実数における加法・乗法をからめた性質

 ・分配則/0との積/積の逆数/積と符号(1)/積と符号(2)  
 実数定義関連ページ:実数体・実数の定義/デデキントの連続性公理/実数体上の順序概念 
 実数の性質関連ページ:加法/乗法/加法・乗法の関係/不等式/不等式と加法・乗法の関係  
総目次
   

実数における加法・乗法の分配則 

【設定】


 R
: 実数体 
 xy実数体の定義‐条件A-0より、Rに定義された加法。  
 xy実数体の定義‐条件A-0より、Rに定義された乗法。  

【本題】

 どんなふうに、実数x,y,zを選んでも、
    ( xy ) z = xzyz , z( xy )= zxzy
 が成り立つ。

 つまり、
   x,y,zR にたいして、  ( xy ) z = xzyz 
   x,y,zR にたいして、  z( xy )= zxzy

【なぜ?】


 実数体の定義-条件A-4より、
  ・( x,y,zX ) (  ( xy ) z = xzyz , z( xy )= zxzy ) )
   を満たす代数系X実数体Rとよび、
  ・実数体R実数と呼ぶ
 のだから、
   ( x,y,zR ) ( ( xy ) z = xzyz , z( xy )= zxzy ) )
 は必ず成り立つ。
 成り立たなければ、それらは実数ではない。





[文献]
 ・黒田『微分積分学』2.2実数の四則演算と順序(pp.23-9);2.4.1連続性の公理(p.35)
 ・神谷浦井『経済学のための数学入門』2.1.1節(pp.53-65)          


 ・赤『実数論講義』§2.3                 



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定理:0との積

【設定】


 R
: 実数体 
 xy実数体の定義‐条件A-0より、Rに定義された乗法。  

【本題】


  どんな実数でも、0との積は0。

  つまり、  xR にたいして、 0x=x0=0

【なぜ?】


 step1:
  0+0=0 ∵任意の実数と0との和は0  
  だから、 (0+0)x=0x …(1) 

 step2:
  分配則より、(0+0)x=0x+0xだから、
  これで、(1)の左辺を書きかえると、
  0x+0x=0x  …(2) 

 step3:
  (2)の両辺に、‐(0x)を加えて、 
  0x=0 

  [→永田『代数学入門』定理1.4.2(p.12)]
  [→杉浦『解析入門I』1章§1-[2]問1vi(p.2)]
  [→神谷浦井『経済学のための数学入門』2.1.1(1)(p.63)]




[文献]
 ・杉浦『解析入門I』1章§1-[2]問1vi(p.2)
 ・神谷浦井『経済学のための数学入門』2.1.1(1)(p.63)
 ・永田『代数学入門』 定理1.4.2(p.12)
 ・松坂『解析入門1』1.3命題3(a)(p.29)      


 ・赤『実数論講義』§2.3定理 2.3.1(p.43)                 





常識的には、0x=x0=0は自明だが、

 アカデミックな数学は、 実数定義の段階では、0を加法の単位元として定義するだけ。
 だから、加法の単位元0が乗法でどのように振る舞うかは自明ではない。
 「0x=x0=0」は、加法の単位元と実数との乗法の結果は、常に加法の単位元であると主張しているわけで、
 それはそれで、驚くべきこと。

これは、実数体のみならず、一般について成り立つ。[永田『代数学入門』定理1.4.2(p.12)]







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定理:積の逆数

【設定】


 R
: 実数体 
 xy実数体の定義‐条件A-0より、Rに定義された乗法。  

【本題】


   どんなふうに、実数x,yを選んでも、(xy)-1=y-1x-1

  つまり、、x,yR にたいして、(xy)-1=y-1x-1 
   

【なぜ?】

 
  永田『代数学入門』定理1.3.3(p.9)参照。
   




[文献]
 ・杉浦『解析入門I』1章§1-[2]問1xi(p.2)
 ・永田『代数学入門』 定理1.3.3(p.9)      


 ・赤『実数論講義』§2.3定理2.3.4(p.45)                 





これは、実数体のみならず、一般について成り立つ。[永田『代数学入門』定理1.3.3(p.9)]

実数体では可換則が成り立つので、(xy)-1=y-1x-1=x-1y-1







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定理:積と符号(1)

【設定】

 R: 実数体 
 xy実数体の定義‐条件A-0より、Rに定義された乗法。  

【本題】

 どんなふうに、実数x,yを選んでも、(-x)y=x(-y)=-xy
 つまり、x,yR にたいして、 (-x)y=x(-y)=-xy  
   

 



これは、実数体のみならず、一般について成り立つ。
       [永田『代数学入門』定理1.4.2(p.12)]










[文献]
 ・杉浦『解析入門I』1章§1-[2]問1vii(p.2)
 ・永田『代数学入門』 定理1.4.2(p.12)
 ・松坂『解析入門1』1.3命題3(c)(p.29)      


 ・赤『実数論講義』§2.3定理2.3.5(p.45)                 




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定理:積と符号(2)

【設定】

 R: 実数体 
 xy実数体の定義‐条件A-0より、Rに定義された乗法。  

【本題】

 どんなふうに、実数x,yを選んでも、(-x)(-y)=xy
 つまり、x,yR にたいして、(-x)(-y)=xy   
 

 



これは、実数体のみならず、一般について成り立つ。
       [永田『代数学入門』定理1.4.2(p.12)]









[文献]
 ・杉浦『解析入門I』1章§1-[2]問1viii(p.2)
 ・永田『代数学入門』 定理1.4.2(p.12)
 ・松坂『解析入門1』1.3命題3(c)(p.29)      


 ・赤『実数論講義』§2.3問2(p.45)                 



reference

日本数学会編集『岩波数学辞典(第三版)』 岩波書店、1985年、項目156A.実数の公理系 (pp. 417-418), 168.順序 (pp.440-441). 項目183数:E.実数 (p. 475).
斉藤正彦『数学の基礎:集合・数・位相』東大出版会、2002年。第2章自然数から実数体の定義まで§5定義2.5.13 (p.58)
永田雅宜『代数学入門』培風館、1996年、定理1.4.2(p.12)。

【解析学テキストのなかで】

小平邦彦『解析入門I』(軽装版)岩波書店、2003年、§1.5-a上限下限(pp.36-7.)。
高木貞二『解析概論改訂第三版』岩波書店、1983年、§3.数の集合・上限・下限(pp.1-5.)
杉浦光夫『解析入門I』岩波書店、1980年、§1実数(pp.1-9).
笠原皓司『微分積分学』サイエンス社、1974年、1.1実数(pp.1-7).。
松坂和夫『解析入門1』岩波書店、1997年、1.3節順序体(p.29)。
吹田・新保『理工系の微分積分学』学術図書出版社、1987年、pp.3-5.
黒田成俊『21世紀の数学1:微分積分学』共立出版株式会社、2002年、2.2実数の四則演算と順序(pp.23-9);2.4.1連続性の公理(p.35)。
赤攝也『実数論講義SEG出版、1996年。
Walter Rudin,Principles of Mathematical Analysis,Mcgraw-Hill,1953-1976.
=ウォ−ルタ−・ルディン『現代解析学』共立出版、1971年、第1章。

【数理経済学テキストのなかで】

神谷和也・浦井憲『経済学のための数学入門』東京大学出版会、1996年、pp.56-64


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