ZMWG 2012年5月
INC4ドラフト条約テキストに対する
ZMWGの予備的見解

情報源:Zero Mercury Working Group (ZMWG), May 2012
Preliminary Viess on INC 4 Draft Treaty Text


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2012年5月12日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/zmwg/INC4/
ZMWG_Preliminary_Views_on_INC4_Draft_Treaty_Text_jp.html

はじめに

 この文書は、INCによる更なる作業のために、オプション(options)と代案(alternatives)が拠りどころとすべき勧告をまとめたものであり、交渉の進展と共に、支持、修正、追加、又は削除の根拠となる重要なドラフト条項を特定するものである。ZMWG は下記を勧告する。


序文
追加:
 汚染者負担原則を再確認する条文のテキスト。


第1条 目的
削除:
 第1条 bis. 第1節:水銀条約は他の条約に由来する権利と義務に影響を与えてはならないと述べている。この文言を採用することは、WTOの異議申し立てを助長し、水銀条約の供給と貿易条項に影響を与えるかもしれず、そのために同様な文言がストックホルム条約においては拒否された。
第1条bis第2節:水銀条約と他の通商及び環境条約は"相互に支えあう"とするストックホルム条約のテキストを反映しており、残されるべきであろう。


第3条 供給
保持:
オプション1:輸出目的のための一次水銀採鉱を5年以内に禁止し(選択される代案に依存する)、3〜5年以内に全ての一次水銀採鉱を廃止する。我々は最大3年以内に一次水銀採鉱を廃止することを勧告する。

削除:
オプション2:経済的に実行可能であるとの締約国の判断に基づき、一次水銀採鉱を締約国の裁量に委ね、採鉱をしない場合に補償を求める。


第4条 締約国との国際貿易
保持:
第2節 bis:条約の貿易条項を実施するために必要とされる国内認可権限を含み、第3節(b)は歯科アマルガムとしての使用のための水銀の貿易はカプセルに収められた形状で行なわれることを求めている。

削除:
第2節(b):水銀輸入に対する政府の同意要件を弱めている。

削除:
第4節(d):バーゼル条約に適切に従っていない。訳注:(d)は存在しない?


第5条 非締約国との国際貿易
追加:
非締約国との国際貿易条項は、現状では非締約国への輸出は本条約で許される用途に限定していないので弱い。テキストは非締約国への輸出をキッパリと禁止すべきであるが、少なくとも非締約国への輸出は許容される用途に限定し、締約国との貿易と同等レベルの管理とすべきである。


第6条 製品
保持:
オプション2:水銀添加製品の製造は許容用途免除が得られていなければ一般的に禁止されると述べて、ネガティブ・リスト・アプローチをとっている。少なくとも、新製品の使用を思いとどまらせ、市場に投入される新製品を特定しリストする負担を回避するために、新製品にはこのネガティブ・リスト・アプローチが適用されるべきである。しかし、廃止を義務的なものとしない第5節を削除するよう勧告する。

保持:
オプション1の第4節:廃止される製品を作るために使用される設備の貿易を禁止。

保持:
非締約国と貿易をする締約国が許容用途免除を入手するための要件。

保持:
バッテリー、測定機器、スイッチ及びリレー、 石けん及び化粧品、塗料、農薬、局所用殺菌剤の短期間での廃止、及び重要なランプについての水銀含有限度。

保持:
歯科アマルガムの廃止期日、及びその廃止期日に先立ち継続して実施することができる削減措置。

削除:
オプション4:水銀製品廃止への自主的なアプローチは意味のある結果をもたらさない。INC3でのコンタクト・グループで合意された。


第7条 プロセス
保持:
オプション2:ネガティブ・リスト・アプローチであり、これは第8条の下に許容用途免除を受けるプロセスを除いて、全てのプロセス中で一般的に水銀は禁止される。プロセスは製品のように複雑ではないので、ネガティブ・リスト・アプローチは特にプロセスについて適しており、全てのプロセスは可能な限り速やかに廃止されるべきである。

