Rock Listner's Guide To Jazz Music

ネットワーク・オーディオ Part 2
(2017年3月)



Squeezebox Touchを既に6年使っていて、コントロール・アプリiPengとの組み合わせての機能(と音質)にはほぼ100%満足している。アナログ出力に限って言うと大音量での歪がやや目立つところはあるものの、マンション住まいでの許容を超えた音量での話。通常はDACを介して聴いているのでそれも問題というわけではなく、他のネットワーク・プレーヤーを特に必要としているわけではない。しかし、Squeezeboxは2012年でディスコンになってしまったため、今後永続的に使い続けて行くには何かと懸念がある。機器は壊れたら終わり、サーバー・ソフトも今後のPC、NASの環境でいつまで使えるかわからない。40,000曲のライブラリを今後もずっと使い続けることができるようにするためには、できるだけ汎用のDLNA規格で利用できるネットワーク・プレーヤーがあってくれた方が望ましいんじゃないかなとずっと思い続けていた。しかし、市場には音や機能が特別優れているわけでもないのに、旧態然とした無駄に高価で大きな筐体の製品しかなく、試そうという気になれるものがなかった。

そこに現れたのがYAMAHA WXC-50。拙宅の狭いリビング事情においては、筐体が小さく、縦置きにも対応してスペースを取らないところがまず嬉しい。43センチ幅のコンポサイズに囚われず、ネットワーク・プレーヤー(デジタル入力なども備えていてプリアンプとしても使用できる)はこの程度のサイズで十分という潔さが良い。デジタル出力が2系統(光、同軸)、アナログ出力も備え、無線LANにも対応するところはSqueezeboxと同等で不足はない。そしてFLAC/AIFF/WAVは24bit/192KHzまで対応(ALACは96KHzまで)、ネットワーク規格ではAirPlayやBluetoothに対応しており、DSD(個人的にはまったく興味ない)を除いてギャップレス再生もできるという、イマドキのネットワーク・プレーヤーとして最低限必要とされそうな基本的な項目はほぼ押さえてあるところに魅力を感じる。

早速QNAPのDLNAサーバーを稼働させてみる。コントロール・アプリMusicCastをインストールし、その流れに従って行けばWXC-50のネットワーク設定は簡単に終了。無線LANの設定をしたことがある人なら戸惑うことはないでしょう。

アプリMusicCastの操作性は軽快で良好、ホーム画面にはSpotify(ただSpotifyアプリを起動するだけ)、radiko、AirPlay、Server、NetRadio、Bluetooth、USB、AUXといった音源ソースごとのアイコンが並んでいてわかりやすい。家中の対応機器をトータルで管理、操作できるため、対応機器を各部屋に置いてネットワーク・オーディオ環境を家中で利用たいという人には更に利便性が高くなるという付加価値もありそう。

さて、ここからいよいよ QNAP NASにライブラリを置いた環境での SqueezeBox Touch+LMS(Logitech Media Server)+iPeng との比較になります。

SqueezeBox Touch+LMS+iPeng でできることで僕が重視していることは以下の項目。

[1] ライブラリー管理のしやすさ(曲を追加してから聴けるようになるまでの簡便さ)

[2] ディスク番号、アルバム・アーティスト、作曲者タグに対応していること

[3] ジャンル → アーティストの階層でそのジャンルの全アルバムが表示できること

[4] iPadアプリで曲をブラウズするときの文字表示量が多いこと

[5] 再生中の曲へのアクセス、操作が簡単で情報が見やすいこと

iOSデバイスを筆頭にアルバム・アーティストに対応しているデバイスは、アーティスト一覧ではアルバム・アーティストでの表示になり、アーティスト名を表示しないケースが多い。両方に対応しているものでも、設定で選んでどちらかの表示しかできないことが多いようだけれども、LMSは両方とも合わせて表示してくれる。例えば、ラファエル・クーベリック指揮のベートーヴェン交響曲全集は、9曲すべて別のオーケストラというボックスで、この9曲に Rafael Kubelick Beethoven Symphony Box というアルバム・アーティスト名を付けておけば、これを選んで9曲の交響曲を一覧表示させてから選ぶこともできるようになる。作曲者タグは、ロックやジャズを聴いているときに「これは誰が書いた曲なんだっけ」というときに、クラシックの場合「サン=サーンスっていつの時代の人だっけ」(Camille Saint-Saens (1835-1921)のように入力している)いう時に参照することがあるため、必須とまでは言わないもののできれば表示してもらえることが望ましい項目。

