定義:実数の集合の下界 lower bound ・下に有界 bounded from below    



 →【はじめに読む定義】
 →【厳密な定義−予備知識なしに】
 →【論理にこだわって…】


【はじめに読む定義】


・「下に有界でない実数の集合》」とは、

  「属してる元は、すべて、この実数以上」

 と言えない《実数の集合》。


・「下に有界な《実数の集合》」とは、

  「属してる元は、すべて、この実数以上」

 と言える《実数の集合》。
 
 《この実数》を、その《実数の集合》の下界と呼ぶ。

 
* 下界が存在する「実数の集合」(下に有界な「実数の集合」)もあれば、
  下界が存在しない「実数の集合」(下に有界でない「実数の集合」)もある。

  下界が存在する「実数の集合」(下に有界数列)に限ってみても、
  その下界は、
  複数存在するかもしれないし、
  無数に存在するかもしれない。




【類概念・関連概念】

適用対象を一般化:順序集合の部分集合が「下に有界」であることの定義/順序集合の部分集合の下界の定義 
適用対象を具体化:下に有界な数列/数列の下界/下に有界な1変数関数 
概念を複雑化  :下限inf/有界
双対概念上界・上に有界 









[文献]
 ・杉浦『解析入門I』§1実数[2]順序-定義1(pp.5-6)
 ・高木『解析概論』§3.数の集合・上限・下限(pp.4-5)
 ・笠原『微分積分学』1.1実数(p.5)
 ・小平『解析入門I』§1.5-a上限下限(pp.36-7.)
 ・ルディン『現代解析学』1.33(p.12)
 ・小林昭七『微分積分読本:1変数』 1章4-[上界下界上限下限](p.8):数直線上に図解
 ・神谷浦井『経済学のための数学入門』定義2.1.2(p.59):順序集合全般において。


 ・吹田・新保『理工系の微分積分学』(p.3)


→[下に有界な「実数の集合」冒頭]
→[トピック一覧:実数における順序概念]  
総目次 

【厳密な定義】


・「実数mは、《実数の集合》A下界lower boundである」

 とは、

  実数mが、
    「どの『Aに属す実数』を選んでxに代入しても、mx が成り立つ」
       xA ( mx )   
  を満たす

 ということ。


・「《実数の集合》Aは、下に有界bounded from belowである」とは、

 「《実数の集合》A下界lower bound」が最低一個は存在する

 ということ、

 つまり、

 | この実数mに代入すると、
 |  「どの『Aに属す実数』を選んでxに代入しても、mx が成り立つ」 
 |     xA ( mx )
 | が真になる

 と言える《この実数》が最低一個は存在する

       mR xA ( mx )  

 ということ。





【類概念・関連概念】

適用対象を一般化:順序集合の部分集合が「下に有界」であることの定義/順序集合の部分集合の下界の定義 
適用対象を具体化:下に有界な数列/数列の下界/下に有界な1変数関数 
概念を複雑化  :下限inf/有界
双対概念上界・上に有界 









実数体は、順序集合の特殊例(実数体の定義を見よ)。

上記の、実数体の部分集合についての「下界」「下に有界」の定義は、
一般の順序集合(X,≦)における「下界」「下に有界」の定義を、
   そのまま、(R,≦)に適用したもの。









・「実数mは、《実数の集合》A下界lower boundでない」

 とは、

  集合Aに「mより小さな実数」が最低一個は属している 
                xA ( x<m )   

 ということ。


・「《実数の集合》Aは、下に有界bounded from belowでない」とは、

 どの実数mに代入しても、
   「 集合Aに『mより小さな実数』が最低一個は属している」 
 が真になる

   mRx (  x<m ) 

 ということ。




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【論理にこだわって…】


 





【設定】


 R
: 実数体  
 ≦: 実数体の定義によって、
    実数体R上に定められている順序関係(特に全順序となるよう定められている)。
    もちろん、実数体R順序""とを組み合わせた(R,)は、順序集合
    (実数体の定義によって、(R,)は、特に、全順序集合となるよう定められている)


