n次元数ベクトル空間上の一次変換の固有値問題 ― トピック一覧

・定義:不変部分空間/固有ベクトル/固有値/固有空間/対角化可能
・定理
  ―固有値・固有ベクトル:
《一次変換の固有値・固有ベクトル》と《行列表現の固有値・固有ベクトル》 
              
相異なる固有値に対する固有ベクトルは一次独立/相異なる固有値・固有ベクトルの最大個数 
  ―固有空間:      
固有空間は部分ベクトル空間/固有空間は不変部分空間/固有空間の共通部分・和空間/固有空間の次元 
  −対角化可能条件:   
一次変換の対角化可能の必要十分条件―固有ベクトルの観点/一次変換の対角化可能の十分条件―固有値の観点
              
一次変換の対角化可能の必要十分条件―固有空間の観点

固有値問題関連ページ:実行列の固有値問題/対称変換の固有値問題/実ベクトル空間上の一次写像の固有値問題
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定義:Rn上の一次変換の不変部分空間invariant subspace 


設定


一次変換f RnRn 」による不変部分空間の定義は、
次の舞台設定上で、なされる。
R実数体(実数をすべて集めた集合)  
Rnn次元数ベクトル空間。 
  すなわち、
Rn=R×R××R{ ( v1, v2, , vn )v1Rかつv2RかつかつvnR }に、
        
ベクトルの加法スカラー乗法を定義したもの。 
  ただし、
Rnに属すすべてのn次元数ベクトルは、 n次元縦ベクトルの形式で表されているものとする。
Wn次元数ベクトル空間Rn部分ベクトル空間 
fRn Rn」:n次元数ベクトル空間Rn上の一次変換 


[文献]
・斎藤『線形代数入門4章§5(pp.118-9)実ベクトル空間上の一次変換一般;5章§1(p.131)
・永田『理系のための線形代数の基礎5.5(p.155):複素数ベクトル空間;
・草場『線形代数3.9(p.95)
*木村『線形代数:数理科学の基礎3.7(p.68);3.9(p.73):
・佐武『線形代数学』W§2(p.141):複素ベクトル空間・複素行列のケース;

定義

「『Rn部分ベクトル空間Wは、fによる不変部分空間である」

「『Rn部分ベクトル空間Wは、fに関して不変である」

「『Rn部分ベクトル空間Wは、f-不変部分空間である」

「『Rn部分ベクトル空間Wは、f-不変である」
とは、
  
f (W)W が満たされること、
   すなわち、
xWにたいして、f (x) W が満たされること
をいう。 

[トピック一覧:固有値問題]
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定義:Rn上の一次変換の固有ベクトルeigenvector 固有値eigenvalue 固有空間eigenspace


設定


一次変換f RnRn 」の固有値・固有ベクトルの定義は、
次の舞台設定上で、なされる。
R実数体(実数をすべて集めた集合)  
Rnn次元数ベクトル空間。 
  すなわち、
Rn=R×R××R{ ( v1, v2, , vn )v1Rかつv2RかつかつvnR }に、
        
ベクトルの加法スカラー乗法を定義したもの。 
  ただし、
Rnに属すすべてのn次元数ベクトルは、 n次元縦ベクトルの形式で表されているものとする。


[文献]
松坂『解析入門418.1-B (p.86):数ベクトル空間限定;
・志賀『線型代数3027(p.171):対角化との関連で;29(p.186):固有空間;
・草場『線形代数』定義4.1(p.100)
・西村『経済数学早わかり2章§5.3(p.94):写像が表にでない;


・斎藤『線形代数入門5章§1(p.131): 複素n次元数ベクトル空間上の一次変換
・永田『理系のための線形代数の基礎5.1(p.132):複素n次元数ベクトル空間上の一次変換;
・佐武『線形代数学』W§1(p.133): 複素n次元数ベクトル空間・複素行列のケース;
・岩田『経済分析のための統計的方法12.5.1(p.300):一次写像を無視し、すべて行列の問題であるかのように。


※特殊例:
対称変換の固有値問題

定義

・「一次変換f RnRn 」に関して、(一次写像に関してではない!)、
 「
実数λは『一次変換f RnRn ()固有値eigenvalue』であって、
  
n次元数ベクトルxは『固有値λに属する/対応する/に対する固有ベクトルeigenvector
   である」
 といえば、
 それは
 「
一次変換f RnRn 」にたいして、
  
実数λとn次元数ベクトルxが 
    
f (x)=λx かつ x 
 を満たすことを意味する。
・つまり、
  (
λR)(xRn)(f (x)=λx かつ x) 
 となる場合に、
 このλ
R, xRnを、
 「
一次変換f RnRn ()固有値」「固有値λに属する/対応する/に対する固有ベクトル
 と呼ぶ。

 

・「『一次変換f RnRn 』の実固有値」は、
 存在しないこともあれば、
 一つしかないことも、
 複数存在することもある。
 『
一次変換f RnRn 』の固有値の有無と個数は、
 『
一次変換f RnRn 』に依存する。 

・おのおのの「『
一次変換f RnRn 』の固有値」に対する固有ベクトルは、無数に存在する。
 
n次元数ベクトルxが「一次変換f固有値λに対する固有ベクトル」ならば、
 
n次元数ベクトルx任意スカラー倍はどれも、
 「
一次変換f固有値λの固有ベクトル」となるからである。
 なぜなら、
  
n次元数ベクトルxが「一次変換f固有値λの固有ベクトルならば
  すなわち、「
f (x)=λx かつ xならば[仮定]   
   
任意aRにたいして、
   
f ( ax)=af (x)  ∵一次写像の性質より、一次変換にも当てはまる性質  
      
= a(λx) ∵上記[仮定]より
      
=λ(ax) 

