EHN 2010年6月28日
フタル酸エステル類はメスの魚の生殖機能を損なう
Synopsis by Jennifer F. Nyland

情報源:Environmental Health News, June 28, 2010
Phthalates impair female reproduction, too, finds fish study
Synopsis by Emily Barrett
http://www.environmentalhealthnews.org/ehs/newscience/phthalates-affect-female-fish-reproduction/

オリジナル論文:
Carnevali, O, L Tosti, C Speciale, C Peng, Y Zhu and F Maradonna. 2010. DEHP impairs zebrafish reproduction by affecting critical factors in oogenesis. PLoS ONE
http://dx.doi.org/10.1371/journal.pone.0010201

訳:安間 武(>化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2010年7月2日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ehn/ehn_100628_Phthalates.html


 イタリアの研究者らがオンラインジャーナル PLoSOne で報告し研究によれば、不妊をもたらす生殖問題が環境中で普通に見出されるレベルのフタル酸エステル類に曝露したメスの魚に見られた。その結果は可塑剤がオスだけでなくメスにも影響を与えることができることを示した最初のものである。

 この研究で見出された影響の多くは魚に投与された DEHP の用量に依存したが、それらは環境中で人や野生生物が曝露するであろう範囲内の濃度である。メスの生殖系に及ぼす DEHP の影響のこの予備的な証拠は、メスによるさらなる研究がヒトを含む他の生物種においても正当性があることを示唆している。

 プラスチックを柔軟にすために広く使用されている環境化学物質のグループであるフタル酸エステル類が、肥満から注意欠陥多動症まで広い範囲の健康問題に関係していることを示す証拠が増大している。フタル酸エステル類は環境中に広く存在しているので、ほとんど全ての人がこれらの化学物質に曝露しており、その健康問題が特に懸念されている。

 フタル酸エステル類はアンチ・アンドロゲン(抗男性ホルモン)として作用し、テストステロン(訳注:男性ホルモンの一種)生成を低減し、特に強力なフタル酸エステルである DEHP は男性の生殖系の発達に有害影響を及ぼすことで悪名高い。動物モデル(そして数は少ないがヒト)において、DEHP 曝露は精子数の低下とオスの外性器の発達に変化をもたらす。しかし、今日まで、メスの生殖機能もまたリスクに曝されるかも知れないこと示した研究は数少ない。

 ゼブラフィッシュを用いてオリアマ・カルネベルらは DEHP への曝露が様々な方法でメスの生殖機能を損なうことを見つけた。ゼブラフィッシュとヒトにおいて、同様な生殖ホルモンとたんぱく質が卵の成長、成熟、産卵をつかさどる。これらのプロセスをつかさどる遺伝子の多くは、種を通じて非常によく似ている。このことが、DEHP のような化学物質がヒトに及ぼすかもしれない影響を理解するための出発点として、研究者らがゼブラフィッシュを使用する理由である。

 この研究で、成熟したメスのゼブラフィッシュを DEHP に3週間、曝露させたのち、研究者らは生殖機能について様々な観点から検証した。研究者らは DEHP に曝露した魚を環境エストロゲン(女性ホルモン)に曝露した魚、及びコントロールとして曝露していない魚と比較した。

 彼らは、環境エストロゲンの場合とよく似て、DEHP 曝露が卵の発達における栄養の基礎を形成するたんぱく質のレベルを高めることを発見した。DEHP はその後、少なくともメスのゼブラフィッシュにはエストロゲンとして作用するかもしれない。

 DEHPに曝露した魚は、曝露していないコントロールの魚に比べて生殖系に他の多くの変化を示した。交尾後、DEHP 曝露のメスはコンとロールに比べてはるかに少ない数の胎芽を生んだが、そのことは彼らの生殖能力が何らかの方法で損なわれたことを示唆している。実際に、最も高いレベルの DEHP に曝露したグループは、コントロールが生む胎芽の数の1%しか生まなかった。

 メスのゼブラフィッシュからの発達中の卵が試験管中で DEHP に曝露したときに、成熟プロセスが停止した。追加のテストにより、これは卵の最終的な成熟プロセスを制御する重要な3つのたんぱく質のレベルの変化が原因であることを示した。DEHP はまた、排卵異必要なたんぱく質の生成を阻害し、これは特に高用量で起きた。


訳注:参考情報


化学物質問題市民研究会
トップページに戻る