実2次元数ベクトル空間R2上の一次変換の定義  ―  トピック一覧 
・定義:一次変換・線形変換・一次作用素・線形作用素/Image/Kernel/階数rank/退化次数nullity/可逆な一次変換・逆変換/零写像 
・定理:零写像は一次写像 

関連ページ:R2上の一次変換の行列表示
一般化:Rn上の一次変換/実ベクトル空間上の一次変換//2変数2値ベクトル値関数

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定義:実2次元数ベクトル空間R2上の一次変換・線形変換linear transformation 一次作用素・線形作用素

定義

[一次写像の概念を用いた定義]
 実2次元数ベクトル空間R2上の一次変換・線形変換とは、
 実2次元数ベクトル空間R2からR2自身への一次写像f:R2R2 のことをいう。



[一次写像の意味に遡る定義]
 「R2上の一次変換・線形変換」とは、
   2変数2値ベクトル値関数f:R2R2 ( (x',y')f(x,y)というかたちをとる )
 であって、
     (つまり、「実2次元数ベクトル空間R2から実2次元数ベクトル空間R2への写像」 f:R2R2であって、)
 次の二要件を満たすもののこと。
 要件1:2変数2値ベクトル値関数f:R2R2ベクトル和を保存すること。
     つまり、
      ・任意の実2次元数ベクトルの(R2で定義された)の「2変数2値ベクトル値関数fR2に写した
     と、  
      ・それらの実2次元数ベクトルの「2変数2値ベクトル値関数fR2に写した」どおしの(R2で定義された)
     とが、
     一致すること。
       (uR2) (vR2) ( f(uv)=f(u)f(v) )
     すなわち 
        ((xu,yu)R2) ((xv,yv)R2) ( f(xu+xv,yu+yv)=f(xu,yu)f(xv,yv) )
 要件2: 2変数2値ベクトル値関数f:R2R2スカラー倍を保存すること。
     つまり、
       ・「任意の実2次元数ベクトル」の任意の実数(R)による(R2で定義された)スカラー倍を、
                          「2変数2値ベクトル値関数fによってR2に写した
      と、  
      ・その実2次元数ベクトルの「2変数2値ベクトル値関数fR2に写した」の
                     任意の実数(R)による(R2で定義された) スカラー倍
      とが、
     一致すること。
      (vR2) (aR) ( f(av)= a f(v) )  
       すなわち、
       ((x,y)R2) (aR) (f (ax, ay)= a f ( x,y ) ) 


[図例]
 実2次元数ベクトル(x,y)に対して、
 「(x,y)を、原点を中心に反時計回りに90度回転移動させた先」を表す実2次元数ベクトル(x',y')として返す
 2変数2値ベクトル値関数f は、
 「R2上の一次変換・線形変換」定義の2要件を満たす。
 ・要件1を満たすこと、
  すなわち、
  「実2次元数ベクトル u,v」のfによる f(uv) と、
  「実2次元数ベクトルufによる」との「実2次元数ベクトルvfによる」との f(u)f(v) とが、
  どんなu,vに関しても、一致することは、
  下図をいじることで、わかる。
      
 

[図]
 u( , ) ,v( , ) とした場合の、
   ・ uv 
   ・ 「u,v,uvを原点 を中心に90度回転移動させた先」f(u),f(v),f(uv)  を  
                    

一次変換の例



左図から、
どんな風に、u,vをいじっても、
uvを 原点を中心に90度回転移動させた先」
 f(uv) 
は、
  「uを原点を中心に90度回転移動させた先」f(u) 
  と
  「vを原点を中心に90度回転移動させた先」f(v) 
  と の
   
   f(u)f(v) 
に、一致することがわかる。

 ・要件2を満たすこと、
  すなわち、
  「実2次元数ベクトルv実数kkvfによる f(kv) と、
  「実2次元数ベクトルvfによる」の実数k k f(v) とが、
  どんなk,vに関しても、一致することは、
  下図をいじることで、わかる。
      
 

