Rock Listner's Guide To Jazz Music

ニューヨーク・ジャズ日記


(2023年追記)
注: 既に古い情報となっているため、参考程度にとどめてください。今はすべてWebでチケットを入手できるため予約は誰でも簡単にできるようになりました。とはいえ、基本的なお作法はそれほど変わっていないんじゃないかと思います。

「ついでだから少しゆっくりしてこれば?」。ボストンへの出張が決まった僕にかけてくれた、理解ある上司の一言がすべての始まりだった。そうだ、ニューヨークに行こう。ジャズのメッカ、マンハッタンで本場のジャズを聴く。毎晩ジャズ・クラブに通う。これ以上有意義な過ごし方はないに違いない。頭の中にはすぐ、楽しい夜のイメージが湧いてきた・・・。

ここうして思いつきで始まったジャズ・クラブ巡りの旅。1度目の3泊では物足りず、翌年にもう1度行くことに。

毎晩通い詰めたからといって、このページに書かれている内容をもって「マンハッタンのジャズ・クラブはこういうところです」だなんて知ったかぶりをするつもりはありません。ただ、楽しんできたことの日記の延長として、これからマンハッタンでジャズを楽しもうという方への参考情報になればと勝手に思って書きました。海外旅行にあまり慣れていなくてニューヨークは初めて(=自分)という人にもある程度わかりやすいように配慮したつもりです。

情報収集

観光でニューヨークを訪れ、ジャズ・クラブを楽しむのであれば小川隆夫氏の著書「マンハッタン・ジャズ・カタログ」というガイド・ブックは最高の一冊(さすがにもう古いです)。アナログ・レコードや CD の店も沢山紹介してあるので収集家にとっても有用でしょう。また、レストラン・ガイドも充実していて、選ばれている店も旅行者向けガイドとは趣が異なるところもこの本の面白さ。

ただし注意しなくてはならないのは、著者はニューヨークをよく知る人なので、初心者向け、玄人向けに拘らずクラブや店を紹介しているということ。海外旅行に慣れてない観光客が入るには尻込みするような雰囲気(必ずしも危険という意味ではない)の店も普通に紹介されていて、紹介文を読むだけではそういうところまではなかなか読み取りにくい。これは「マンハッタン・ジャズ・カタログ」を批判しているのではなく、それだけ幅広く掲載されているということでもあるので、いろいろな店を楽しみたい人にはむしろありがたいとも言える。この本なしでは、ここまでジャズ・クラブを満喫することはできなかったと思います。

旅行者向けのガイド・ブックにもメジャーなクラブは掲載されているので、それを元にそれぞれのジャズ・クラブのWebサイトを参考にするのも良いでしょう。ショウのスケジュールやその日の料金を知るためにもWebサイトの情報は必須です。


ジャズ・クラブでの服装

日本ではお洒落で高級なイメージを持たれているジャズ・クラブ(かなり間違っているけど)も、マンハッタンではごく一般的なみんなの娯楽。正装している人なんてほとんどいないし、よほど能天気な格好をしていかない限り問題ない。さすがにだぶだぶヨレヨレのTシャツ、色落ちしたGパンに白いスニーカーとかだとちょっと恥ずかしいかもしれませんが、要は普通の格好でOK。もちろんデニムでもダーク系なら何の問題もなし。ミッドタウン以外の、例えばグリニッジ・ヴィレッジあたりのクラブだとそれこそ正装していったら明らかに浮くので注意しましょう。


ジャズ・クラブのシステム

ミュージック・チャージあるいはカバー・チャージと呼ばれる入場料($25〜50くらい)+ミニマム・チャージ($10〜20くらい)というのが基本。ミニマム・チャージというのは最低限これだけの飲食をしてくださいというもので、飲み食いしなくてもこれだけは取られます。もっとカジュアルな、いかにも地元のクラブやバーではそんなにしっかりした料金体系はないところが多いようなので、Webサイトでこの料金体系を確認して初級旅行者向けか慣れた人向けかの判断材料にしてもいいかもしれません。

