パレスティナ2001 - ver.4
その1、
その2、
その3、
その5、
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その9、
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その27、
その28、
その29
アラブの休日
今日は金曜日で、アラブでは休日である。やることがないので、うろうろ散歩してきた。
パレスティナというと、西岸やヨルダンなどのイメージが強く、内陸のイメージだが、
実はガザは地中海に面しており、海辺にある。宿泊しているホテルからも歩いて海までいける距離である。
今は冬なので、海岸には誰もいないが、海の家や監視用の台などがあり、夏は海水浴をしていると思われる。
海自体は特別きれいではないが、平和であれば観光客が来てもおかしくない場所ではある。
今日は休日でしかもラマダン中なので、店という店がみんな閉まっている。
ようやく見つけた店で食料などを買ってきた。右の写真がそのとき買ってきたものである。
スナック菓子二つとオレンジジュース、コンビーフ一個とビスケット、全部合わせて9NIS(約250円)。
まあ、安いのではないか。
パレスティナの物価は今ひとつまだ把握できてないのだが、
いつも買っているホテルのなかの売店が高いのだろうことは容易に想像できた。
これだけ毎日もめてるパレスティナだが、街角の店には
物は沢山おいてあるので、
物流が止まって物不足で困っているということはない。(写真左)
お金さえあればいろいろ必要なものは手に入る。
町を走る車でもベンツやアウディやらが走っているし、携帯電話やインターネットも普及している。
私が今まで行ったいろいろな国と比較しても、ここは貧しい国には入らない。
ただ、大きな問題はただ一つ。平和でないことである。
午後からはまた、ガザ市内に行ってきた。何度も足を運ぶうち、大分地理感覚がつかめてきた。
まず例によって床屋に入った。技術は十分。洗髪、カット、シェービングで30NIS 。まあまあ安い。
床屋の中で見たテレビでは、昨日のミサイル攻撃についての映像が写しだされていた。
昨日といい、一昨日といい、沢山アタックはあるのだが、何せアラビア語が分からないので、
ニュースを見ても状況がいまいちつかめない。
アラファトが昨日から散々テレビで演説をしているのだが、
時折英語が混じるだけで、あとはほとんどアラビア語であるから、完全には理解できていない。
どうも、アラファトがテロリストを非難するような形で、ハマスに対して対決姿勢を見せたような感じなのだが、
本当のところは分からない。
そこら辺のアラブ人にいろいろと聞くのだが、彼らの言っていることが必ずしも正しいとは限らないので、
インターネットで西側ではどういう報道になっているのかを見てみることにした。
すると、昨日のミサイル攻撃についてはすでに報道されていた。
警察署にミサイルが落ちたというのも正しい報道であった。ただ、報道の中で「Palestinianは何人死んだと報道している」
というような書き方をしているところがある。
つまり、パレスティナ側の報道は被害を大きく報道していたりするということなのだろうか?
しかし、実際にミサイルが落ちた現場に行ったり、テレビで死んだ子供の遺体にパレスティナの国旗をかけて、
デモをしているような映像を見る限り、彼らが情報操作をしているとも思えない。
所詮書いているのがアメリカを中心とした報道機関であるから、パレスティナ人より、
イスラエルよりの書き方になるのは仕方がないし、それで世論がつくられれば、国際世論がパレスティナに不利になるのは仕方がないのだろう。
私は、少なくとも、情報を正確に伝えようと思っている。
Al Quds病院(再)
今日は朝から騒がしかった。
救急外来に行くと、若者が4-5人血を出して寝ていた。
沢山の関係者や警察も入り乱れて何だが大変な喧騒だった。
イスラエルとのいさかいではなく、どうも、family problemによる喧嘩があり鉄パイプで頭をなぐられたとのことである。
3人は頭が複数箇所ぱっくり割れて縫合が必要であった。残りは背中の打撲と顔の擦過傷であった。
しかし、ここでは喧嘩も命がけで、大変なものである。
レントゲン上問題なく(当然CTは撮れないので)横に並べて一斉に縫合が始まった。
私も外科医なのでもちろん参加して、結局5cmくらいの傷を3箇所ほど縫合した。
もちろん無麻酔のパレスティナ流である。
レジデントに言わせるとこのようなケースは稀で今まで二回目だそうだ。
「お前が仕事がないというものだから、外傷が飛び込んできたのではないか?ラッキーなやつだ」
とレジデントの一人が言ったが、そうかもしれない。
私は日本でもいわゆる「付く」医者なので、どこに行っても患者が急変したり、緊急が飛び込んできたりする。
今回の訪問では、自爆テロやミサイルまで付くおまけつきである。
昨日の朝の緊急帝王切開といい、今日の喧嘩の男達といい、非常にunusualだそうだ。
まあ、すぐusualなヒマヒマ状態になるであろう。
ただ、一人のレジデントはこう言った。
「彼らのリベンジがあるかもね」
私の「付き」はまだまだ落ちない。
病院はオープンしたとはいえ、様々な施設が工事中であり、あちこちで工事をしている。
面白いのは、パレスティナではロバ車や馬車が現役であり、
病院の隣の工事現場では写真のようにブルドーザーと馬車が混在して存在する。
町を歩いていても、ベンツの後ろに馬車が走っていたりして、ちょっとしたカルチャーショックである。
パレスティナには医科大学がないので、ここで働く医師達は皆外国の大学で医師になったものたちである。
レジデントに聞いてみたところ、ロシア、シリア、リビアなどの大学を出ているとのことだ。
一般に、就職難は深刻であり、近くにあるイスラミック大学で心理学を専攻したものが卒業してPRCSの食堂で働いていたりする。
もちろん、食堂の従業員としてである。
彼としては少しは専門に近い場所でとのことだろうが、働けるだけまだましなのかも知れない。
テレビをみると、今日もイスラエルのアタックがあったようだ。
ガザ以外の場所でおきたアタックは全くの他人事のようで、日本でニュースを見ているのと同じような感覚でみている。
あまり実感がわかない。
そこで、今日はインターネットで日本の報道を見てみた。
イスラエルがアラファトを狙ったとか、PLOをテロ支援組織とみなしたとか書いてあった。
イスラエル的にはアフガンに乗じて有利に話を進めようとしているのだろうが、前述のように、
PLOはハマスとは銃撃戦をしているような関係であり、
PLOとタリバンを同列とみなすのは相当無理がある。
また、イスラエルの武力行使については容認どころか、過剰な武力行使非難の国連決議もある。
これはアラファトも言っていたが、イスラエルとパレスティナの和平をアメリカが仲介するというのはおかしなことだ。
仲介というのは本来中立である国がやるべきであり、イスラエルを支援し、武器を提供している国が中立であるはずがない。
ヨーロッパの多くの国がユダヤ人と縁があることを考えると、本当は日本なんかがもっとも良い仲介者となりうると思うのだが、
残念ながら、期待できそうもない。
私が思うに、イスラエルはユダヤ人の命とパレスティナ人の命は1:3くらいに思っているんだと思う。
今回のテロで、25人ほど死んだので、パレスティナ人を75人位殺すまでは報復をやめないのではないか。
イスラエル的には、まだまだ腹の虫がおさまらないという感じである。
根本には白人特有のラシズムがあるように思う。その点はアメリカとアフガンの関係と非常に似ている。