実2次元数ベクトル空間の定義 ― トピック一覧 
・定義:実2次元数ベクトルi成分・スカラー / R/基本ベクトル/零ベクトル
    実2次元数ベクトル空間・ベクトル和・スカラー倍/逆ベクトル 
・定理:数ベクトル空間のベクトル和の性質/数ベクトル空間のスカラー乗法の性質/数ベクトル空間はベクトル空間の一例
    零ベクトルのスカラー倍/ベクトルのスカラー0倍            

実2次元数ベクトル空間関連ページ:線形結合/一次独立・一次従属/線形結合と線形独立・従属の関係/基底/次元/部分ベクトル空間 
上位概念:一般のベクトル空間/実ベクトル空間/ 一般の体上の数ベクトル空間/n次元数ベクトル空間Rn   
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定義:実2次元数ベクトル・2次元実ベクトル・2項実ベクトル、第i成分i-th component 、スカラー
設定 R実数体(実数をすべて集めた集合)  
[文献―R2限定]
・川久保『線形代数学』1.1(pp.1-2);
・志賀『線形代数30講』4講(pp.22-23);5講(pp.29-30);
・志賀『固有値問題30講』1講(pp.1-2)
・戸田山田『計量経済学の基礎統計的手法の理論とプログラミング』2.4.1(p.72)
・佐和『回帰分析』2.1.2(p.16);
・グリーン『計量経済分析』2.4.1(p.22);
・二階堂『経済のための線型代数』I§1-注意2(p.20)。;

[文献]
・藤原『線形代数』1.1(p.4);
・草場『線形代数』2.3(p.39);



実2次元数ベクトルの一般化1:n次元数ベクトル/n次元数ベクトル 
n次元数ベクトルの一般化2:実行列/体上の行列 


定義1 実2次元数ベクトルとは、
 実数を2個並べたもの 
 すなわち、
 実数体Rから2個の実数x,yをとって順序をつけた順序対 
  v= (x,y)  ただし、xRかつyR  
 のこと。 
・つまり、実2次元数ベクトルとは、
  n次元数ベクトルで、次数nを2としたもの
 である。

定義2 上記のxベクトルvの第1成分
上記のyベクトルvの第2成分
と呼ぶ。
図示
実2次元数ベクトル , )は、
x-y座標平面上に、以下のように図示できる。
実2次元数ベクトルの図示


定義4 2次元横ベクトル2項実行ベクトルとは、
( x,y )のように実数を横に並べた2次元実ベクトルのこと。
2次元縦ベクトル2項実列ベクトルとは、

( x' )
y'
といった具合に、実数を縦に並べた実2次元ベクトルのこと。
横ベクトルと縦ベクトルの違いは、行列との演算において意味をもつ。

縦ベクトルを、実際に縦に並べて表記する代わりに、行列の転置記号を用いて、
 横ベクトルの転置  
    t (x,y) 
 と表すことが多く見られる。
 書籍等では、
   縦ベクトルを実際に縦に並べて表すと、
   スペースを費やし、ページが増えて、印刷コストがかさむ
 といった理由から、
 webでは、テキストだけで、縦ベクトルを縦に並べて表すのは難しい、
 といった理由から、
 縦ベクトルを実際に縦に並べることを避ける傾向にある。
定義5 実数体Rからつくった上記の実ベクトルに対して、
  「実数体R」そのもの、すなわち実数スカラーと呼ぶ。
実2次元数ベクトルの上位概念:n次元数ベクトル 