[図]
 k= , v( , ) とした場合の、
   ・ kv 
   ・ 「v,kvを 原点 を中心に90度回転移動させた先」f(v),f(kv)  を  
                  

一次変換の例



左図から、
どんな風に、k,vをいじっても、
kvを 原点を中心に90度回転移動させた先」
  f(kv)
は、
vを原点を中心に90度回転移動させた先」f(v)実数k
  k f(v) 
に、一致することがわかる。




実2次元数ベクトル空間R2上の一次変換・線形変換は、どれも、
             f(x,y) =( a11xa12y , a21xa22y )
 というかたちで表される。(→一次変換の行列表示
 実2次元縦ベクトルv2次正方行列Aを用いれば、
 実2次元数ベクトル空間R2上の一次変換・線形変換は、どれも、
             f(v) =Av 
 というかたちで表される。(→一次変換の行列表示
 だから、一次変換の分類・操作などが論じられる際には、
 それに対応する2次正方行列の分類・操作に思いをめぐらせるのが、
 肝要。

[文献]
・佐武『線形代数学』T§4(p.17)
・志賀『線形代数30講
   ・6講:R2からR2への線形写像・その図式化(pp.37-8)
   ・10講:R3からR2への線形写像(p.63)
   ・12講:R3からR2への線形写像(p.76)
・志賀『固有値問題30講』1講 R2からR2の線形写像・その図式化(pp.3-7)
一次変換の諸属性:Image,Kernel,階数rank,退化次数nullity 
一般化:Rn上の一次変換/実ベクトル空間上の一次変換 
一般化:2変数2値ベクトル値関数 
関連事項:一次変換の行列表示/一次変換の固有値と固有ベクトル 

 

 


設定


上記の一次写像の定義は、以下の舞台設定上で、なされる。
R実数体(実数をすべて集めた集合) 
R2実2次元数ベクトル空間  
実2次元数ベクトル空間R2において定義されているベクトルの加法 
実数に続けて実2次元数ベクトルを並べて書いたもの:実2次元数ベクトル空間R2において定義されているスカラー乗法
 


→[トピック一覧:R2上の一次変換‐定義]
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定義:実2次元数ベクトル空間R2上の一次変換の像Image 像空間

設定

R実数体(実数をすべて集めた集合) 
R2実2次元数ベクトル空間 
f:R2R2実2次元数ベクトル空間R2上の一次変換 

[文献]

・佐武『線形代数学』V§4(p.103)
・佐和隆光『回帰分析』2.2.3線形写像(p.27)

一般化:実ベクトル空間のあいだの一次写像の像   

定義

一次変換f:R2R2Imageとは、定義域R2全体のfによる像  
  { f (v) | vR2 }
のこと。
つまり、R2に属すあらゆる実2次元数ベクトルfによる像をあつめた集合を、fの像と呼ぶ。 

なお、
一次変換fの行列Aであるならば、fの像は、{ Av | vR2 }と表される。

記号

一次変換fの像を、Image f , Im f などで表す。


意義


写像f:R2R2 という概念は、
 定義域R2全体のfによる像が、終集合R2と必ずしも一致しなくてもよいものとして
定義されていた。(両者が一致する写像は、特に、全射と呼ばれる)
一次変換f:R2R2の定義は、
写像f:R2R2の概念に、ベクトル和保存・スカラー倍保存の演算則を付け加えただけのものだから、
一次変換f:R2R2定義も、定義域R2全体のfによる像が、終集合R2と一致することを要求していない。
つまり、一次変換f:R2R2には、定義域R2全体のfによる像と終集合R2とが一致しないものが多く含まれている。
すると、終集合R2とは別に、定義域R2全体のfによる像を検討すべき機会が多々でてくる。
そこで「定義域R2全体のfによる像」の略称・記号として、「fの像」「Im f 」が用意されることになる。


性質

一次変換f:R2R2にたいして、
Image f は、R2部分ベクトル空間となる。
※なぜ?→証明  
dim(Image f) を階数と呼ぶ。→詳細 
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定義:実2次元数ベクトル空間R2上の一次変換の核・核空間 Kernel 

