Q(x) かつ P(x,y) ) 」に言い換えてよい()。



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「∃変項∈有限集合 二項述語」の解釈 

 1変項yの命題関数・一項述語 

 「 xD P(x,y)
  yは、少なくとも一つ以上の『集合Dに属す元』にたいして、関係・条件Pを満たす

 は、

 D有限集合 { d1 , d2 , … , dn } であるとき、

 1変項yの命題関数・一項述語 




※関連
 ∀変項∈有限集合 二項述語 
  


   P(d1,y) または P(d2,y) またはまたは P(dn,y)    「yは、d1と関係Pにありまたはd2と関係Pにありまたはまたはdnと関係Pにある

 に言い換えてよい。
 


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「 ∃+変項+二項述語」に関わる諸用語 

【全称記号・全称量化記号/全称量化子・全称作用素】

・「∃ 変項 2項述語(2変数命題関数)」というかたちのなかの、
 「」は、 
  存在記号  [前原p.4;中内p.94;斎藤p.56;井関p.7;杉浦p.401]
  特称記号  [中内p.94]
  存在量化記号 [斎藤p.57;岡田光弘p.30]
  existential quantifier [斎藤p.57;岡田光弘p.30;De LaFuentep.8]
 などと呼ばれる論理記号

・「∃ 変項 2項述語(2変数命題関数)」というかたちのなかの、
 「変項」という部分は、 
  存在作用素 [前原p.4;松本p.28;中内p.94]   
  特称作用素 [前原p.4;松本p.28;中内p.94]   
  存在量化子 [斎藤p.57] 
  特称量化子 [高崎V-1.1;1.4]
  existential quantifier
 と呼ばれる。
  *岡田章は、記号「∃」そのものを「存在量化子」と呼ぶ(p.252)が、
   どうなのだろう?

【量化】

存在量化子・全称作用素変項」を
  2項述語(2変数命題関数)の前につけて
 「∃ 変項 2項述語」というかたちにする行為を、
 
   存在量化 [野矢 p.213;本橋pp.40-41;]
   
 などと呼ぶ。
 別の文脈で、「《変項》の束縛bound」と呼ぶこともある[→詳細]。

  [岡田光弘p.31;]述語の前に、∀x,∃xをつけること[井関p.26]

      





【スコープ】

・「∃ 変項 2項述語(2変数命題関数)」というかたちのなかで、

 存在量化子・作用素変項」によって量化された

  「2項述語(2変数命題関数)

 の範囲は、

 存在量化子・作用素変項」の

  スコープscope[岡田光弘p.31;松本p.28]
  適用範囲[松本p.28]
  視野
[高崎V-1.5]
  作用域[高崎V-1.5]
  作用範囲[前原1章§8(p.24)]

 などと呼ばれる。
 
※「∃ 変項 2項述語(2変数命題関数)」の後ろに、記号が続いていく場合、
 どこまでが「変項」のスコープなのか、はっきりしなくなることがある。
 そういうときは、
 「変項」のスコープがどこまでかを明示するために、
 「変項」の適用範囲に入っている述語を()で括る。
      





【束縛する/束縛変項/自由変項】

・  x を、x,yの関係・条件P(x,y)の前につける行為を、
 「変項(変数)xを束縛するboundと呼ぶ。[井関p.26] 

・「  x ( P(x,y) ) 」において、

 「x 」のスコープにある 変項x 

  つまり、
   「 x 」によって量化された2項述語(2変数命題関数) 
    P(x,y)    
   のなかの変項x

 は、
  束縛変項 (束縛変数) bound variable
 と呼ばれる。[斎藤p.50;前原1章§7-8][岡田光弘p.31;]
       [本橋2.4(pp.31-34))]

・「 x ( P(x,y) ) 」において、

 「 x」のスコープにあるが、
 「 x 」によって束縛されていない変項y 

  つまり、
   「 x 」によって量化された2項述語(2変数命題関数) 
     P(x,y)    
   のなかの変項y

 は、
 自由変項 (自由変数) free variable
 と呼ばれる。[岡田光弘p.31;井関p.29;前原1章§8(p.24)]  






【文献−数学基礎論】
 ●前原昭二『記号論理入門』第1章§7多変数(pp.20-23);§8自由変数束縛変数(pp.23-26)。
 ・井関清志『集合と論理』§1.2(pp.6-7);§1.5(pp.24-30)。
 ・高崎金久『数理論理学入門V.述語論理の意味論-1.4 量化子の使い方;1.5 変数の出現位置と視野

【文献−分析哲学・論理学】
 ・戸田山『論理学をつくる』7.1.4多重量化(p.167)

【文献−数学一般】
 ●本橋『新しい論理序説』;2.4(pp.31-34):自由変数と束縛変数;3.2(pp.40-43);4(pp.62-83):述語と量化とその読み下し方について豊富な具体例。



 


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「∃xS  P(x,y)」の読み下し例:一覧  

【英語】

"there exists an element x in S such that the pair (x,y) has property P."
             [De La Fuente,p.8]

type1】

・「 ある『Sに属す対象』xについて、P(x,y) 」
            [中谷p.141;本橋p.70] 

・「 少なくともひとつの『Sに属す対象』xに対して、P(x,y) 」
             [斎藤p.56]

type2】

・「 P(x,y)となる『Sに属す対象』xがある 」 [本橋p.70] 

・「 P(x,y)なる『Sに属す対象』xが存在する 」[斎藤p.56]


 関連事項:x P(x,y)の読み / x P(x,y)の読み / xX P(x,y)の読み  
 関連事項−二項述語の二重量化:「∀xy P(x,y)の読み/「∃xy P(x,y)の読み/「∀xy P(x,y)の読み / 「∃xy P(x,y)の読み 
 




【文献】
 ・中谷『論理』6.3A多変数の命題関数の限定命題(p.141)
 ●本橋『新しい論理序説』4.1(p.64):
 ●齋藤『日本語から記号論理へ』2章§2全称量化子(pp.48-55))
 ・戸田山『論理学をつくる』7.1.4多重量化(pp.167-9)
 ●De La Fuente, Mathematical Methods and Models for Economists,1.2.a.Properties and Quantifiers(pp.8-9):二重量化。英語での読み下し例


 


※さらに量化すると・・・ 「∃xS ∃yT P(x,y)の読み/「∀xS ∃yT P(x,y)の読み 


2項述語(2変数命題関数)P(x,y) は、
  「x,yPの関係にある」[前原p.20;岡田光弘2008定義4.1脚注(p.30)]
  「x,yは条件Pを満たす」[前原p.21?]
 と読むのだったから、
 これに従うと、
 「 xS P(x,y) 」
 は、 
 「 ある『Sに属す対象』xについて、 x,yPの関係にある/条件Pを満たす 」
 「 少なくともひとつの『Sに属す対象』xに対して、 x,yPの関係にある/条件Pを満たす 」
 「 yとの関係・条件Pを満たすSに属す対象』xがある 」 [本橋p.70] 
 「 yとの関係・条件Pを満たすSに属す対象』xが存在する 」[斎藤p.56]

 と読み下せる。
 


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「∃+変項∈範囲+二項述語」の具体例 


xA ( xM ) / xA ( x<m )
xS ( x loves y )  /  ∃yY ( x loves y ) 




【例】
 ・以下、
  Choreo (x,y)は
  「xの振り付けは、yによって考案される」という2項述語(2変数命題関数)
  を表すとする。
 ・「∃x Perfume  Choreo (x,y) 」は、…
 







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