ここで「実2次元数ベクトル」というときの「2次元」のは、単に、「2個並べた」という意味。
 基底を構成するベクトルの個数として定義される「ベクトル空間の次元」とは、とりあえず無関係。
用語が統一されていない。
・「実2次元数ベクトル」の名称を用いるテキスト→永田『理系のための線形代数の基礎』1.2(p.8);
・「2項実ベクトル」の名称を用いるテキスト→斎藤『線形代数入門』2章§1(p.31); 
・「2次元実ベクトル」の名称を用いるテキスト→藤原『線形代数』1.1(p.4); 
・以上の名称の使用を回避し、実数を成分とした数ベクトルなどとしているテキスト
 →佐武『線形代数学』;志賀『線形代数30講』5講(p.28);13講(p.83);14講(p.88);   
・このように様々な名称が案出されるのは、
   単に、「実ベクトル」というと、実ベクトル空間一般のベクトルを指す可能性があるため?
→[トピック一覧:実2次元数ベクトル空間の定義]
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定義:ベクトルの相等

実2次元数ベクトルu,vについてuv実2次元数ベクトルu, v が等しい)
とは、
実2次元数ベクトルu,vの各成分の値が等しいことをいう。 
すなわち、
u(xu, yu) , v(xv, yv)について、uvとは、
xu=yuかつxv=yv であることをいう。
[文献―R2限定]
・川久保『線形代数学』1.1(p.2)

[文献]
・二階堂『経済のための線型代数』I§1(pp.18-9)。
定義:R2
設定 R実数体(実数をすべて集めた集合) 

[文献―R2限定]
・志賀『線形代数30講』4講(pp.22-23);
・グリーン『計量経済分析』2.4.1(p.22);


[文献]
岩波数学辞典』210線形空間:A定義 例2 (p.570);
ホフマン『線形代数学I』2.1-例1(p.29);


R2の一般化:Rn 

定義 R2は、実2次元数ベクトルをすべて集めた集合を指す。
実2次元数ベクトルの定義に遡れば、
   R2は、実数順序対をすべて集めた集合とも言いかえられる。
・これを直積の概念を使って、言い表せば、  
   R2とは、RR直積R×R のことである。
 すなわち、
    R2R×R{ (x,y)xRかつyR } 
実2次元数ベクトルを図式化するとき、
 実2次元数ベクトルは、x-y座標平面上にプロットされるが、
 このx-y座標平面の全体が表しているのが、R2に他ならない。 
  
R2にベクトル和とスカラー乗法という演算を定義したものが、
実2次元数ベクトル空間

 


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定義:2次元零ベクトル

設定

R実数体(実数をすべて集めた集合
[文献―R2限定]
・川久保『線形代数学』1.2(p.6)
・志賀『線形代数30講』5講(p.29);
・志賀『固有値問題30講』1講(pp.1-2)
[文献]
・二階堂『経済のための線型代数』I§1(p.19) 。;
・戸田山田『計量経済学の基礎統計的手法の理論とプログラミング』2.1.2(p.49)

実2次元零ベクトルの一般化:n次元零ベクトル

定義

実数体Rにおける加法の単位元「0」を2個並べた 
      = ( 0, 0 )   
 を、2次元の零ベクトルと呼ぶ。


確認

実数体Rにおける加法の単位元0は、当然0R 。  
したがって、=( 0, 0 ) は、
実2次元数ベクトルの定義を満たし、

R2 
図解 2次元零ベクトル= ( 0, 0 )は、
x-y座標平面上に、以下のように図示できる。
  基本ベクトル

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定義:基本ベクトル
設定 R実数体(実数をすべて集めた集合)   
R2実2次元数ベクトルをすべて集めた集合。
  すなわち、R2R×R={ (x,y)xRかつyR }  
[文献―R2限定]
・志賀『固有値問題30講』1講(pp.1-2)


実2次元基本ベクトルの一般化:n次元基本ベクトル

本題

R2における基本ベクトルとは、
次の2個の「実2次元数ベクトルe1, e2のことをいう。 

 e1(1,0)  
     基本ベクトル

 e2(0,1) 
     基本ベクトル

性質 基本ベクトルの一次結合基本ベクトルは一次独立基本ベクトルは基底をなす 
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定義:実2次元数ベクトル空間・ベクトルの加法・スカラー乗法

