実2次元数ベクトル空間R2上の一次変換の行列表示と標準化  ―  トピック一覧 
・定理:標準基底に関する一次変換の行列表現/一次変換の行列と基本ベクトルのうつしかたの関連 
・定理:任意の基底に関する一次変換の行列表現/一次変換の行列表示の標準形は得られない/一次変換の合成写像と行列

関連ページ:
 ・R2上の一次変換と行列の関係について:R2上の一次変換の定義/基底変換と一次変換の行列表示/  
 ・一般化:一次写像「f:RnRm」の行列表示と標準化/一般の実ベクトル空間のあいだの一次写像の行列表示と標準化/基底の変換と一次写像と行列 
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定理:実2次元数ベクトル空間上の一次変換の、標準基底に関する行列表示

[設定]

この定理は、以下の舞台設定上で成り立つ。
R実数体(実数をすべて集めた集合)    
R2実2次元数ベクトル空間。 
  すなわち、R2R×R{ ( x,y )xRかつyR }に、
        ベクトルの加法スカラー乗法を定義したもの。 
  ただし、R2に属すすべての実2次元数ベクトルは、
             2次元縦ベクトルの形式で表されているものとする。
f :2変数2値ベクトル値関数

[文献−線型代数]
・志賀『線形代数30講』6講(pp.37-8);7講(pp.42-5):R2上の一次変換のケース;10講(p.63);
・佐武『線形代数学』T§4(p.20)

[文献−解析学/数理経済]
・松坂『解析入門4』15.1-E命題11(p.10);F注(p.13); 18.1-A (pp.84-5);標準基底に関する表現行列
・神谷浦井『経済学のための数学入門』§5.2.1例5.2.1(p.165) 
・戸田山田『計量経済学の基礎統計的手法の理論とプログラミング』2.5.1(pp.84-5)
[本論1] 以下の命題Pと、命題Q1〜Q4は、同値
つまり、
  命題P命題Q1命題Q2命題Q3命題Q4

命題P2変数2値ベクトル値関数 (x',y')f(x,y)   
あるいは、実2次元ベクトルを縦に書いた  
( x' ) = f 
( x )
y' y
      は、「R2上の一次変換」の定義を満たす。






[PQの証明]
  [文献]志賀『線形代数30講』7講(p.43);戸田山田『計量経済学の基礎』2.5.1(p.84)
準備1:任意(x,y)R2 は、(x,y)x(1,0)+y(0,1) と表せる。()
準備2:2変数2値ベクトル値関数fによるは、
   どれも、実2次元数ベクトル
   そこで、
      《fによる(1,0)f(1,0) を、 ( a11,a21) とおく。   
   《fによる(0,1)f(0,1) を、 ( a12,a22) とおく。
   なお、2変数2値ベクトル値関数は、写像の下位類型であり、
   また、写像は「定義域の元に対応する値は必ず一つ」と定義されたので、
     ここのf(1,0)=( a11,a21), f(0,1)=( a12,a22) も、一意的である。   
本題: 命題P2変数2値ベクトル値関数fは『R2上の一次変換』の定義を満たす」のもとで、
   以下が成り立つ。
   任意(x,y)R2 について、
     f(x,y)f( x(1,0)+y(0,1) )     ∵準備1
        =f( x(1,0) ) + f( y(0,1) ) ∵命題Pのもとで、f一次変換の要件1を満たす。
        =xf( (1,0) ) + yf( (0,1) ) ∵命題Pのもとで、f一次変換の要件2を満たす。
        =x( a11,a21) + y( a12,a22)  ∵準備2。( a11,a21),( a12,a22)の一意性に注意。
        =( a11x,a21x)+( a12y,a22y) ∵実2次元数ベクトル空間に定義されたスカラー乗法
        =( a11x + a12y , a21x + a22y ) ∵実2次元数ベクトル空間に定義されたベクトル和
   これは、命題Q1に他ならない。

