白樺八青(しらかば・やお)オフィシャルウェブサイト〜風の通る部屋〜 

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「輝き始める瞬間」

「八青さんに誘って頂いたおかげです、ありがとう」。

小学高学年以上を対象にしたミュージカルのワークショップの時間、ある女子中学生のお母さんから声をかけられました。

あらたまってそんな言葉をもらうと、照れくさいと同時に「こういう仕事をしていてよかったなあ」と思います。

よくよく聞いてみると、ワークショップに来るまで、ちょうど反抗期も重なって母娘は口げんかの毎日、お互いの溝は深まるばかり、お母さん自身も悩んでいたそうなのです。

そんなことも知らない私は「声優になりたい」と言っていたその子をふと思い出し、応募締め切り間際に声をかけました。即座に「行く!」と答えが戻って来ました。

そして今、母親も驚くほどその子は、自信と輝きを増して来ました。母娘げんかも嘘のようになくなったとか……。

私は、自分の中学時代を思い出しました。声の小さな引っ込み思案の子供だった私が、演劇部に入ったのをきっかけに、一年後には自分の意見を全校生徒に向けて話せるほどに変身したのです。人生の大きな転機だったと今でも実感する出来事です。

今、いろいろなところで「講座」を開き、たくさんの人と交流をしています。出会った人が一つの転機を迎え、そして輝き始める瞬間、その喜びを共有したい、そんな願いを私はいつも抱いているのです。


「名古屋リビング新聞」2003年06月
『白樺八青の Heartの休息』