定義

・「固有値λに対する一次変換f固有空間」とは、
 「
一次変換f固有値λに対する固有ベクトル」をすべて集めた集合に、
   
零ベクトルを加えた集合
      
Wλ={ xRn f (x)=λx }  (  xという条件が付かない点に注意 ) 
   のことをいう。
・「
固有値λに対する一次変換f固有空間」を、
    
Wλ  
    
E(λ)  
 などの記号で表す。  
 →
固有空間の性質   


設定

活用例:

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定理:一次変換「f:RnRn」の固有値・固有ベクトルと、一次変換fの行列表現の固有値・固有ベクトルの関係


要旨


[命題1]
一次変換f: RnRn 」の()固有値とそれに対応する固有ベクトルは、
一次変換f: RnRn の標準基底に関する表現行列()固有値と、それに対応する固有ベクトルでもあり、
また、
一次変換f: RnRn の標準基底に関する表現行列()固有値と、それに対応する固有ベクトルは、
一次変換f: RnRn 」の()固有値とそれに対応する固有ベクトルでもある。

[命題2]
・「一次変換f: RnRn 」の()固有値は、
 「
一次変換f: RnRn の任意基底{p1,p2,…,pn}に関する表現行列(実)固有値
  に等しい。
・「『
一次変換f: RnRn 』の『一つの(実)固有値』λに対応する固有ベクトルxt ( x1 , x2 ,, xn )」は、
 「『
f: RnRn の任意基底{p1,p2,…,pn}に関する表現行列の『一つの(実)固有値』λに対する固有ベクトル」に、
  左から「
標準基底から基底{p1,p2,…,pn}への基底変換行列」をかけた結果
  に等しい。 

[命題3]
「『f: RnRn の任意基底{p1,p2,…,pn}に関する表現行列の『一つの(実)固有値』λに対する固有ベクトル」は、
 「『
f: RnRn 』の()固有値λに対応する固有ベクトルxt ( x1 , x2 ,, xn )
          《
Rn基底 { p1, p2, , pn } に関する座標ベクトルx'=t ( x'1 , x'2 ,, x'n )
 である。  

[命題1]の解説

 

設定

[命題1]は、以下の舞台設定上で、なされる。
R実数体(実数をすべて集めた集合)  
Rnn次元数ベクトル空間。 
  すなわち、
Rn=R×R××R{ ( v1, v2, , vn )v1Rかつv2RかつかつvnR }に、
        
ベクトルの加法スカラー乗法を定義したもの。 
  ただし、
Rnに属すすべてのn次元数ベクトルは、 n次元縦ベクトルの形式で表されているものとする。
fRn Rn」:n次元数ベクトル空間Rn上の一次変換 
{
e1, e2, , en }: Rn標準基底 
A:「
一次変換f: RnRn の標準基底{e1,e2,…,en}に関する表現行列


[文献]
松坂『解析入門418.1-B 定義(p.86):数ベクトル空間限定;
・志賀『線型代数3026(pp.166-8):対角化との関連で;27(p.171):対角化との関連で;

命題1

解説

・「『一次変換f RnRn 』の()固有値とそれに対応する固有ベクトル」とは、
   『
f (x)=λxかつx』を満たす実数λ、n次元数ベクトルx 
 として、定義された。  
・「行列の
()固有値と、それに対応する固有ベクトル」の定義より、
 「『
一次変換f: RnRn の標準基底{e1,e2,…,en}に関する表現行列A
               
()固有値と、それに対応する固有ベクトル
 は、
   『
Ax =λxかつx』を満たす実数λ、n次元数ベクトルx  
 である。   
・ところが、「『
一次変換f: RnRn の標準基底{e1,e2,…,en}に関する表現行列」の定義より、
 
任意n次元数ベクトルxにたいして、 
  
f (x)=Ax  
 が満たされている。
 したがって、『
f (x)=λxかつx』と『Ax =λxかつx』は同値であって、
 『
f (x)=λxかつx』を満たす実数λ、n次元数ベクトルxは、
 『
Ax =λxかつx』も満たし、
 『
Ax =λxかつx』を満たす実数λ、n次元数ベクトルxは、   
 『
f (x)=λxかつx』も満たす。
・つまり、
 「『
一次変換f RnRn 』の()固有値とそれに対応する固有ベクトル」は、
 「『
一次変換f: RnRn の標準基底{e1,e2,…,en}に関する表現行列A
               
()固有値と、それに対応する固有ベクトル
 でもあり、
 逆に、
 「『
一次変換f: RnRn の標準基底{e1,e2,…,en}に関する表現行列A
               
()固有値と、それに対応する固有ベクトル」は、
 「『
一次変換f RnRn 』の()固有値とそれに対応する固有ベクトル
 でもある。  

 
     

[命題2]の解説

 

設定

[命題2-1][命題2-3]は、以下の舞台設定上で、なされる。
R実数体(実数をすべて集めた集合)  
Rnn次元数ベクトル空間。 
  すなわち、
Rn=R×R××R{ ( v1, v2, , vn )v1Rかつv2RかつかつvnR }に、
        
ベクトルの加法スカラー乗法を定義したもの。 
  ただし、
Rnに属すすべてのn次元数ベクトルは、 n次元縦ベクトルの形式で表されているものとする。
fRn Rn」:n次元数ベクトル空間Rn上の一次変換 
{
e1, e2, , en }: Rn標準基底 
{
p1, p2, , pn }: Rn基底の一つ 
A:「
一次変換f: RnRn の標準基底{e1,e2,…,en}に関する表現行列
B:「
一次変換f: RnRn の任意基底{p1,p2,…,pn}に関する表現行列
P:『
Rn基底』を、『Rn標準基底{ e1, e2, , en }から{ p1, p2, , pn }へ変えたときの基底変換の行列