ネットワーク・プレーヤーの世界で標準的な(即ち普及している)DLNA系のサーバーは、再生できる商品が出回って既にある程度の時間が経過してるからもうこなれているんじゃないかな、まあ僕が重視していることくらいはクリアしているだろうと思って標準である「こっちの世界」に入ってみた。先におおまかな結論を言ってしまうと、「こっちの世界」は使い勝手が悪くとっても面倒。以下、試してみたDLNAサーバー(QNAPで動作させることができるもの)とコントロール・アプリ(iPad版)について所感を書いてみる。


[Twonky Server]

よく名前を見るDLNAサーバーで、DLNAサーバー利用者の8割以上がこれを使っているのではないかとまで言われているデファクト・スタンダード。QNAPでは標準アプリとしてインストール済み。ところがこれはちょっとビックリの、ディスク番号、アルバム・アーティストに非対応。これまでのライブラリーに大量に存在するCD複数枚またがり交響曲のトラック番号を打ち直すことは考えられないため、ディスク番号非対応では使えない。曲の検索でも、ジャンル → アーティストの階層で全アルバムの表示ができないため、操作性も僕の要望を満たしていない。ライブラリの管理は、まずまずわかりやすく及第点。スキャン・インターバルを -1 に設定しておけば、曲追加時にすぐに反映してくれるのはとても良い点。ただ、どういうわけか拙宅のQNAPはNASを再起動すると設定が消えてしまい、ライブラリーをスキャンし直さなくてはならないことがあったり、いろいろ動作が不安定だったりする。機能が貧弱で安定して稼動してくれないので、すぐに利用することを断念。

以下、ディスク番号に対応しているDLNAサーバーを探してトライ。

[MinimServer]

QNAPでの導入は簡単。App Centerから、前提となるJRE_ARMというアプリをインストールしてからMinimserverをインストール。管理画面を開いてすることは、ライブラリーの場所指定だけで、QNAPのデフォルトであるMultimediaを利用しているのなら初回は自動でスキャンされる。スキャンのステイタスは表示されるものの「Refresh」ボタンを押さないとステイタスは更新されない。ステイタスがStartedからRunningになればスキャンは完了。全曲スキャンに要する時間は、40,000曲で30分くらいと早い(途中経過を表示しないし終了を知らせてもくれないので厳密に測定したわけではない。以下スキャン時間はQNAP TS-112Pでの話)。

ライブラリー変更時には、Media server status for MinimServer [QNAP]: の項目の「Rescan」ボタンを押すだけ。このボタンはフルスキャンも差分スキャンも区別がなく、恐らく自動で判断してやってくれているものと思われる(所要時間より推測)。パソコンにMinimWatchというソフトをインストールすれば、サーバー名などもう少し多くの項目が管理可能になる。Web画面でのライブラリ管理の画面がかなりぶっきらぼうなので当初は面食らうものの、やることは他のDLNAサーバーと大差ないので慣れれば問題ない。

アルバム・アーティストのタグ情報が入力されている場合、「Artist」を選ぶとアルバム・アーティストが入力されている場合はアルバム・アーティストでリストされる(iTunesやiOSデバイスと同じ動き)。アルバム・アーティストではなく、アーティスト名で検索したければ「All Artists」を選べば良い。ブラウズ階層、メニューは豊富でジャンル → アーティストの階層で全アルバム検索も可能であるところも僕のニーズを満たしている。また、アーティスト → ジャンルという順でもアルバムを探すことができるなど、探し方の自在性が高いのが特長。一方でその分煩雑な階層構造と感じる人もいるかもしれない。

尚、自分で任意のタグ項目を追加して、それを利用できる自由度もこのサーバーソフトの良いところ。

[Asset uPnP]

こちらはQNAPの場合30ドルの有償版(参考情報はhttp://kotonohanoana.com/archives/8031)でインストール後、30日間はトライアルで無償利用可能。QNAPのAPP Centerからの検索では出てこないのでWebサイトからQPKGをダウンロードして手動インストールする必要がある。

