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「雑木林」

あなたのお気に入りの場所はどこですか。コーヒーのおいしい喫茶店、図書館、バーゲン会場、カラオケボックス、遊園地、路地裏、小さな美術館…。それは、人それぞれ。

さて、そこで今日は、ちょっと疲れたあなたに元気になってもらう場所として、雑木林(ぞうきばやし)にご案内致します。

『余は斯雑木林を愛す』…この一文で「雑木林」という言葉を初めて使ったのは、明治の文豪徳富蘆花だとか。今日は、平成の文豪になって、ひとり木々の間を散策しましょう。

梢の先には青い空。アスファルトでは味わえない感触の枯れ葉の小道。鳥の声が頭上を通り過ぎます。この時期、すっきりと葉の落ちた枝から太陽の光が差し込んで体中にしみこんできます。


身近にある自然

雑木林は決して放置された林ではありません。間引きと言って、それなりの手入れがあってこそ、生きていけるものです。でも、植林のように同じ種類の木々が幾何学模様のように並ぶのではなく、さまざまな木や草、虫たちがそれぞれに共存できる場所なのです。

そして以前は、子どもたちの格好の遊び場であり、薪や木炭、落ち葉で出来た堆肥など人々の生活にも、たくさんのプレゼントをくれました。

どうです。ゆっくり雑木林を歩くと、あくせくしていた時間の流れがふっと止まり、樹木の声が聞こえてきそうな気がしませんか。疲れた心も息を吹き返して。

最後に、私の願いを聞いてくれますか。お気に入りの場所が、不燃物やら電化製品の落とされるゴミ捨て場に変わり果てることがありませんように…。


名古屋リビング新聞2002年2月
「わ・た・しの時間」