[QPの証明] [文献] 志賀『線形代数30講』6講(p.38);戸田山田『計量経済学の基礎』2.5.1(pp.84-5) 
 命題Q1が成り立ち、
  2変数2値ベクトル値関数f(x,y) に対して、実数a11 ,a12 ,a21 ,a22 が一意的に存在し、
   f(x,y)=( a11xa12y , a21xa22y )
  と表されるとする。
  すると、
  ・任意(xu,yu),(xv,yv)R2  について、
   f(xu,yu)+ f(xv,yv)=( a11xua12yu,a21xua22yu ) + ( a11xva12yv,a21xva22yv )  ∵命題Q1
             =( a11xua12yua11xva12yv ,  a21xua22yu a21xva22yv ) 
                          ∵実2次元数ベクトル空間に定義されたベクトル和 
             =( a11(xuxv)+a12(yuyv) ,  a21(xuxv)+a22(yuyv) ) ∵実数体の分配則
            =f( (xuxv),(yuyv) )          ∵命題Q1          
  ・任意aR,(x,y)R2 について、
        af(x,y)=a( a11xa12y , a21xa22y )   ∵命題Q1
            =(  a(a11xa12y), a(a21xa22y) ) ∵実2次元数ベクトル空間に定義されたスカラー倍 
            =(  a11axa12ay, a21axa22ay )  ∵実数体の分配則 
            =f(ax,ay)            ∵命題Q1 
  が成り立つ。
  この二点は一次変換の要件1,2に他ならないので、
  命題Q1が成り立つならば
  命題P2変数2値ベクトル値関数fは『R2上の一次変換』の定義を満たす」が成り立つ。

命題Q1: 2変数2値ベクトル値関数 (x',y')f(x,y) に対して、
     実数a11 ,a12 ,a21 ,a22 が一意的に存在し、
     (x',y')f(x,y) は、実数a11 ,a12 ,a21 ,a22 を用いた次式で表される。 
           (x',y')f(x,y) =( a11xa12y , a21xa22y )

命題Q2: 2変数2値ベクトル値関数 (x',y')f(x,y) に対して、
     実数a11 ,a12 ,a21 ,a22 が一意的に存在し、
      2変数2値ベクトル値関数 (x',y')f(x,y)  を、
       x'f1(x,y)  
       y'f2(x,y)  
      という2 変数関数f1,f2の 組として表すとき、
      これらの2 変数関数は、実数a11 ,a12 ,a21 ,a22 を用いて、
         x'f1(x,y) =a11xa12y 
         y'f2(x,y) = a21xa22y  
      と表される。

命題Q3:
2変数2値ベクトル値関数  
( x' ) = f 
( x )
y' y
     に対して、    
2次正方行列 
A
( a11
a12
)
a21
a22
     が一意的に存在し、
       
f は、Aの 行列積を用いて、

( x' )
=  f
(
x )

( a11 a12 )(
x )
  

y' y a21 a22 y
  
    と表される。 
     (この行列積を 計算してみると、命題Q3は命題Q1,Q2に一致する。)
命題Q4:v,w実2次元縦ベクトルf2変数2値ベクトル値関数とする。
    2変数2値ベクトル値関数 wf (v) に対して、
     2次正方行列Aが 一意的に存在して、       
     2変数2値ベクトル値関数wf(v)  は、2次正方行列Aを 用いて、
        wf(v) =Av 
      と表される。
       *A2次正方 行列v実2次 元縦ベクトル(つまり、(2,1)型 実行列)だから、
        行列積の 定義により、(Av)は、
         実2次元数ベクトル(つま り、(2,1)型実行列)となる。


[本論2]

すると、
任意の2次正方行列Aに対して、 「f(v) =Av」 で定義される一次変換fが 一意的に存在し、
また逆に、
任意の一次変換fに対 して、(vR2) ( f(v)=(Av) )を満たす2次正方行列Aが 一意的に存在する
ことになる。
つまり、
(vR2) ( f(v)=(Av) ) という関係によって、
2次正方行列Aを一つ 決めれば、一次変換fを 一意的に定められ、
一次変換fを 一つ決めれば、2次正方行列Aを 一意的に定められる、
という、
一意的な対応関係が、2次正方行列一次変換とのあいだには存在す る。


[本論3] ・上記の2次正方行列Aを、
  「一次変換fに対応する行列」、「一次変換fの行列」、
 厳密には、
  「R2標準基底{ e1, e2 }に関する一次変換fの表現行列
 と呼ぶ。
・上記の一次変換fを、
  「Aによって定義される一次変換
 と呼ぶ。
・「R2標準基底{ e1, e2}に関する一次変換fの表現行列」が、
 任意基底に関する一次変換fの表現行列と、
 いかなる関係にあるかは、
 基底変換公式を見よ。  
[関連項目]
一般化― 基底の一般化:
 ・任意基底に関する一次変換f:R2R2の行列表示 
一般化― R2の一般化:
 ・標準基底に関する一次変換f:RnRnの行列表示    
 ・標準基底に関する一次写像f:RnRmの行列表示 
発展事項:一次変換の行列表示の標準形/基底変換の行列  
図解
[図解:2次正方行列によって定義される一次変換の挙動]
2次正方行列
( )
によって定義される一次変換fの 挙動は、x-y平面上、以下のように図示できる。
図中の「矢印の終点」が、「一次変 換fによって『矢印の始点』をうつした」と なっている。