このDLNAサーバーの特徴はメニュー画面をカスタマイズできること、その自由度が高いことにある。僕が望む「ジャンル → アーティストの階層でそのジャンルの全アルバムが表示できること」はカスタマイズで実現。同じ画面でアルバム・アーティストとアーティストの両方表示はできないもののジャンル階層の下にアルバム・アーティストのメニューを追加することで概ね解消した。ライブラリーのスキャンは40,000曲で1時間30分くらいと長めではあるものの、差分スキャンの指定もあるので初回スキャン以外はあまり億劫にはならない(参考までに、LMSのフルキャンはおよそ1時間10分程度)。

Asset uPnPは同じアルバムタイトル名で別アーティストだと別アルバムとしてうまく分類できないらしい。例えば Rachmaninov: Piano Concerto #2 というアルバム名でいくつかの演奏家のものがある場合、同じアルバムとしてごちゃまぜになってしまう場合があります。これだとクラシックのライブラリでは使えない。

MusicCastでは、再生中の画面では、MinimServerで作曲者名を表示していた場所に、アーティスト名が表示されるようになる。アプリが同じでもサーバーが違うと出て来る情報が異なるのはちょっと予想外の結果。

尚、クラシックの協奏曲はCDDBから引っ張ってくる情報によると表記方法の世界的にスタンダードはソリストと指揮者+オーケストラは ; (セミコロン)で区切るようになっている(感覚的には80%以上がこの書式)。この名前の処理がLMS、MinimiServer、Asset uPnPでそれぞれ異なっている。例えば、

Martha Argerich; Claudio Abbado: Mahler Chamber Orchestra

とアーティスト名が入力されている場合、LMSはアーティスト名に「Martha Argerich」と「Claudio Abbado: Mahler Chamber Orchestra」両方がリストされ、どちらからもそのアルバムを参照できる。つまり、ソリストからも指揮者+オーケストラからでもアルバムを探すことができるようになっている。MimimServerはセミコロンを含めたアーティスト名がそのまま表示され、Asset uPnPはソリストのみ表示される(指揮者とオケは表示されなくなってしまう)。どの方法であってもソリストから探すぶんにはそれほどの相違は出ないものの、LMS以外は指揮者+オーケストラからその協奏曲を探すことはできない。

【コントロール・アプリ所感】

「Server」からライブラリーを選択、曲をブラウズして行くときの画面は右側に細々と表示されるだけでとても狭い。SqueezeBox Touch本体ディスプレイの約4倍の表示面積があるiPadで使っているのに表示できる情報(文字)がSqueezeBox Touch本体より少ない。最近のDAPと同じ傾向で、ブラウズ時のアルバム・タイトル、曲名などの文字が表示しきれない長さのとき、収まらない文字はカットされてしまう。ロックやR&Bのようなポピュラー系やジャズの場合はほとんど問題ないものの、クラシックの場合は同じ曲のリストが多くなり、曲名後半が切れてしまうと、交響曲の何番かが見えないという致命的なことが発生してしまう。これではiPadの大きな画面で操作する意味がまったくない。

曲再生中の画面は更に問題だらけ。いや、よくぞここまで削ったなと思えるほどの情報切り捨てぶり。再生曲の長さ、シークバーの表示もなく、シークバーによる曲進め/戻しはもちろんできない。再生中アルバムの曲一覧(プレイリスト一覧)を含め、どの画面を見ても、その曲が何分の曲かを知ることすらできない。また、現在再生中の曲がアルバムの何曲目かも表示されない。これらはほとんど(すべて?)のコントロールアプリやDAPでは見ることができて当たり前の情報で、どういう意図で削ったのかという疑念は消えない。

というわけで、あまりにもMusicCastのデキが酷いので汎用的に使えると言われているLINN Kinskyというアプリをトライしてみる。使えると思ったら、WXC-50が見えたり見えなくなったり不安定で、使えている場合でもギャップレス再生ができなくなってしまった。

次にOpenHome対応のプレーヤーなら使えるLUMIN Appにもトライ。OpenHome環境でWXC-50を認識させるためには、Bubble uPnP ServerをLAN内に立てる必要がある。QNAPを使っているのであればアプリをダウンロードしてインストール、設定画面を開いて「Media Renderers」タブでネットワーク・プレーヤーを選択し、Create an OpenHome renderer のチェックボックスにチェックすればOK(詳細はhttp://kotonohanoana.com/archives/8594)。やった!操作できる!と喜んだものの、こちらもギャップレス再生ができない。もう一度設定を見直すと、同じ「Media Renderers」タブにGapless playbackという項目があり、ここにチェックを入れたらギャップレス再生できるようになった。