保持:
INC3でのコンタクト・グループの作業を作り直し、塩素−アルカリ、ナトリウムメトキシド(sodium methoxide)、塩ビモノマー(VCM)、及びその他の触媒プロセス(すなわち、ポリウレタン製造)での水銀使用の短期間での廃止を保持、困難な状況には必要な免除プロセスをもつ。

保持:
第6節:水銀添加製品製造プロセスで使用される設備の輸出を禁止。

削除:
オプション3:免除プロセスは特別の場合を取り扱うことができるので、"不可欠な用途"カテゴリーは必要ない。


第8条 免除
保持:
オプション1の要素:下記を求める。
  • 締約国会議(COP)のレビューと承認が免除を与えられる前に求められる(第1節、代案2)。
  • 免除を合理的な期間に限定する(第4節、代案2)。
  • 免除が適切であることを実証する(第5節及び7節のカッコ付きテキスト)。
  • 非水銀代替が世界的に入手可能である場合、免除入手を終わらせるための権限を与える(第9節、代案2)。
削除:
オプション2:終わりのない免除プロセスとなり、その結果、免除取得が余りにも容易で長期間になるため。

追加:
加盟国の国家行動計画と矛盾しないASGMのための輸入禁止に対する期間及び数量に制限をつけた免除を認可する条項。


第9条 人力小規模金採鉱(ASGM)
追加又は保持:
INC3でのコンタクト・グループにより準備されたドラフト・テキストに基づき、下記テキスを追加又は保持する。
  • 本条項における義務の記述を改善し明確にする。
  • 第8条における輸入禁止の免除の機会を提供する。
  • 国家行動計画要求の中に、脆弱な集団の水銀曝露を防止し、廃棄物からの放出に対応した戦略を含める。
削除:
”些細ではない(not insignificant)”閾値アプローチは、機能せず、不必要なので削除。


第10条 及び第11条 排出
保持:
新規及び既存の施設を可能な限り速やかに必須のBAT順守義務とするテキスト。

保持:
ASGMを除いて付属書F中の大気排出源カテゴリー。

削除:
新規及び既存の施設のためのBAT義務を弱めるような全てのテキスト

削除:
ASGMは第9条の下に分離した管理形態になっているので、付属書の中の排出源カテゴリーからASGMを削除する。

10条、11条の統合:
ZMWGは、著しい汚染源を目標とする全ての媒体へのアプローチと、目標とする排出源カテゴリーのための全ての関連媒体に対応するBAT指針の作成に賛成する。


第12条 保管
保持:
INC3でのコンタクト・グループの作業に基づき、下記のカッコ付きテキストを保持する。
  • 水銀化合物、特に第3条〜5条で貿易制限の対象となるものをカバーする。これらの化合物は保管される、又は元素水銀に変換されてから保管される必要があるためである。

  • 本条約への付属書として織り込まれるべき”中核”となる保管用件の開発と定期的なレビューを求める。

第13条 廃棄物
明確にすることが必要:
第13条の範囲に関し、特に、第10条及び11条の下でカバーされる発生源からの廃棄物はどのようにしてこの条約の下で取り扱われるのか。

