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「眠れない夜」

原始の人々にとって、闇に抱かれ、ただ眠るためにあった「夜」の時間。

今ではどこもかしこも照明が完備し、「暗闇」を探すのにもひと苦労です。生活サイクルも様々になってきました。昼間働き夜眠るという「基本」と信じていたリズムも、正反対の人だってたくさんいます。

私は「布団に入れば3分で記憶がなくなる」寝つきの良い人間ですが、友人たちの中には、不眠症に悩み誘眠剤のお世話になっている人もいます。眠れない、眠らなきゃ、と思えば思うほど焦って眠れないのが不眠症だそうですね。

よく、そんな人に向けた「眠れないのはラッキー、あえて起きあがって本を読んだり音楽を聴いたりしてみなさい」なんて文章を目にすることもあります。


深夜に開く絵本

眠るためのコンサートや、いわゆる「癒し系」グッズ、ビルの一角の「仮眠室」。それらを見ていると、人々がとても眠りたがっているのがわかります。音も明かりもなく胎内にいるような安心感。多くの人たちがそんなものを心の奥底で欲しがっている気がします。

さて、私のひそやかな「夢」です。眠れない夜にページを繰る「本」を作りたいなあ…でも小説やエッセーだとついつい頭を使い目がさえてしまう…うーん…出来るだけ頭を使わないで読めるもの…そうだ、「絵本」がいい。

眠りに入る直前、人は頭の中に脈絡の無い「イメージ」を巡らせます。それらを一冊の絵本に閉じこめたら?読んでいるうちに眠くなってきたら大成功。続きは夢の中、ご自分で創作してください。

実は、そんな「絵空事」を考えるのが、私の夜ごとの誘眠剤なのです。


「名古屋リビング新聞」2002年11月
『わ・た・しの時間』