※必要な予備知識:基底変換公式/相似な行列の固有値・固有ベクトル//

命題2

基底変換公式より、
 「
一次変換f: RnRn の任意基底{p1,p2,…,pn}に関する表現行列Bと、
 「
一次変換f: RnRn の標準基底{e1,e2,…,en}に関する表現行列Aとの関係は、
 『
Rn基底』を、『Rn標準基底{ e1, e2, , en }から{ p1, p2, , pn }へ変えたときの基底変換の行列
 を用いて、次のように表せる。
    
B=P−1AP  
 つまり、
 「
一次変換f: RnRn の任意基底{p1,p2,…,pn}に関する表現行列Bは、
 「
一次変換f RnRn の標準基底に関する表現行列Aに、相似である。 
 すると、
 
相似な行列の固有値・固有ベクトルの性質より、
 次の
[命題Q] [命題R]同値となる。
 
[命題Q] 実数λ, n次元数ベクトルxt ( x1 , x2 ,, xn )は、
     「『
一次変換f: RnRn の標準基底{e1,e2,…,en}に関する表現行列」Aの
        
(実)固有値とそれに対応するに対応する固有ベクトルである。
 
[命題R] 実数λ, n次元数ベクトル P−1xは、
     「『
一次変換f RnRn の任意基底{p1,p2,…,pn}に関する表現行列」Bの
         
()固有値と、それに対応する固有ベクトルである。
・命題
1より、次の[命題P] [命題Q]同値
 
[命題P] 実数λ, n次元数ベクトルxt ( x1 , x2 ,, xn )は、
      『
一次変換f: RnRn 』の()固有値とそれに対応する固有ベクトルである。
 
[命題Q] 実数λ, n次元数ベクトルxt ( x1 , x2 ,, xn )は、
     「『
一次変換f: RnRn の標準基底{e1,e2,…,en}に関する表現行列」Aの
        
(実)固有値とそれに対応するに対応する固有ベクトルである。
・以上
2点より、
 結局、
[命題P] [命題Q] [命題R]はどれも同値だということになる 


[文献]
松坂『解析入門418.1-B 命題4(p.86):数ベクトル空間限定;
・志賀『線型代数3027(p.170):対角化との関連で; 28(p.179):R2のケース; 29(p.184):R3のケース

     

[命題3]の解説

 
 


・一般に、
 「
標準基底から基底{p1,p2,…,pn}への基底変換行列Pは、
  
n次元縦ベクトルx=t ( x1 , x2 ,, xn )と、
  「
xの《Rn基底 { p1, p2, , pn } に関する座標ベクトルx'=t ( x'1 , x'2 ,, x'n ) 」とのあいだに、 
       
x=P x' 
 という関係を成り立たせるのだった
[解説]
・命題
2より、
 「『
f RnRn の任意基底{p1,p2,…,pn}に関する表現行列の『一つの(実)固有値』λに対する固有ベクトル」に、
 左から「
標準基底から基底{p1,p2,…,pn}への基底変換行列Pをかけると、
 「『
一次変換f RnRn 』の『一つの(実)固有値』λに対応する固有ベクトルxt ( x1 , x2 ,, xn )
 が得られる。  
・上記二点から、
 「『
f RnRn の任意基底{p1,p2,…,pn}に関する表現行列の『一つの(実)固有値』λに対する固有ベクトル」とは、
 「『
一次変換f RnRn 』の『一つの(実)固有値』λに対応する固有ベクトルxt ( x1 , x2 ,, xn )」の、
      《
Rn基底 { p1, p2, , pn } に関する座標ベクトルx'=t ( x'1 , x'2 ,, x'n )
  であることがわかる。

 

[トピック一覧:固有値問題]
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定理:相異なる固有値に対する固有ベクトルは一次独立


要旨


一次変換f RnRn 』の相異なる()固有値に対応する固有ベクトルは、一次独立

[文献]
松坂『解析入門418.1-B-命題5 (p.87):数ベクトル空間限定;
・志賀『線型代数3028(p.177):R2上の一次変換;29(p.183):固有空間:R2上の一次変換;
・斎藤『線形代数入門5章§1[1.1](p.131):体上のベクトル空間上の一次変換:証明つき;
・神谷浦井『経済学のための数学入門』定理5.3.3(pp.198):証明つき。帰納法;
・岡田『経済学・経営学のための数学』定理2.28(p.103)

同じ定理の行列の固有値・固有ベクトル版 

特殊な一次変換についての固有ベクトルの性質:
       
対称変換の固有ベクトルの直交性 

設定

R実数体(実数をすべて集めた集合)  
Rnn次元数ベクトル空間。 
  すなわち、
Rn=R×R××R{ ( v1, v2, , vn )v1Rかつv2RかつかつvnR }に、
        
ベクトルの加法スカラー乗法を定義したもの。 
  ただし、
Rnに属すすべてのn次元数ベクトルは、 n次元縦ベクトルの形式で表されているものとする。
fRn Rn」:n次元数ベクトル空間Rn上の一次変換 

定理

k個の実数λ1 ,λ2 ,,λkはそれぞれ異なる値 
     
(i,jN) (1ikかつ1jkかつij  λi≠λj )  
かつ   
k個の実数λ1 ,λ2 ,,λkは、どれも「一次変換f RnRn 」の()固有値  
     
(iN) (1ik  (xiRn)(f (xi)=λI xi かつ xI )  
ならば   
k個のn次元数ベクトル   
 ・『一次変換f RnRn ()固有値』λ1に対応する固有ベクトルx1 
 ・『
一次変換f RnRn ()固有値』λ2に対応する固有ベクトルx2 
 :                :            : 
 ・『
一次変換f RnRn ()固有値』λkに対応する固有ベクトルxk    
は、
一次独立である。   