設定

R
実数体(実数をすべて集めた集合) 
R2実2次元数ベクトルをすべて集めた集合。
  すなわち、R2R×R={ (x,y)xRかつyR }   

[文献―R2限定]
・川久保『線形代数学』1.2(pp.3-5)
・志賀『線形代数30講』5講(pp.28-9);5講(p.30);6講(p.37);
・志賀『固有値問題30講』1講(pp.1-2)
・戸田山田『計量経済学の基礎統計的手法の理論とプログラミング』2.4.1(p.72)
・グリーン『計量経済分析』2.4.1(p.22);
・二階堂『経済のための線型代数』I§1-注意2(p.20)。;

[文献]
草場『線形代数』2.3(p.39)
ホフマン『線形代数学I』2.1-例1(p.29);
二階堂『経済のための線型代数』I§1(pp.18-9)

実2次元数ベクトル空間の一般化:
     n次元数ベクトル空間/数ベクトル空間/実ベクトル空間/ベクトル空間 
本題 実2次元数ベクトル空間とは、
集合R2に、次の2つの演算を定義したもののこと。  
(演算1:ベクトルの加法)  
任意u(xu, yu)R2 と、任意v(xv, yv)R2に対して、
そのベクトル和uvを、次のように定義する。  
 uv(xu, yu)(xv, yv)=( xuxv, yuyv ) 
  ※最右辺の+は、実数体Rに定められている加法を指す。
(演算2:スカラー乗法)   
R任意aと、R2任意v(x,y)に対して、
そのスカラー倍avを、次のように定義する。
 av=a(x,y)=( ax,ay ) 
  ※最右辺のax,ayは、実数体Rに定められている乗法を指す。

図解 [スカラー倍の図解]
実2次元数ベクトル , )の
は、
x-y座標平面上に、以下のように図示できる。
実2次元数ベクトルのスカラー倍の図示



x-y平 面上において、
v(x,y)ス カラーaav=( ax,ay )は、
 原点(0,0)(x,y)と を結ぶ直線上にあって、
 (0,0)から、《(0,0)(x,y)と の間の距離》のa倍の距離に位置する点として示される。
なお、このとき、
a
が正ならば、av=(ax,ay)は、v(x,y)と 同じ側にあるが、
aが負ならば、av=(ax,ay)は、原点をはさんで、v(x,y)と 反対側に位置する。
図解
[ベ クトル和の図解]
x-y座標平面上に、
u=( , )と v=( , )との
実2次元数ベクトルの和の図示

x-y
座標平 面上において、
ベクトル和uv(xu, yu)(xv, yv)=( xuxv, yuyv )
は、どのように、表されるか?
 step1: 原点(0,0)u(xu, yu) とを線分で結ぶ。 
 step2: 原点(0,0)v(xv, yv) とを線分で結ぶ。  
 step3: 上記二つの線分を二辺とする平行四辺形、
     つまり、原点,u,vを頂点とする平行四辺形を描く。
     具体的には、
      ・線分「原点(0,0)u」と平行に、vを起点とする線分を描く。
      ・線分「原点(0,0)v」と平行に、uを起点とする線分を描く。
 step4: 上記の平行四辺形において、原点と向き合う頂点が、
      ベクトル和uv(xu, yu)(xv, yv)=( xuxv, yuyv )
     である。
ただし、
 ・原点(0,0)u(xu,yu) 、v(xv,yv) が
  同一直線上かつ同一象限にある場合は、
  その直線上で、原点-u間の距離と、原点-v間の距離を足した位置
 ・原点(0,0)u(xu,yu) 、v(xv,yv) が
  同一直線上にはあるが、異なる象限に位置している場合は、
  u,vのうち原点から遠いほうから、
  u,vのうち原点から近いいほうの原点との距離だけ、
  原点との直線上を、原点へ戻った位置
が、ベクトル和uvとなる。
ここで「実2次元数ベクトル空間」というときの「2次元」は、単に、数を「2個並べた」という意味。
基底を構成するベクトルの個数として定義される「ベクトル空間の次元」とは、とりあえず無関係。
数を「2個並べた」ベクトルの集合に上記の演算を定義しただけの「2次元数ベクトル空間」が、
ベクトル空間になるかどうか、そのベクトル空間としての次元が2次元であるかどうかは、
別に説明を要す。
実2次元数ベクトル空間がベクトル空間になることの証明  
実2次元数ベクトル空間のベクトル空間としての次元が2次元であることの証明 
このように定義すると、
 「任意u,vR2に対して、uvR2」「任意aR, vR2に対して、avR2」となる。
なぜなら、     
(step1)  
実数体Rの定義より、
  実数体Rは、加法, 乗法という二項演算が定められた代数系である。
 したがって、二項演算の定義から、   
  p,qRを満たす限りで任意(p,q)にたいして、p+qR, pqRが定められていることになる。 
(step2)
R2は、{ (x,y)xRかつyR }と定義されたから、 
  任意u(xu,yu)R2と、任意v(xv,yv)R2に対して、 
xu,yu,xv,yvRである。  
(step3)
任意u(xu,yu)R2と、任意v( xv,yv )R2に対して、
 step1, step2より、 xuxvR, yuyv R となるから、 
uv=(xuxv, yuyv)は、
   R2{ (x,y)xRかつyR }
属す
(step4)
任意aRと、任意v( xv,yv )R2に対して、
 step1, step2より、 axvR, ayvR となるから、 
 av=( axv, ayv  )は、
   R2{ (x,y)xRかつyR }
属す

