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「芸術鑑賞の心」

日本では、たとえばコンサートへ行っても、拍手のタイミングまで周りの様子をうかがいながらの人が多いようです。また、ステージ上でどんなにひどい演技や演奏が展開しようとも、じっと我慢して最後まで付き合うのも日本人の特性のようです。

海外の美術館では、学芸員の解説と自分の感想とが異なっていたりすると、それを率直に伝える場面を見かけます。比べて、この国の美術館では、学芸員の話を黙って聞いている人々の姿しかほとんど見られません。

小学校の芸術鑑賞会でいちばん気になるのが、開演前の校長先生のお話だとある人が言っていました。「体を動かさないように」「隣の人とおしゃべりしないように」

これでは、始まる前から子供たちはがんじがらめです。すてきな音色に声が出そうになっても、ぐっとこらえてしまいます。感動して先生の指示のないところで拍手をしてしまい、周囲ににらまれて音楽会が嫌いになってしまった子供もいます。

みんなが楽しめるように協力し合うことは、とても大切なことです。でも、心を押さえつけたままでは、感動の瞬間は訪れないでしょう。

私はたくさんの学校を見て、意外なある共通点を見つけました。それは、低学年がステージを見てついおしゃべりしてしまう学校では、高学年になるとじっと耳を澄ませて聞いてくれるということです。自由に楽しめる経験を経て、すてきな楽しみ方の出来る大人へと成長していくのでしょう。


「名古屋リビング新聞」2003年09月
『白樺八青の Heartの休息』