証明

松坂『解析入門418.1-B-命題5 (p.87); 神谷浦井『経済学のための数学入門』定理5.3.3(pp.198):帰納法による証明。
斎藤『線形代数入門5章§1[1.1](p.131):背理法による証明。

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定理:相異なる固有値・固有ベクトルの最大個数


定理


一次変換f RnRn 』の相異なる()固有値の個数は、n個を超えない。

[文献]
松坂『解析入門418.1-B-命題5 (p.87):数ベクトル空間限定;


設定


この定理は、以下の舞台設定上で成立する。
R実数体(実数をすべて集めた集合)  
Rnn次元数ベクトル空間。 
  すなわち、
Rn=R×R××R{ ( v1, v2, , vn )v1Rかつv2RかつかつvnR }に、
        
ベクトルの加法スカラー乗法を定義したもの。 
  ただし、
Rnに属すすべてのn次元数ベクトルは、 n次元縦ベクトルの形式で表されているものとする。
fRn Rn」:n次元数ベクトル空間Rn上の一次変換 

証明

定理「『一次変換f RnRn 』の相異なる()固有値に対応する固有ベクトル一次独立」(→詳細
と、
定理n次元数ベクトルv1, v2, , vm一次独立ならばmn」(→詳細
の二定理より。

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定理:Rn上の一次変換の固有空間は、部分ベクトル空間


定理


「『
一次変換f RnRn 』の固有値λに対する固有空間Wλは、
   
n次元数ベクトル空間Rn部分ベクトル空間

 
[文献]
・志賀『線型代数3029(p.186);
・志賀『固有値問題306(p.42):複素ベクトル空間上の一次変換の固有空間,証明つき;
・砂田『行列と行列式』§6.1(a) (p.202):体一般上のベクトル空間上の一次変換の固有空間,証明なし。
・斎藤『
線形代数入門4章§5(pp.118-9)実ベクトル空間上の一次変換一般の固有空間;5章§1(p.131) :証明なし。
・永田『
理系のための線形代数の基礎5.1(p.131):複素n次元数ベクトル空間上の一次変換の固有空間,証明なし;


特殊な一次変換についての固有空間の性質:
       
対称変換の固有空間の直交性 


設定


この定理は、以下の舞台設定上で成立する。
R実数体(実数をすべて集めた集合)  
Rnn次元数ベクトル空間。 
  すなわち、
   
Rn=R×R××R{ ( v1, v2, , vn )v1Rかつv2RかつかつvnR }に、
   
ベクトルの加法スカラー乗法を定義したもの。 
  ただし、
Rnに属すすべてのn次元数ベクトルは、
       
n次元縦ベクトルの形式で表されているものとする。
fRn Rn」:n次元数ベクトル空間Rn上の一次変換 

証明

「『一次変換f RnRn 』の固有値λに対する固有空間Wλは、
     
部分ベクトル空間であるための必要十分条件を満たしている。
 ・
Wλは、条件1Rnでない部分集合であること」を明らかに満たしている。
 ・
Wλは、
   条件
2任意実数aと、
       
任意n次元数ベクトルu,vWλに対して、
        
auvWλ
  も満たしている。
  なぜなら、 
    
任意実数aと、
    
任意n次元数ベクトルu,vWλに対して、 
      
f ( auv)=af (u)f (v)  ∵一次変換の定義一次写像の定義 
           
= aλuλv  ∵固有空間の定義
           
=λ(auv)   ∵スカラー乗法のベクトルに関する分配則
    つまり、
    
任意実数aと、任意n次元数ベクトルu,vWλに対して、
    
auvWλ  
 
[→志賀『固有値問題306(p.42)] 
 

[トピック一覧:固有値問題]
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定理:Rn上の一次変換の固有空間は不変部分空間


定理


「『
一次変換f :RnRn 』の固有値λに対する固有空間Wλは、
   
n次元数ベクトル空間Rn f-不変部分空間


[文献]
・砂田『行列と行列式』§6.1(a) (p.202):
・神谷浦井『
経済学のための数学入門』§5.3.1(pp.191-9);
・斎藤『線形代数入門4章§5(pp.118-9)実ベクトル空間上の一次変換一般;5章§1(p.131)

特殊な一次変換についての固有空間の性質:
       
対称変換の固有空間の直交性 


設定


この定理は、以下の舞台設定上で成立する。
R実数体(実数をすべて集めた集合)  
Rnn次元数ベクトル空間。 
  すなわち、
   
Rn=R×R××R{ ( v1, v2, , vn )v1Rかつv2RかつかつvnR }に、
   
ベクトルの加法スカラー乗法を定義したもの。 
  ただし、
Rnに属すすべてのn次元数ベクトルは、
            
n次元縦ベクトルの形式で表されているものとする。
fRn Rn」:n次元数ベクトル空間Rn上の一次変換 

証明

・「『一次変換f :RnRn 』の固有値λに対する固有空間Wλ属す任意n次元数ベクトルxに対して、
         
f (x) Wλ 
 が満たされるということ、
 要するに、
 
任意の『一次変換f固有値λに対する固有ベクトルxに対して、
        
f (x)もまた、『一次変換f固有値λに対する固有ベクトル』であるということ、
 より、
 「『
一次変換f :RnRn 』の固有値λに対する固有空間Wλは、 f-不変部分空間の定義を満たす。
・「
xWλにたいして、f (x) Wλ」が満たされるということ
 すなわち、
 「
任意の『一次変換f固有値λに対する固有ベクトルxに対して、
    