保持:
INC3でのコンタクト・グルーにより提案された水銀廃棄物の定義。

保持:
非締約国との貿易に関するバーゼル条約との一貫性。

追加:
本条約への付属書として織り込まれるべき”中核”となる廃棄物用件の開発と定期的なレビュー。

追加:
第6条と7条の下に確立される製品とプロセスの廃止を考慮して、ドラフト条約テキストへの脚注10で熟慮されているように廃棄物最小化要求。


第14条 汚染サイト
保持、強化:
INC3でのコンタクト・グループのドラフトテキストに基づき、カッコ付きテキストは保持し、下記条項を追加する。
  • 締約国がサイトを優先付け、緊急状況を特定することができるようにするために必要な基本的な情報を入手できるよう、義務的な目録と特性化要求を含める。
  • 特に汚染サイトに対応するための財政的な責任の割り当てに関する指針の開発を求める文言の中で、汚染者が修復コストと被害者に対する適切な補償を支払うよう促す。
  • 指針開発は、汚染サイト修復で発生する廃棄物の安全な管理をカバーし、第13条に従い修復廃棄物の安全な管理を求める事を明記する。
  • 地域の集団がサイトの特性と彼等が直面するリスクについて知らされることを確実にする。

第15条 財政支援(暫定的資金調達に関する第21条も参照のこと)
保持:
下記構成と矛盾しないテキスト。
  • 財政メカニズムは、順守を促進し非順守を思いとどませるために、適切なリソ-スが利用できることを確実にする専用の基金を含まなくてはならない。
  • そのメカニズムは、締約国会議(COP)の優先事項と一致して割り当てられることを確実にするCOPの権限と指針の下に運用されなくてはならない。
  • 財政支援メカニズムは、この条約の義務に対する順守を促進し非順守を思いとどませるよう選定され運用されなくてはならない。
  • 専用の基金のためのガバナンス構造は、開発途上国の代表を含み運用の透明性ががなくてはならない。
  • 各締約国は、第22条(報告)に従って提出される報告書の中に、どのようにこの条項の規定を実施したかを示す情報を含めなくてはならない。
  • 汚染者負担の原則がこのメカニズムのなかでどのように利用されたか反映されている。
削除:
特に民間分野がこの責任を負うことができ、負うべきであるこの責任を、財政援助次第であるとするドラフト・テキスト。この種の文言は、多くの形で見られ、提案されたテキスト中に現れる。


第18条 情報交換
INC3でのコンタクト・グループにより準備されたドラフトテキストに基づき

保持:
NGOsが条約の策定と実施に果たす重要な貢献を考慮して、第2節bisのカッコつき”NGO”テキスト。

削除:
健康と安全にかかわる情報第を国家の法の下に機密とすることを許す4節のカッコつきテキスト。


第19条 情報公開、意識向上、教育
保持:
INC3でのコンタクト・グループにより準備されたドラフトテキストに基づき、締約国の条約の義務に合致した活動に関する情報の流れを促進することを締約国に求める第1節(a)(vi)中注のカッコ付きテキスト。


第20条 研究開発と監視
保持:
本条約の下にデータの収集を促進するためにカッコつきテキストを含める。

追加:
安全な保管と廃k物管理に関する研究オプションと技術。


第20条bis 健康の側面
保持:
健康の促進に関するINC3における会議室メモCRP19の重要な要素


第21条 実施計画
追加:
条約テキストは、批准の前に、又はその直ぐ後に締約国が国家実施計画(NIP)を作成するし、NIPは締約国がどのように本条約を順守するつもりかに関してロードマップを示す必須の義務を課している。NIP開発(及び関連する目録とギャップ分析作業)のための財政支援は、条約基金とは独立した、しっかりした暫定的資金調達の下に利用可能となる。ASGM国家行動計画のような条約管理措置により求められる計画は、別のもっと詳細な文書であり、一般的にはNIPが完成した後、又は順調に動きさした後に作成される。


第22条 報告
保持:
オプション1

削除:
オプション2。潜在的にどの締約国にも遵守放棄の自己宣告を与えることにより、報告プロセスとそのフォローアップの実施を混乱させ/長引かせ/遅らせるため。


第23条 効果の評価
保持:
条約効果評価の一部として第2節中のカッコ付きテキスト。


第33条 留保
削除:
締約国がこの条約に対して留保を行使できること。全ての締約国は、効果的に作業を行い望ましい結果を達成するために、条約の全ての条件によって拘束されなくてはならない。我々は、ストックホルム条約は留保を設けなかったことに留意する。



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