白樺八青(しらかば・やお)オフィシャルウェブサイト〜風の通る部屋〜 

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「だれでもカメラマン」

むかしむかし、子供心に不思議に思ったことがありました。それは、近所のおばさんが撮ったうちの愛犬の写真を見たときです。自称動物好きの私が撮ったものと見比べたら…、どれをとってもおばさんの作品の方が数倍かわいいではありませんか。「えーっ、この子、こんな表情するの!」それは衝撃にも似た感覚でした。そして言葉を交わしたこともほとんどないそのおばさんのことが私は好きになりました。

時は流れ…今、被写体に対して愛情を持っていなければ、あんな写真は撮れないということも、はっきりわかりました。そう、写真は目の前にあるものを映すだけではなく、レンズのこちら側にいる人間の心を映し出すものではないかと思うのです。


テクニックより、心

「センスがない」とか「構図がちょっと…」とか、いろいろ考えすぎて尻込みしてしまうのが写真です。たしかにプロのカメラマンになるなら、分かっていた方がいいルールもあるでしょう。でも、そうでないなら、何でもアリ!です。ピンボケがいい味を出すことだってあります

まずは、使い捨てカメラでいいので人物以外を撮ってみましょう。思わず心が動いた風景でもお花でも。フィルム1本惜しみなく使うと、中に自分でもいいなあ、と思える写真が混ざっているはずです。試しにそれを引き延ばしてみましょう。ほら、それはもう立派な作品でしょう。

だんだん面白くなってきたら、ぜひとも一眼レフカメラをお薦めします。明暗、温度、表情がぐんと豊かになります。あなたの心を映す鏡は、さらに世界を大きく広げるでしょう。


「名古屋リビング新聞」2002年06月
『わ・た・しの時間』