設定

R実数体(実数をすべて集めた集合) 
R2実2次元数ベクトル空間 
f:R2R2実2次元数ベクトル空間R2上の一次変換 


[文献]
・佐武『線形代数学』V§4(p.103)
・志賀『線形代数30講』12講:R3からR2への線形写像(p.78)
・柳井竹内『射影行列・一般逆行列・特異値分解 』§1.3(p.12);
一般化:実ベクトル空間のあいだの一次写像の核(Kernel ) 

定義

一次変換f:R2R2Kernelとは、fによる像R2上の零ベクトルとなる実2次元数ベクトルの集合。
つまり、R2上の零ベクトルfによる逆像 
  f−1 ()={ vR2 | f (v)= }
のこと。

記号

一次変換fの核を、Ker fで表す。

性質

一次変換f:R2R2にたいして、
Ker f は、R2部分ベクトル空間である。
※なぜ?→証明  
dim(Ker f) を退化次数と呼ぶ。→詳細 
※活用例:一次写像が単射(1対1写像)であるための必要十分条件、  
→[トピック一覧:R2上の一次変換‐定義]
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定義:実2次元数ベクトル空間R2上の一次変換の階数 rank 

設定

R実数体(実数をすべて集めた集合) 
R2実2次元数ベクトル空間 
f:R2R2実2次元数ベクトル空間R2上の一次変換 


[文献]

・佐武『線形代数学』V§4(p.105)
・佐和隆光『回帰分析』2.2.3線形写像(p.27)
・戸田山田『計量経済学の基礎統計的手法の理論とプログラミング』2.5.1(p.87)
一般化:実ベクトル空間のあいだの一次写像の階数  

定義

一次変換f:R2R2階数rankとは、fの像[Image f ]の次元のこと。
  すなわち、rank f = dim(Image f)  と定義される。

性質

rank fm 
これは、 
Ker f が「R2部分ベクトル空間」であること()と、
Vの部分ベクトル空間」の次元は、Vの次元より大きくならないということによる。   
一次写像の階数の性質行列の階数 
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定義:実2次元数ベクトル空間R2上の一次変換の退化次数 nullity 


設定


R実数体(実数をすべて集めた集合) 
R2実2次元数ベクトル空間 
f:R2R2実2次元数ベクトル空間R2上の一次変換 


[文献]
・佐武『線形代数学』V§4(p.105:脚注)
一般化:実ベクトル空間のあいだの一次写像の退化次数   


定義


一次変換f:R2R2退化次数nullityとは、
  fの核[Ker f]の次元、すなわち、dim ( Ker f )  
のこと。


性質


dim ( Ker f )dimR2 
これは、 
Ker f が「R2部分ベクトル空間」であること()と、
Vの部分ベクトル空間」の次元は、Vの次元より大きくならないということによる。  


→[トピック一覧:R2上の一次変換‐定義]
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定義:実n次元数ベクトル空間上の正則な一次変換・可逆な一次変換invertible linear transformation 逆変換

定義

 

[文献]
・松坂『解析入門4』158.1-G (p.14):体上の線形空間上の一次変換について;

※一般化: 
※関連事項: 
 

設定

上記の定義は、以下の舞台設定上で、なされる。
 R実数体(実数をすべて集めた集合) 
 Rnn次元数ベクトル空間  
 n次元数ベクトル空間Rnにおいて定義されているベクトルの加法 
 実数に続けてn次元数ベクトルを並べて書いたもの:
   n次元数ベクトル空間Rnにおいて定義されているスカラー乗法


[トピック一覧:R2上の一次変換‐定義]
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定義:零写像

定義

一次変換f:R2R2零写像である」とは、
任意の実2次元数ベクトルの「fR2に写した」がすべて、R2零ベクトルとなることをいう。
     (vR2) ( f (v)= ) 

[文献]

一般化:実ベクトル空間上の零写像 
 

設定

上記の定義は、以下の舞台設定上で、なされる。
R実数体(実数をすべて集めた集合) 
R2実2次元数ベクトル空間 
f:R2R2実2次元数ベクトル空間R2上の一次変換 

 




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定理:零写像は一次変換

定義
R2からR2への零写像は、一次変換の定義を満たす。
[文献]
一般化:実ベクトル空間のあいだの一次写像のケース 
 

設定



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