尚、Bubble uPnPサーバーを立てるとLINN kinskyアプリも安定して操作できるようになり、こちらのアプリでも操作可能となって、これでMusicCast以外の選択肢がまた増えた。

LUMIN Appもそう大きく違うわけではないけれど、DLNAサーバー初回接続時に全ライブラリーをスキャンしてアプリ自身でライブラリーを構築、それを利用できるところが特徴。ところがこのライブラリが使いづらいので、素直にDLNAサーバーのライブラリーを参照して使ってみる。サムネイル表示とリスト表示の選択ができるところがまず良い。現在のフォルダ位置のボタンをタップすると上位階層へジャンプ(いくつか選択肢が出る)できるところも有り難い。操作面ではシークバーがもちろん利用可能。再生中画面は残念ながらKinskyと同じで、作曲者タグは読み込まず、ジャケット鑑賞モードにしかなってくれない。総じてKinskyよりは使いやすく、いろいろ操作方法に選択肢があるアプリだと思う。

結果的に、いろいろと策を講じることなくまともにギャップレス再生できるのはWXC-50標準アプリのMusicCastのみということに。ギャップレス再生はレンダラー(プレーヤー)だけに依存すると思っていたんだけれど、それ以外(アプリなど)にも依存するものなんだと今回初めて知った。曲再生中の情報もアプリとDNLAサーバーの組み合わせによってそれぞれ変わってしまう。つまりDLNAサーバーを利用したネットワーク・プレーヤー環境での使い勝手(できること、できないこと)はいろいろなパターンがあって、それぞれ試してみなくてはわからない。「こっちの世界は面倒」と書いたのはそういう理由からのこと。Bubble uPnPサーバーを立てればKinkyとLUMINもギャップレス再生可能になるので、結果的にはまあよしとしましょうという感じでしょうか(これらの動作はあくまでもWXC-50での話で他のレンダラーでどうなるかはわかりません)。

iPengは左側のペインにメイン・メニューが常時表示(下写真)されており、ジャンル、アーティスト、アルバムのメニューにワンタッチで戻れるのがなんと言っても便利。LUMINはKinskyのようにひとつずつ階層を上がる必要こそないものの2タッチ必要で、どこまで戻るのか直感的でないところが惜しい(その代わりどの階層にも移動できる)。

尚、ここで試したどのアプリもプレイリストに登録した曲を順次再生する仕組みになっている。ただし、その登録の方法がやや異なる。

MusicCastはアルバムの1曲めを選択するとアルバム全曲がプレイリストに登録されて順次再生、別のアルバムの1曲めを選択すると前のプレイリストをすべて消去して選んだアルバム全曲をプレイリストに登録して順次再生する方式のため、プレイリストを操作していると意識させない作り。

LUMINとKinskyは(それぞれオペレーション方法がやや異なるものの)アルバム全体または曲を選んでプレイリストに登録して再生する方式。Kinskyは(操作方法を僕がわかっていないだけなのかもしれないけれど)、次のアルバムを選択すると既存のプレイリストに追加して再生する方式でこれだといちいち以前のプレイリストを消していかないとどんどん溜まってしまう。LUMINはKinsky同様な追加もできるし、既存のプレイリストを削除して新規アルバムをプレイリストに登録、それをそのまますぐに再生する方法も選べる。既存のプレイリストを削除する方式だとMusicCast同様にアルバムを選択するような形になる。

これらに対してiPengは1曲ずつプレイリストに追加することもできるものの、基本的にはアルバムから1曲めを選択するとアルバム全体がプレイリストに登録されて順次再生されるMusicCast方式。

僕は基本的にアルバム単位で聴くのでiPengかMusicCastの方式が使いやすい。iPengはプレイリストで曲を選んで追加することもできるから僕にとっては一番フレキシブルに使える。また、アルバム選択時にそのアルバムのトータル時間を表示してくれるのもiPengのみ。再生中(ジャケット大写し)画面で曲情報を表示し続けてくれるのも、そこで作曲者情報を表示してくれるのもiPengのみ(MusicCastはMinumServerのときのみ作曲者を表示してくれる)で、しかもその画面で横方向にスワイプするとアルバムの曲一覧表示にもできます。