 変数 m : 実数を代入。 議論領域は、R。 
 変項A: 「実数の集合」すなわち「R部分集合」を代入。ただし、空集合は除く。
     議論領域は、あらゆる『実数の集合』をあつめた集合」(Rベキ集合)から空集合を除いた範囲
           すなわち、 ドイツ大文字B(R)φ
   実数の集合。Rの部分集合。
 変数 x : 集合A属す実数を代入。議論領域は集合A






  

【下界】


 変項A,mを組み込んだ2項述語・2変項命題関数

  「mは、A下界lower boundである」
      (A議論領域: ドイツ大文字B(R)φ  すなわち、あらゆる『実数の集合』をあつめた集合」(Rベキ集合)から空集合を除いた範囲)
      (m議論領域R )  
 
 は、

   xA ( mx )    …()  〔読み下し例〕  A,mが「任意(すべて)のA属す実数xに対して mx」を満たす。

 で定義される。 
 
 ()は、
 変項 x,m を組み込んだ2項述語・2変項命題関数 「 mx 」の変項 x を、xA で束縛したもの。

 変項は、
  ・「 mx 」のなかで、 xA  で束縛されずに残ったm
  ・xA  のなかのA 
 の二つだから、
 2項述語・2変項命題関数となる。


【下に有界】


 変項Aだけの1項述語・1変項命題関数

  「Aは、(Rのなかで)下に有界bounded from below
     (A議論領域: ドイツ大文字B(R)φ  Rベキ集合から空集合を除いた範囲) 
 
 は、

   mR xA ( mx )   …() 
 
   〔読み下し例〕
    実数の集合Aに対して、ある実数mが存在して、
    A,mが「任意(すべて)のA属す実数xに対して mx 」を、満たす。
 で定義される。


 ()は、
 変項 x,m を組み込んだ2項述語・2変項命題関数 「 mx 」の変項 x,m を、
 mR xA  で束縛したもの。

 「 mx 」のなかの変項 x,m はどちらも束縛されてしまったが、
 mR xA  のなかのA変項であるから、
 1項述語・1変項命題関数









【類概念・関連概念】

適用対象を一般化:順序集合の部分集合が「下に有界」であることの定義/順序集合の部分集合の下界の定義 
適用対象を具体化:下に有界な数列/数列の下界/下に有界な1変数関数 
概念を複雑化  :下限inf/有界
双対概念上界・上に有界 









実数体は、順序集合の特殊例(実数体の定義を見よ)。

上記の、実数体の部分集合についての「下界」「下に有界」の定義は、
一般の順序集合(X,≦)における「下界」「下に有界」の定義を、
   そのまま、(R,≦)に適用したもの。







【下界でない】


実数mが、「(Rのなかでの)集合A下界」ではないとは、
 xm を満たすxAが存在するということ、

 つまり、

 xA ( xm ) を満たすということ。

 なぜ?

  全称記号の否定だから、
    ¬ xA ( mx )  は、 xA ( ¬mx ) ) であり、
    ¬mx ) は xm だから、
    xA ( ¬mx ) ) は、 xA ( xm ) である。 

【下に有界でない】


・集合Aが「(Rのなかで)下に有界」ではないとは、
  「(Rのなかでの)集合A下界」が存在しないということ、

 つまり、

  いかなる実数mにたいしても、あるxAが存在して、xmを満たすこと mRx (  xm )

 にほかならない。

 なぜ?

  「集合Aが(Rのなかで)下に有界ではない」とは 
    ¬mR xA ( mx ) )
  であり、
  これは、mR   ¬xA ( mx ) )    と書きかえられ(∵存在命題の否定)、 
  さらに、これは、mRx ( ¬ ( mx ) ) と書きかえられ(∵全称命題の否定)、
  そして、これは、mRx (  xm ) と書きかえられるから。


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