実2次元数ベクトル空間の上位概念:n次元数ベクトル空間/数ベクトル空間/実ベクトル空間/ベクトル空間 
・実2次元数ベクトル空間はベクトル空間の一例→詳細
実ベクトル空間n次元数ベクトル空間同型となるための条件:有限次元実ベクトル空間であること
n次元数ベクトル空間の下位概念:内積空間ノルム空間ユークリッド空間
→[トピック一覧:実2次元数ベクトル空間の定義]
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定義:逆ベクトル
設定 R実数体(実数をすべて集めた集合) 
R2実2次元数ベクトル空間。 
  すなわち、
      R
2=R×R={ (x,y)xRかつyR } 
  に、ベクトルの加法スカラー乗法を定義したもの。
[文献―R2限定]
・川久保『線形代数学』1.2(p.6)
・戸田山田『計量経済学の基礎統計的手法の理論とプログラミング』2.4.1(p.72)


n次元数ベクトルの逆ベクトル

定義 v( x,y )R2の逆ベクトル−vとは、
 v( x,y )R2を、「−1」によってスカラー倍したもの。
 すなわち、 
  −v=(-1)v=(-1)(x,y )( (-1)x,(-1)y )( -x,-y )  


[逆ベクトルの図解]
実2次元数ベクトル( , 逆ベクトル
は、
x-y平面上に、以下のように図示できる。
実2次元数ベクトルのスカラー倍の図示



性質 任意aR, vR2に対して、avR2」だから()、  
 −v=(-1)vR2 

→[トピック一覧:実2次元数ベクトル空間の定義]
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定理:実2次元数ベクトル空間におけるベクトルの加法の性質
設定 R実数体(実数をすべて集めた集合) 
R2実2次元数ベクトル空間。 
  すなわち、
      R
2=R×R={ (x,y)xRかつyR }  
  に、ベクトルの加法スカラー乗法を定義したもの。    

[文献―R2限定]
・川久保『線形代数学』1.2(p.6)
・志賀『線形代数30講』5講(p.29);

[文献]
二階堂『経済のための線型代数』I§1(p.19)


一般化:
  ・n次元数ベクトル空間のケース  
  ・一般の体上の数ベクトル空間のケース
  ・一般の実ベクトル空間のケース 
      (実ベクトル空間では、性質ではなく、定義の一部)
  ・一般のベクトル空間のケース
      (一般のベクトル空間では、性質ではなく、定義の一部)

