Rock Listner's Guide To Jazz Music

底上げのためのあれこれ
(2008年7〜8月)



スーパーツイーター(2008年7月)

フォステックスのT500A-MkU(実売はやや上級ブランドのスーツくらい)を導入。AVアンプのサラウンド・バック端子に接続しバイアンプ設定でOFF/ONできるよう構成して聴き比べを容易にしてみた。結果はというとかなり控えめに高音の響きを補助する感じで、高音域が充実した録音状態のものなら僅かに見通しが良くなったことを感じる反面、音質の悪い古い録音のものだと違いを感じられない。正直なところ価格相応の効果というのには程遠かった。ちなみにハイパス・フィルター用コンデンサーはコイズミ無線の店員さんに言われるがまま0.33μFを使用。

さまざまな価格の製品がある中、なぜあえて高額な部類に属するこの製品を選んだかというと、スーパーツイーターという製品じたいに大きな効果を見込めないだろう、しかし高音の音質は上級クラスでないと効果を実感しづらいだろうと予想していたから(要は安物買いの銭失いをしないようにということ)。リビングに設置するオーディオ機器としては高級感のあるルックスもポイントでした。

しかし、導入前からそもそも疑問があった。組み合わせるフロント・スピーカーによって効果がかなり違ってくるのではないかと。フロント・スピーカーの音質との相性について言っているわけではなく能率の違いによって影響度が違ってくるのではないかということ。クリプシュのRF-82は現代では異例とも言える98dbという能率の高さが特徴でアンプのボリュームをそれほど上げなくても音量が得られる。しかし、最近はほとんどのスピーカーが90db未満、低いものでは82dbというものまである。3dbも違うと音量の差が歴然としてくることを考えるとこの能率の差による影響度の違いはかなり大きいように思えるのです。

つまり能率が88dbのスピーカーと98dbのクリプシュとでは同じボリューム位置でも音量は大きく異なるのに、スーパーツイーターの音量が一定というのでは高能率のスピーカーでスーパーツイーターの効果が薄れるのは当たり前のように思える。そういう意味でクリプシュとスーパーツイーターの組み合わせはあまり良くないのかもしれません。

スーパー・ツイーターの満足度:★ コスト・パフォーマンス:★


アンプ増強 その1(2008年8月)

AVアンプが蔑視される理由のひとつに、オーディオ用アンプより一回り大きいくらいの筺体に多チャンネル分のパワー・アンプ部を押し込んでいることが挙げられる。同じ価格帯のAVアンプと2chオーディオ・アンプを比較した場合、AVアンプの方がチャンネルあたりのコストがかけられていないことになるのだからそれも仕方がないこと。さらにさまざまな音声デコーダーとDSP、画像処理回路を抱えている分も価格に反映されており、純粋に音質の向上にかけるコストがその分抑えられるために、AVアンプが音質的に劣るという理屈は納得できる話です。

そこで音楽再生をより高いレベルで楽しむべく、フロント2chだけパワー・アンプを増強することを検討。目についたのがクラウン(日本ではアムクロン)D-45という業務用プリメインアンプ。販売店の胡散臭いWebサイトでも有名な製品ですが、個人のブログなどでもなかなか評判が良いものを見かけるし高音質を謳うわりには値段もそれほど高くないとあってトライしてみる。

まず、業務用なので見た目はかなりチープ。電源やボリュームのつまみの作りの安っぽさは家電店にあるカジュアルな低価格コンポのそれをも大幅に下回る。質感やボリュームつまみの手応えまでも重視する人はこの作りだけでもう嫌気が差すに違いない。

では、機能はどうか。CDプレイヤーを直結してプリメインアンプとして聴いてみると低音がTX-SA805よりもやや力強くなるような印象を受けた。細部の描写も僅かに向上した感じがする。AVアンプのプリアウトから出力して聴き比べても変わらない印象。ただし、あくまでもよく聴き比べればわかる程度の差で、あえて追加した意味はなかったと思う。

普通に2chのプリメインアンプとして考えるとコスト・パフォーマンスは悪くはない。AVアンプとしてはドライブ力があるとされるTX-SA805に似たすっきりとした力強い鳴り方は僕の好みに合っているし、そのあたりが支持されている理由のような気がする。

念押しするとそれほど高品質のアンプというわけではありません。同じ価格でもっと見栄えのいいアンプは山ほどあるので、あえてこのアンプを選ぶ理由というのは僕には見出せませんでした。

尚、ウチではトランスの唸りは微小で音楽をかけていない状態でもリスニング・ポイントからは知覚できないレベルでした(参考までに家の電源は実測101V)。

追加アンプとしての満足度:★ 追加アンプとしてのコスト・パフォーマンス:★


スーパーツイーター(続き)

D-45を導入したことで思わぬ副作用がありました。AVアンプからのプリアウト接続で鳴らすとD-45をフル・ボリュームにしてもそれまでのAVアンプからの出力と比べると音量が少し小さい。AVアンプだけで聴いてきた音量と同等にするためには以前よりTX-SA805のボリュームを上げる必要がある。するとバイアンプ接続でAVアンプから直接出力されているスーパーツイーターの音量が相対的に大きくなるわけです。

より強調されたスーパーツイーターによってようやくわかるレベルまで音像が変化。シンバルの響きの鮮度が目覚ましく、サックスやトランペットの透明感が増し、スネア・ドラムの高音域成分の表現もより明確になった。映画における効果音のリアルさも向上、透き通るような空気感が広がる。クリプシュの性格はそのままにクリアさが増したことでスーパーツイーターを導入した当初の狙いが思わぬ形で実現してしまった。

ただし、そのままではいささか高音が強調されすぎの感もあったためにアッテネーター(フォステックスR80B)を導入、音を少し絞って、耳につきすぎずにクリア感を得られるポイントを自分で選べるようにした。アッテネーターを購入したコイズミ無線の店員さんは「良いツイーターですからバランスの良いところがわかったら固定式に換えることをお勧めします」とアドバイスしてくれましたが、ソースによって調整できる可変式はやはりありがたい。D-45の導入でこのような自由度が得られたことで結果的には楽しみ方を広げてくれました。とはいえ、この変化が音楽の聴こえ方として良くなったかどうかは少々微妙。強調すると効果が大きくなる反面やや不自然になり、ほどほどにするとあまり違いがわからなくなってしまうのがスーパーツイーター。過大な期待は禁物、マニア向けカテゴリーの製品でしょう。あるいは良くも悪くも高音に独特の鋭さのあるRF-82には効果が薄かったのかもしれませんが、期待通りの結果が得られなかったために結局は取り外してしまいました。

スーパーツイーターの満足度(再評価):★☆ コスト・パフォーマンス:★