R2上の一次変換の挙動の図示


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定理:行列によって定義される一次変換は、基本ベクトルをどのように写すか

設定

この定理は、以下の舞台設定上で成り立つ。
R実数体(実数をすべて集めた集合)  
A2次正方行列 
R2実2次元数ベクトル空間。 
  すなわち、R2R×R{ ( v1, v2 )v1Rかつv2R }に、
        ベクトルの加法スカラー乗法を定義したもの。 
  ただし、R2に属すすべての実2次元数ベクトルは、
        2次元縦ベクトルの形式で表されているものとする。
v実2次元縦ベクトル

[文献−線型代数]
・永田『理系のための線形代数の基礎』1.4行列と一次写像:注意1(p.29);
・志賀『線形代数30講』7講:R2上の一次変換のケース(p.44)

[文献−解析学]
・松坂『解析入門4』15.1-E命題11 (p.10)

本論 2次正方行列
 
A
( a11
a12
)
a21
a22
によって定義された一次変換を、f:R2R2で 表すと、  
R2基本ベクトルe1, e2fに よる f(e1) , f(e2)  R2は、
  

f(e1)=
( a11
)
a21



f(e2)=
( a12
)
a22

となる。
 
証明 なぜ?→行列と基本ベクトルとの積
 

→[トピック一覧:実2次元数ベクトル空間R2上の一次変換の表現行列]
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定理:任意の基底に関する一次変換の行列表示・行列表現

設定

この定理は、以下の舞台設定上で成り立つ。
R実数体(実数をすべて集めた集合)  
R2実2次元数ベクトル空間。 
  すなわち、R2R×R{ ( v1, v2 )v1Rかつv2R }に、
        ベクトルの加法スカラー乗法を定義したもの。 
  ただし、R2に属すすべての実2次元数ベクトルは、
        2次元縦ベクトルの形式で表されているものとする。
{ p1, p2 }R2基底をなす実2次元数ベクトルの集合


[文献]
・松坂『解析入門4』15.1-E命題11(p.10);F注(p.13); 18.1-A (pp.84-5);
・神谷浦井『経済学のための数学入門』§5.2.1例5.2.1(p.165) 

[関連項目]
具体化:
 ・標準基底に関する一次変換f:R2R2の行列表示
一般化:
 ・任意基底に関する一次変換f:RnRnの行列表示 
 ・任意基底に関する一次写像f:RnRmの行列表示
発展事項:
 ・一次変換の行列表示の標準形
 ・基底変換の行列
 ・基底変換公式


本論1 R2基底{ p1, p2 }と、一次変換f:R2R2」にたいして、 
  f(p1)=a11 p1a21 p2
  f(p2)=a12 p1a22 p2
を満たす2次正方行列  
 
A
( a11
a12
)
a21
a22
が一意的に存在する。  


本論2 R2基底{ p1, p2 }と、
2次正方行列  
 
A
( a11
a12
)
a21
a22
にたいして、
  f(p1)=a11 p1a21 p2
  f(p2)=a12 p1a22 p2     
を満たす一次変換f:R2R2」がきまる。   
   

証明 ※なぜ?→証明

本論3 ・上記の2次正方行列Aを、 
  基底{ p1, p2 }に関する一次変換fの行列表示、  
  基底{ p1, p2 }に関する一次変換fの表現行列、  
  基底{ p1, p2 }を定めたとき一次変換fに対応する行列  
 などと呼ぶ。
基底{ p1, p2 }に関する一次変換fの表現行列が、
 標準基底に関する一次変換fの表現行列と、
 いかなる関係にあるかは、
 基底変換公式を見よ。
 