f (x)もまた、『一次変換f固有値λに対する固有ベクトル』になる」が満たされるということ
 は、以下のように示せる。
  
(1) xWλにたいして、つまり、任意の『一次変換f固有値λに対する固有ベクトルxに対して、
      
f (x) =λx   ∵固有ベクトル固有空間の定義  
  
(2) xWλにたいして、つまり、任意の『一次変換f固有値λに対する固有ベクトルxに対して、
      
f (λx)=λf (x)  ∵一次変換の定義一次写像の定義 
         
=λ(λx)  ∵『一次変換f固有値λに対する固有ベクトル
                  「『
f :RnRn 』の固有値λに対する固有空間」の定義    
   したがって、
xWλにたいして、λxWλ 
   つまり、
任意の『一次変換f固有値λに対する固有ベクトルxに対して、
             λ
xも『一次変換f固有値λに対する固有ベクトル』となる。
  
(3) 上記二点をあわせると、
    
xWλにたいして、f (x) =λxWλ      
   つまり、
任意の『一次変換f固有値λに対する固有ベクトルxに対して、
        
f (x) =λxもまた、『一次変換f固有値λに対する固有ベクトル』となる。

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定理:Rn上の一次変換の固有空間の共通部分・和空間・直和

1.

異なった()固有値に対する「『一次変換f RnRn 』の固有空間」どおしの共通部分は、零ベクトルだけ。
  厳密に言えば、
   (λ
1≠λ2かつx1Rn)(f (x1)=λ1 x1かつx1かつx2Rn)(f (x2)=λ2 x2かつx2) 
    
ならば
    
{ x1Rn f (x1)=λ1 x1 }  { x2Rn f (x2)=λ2 x2 } ={}  
  
固有空間という用語を使わないで、固有ベクトルのほうに着目して、言い直すと、
     二つの異なった
()固有値λ1≠λ2 があったときに、
         「λ
1に対する固有ベクトル」であると同時に、
         「λ
2に対する固有ベクトル」でもあるような
      
n次元数ベクトルは存在しない
  ということになる。
  
なぜ? [岡田『経済学・経営学のための数学p.103] 
    
異なった固有値に対する固有ベクトルは一次独立だから、
    λ
1に対する固有ベクトルx1を、
    λ
2に対する固有ベクトルx2一次結合(したがって、スカラー倍)として表しえない。(
    したがって、
x1x2 となることもない。
    だから、「λ
1に対する固有ベクトル」であると同時に「λ2に対する固有ベクトル」でもあるような
      
n次元数ベクトルは存在しない  


[文献]
岡田『経済学・経営学のための数学』定理2.28の直後(p.103)

・砂田『行列と行列式』§6.1(a) (p.202):
・神谷浦井『
経済学のための数学入門』§5.3.1(pp.191-9);
・斎藤『線形代数入門4章§5(pp.118-9)実ベクトル空間上の一次変換一般;5章§1(p.131)

特殊な一次変換についての固有空間の性質:
       
対称変換の固有空間の直交性 

2.

だから、異なった()固有値に対する「『一次変換f RnRn 』の固有空間」の和空間は、
     異なった
()固有値に対する「『一次変換f RnRn 』の固有空間」の直和に分解される。

3.

異なった()固有値に対する「『一次変換f RnRn 』の固有空間」の和空間Rnと一致して、
    
Rnが、異なった()固有値に対する「『一次変換f RnRn 』の固有空間」の直和に分解される場合もあれば、
  異なった
()固有値に対する「『一次変換f RnRn 』の固有空間」の和空間Rnと一致せず、
    
Rnが、異なった()固有値に対する「『一次変換f RnRn 』の固有空間」の直和に分解されない場合もある。
  この場合わけは、実は、一次変換の対角化可能か否かの区別に、重なる。
(定理)

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定理:Rn上の一次変換の固有空間の次元

文脈

「『一次変換f RnRn 』の固有値λに対する固有空間Wλは、
  
n次元数ベクトル空間Rn部分ベクトル空間であるから()、
  
Wλ基底次元を考えることができる。

[文献]
・志賀『線型代数3029(p.186);
・志賀『固有値問題306(p.42):複素ベクトル空間上の一次変換の固有空間,証明つき;

特殊な一次変換についての固有空間の性質:
       
対称変換の固有空間の直交性 

1.

dim Wλは、
「『
一次変換f RnRn 』の固有値λに対する固有空間」における一次独立n次元数ベクトルの最大個数。

なぜ?
   
n次元数ベクトル空間Rn部分ベクトル空間次元は、
      
Wにおける一次独立n次元数ベクトルの最大個数()だから。

2.

1dim Wλ n  () 

3.