1. 実2次元数ベクトル空間R2において定義されているベクトルの加法+は、
  「結合則:( u,v,wRn) ( ( u+v )+wu+( v+w ) )」を満たす。
2. 2次元数ベクトル空間R2において定義されているベクトルの加法と、
  R2における2次元零ベクトル(0,0)は、
    任意のvR2にたいして、 v+v を満たす。
3. 実2次元数ベクトル空間R2において定義されているベクトルの加法は、
    任意のvR2 にたいして、 v+(v)= を満たす。 
4. 実2次元数ベクトル空間R2において定義されているベクトルの加法は、
  「可換則:( u,vR2 ) (uv vu )」を満たす。 
証明1
証明2
証明3
証明4
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定理:実2次元数ベクトル空間におけるスカラー乗法の性質
設定 R実数体(実数をすべて集めた集合) 
R2実2次元数ベクトル空間。 
  すなわち、
      R
2=R×R={ (x,y)xRかつyR }  
  に、ベクトルの加法スカラー乗法を定義したもの。 

[文献―R2限定]
・川久保『線形代数学』1.2(p.7)
・志賀『線形代数30講』5講(p.29);
[文献]
・杉浦『解析入門I』I章§4命題4.1(p.34);
・二階堂『経済のための線型代数』I§1(p.19);

一般化:
  ・n次元数ベクトル空間のケース  
  ・一般の体上の数ベクトル空間のケース
  ・一般の実ベクトル空間のケース 
      (実ベクトル空間では、性質ではなく、定義の一部)
  ・一般のベクトル空間のケース
      (一般のベクトル空間では、性質ではなく、定義の一部)

1. 実2次元数ベクトル空間R2において定義されているスカラー乗法と、
実数体R上で定義された乗法の単位元"1" は、 
     任意vR2に対して、1v=v 
を満たす。 
2. 実2次元数ベクトル空間R2において定義されているスカラー乗法は、
    結合則:任意a,bRと、任意vR2に対して、(ab)v=a(bv) 
を満たす。
3. 実2次元数ベクトル空間R2において定義されているスカラー乗法ベクトルの加法は、
    ベクトルに関する分配則:任意aRと、任意u,vR2に対して、a(u+v)=au+av  
を満たす。
4. 実2次元数ベクトル空間R2において定義されているスカラー乗法ベクトルの加法は、
    スカラーに関する分配則:任意a,bRと、任意vR2に対して、(a+b)v=avbv
を満たす。
証明1
証明2
証明3
証明4
→[トピック一覧:実2次元数ベクトル空間の定義]
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定理:実2次元数ベクトル空間は実ベクトル空間・ベクトル空間の一例である。
設定 R実数体(実数をすべて集めた集合) 
R2実2次元数ベクトル空間。 
  すなわち、
      R
2=R×R={ (x,y)xRかつyR } 
  に、ベクトルの加法スカラー乗法を定義したもの。

[文献]
・『岩波数学辞典』210線形空間:A定義(pp.570-576);
・ホフマン『線形代数学I』2.1例1(p.29);
・志賀『線形代数30講』13講(pp.85-7);14講(pp.88-90);
・松坂『集合・位相入門』3章§5C(p.133);

一般化:
  ・n次元数ベクトル空間のケース  
  ・一般の体上の数ベクトル空間のケース

本題

実2次元数ベクトル空間R2は、
実数体R上のベクトル空間(すなわち実ベクトル空間)の一具体例であり、
K上のベクトル空間の一具体例である。


なぜ?

実数体Rは、Kの一具体例である。 
実2次元数ベクトル空間R2には、
  任意u,vR2に対して、uvR2任意aR, vR2に対して、avR2 
 を一つずつ定めるベクトルの加法スカラー乗法が定められており、
 K上のベクトル空間であるための条件I-1,II-1を、
 実2次元数ベクトル空間R2は、満たしている。   
実2次元数ベクトル空間R2では、
 実2次元数ベクトル空間におけるベクトルの加法の性質と、
 実2次元数ベクトル空間におけるスカラー乗法の性質の8つの条件が
 成り立っている。
 この8条件は、
 K上のベクトル空間であるための条件I-2,II-2は満たすものである。
 したがって、実2次元数ベクトル空間R2は、
 K上のベクトル空間であるための条件I-2,II-2を満たしている。