発展事項:一次変換の行列表示の標準化の問題/基底変換の行列/基底変換公式 
 

要するに、

「『Rn基底』α={ p1, p2, …, pn }, 『Rm基底』β={q1, q2, …, qm}に関する一次写像fRnRmの表現行列
   
のうち、
  [条件1] n=m=2であること、
  [条件2] 『Rm基底』β={ q1, q2, …, qm }が、α={ p1, p2, …, pn  }であること
を満たす特殊例が、
基底{ p1, p2 }に関する『一次変換fR2R2』の表現行列」
に他ならない。  

本論4 [一次変換y=f (x)の行列表現]
実2次元数ベクトル空間 R2 に属す任意実2次元数ベクトルxは、
 『R2基底』α={ p1, p2 }一次結合として一意的に表せる(∵基底の定義)。
 したがって、
  任意xR2に対して、ある実数x1,x2 が一意に存在して
    xx1p1x2p2 
  を満たす。
 この実数の組(x1,x2) の縦ベクトルを、
  xの《R2基底α={ p1, p2 }に関する座標ベクトルと呼び、
   [x]α 
  と表す。
  また、
  任意yRnに対しても、ある実数y1,y2が一意に存在して
    yy1p1y2p2 
  を満たす。
 この実数の組(y1,y2)の縦ベクトルを、
  yの《R2基底α={ p1, p2 }に関する座標ベクトルと呼び、
   [y]α 
  と表す。
・すると、一次変換y=f (x)は、
   xの《R2基底α={ p1, p2 }に関する座標ベクトル [x]α 
   yR2基底α={ p1, p2 }に関する座標ベクトル[y]α 
   《R2基底α={ p1, p2 }》に関する一次変換fの表現行列A
 を用いて、
  [y]αA[x]α 
 と表せる。
[文献]
・斎藤『線形代数入門』4章§5(p.117);

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定理:一次変換の行列表示の標準形は得られない

設定

この定理は、以下の舞台設定上で成り立つ。
R実数体(実数をすべて集めた集合)  
R2実2次元数ベクトル空間。 
  すなわち、R2R×R{ ( v1, v2 )v1Rかつv2R }に、
        ベクトルの加法スカラー乗法を定義したもの。 
  ただし、R2に属すすべての実2次元数ベクトルは、
        2次元縦ベクトルの形式で表されているものとする。
f:R2R2」:一次変換 
rank f一次変換 f階数

[文献−線型代数]
・志賀『線形代数30講』26講(pp.166-167);
・斎藤『線形代数入門』4章§5 (p.117);
本論1 「任意の一次変換f:R2R2』には、
   ・rank f =2 ならば、『f(p1) p1 かつ f(p2) p2』を満たす『R2基底{ p1, p2 }  が存在する
   ・rank f =1 ならば、『f(p1) p1 かつ f(p2)』を満たす『R2基底{ p1, p2 }  が存在する」
とはいえない
・確かに、2次単位行列によって定義された一次変換のように、
     『f(e1) e1 かつ f(e2) e2』を満たす『R2基底{ e1 e2 }  を有す一次変換もある。
・しかし、「どの一次変換f:R2R2』でも、このような条件を満たす基底を有す」とはいえない。 
証明  [反例を示す]
本論2 したがって、
「任意の一次変換f:R2R2』にたいして、
   ある『R2基底{ p1, p2 } をとると、
    これらの基底に関する一次変換fの行列表示を、

     ・rank f =2 ならば

D(2,2,2)=
( 1
0
)
0
1
     ・rank f =1 ならば

D(2,2,1)=
( 1
0
)
0
0
 とできる」
とはいえない

Cf 
ここで利用されている事項:基底に関する一次変換fの行列表示 

一次写像一般では、一次写像の行列表示の標準形が得られるのに、
 なぜ、ここで、一次変換の行列表示の標準形が得られなくなるのか?
 [・志賀『線形代数30講』20講Teatime(p.131);26講(pp.164-167);
   斎藤『線形代数入門』4章§5 (p.117);]

 

   
・確かに、2次単位行列によって定義された一次変換のように、
   『R2基底{ e1 e2 } をとると、
   この基底に関する一次変換fの行列表示を、

D(2,2,2)
( 1
0
)
0
1
   とできる一次変換もある。
・しかし、「どの一次変換f:R2R2』でも、このような条件を満たす基底を有す」とはいえない。
 