異なった()固有値に対する「『一次変換f RnRn 』の固有空間」の和空間次元は、
それらの
固有空間の各々の次元の和に等しい。 
  
dim E(λ1)E(λ2) E(λk) = dim E(λ1)+dim E(λ2)++dim E(λk) 

[文献]
・志賀『固有値問題306(p.42):複素ベクトル空間上の一次変換の固有空間,証明つき;

[トピック一覧:固有値問題]
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定義:Rn上の一次変換についての対角化可能



・「『
一次変換f RnRn 』が対角化可能である」とは、
 「
一次変換f RnRn の標準基底に関する表現行列対角化可能であることをいう。

行列の対角化可能の定義に遡って書き下すと、
 「『
一次変換f RnRn 』が対角化可能である」とは、
  「『
一次変換f RnRn の標準基底に関する表現行列A対角行列に相似であること」
  すなわち、 
  「『
一次変換f RnRn の標準基底に関する表現行列Aに対して、
        
diag(λ1,λ2,,λn) = P−1APを満たす
          
n対角行列 diag(λ1,λ2,,λn) n次正則行列Pが存在すること」
 となる。

・上記の定義を、
一次変換の行列表示に関する基底変換の公式の観点から、とらえかえすと、
   「『
一次変換f RnRn 』が対角化可能である」
   すなわち、 
   「『
一次変換f RnRn の標準基底に関する表現行列Aに対して、
        
diag(λ1,λ2,,λn) = P−1APを満たす
          
n対角行列 diag(λ1,λ2,,λn) n次正則行列Pが存在する」
 とは、
 「『
一次変換f RnRn 』に対して、ある『Rn基底{ p1, p2, , pn }が存在し、
   この
基底{ p1, p2, , pn }に関するfの表現行列P−1APが、n対角行列 diag(λ1,λ2,,λn)となること」

[文献]
松坂『解析入門418.1-C (p.88):数ベクトル空間限定;

一次変換が対角化可能となるための必要十分条件 
行列の対角化可能 


特殊な一次変換についての対角化可能条件:対称変換の対角化 

     (ただし、Pは「『Rn基底』を、『Rn標準基底{ e1, e2, , en }から{ p1, p2, , pn }へ変えたときの基底変換の行列
          なお、「『
Rn基底』を、『Rn標準基底{ e1, e2, , en }から{ p1, p2, , pn }へ変えたときの基底変換の行列」は、その第1列がp1, その第2列がp2, , その第n列がpnとなるn次正方行列
 を意味する。

※『
一次変換f RnRn 』に対して、上記を満たす『Rn基底{ p1, p2, , pn }とは、
  
Aの固有ベクトルのみでつくった『Rn基底』にほかならないことが、あとで明らかにされる(→定理)。
  だから、
  「『
一次変換f RnRn 』が対角化可能である」
   すなわち、 
  「『
一次変換f RnRn 』に対して、ある『Rn基底{ p1, p2, , pn }が存在し、
   この
基底{ p1, p2, , pn }に関するfの表現行列P−1APが、n対角行列 diag(λ1,λ2,,λn)となること」
  は、「
Aの固有ベクトルのみからなる『Rn基底』が存在すること」と同値になる(→定理)。 


設定


この定義は、以下の舞台設定上で、なされている。
R実数体(実数をすべて集めた集合)  
Rnn次元数ベクトル空間。 
  すなわち、
Rn=R×R××R{ ( v1, v2, , vn )v1Rかつv2RかつかつvnR }に、
        
ベクトルの加法スカラー乗法を定義したもの。 
  ただし、
Rnに属すすべてのn次元数ベクトルは、 n次元縦ベクトルの形式で表されているものとする。
fRn Rn」:n次元数ベクトル空間Rn上の一次変換 

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[goolge3:full]

定理:Rn上の一次変換が対角化可能になるための必要十分条件―固有ベクトルの観点


以下の命題は
同値
命題
P:『一次変換f RnRn 』が対角化可能である。
命題
Q:以下の2条件を満たすn個のn次元数ベクトルp1, p2,, pn が存在する。 
     
[条件Q1] n個のn次元数ベクトルp1, p2,, pn は、『一次変換f RnRn 』の固有ベクトルである。
     
[条件Q2] n個のn次元数ベクトルp1, p2,, pn 一次独立である。  」
命題
R:以下の2条件を満たすn個のn次元数ベクトルp1, p2,, pn が存在する。 
     
[条件R1] n個のn次元数ベクトルp1, p2,, pn は、『一次変換f RnRn 』の固有ベクトルである。
     
[条件R2] n個のn次元数ベクトルp1, p2,, pn は『Rn基底』をなす。  

[文献]
松坂『解析入門418.1-C定理1 (p.88):証明つき・数ベクトル空間限定;
・斎藤『線形代数入門5章§1[1.2](p.132):体上のベクトル空間上の一次変換:証明つき;
・志賀『線型代数3027(pp170-1);
・神谷浦井『経済学のための数学入門』定理5.3.2(pp.197-8);
・岡田『経済学・経営学のための数学』定理2.29(p.104);定理2.30(p.105):証明つき。

対角化可能な行列の固有値・固有ベクトル/行列の対角化可能条件―固有ベクトルの観点/行列の対角化可能条件−固有値の観点 

特殊な一次変換についての対角化可能条件:対称変換の対角化 


設定


この定理は、以下の舞台設定上で成立する。
R実数体(実数をすべて集めた集合)  
Rnn次元数ベクトル空間。 
  すなわち、
Rn=R×R××R{ ( v1, v2, , vn )v1Rかつv2RかつかつvnR }に、
        
ベクトルの加法スカラー乗法を定義したもの。 
  ただし、
Rnに属すすべてのn次元数ベクトルは、 n次元縦ベクトルの形式で表されているものとする。
fRn Rn」:n次元数ベクトル空間Rn上の一次変換 

証明

[命題Q命題R]
 n次元数ベクトル空間Rnの基底をなすための必要十分条件より、
 条件
Q2n個のn次元数ベクトルp1, p2,, pnが、一次独立」と
 条件
R2n個のn次元数ベクトルp1, p2,, pnが、『Rn基底』をなす」とは、
 
同値
 したがって、命題
Qと命題Rとは同値

証明

[命題P命題Q]
(step1)
 命題P「『一次変換f RnRn 』が対角化可能である」とは、
 「『
一次変換f RnRn の標準基底に関する表現行列A対角化可能である」ということを意味した。
 すなわち、