要は、操作性も情報量も情報の見え方も、どれを取ってもiPengが断然使いやすい。慣れているということを差し引いたとしても。

また、iPengはプレイバック機能(操作している端末でも音楽を再生できる機能)もあり、Bluetoothスピーカーで聴きたいときにも利用できるし、iPadだとAirPlay環境があればプレーヤー(レンダラー)がなくても音楽を聴くことができるフレキシビリティがあり、ここで試したどのアプリよりも多機能。

強いてiPengの欠点を挙げるとすればひとつ。iPengはタブレットがスリープ状態になるとサーバー(LMS)とのセッションが切れるため、次の操作のときに再接続で少し待たされ、場合によっては操作をやり直さないといけないことがある。NASが他のアクセスでビジーな場合だと、さらにその状況に陥りやすい。今回試した他のコントロール・アプリはそういった「待ち」を感じることはほとんどなかった。バッテリー消費を気にしないのであればiPengもセッションを維持する設定(Preserve Commection を On)にできるので、その場合はこの問題はクリアになるし、仮にセッションが切れて上記リトライの操作をすることになったとしても大量にファイルをコピーしていたり、重いスキャンをかけたりしていなければ長時間待たされるケースは少なく、それほど面倒には感じない(慣れちゃってるせいかも)。

【総括】

WXC-50(とDLNAサーバーとコントロール・アプリ)は、SqueezeBox Touch+LMS+iPengで普通にできることができないし、今回試した範囲では、どのサーバー、どのアプリを使ったとしても操作性が及ばないという結果になった。NASの音楽ライブラリーを再生することに関しては、僕の利用形態だと、WXC-50 + MusicCastではできて、SqueezeBox+iPengではできない、という逆パターンがひとつもないというかなり残念な結果に。SqueezeBoxが使えなくなったときの仕方なしの代用品としてなら認められるものの、この完成度では移行しようとはとても思ない。幸いにして動作したLUMIN Appのおかげで、最悪Squeezeboxが使えなくなったとしても及第点の操作性を確保できたとは思うけれど、uPnPをセットアップして他社のアプリを使わなくてはならないようではヤマハの製品としてよくできているとは言えない。

今回、WXC-50導入でいろいろ試行錯誤して思ったのは、DLNAを中心としたネットワーク・プレーヤーの世界は、今後ずっと利用できるか、という観点でも盤石でないことだった。QNAPはTwonky Serverをサポートから外すというニュースが出ている。MinimServerもAsset uPnPも開発者がいつまでQNAPで動作するものを提供してくれるのかわからない。もともと「いつまで使えるのか不安だったSqueezeBox環境」を懸念してたのに、DLNA系の世界でも状況はそれほど違っておらず「5年後はどうなっているかわからない」ものだったというわけです。もちろん、それに代わるものが出てくる可能性もないとは言えません。でも、そういう情報に常に注意を払って、何かができなくなったとしても代替手段を自分で探す努力をし続けなくてはならない面倒なものがネットワーク・プレーヤーの世界だということがよくわかった。

そもそも、曲をファイル管理するには自分なりの法則で綺麗にタグ情報を付けていく管理をしておかなければならず、これが結構めんどくさい。そうやって手塩を掛けた作り上げた渾身のライブラリを、5年以上使うと可能性が高まるHDDクラッシュから守るには当然のことながらバックアップを取っておく必要があり、その手間もかかる。こんな苦労をするくらいなら、CDプレイヤーで大人しく聴いていた方がいい、と思う人がいても当然だと思います。

それでも、曲の検索性の高さ(CD 3000枚でもすぐに聴きたい曲を引き出せる)、CD収録時間を超えた大曲のシームレスな再生の2点は、ネットワーク・プレーヤーでしか実現できない、CDでは得難い大きな利点であることは動かしがたいところ。収納場所に限りがあるために7割以上のCDを既に売ってしまったこともあって、これからもネットワーク・プレーヤーを愛用し続けて行きたい。だからこそ、オーディオ・メーカーには、サーバー、レンダラー、アプリを本気で開発していただきたい。それが本音ながら、現状を見るとネットワーク・プレーヤーという分野じたいがもう停滞し、市場拡大の見込みがないため、ビジネス的な旨味がない(しかもCDプレーヤーと違ってサポートの手間がかかる)から力を入れて良いものを作ろうと思っていないんでしょう。国内メーカーに関して言えば、どこも力を入れていない完成度が低いものしか出していように見受けられる現状、しっかりしたものを作れば一人勝ちできるんじゃないか、とは考えてくれないものだろうか。

満足度:★★★★ コスト・パフォーマンス:★★★★☆