本論3 R2標準基底{ e1, e2}に関する一次変換fの行列表示Aにたいして、
ある実行列Pが存在し、


     ・rank f =2 ならば

P-1AP = D(2,2,2)=
( 1
0
)
0
1
     ・rank f =1 ならば


P-1AP = D(2,2,1)=
( 1
0
)
0
0

 とできる」
を満たす
とはいえない
一次変換の行列表示のケースとの違い: 
ここで利用されている事項:
   基底に関する一次変換fの行列表示/基底変換の行列/基底変換公式 
 
証明  
本論4

ところが、
ある種の一次変換f:R2R2』には、
   f (p1)=λ1 p1, f (p2)=λ2 p2 (λ12fの固有値)
を満たす『R2基底{ p1, p2 }が存在する。

したがって、
ある種の一次変換f:R2R2』に対して、
ある『R2基底{ p1, p2 }をとると、
これらの基底に関する一次変換fの行列表示は、

diag12)=
( λ1 0
)
0
λ2

となる。
だから、
ある種の一次変換f:R2R2』については、
R2標準基底{ e1, e2} に関する一次変換fの行列表示Aにたいして、
ある実行列Pが存在し、
 P−1AP=diag12) 
を満たす。
そこで、一次変換では、
標準化にかわって、このようなかたちに変形することが課題として浮上する。
一次変換の行列表示を、このようなかたちにできることを対角化可能といい、
一次変換の行列表示対角化可能となる条件を求める問題は、固有値問題と呼ばれる。
 
証明  

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定理:実行列との乗法による一次写像の合成写像

設定

この定理は、以下の舞台設定上で成り立つ。
R実数体(実数をすべて集めた集合)  
A2次正方行列 
B2次正方行列 
v実2次元縦ベクトル
R2実2次元数ベクトル空間。 
  すなわち、R2R×R{ ( v1, v2 )v1Rかつv2R }に、
        ベクトルの加法スカラー乗法を定義したもの。 
  ただし、R2に属すすべての実2次元数ベクトルは、
        2次元縦ベクトルの形式で表されているものとする。
AR2R2」:2次正方行列A実2次元縦ベクトルとの乗法による
         実2次元数ベクトル空間R2上の一次変換 
BR2R2」:2次正方行列B実2次元縦ベクトルとの乗法による
         実2次元数ベクトル空間R2上の一次変換


[文献−線型代数]
 永田『理系のための線形代数の基礎』(p.26-7);
 斎藤『線形代数入門』2章§3(p.45);
 佐武『線形代数学』T§4(p.20)
[文献−解析学]
 松坂『解析入門4』15.1-E命題12 (p.11);
本論 一次変換AR2R2と、一次変換BR2R2 の合成写像BAは、  
行列積BA[2次正方行列]と実2次元縦ベクトルとの乗法で表せる。
 
解説 なぜなら、
合成写像BAとは、
実2次元縦ベクトル   v
( v1
)
v2

  に対して、
  B(Av) 
とすること。
ところが、結合則より、
  B(Av)=(BA)v 
 

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(reference)
日本数学会編集『岩波数学辞典(第三版)』 岩波書店、1985年、項目83行列L線形写像(p.222)
線形代数のテキスト
志賀浩二『数学30講シリーズ:線形代数30講』朝倉書店、1988年、7講線形写像と行列(pp.42-7)、10講R3上の線形写像(pp.62-7)、17講線形写像(pp.107-112)。
ホフマン・クンツェ『線形代数学I』培風館、1976年、3.4行列による一次変換の表現(p.89)。
永田雅宜『理系のための線形代数の基礎』紀伊国屋書店、1986年、1.4行列と一次写像(pp.23-31)。
藤原毅夫『理工系の基礎数学2:線形代数』岩波書店、1996年、4.3線形写像の階数と行列の階数(p.102)。
斎藤正彦『線形代数入門』東京大学出版会、1966年、第2章§3行列と線形写像(pp.44-5):実線形空間・複素線形空間のみ;。
佐武一郎『線形代数学(第44版)』裳華房、1987年、Tベクトルと行列の演算§4一次写像(pp.17-19)。
代数学のテキスト
酒井文雄『共立講座21世紀の数学8:環と体の理論』共立出版、1997年、1.6ベクトル空間(p.22)。:数ページしか触れていないが、逆に、一般の線形空間の理論の骨組みだけを浮かびあがってくるので、何が重要事項なのかを見極める上で便利。
数理経済学のテキスト
神谷和也・浦井憲『経済学のための数学入門』東京大学出版会、1996年、§5.2.1線形写像の行列表現(p.165)。
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