 命題P「『一次変換f RnRn 』が対角化可能である」
   
 命題P':「『一次変換f RnRn の標準基底に関する表現行列Aに対して、
           
diag(λ1,λ2,,λn) = P−1APを満たすn対角行列 diag(λ1,λ2,,λn) n次正則行列Pが存在すること」
(step2)
 命題P'が成り立つならば
 命題
P'で存在が保証された n次正則行列P1p1, 2p2,, npnは、
   
[条件Q1] 『一次変換f RnRn 』の固有ベクトルであること
 を満たす
n個のn次元数ベクトルとなる。 
 なぜなら、
 ・
対角化可能な行列の固有値・固有ベクトルより、
  命題
P'で存在が保証された n次正則行列P1p1, 2p2,, npnは、
           『
一次変換f RnRn の標準基底に関する表現行列A固有ベクトル
 ・
《一次変換の固有ベクトル》と《一次変換の表現行列の固有ベクトル》との関係についての定理より、
  「
一次変換f RnRn の標準基底に関する表現行列固有ベクトルは、「一次変換f RnRn 」の固有ベクトルでもある。
 したがって、
 
命題P'が成り立つならば
 命題
P'で存在が保証された n次正則行列P1p1, 2p2,, npnは、
            『
一次変換f RnRn 』の固有ベクトルとなる。 
(step3)
 命題P'が成り立つならば
 命題
P'で存在が保証された n次正則行列P1p1, 2p2,, npnは、
   
[条件Q2] 一次独立であること
 を満たす
n個のn次元数ベクトルとなる。
 なぜなら、
 一般に、
正則行列の各列はベクトルとして一次独立だから、   
 命題
P'で存在が保証された n次正則行列P1p1, 2p2,, npnも、一次独立。  
(結論)
 step2,step3は、
  命題
Qが要求する2条件を満たすn個のn次元数ベクトルp1, p2,, pn の実例の実例として、
      「命題
P'で存在が保証された n次正則行列P1p1, 2p2,, npn
  が存在すること
  を証示している。
 したがって、
  
命題P'命題Q
(結論)
以上により、
命題P命題P'命題Q
が示された。 
要するに、
命題P「『一次変換f RnRn 』が対角化可能である」命題Q

証明

[命題Q 命題P ]
(step1)   
  
[条件Q1] 『一次変換f RnRn 』の固有ベクトルであること
 を満たす
n個のn次元数ベクトルp1, p2,, pnは、それぞれ、
 「
実固有値λ1に対応する固有ベクトル,実固有値λ2に対応する固有ベクトル,,実固有値λnに対応する固有ベクトル
 であるとする。  
 つまり、
   
fp1に対して、実数λ1が存在して、f ( p1)=λ1 p1 
   
fp2に対して、実数λ2が存在して、f ( p2)=λ2 p2 
     :       :       :   : 
   
fpnに対して、実数λ1が存在して、f ( pn)=λn pn 
(step2)   
 ・n次元数ベクトル空間Rnの基底をなすための必要十分条件より、
  
[条件Q2] 一次独立であること
  を満たす
n個のn次元数ベクトルp1, p2,, pn は、
  『
Rn基底』をなす。  
(step3)   
  
[条件Q2] 一次独立であること
 を満たす
n個のn次元数ベクトルp1, p2,, pn を、1, 2,, nとするn次正方行列Pをつくる。
 
step2より、p1, p2,, pn は『Rn基底』だから、
 これらを
1, 2,, nとするn次正方行列Pは、
 「
標準基底{ e1, e2, , en }から基底{ p1, p2, , pn }への基底変換行列」となる。
 一般に、「
標準基底{ e1, e2, , en }から基底{ p1, p2, , pn }への基底変換行列」は n次正則行列であるから()、
 
step3でつくった「標準基底{ e1, e2, , en }から基底{ p1, p2, , pn }への基底変換行列P n次正則行列
(step4)  
 
[条件Q1][条件Q2]を満たす一次独立な固有ベクトルp1, p2, , pnを『Rn基底』として採用して(step2より可能)
 この《
Rn基底 { p1, p2, , pn } に関する一次変換fの行列表示を行うと、
 
n対角行列となる。
 ・「《
Rn基底 { p1, p2, , pn } に関する一次変換fの行列表示」をBと定義する。
 ・一般に、
  「『
一次変換f: RnRn の任意基底に関する表現行列(実)固有値」は「『一次変換f: RnRn 』の()固有値」に等しく()、  
  「『
f: RnRn の任意基底{p1,p2,…,pn}に関する表現行列の『一つの(実)固有値』λに対する固有ベクトル」は
          「『
f: RnRn 』の()固有値λに対応する固有ベクトルxt ( x1 , x2 ,, xn )の《Rn基底 { p1, p2, , pn } に関する座標ベクトルx'=t ( x'1 , x'2 ,, x'n ) 」に等しい()。
 ・「
p1の《Rn基底 { p1, p2, , pn } に関する座標ベクトル」は基本ベクトルe1=t ( 1 ,,,)
  「
p2の《Rn基底 { p1, p2, , pn } に関する座標ベクトル」は基本ベクトルe2=t (, 1,,,)
   : 
  「
p nの《Rn基底 { p1, p2, , pn } に関する座標ベクトル」は基本ベクトルen =t (,,,)。 
 ・上記二点より、
      ・「『
一次変換f: RnRn 』の実固有値」λ1,λ2,,λn(step1で定義)は、
                 「《
Rn基底{ p1, p2, , pn }に関する一次変換fの行列表示B固有値
      ・「『
一次変換f RnRn 』の固有ベクトルp1(→条件Q1)の《Rn基底 { p1, p2, , pn } に関する座標ベクトルe1は、
                                         『
B固有値λ1に対応する固有ベクトル
      ・「『
一次変換f RnRn 』の固有ベクトルp2(→条件Q1)の《Rn基底 { p1, p2, , pn } に関する座標ベクトルe2は、
                                         『
B固有値λ2に対応する固有ベクトル』   
      :                 : 
      ・「『
一次変換f RnRn 』の固有ベクトルpn(→条件Q1)の《Rn基底 { p1, p2, , pn } に関する座標ベクトルe nは、
                                         『
B固有値λnに対応する固有ベクトル
  となる。
  