 

→[トピック一覧:実2次元数ベクトル空間の定義]
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定理:零ベクトルのスカラー倍
設定 R実数体(実数をすべて集めた集合) 
R2実2次元数ベクトル空間。 
  すなわち、
      R
2=R×R={ (x,y)xRかつyR }  
  に、ベクトルの加法スカラー乗法を定義したもの。
R2上の零ベクトル。  
aスカラー。つまり、aR


[文献]
・佐武『線形代数学』T§1(p.3);

一般化:n次元数ベクトル空間のケース

本題 零ベクトルスカラー倍は、すべて、零ベクトル
つまり、任意aRにたいして、a

[図解―操作可能]
実2次元零ベクトル( 0,0 の スカラー 倍は、
は、
x-y平面上に、以下のように図示できる。
実2次元数ベクトルのスカラー倍の図示




定理:ベクトルのスカラー0倍
設定 R実数体(実数をすべて集めた集合) 
R2実2次元数ベクトル空間。 
  すなわち、
      R
2=R×R={ (x,y)xRかつyR }  
  に、ベクトルの加法スカラー乗法を定義したもの。
R2上の零ベクトル
aスカラー。つまり、aR

 

[文献]
・佐武『線形代数学』T§1(p.3);


一般化:n次元数ベクトル空間のケース

本題 任意実2次元数ベクトルスカラー0倍は、すべて、零ベクトル
 すなわち、任意のvR2 にたいして、0v  

[図解―操作可能]
実2次元数ベクトル( , スカラー0倍は、
x-y平面上に、以下のように図示できる。
実2次元数ベクトルのスカラー倍の図示





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(reference)
日本数学会編集『岩波数学辞典(第三版)』 岩波書店、1985年、項目210線形空間(pp.570-576)
線形代数のテキスト
ホフマン・クンツェ『線形代数学I』培風館、1976年、2.1ベクトル空間(pp.28-34)。
永田雅宜『理系のための線形代数の基礎』紀伊国屋書店、1986年、1.3ベクトル空間(pp.14-6)。
佐武一郎『線形代数学(第44版)』裳華房、1987年、Vベクトル空間§6ベクトル空間の公理化(p.115)。
砂田利一『現代数学への入門:行列と行列式』2003年、§5.1-b(p.155).
志賀浩二『数学30講シリーズ:線形代数30講』朝倉書店、1988年、13講ベクトル空間へ(p.83);14講ベクトル空間の例と基本概念(p.88)。
藤原毅夫『理工系の基礎数学2:線形代数』岩波書店、1996年、1.1ベクトルとベクトルの演算(p.4)、4.1線形空間と写像(p.91)。


数理経済学のテキスト
神谷和也・浦井憲『経済学のための数学入門』東京大学出版会、1996年、§3.1ベクトル空間とは何か(p.105)。
西村和雄『経済数学早わかり』日本評論社、1982年、2章線形代数§1ベクトル(pp.26-)。
Chiang, Fundamental Methods of Mathematical Economics: Third Edition, McGraw Hill,1984,1.
布川昊,谷野哲三,中山弘隆『線形代数と凸解析』コロナ社、1991年、2.4基底と次元(pp.36-41)。
高橋一『経済学とファイナンスのための数学』新世社、1999年、1.2V定義1.2.2(p.10)。
二階堂副包『経済のための線型代数』培風館、1961年、I§1(pp.18-9)。


数理統計学のテキスト
William H. Greene(斯波・中妻・浅井訳) 『経済学体系シリーズ:グリーン計量経済分析I:改訂4版』エコノミスト社、2000年、第2章行列代数2.2行列の用語(pp.10-12);2.3行列の算法(pp.12-21)。
岩田暁一『経済分析のための統計的方法(第2版)』東洋経済新報社、1983年、12.1行列の演算(pp.269-277);12.4.2逆行列(pp.294-5)。

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