対角行列であるための必要十分条件により、
  このとき、「《
[条件Q1][条件Q2]を満たすp1, p2, , pnから成る基底に関する一次変換fの行列表示Bn対角行列となる。
    すなわち、
B= diag(λ1,λ2,,λn) 
(step5) 
 「『
Rn標準基底に関する一次変換fの行列表示」をAと定義すると、
  
一次変換の行列表示に関する基底変換公式より、
  
step4で作成した「《条件Q1][条件Q2]を満たすp1, p2, , pnから成る基底に関する一次変換fの行列表示Bは、
         ・
step3で作成した「標準基底{ e1, e2, , en }から基底{ p1, p2, , pn }への基底変換行列P
         ・「Rn標準基底に関する一次変換fの行列表示A  
  に対して、次の関係を満たす。
         
B=P−1AP     
  これを、
step4の結論とあわせると、
      
P−1AP= diag(λ1,λ2,,λn)
  これは、
  「『
一次変換f RnRn 』が対角化可能」の定義にほかならない。

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定理:Rn上の一次変換が対角化可能になるための十分条件―固有値の観点


定理


一次変換f RnRn について、
命題Sn個の相異なる実数λ1 ,λ2 ,,λnが『 一次変換f RnRn 》の実固有値』である
が成り立つ
ならば
命題T一次変換f RnRn 》は対角行列 diag(λ1,λ2,,λn)対角化可能  

[文献]
松坂『解析入門418.1-C定理2 (p.88):数ベクトル空間限定;
・斎藤『線形代数入門5章§1[1.2'](p.132):体上のベクトル空間上の一次変換:証明つき;
・志賀『線型代数3028(p.178):R2上の一次変換;29(p.185):固有空間:R2上の一次変換;


行列の対角化可能の必要十分条件 
特殊な一次変換についての対角化可能条件:対称変換の対角化 


設定


この定理は、以下の舞台設定上で成立する。
R実数体(実数をすべて集めた集合)  
Rnn次元数ベクトル空間。 
  すなわち、
Rn=R×R××R{ ( v1, v2, , vn )v1Rかつv2RかつかつvnR }に、
        
ベクトルの加法スカラー乗法を定義したもの。 
  ただし、
Rnに属すすべてのn次元数ベクトルは、
         
n次元縦ベクトルの形式で表されているものとする。
fRn Rn」:n次元数ベクトル空間Rn上の一次変換 

証明

一般に、相異なる固有値に対する固有ベクトルは一次独立だから、
命題Sn個の相異なる実数λ1 ,λ2 ,,λnが『 一次変換f RnRn 》の実固有値』であるが成り立つならば
 《
一次変換f RnRn 》の実固有値λ1 ,λ2 ,,λnに対応する固有ベクトルp1, p2,, pnは、一次独立
したがって、
命題
Sが成り立つならば
  「
一次変換f RnRn 》が対角行列 diag(λ1,λ2,,λn)対角化可能となるための必要十分条件が満たされる。

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定理:Rn上の一次変換が対角化可能になるための十分条件―固有空間の観点


定理


以下の命題は
同値
命題P一次変換f RnRn 』が対角化可能である。
命題Qk個の相異なる実数λ1 ,λ2 ,,λkが『 一次変換f RnRn 》の実固有値』であって、
    
n次元数ベクトル空間Rnが、
       「
f固有空間E(λ1),E(λ2),, E(λk)直和に分解される 
           

命題Rk個の相異なる実数λ1 ,λ2 ,,λkが『 一次変換f RnRn 》の実固有値』であって、
     「
f固有空間E(λ1),E(λ2),, E(λk)各々の次元の和が、
      
n次元数ベクトル空間Rn次元nに等しい。
           
n= dimE(λ1)+ dimE(λ2)++ dimE(λk)    

[文献]
岡田『経済学・経営学のための数学』定理2.29 (pp.102-3)
・志賀『固有値問題306(p.42):複素ベクトル空間上の一次変換の固有空間,証明つき;
・斎藤『線形代数入門5章§1[1.2](p.132):体上のベクトル空間上の一次変換:証明つき;
・永田『理系のための線形代数の基礎』定理5.1.5(p.134):複素n次元数

・神谷浦井『
経済学のための数学入門』§5.3.2(pp.194-7) .
・砂田『行列と行列式』§6.1(b) (pp.202-3)


特殊な一次変換についての対角化可能条件:対称変換の対角化 


設定


この定理は、以下の舞台設定上で成立する。
R実数体(実数をすべて集めた集合)  
Rnn次元数ベクトル空間。 
  すなわち、
Rn=R×R××R{ ( v1, v2, , vn )v1Rかつv2RかつかつvnR }に、
        
ベクトルの加法スカラー乗法を定義したもの。 
  ただし、
Rnに属すすべてのn次元数ベクトルは、
         
n次元縦ベクトルの形式で表されているものとする。
fRn Rn」:n次元数ベクトル空間Rn上の一次変換 

証明


[命題Q⇔命題R]
 固有空間の次元-3による。 

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