クラブによりますが、通常は1日2セット、週末(金土)は深夜にもう1セット加えるところもあります。開始時刻はだいたい5〜15分くらい遅れ、演奏時間はほとんどの場合は1セットあたり60分強くらい。最終セットは少し長めになることもあるかも。また、しっかりしたクラブで満席だと雰囲気的に途中で抜けるのが難しそうなので、ハシゴをする人は見る順番や時間に余裕を見るなどの配慮が必要です。


ジャズ・クラブの予約

メジャーなクラブとなればインターネットのサイトから予約可能。ただし、ネットで予約を受け付けているところでも、住所の入力で「州」を選択しなくてはならず、日本の住所では予約できないということもあります(適当に選ぶか、ホテルの住所を入れておいてもいいのかも)。ネットで予約できないところは現地で電話して予約することになります。英語に慣れていない人でもあまり怯むことはありません。

「I'd like to make reservation for tonight's show」
(明日、明後日の場合はそれぞれ tommorow's show、the day after tommorow's show)

といえば、どのセット?、人数は?、名前は? と訊いてくるので、それぞれ答える。名前は First Name で、例えば阿部さんなら 「アベ、エイ・ビー・イー」などと言えばOK。あとは連絡先を訊いてくるので滞在先ホテル名と電話番号、ルーム・ナンバーを伝える。あと場合によってはクレジット・カード番号を訊かれることも。すると、何時にドア・オープンだとか料金体系はこうだとか言ってきて終了。そんなに難しくないです。ただし、ウィーク・デイで、人数を1人と伝えると「グループじゃないなら予約は要らないよ、xx時とxx時にショウがあるからそれより前に来て」なんて言われたこともありました。


ジャズ・クラブの会計

演奏が終わる、または終わりかけたころにレシートを渡されるのでクレジット・カードを付けて渡すと、チップと合計金額が空欄になった紙を加えてまた手渡される。チップ(食事代に対して15〜20%が相場)と合計金額を記入、あとサインをして、レシートとカード支払いの控え(Dupicate Copy)を抜き取って店員に渡せば終了という流れが一般的。もちろんキャッシュでもOK。

その他、クラブによって作法があります。

しっかりとしたクラブなら、ショウが始まったら私語は厳禁。まあこれは周囲の雰囲気を見ていればわかると思います。

写真撮影は、ショウが始まる前なら自由。ショウの最中はNG、フラッシュを使わなければOK、フラッシュを使ってもOKと場所によってさまざま。心配なら店のスタッフに確認すると良いでしょう。


滞在ホテル

滞在時間を有効に使うにはやはりミッドタウンにあるホテルが便利。僕は2回ともミルフォード・プラザ(2014年から Row NYC Hotelに名前が変わっている模様)を選択。タイムズ・スクエアまで徒歩2分、周囲にはミュージカル劇場が密集していて、少し歩いただけで「オペラ座の怪人」「ライオン・キング」「コーラスラン」などを上演している劇場が目に入るというミュージカル好きには最高の場所。それを抜きにしても、どこに行くのにも不便のない絶好の立地だったと思います。ちなみにバードランドまでは徒歩1分足らず。


賑やかなタイムズ・スクエアまですぐ近く


ホテルじたいは幾分年季が入っていてあまりキレイな感じではなく(現在はリノベで内装はだいぶ綺麗になっているらしい)、なにより部屋が狭いのに閉口。シングル・ルームだとスーツケースを広げると足の踏み場にも困り、パソコンを使うにもベッドに置いてあぐらをかきながらでないとできないほど(ツインは都市部のホテルとしてはまずまずの広さだった)。マンハッタンのホテルの中では料金の設定は控えめ(2019年現在、10年前より安くなっている)。

ちなみに、ここで偉そうに書いている僕の海外旅行経験は1回目のマンハッタン訪問時にはまだたったの5回目(うち2回は現地の友人に頼りきり)。TOEIC はここに書くのが憚られる程度のスコア(その代わりガイジンは別に怖くない)。そんな普通の日本人でもちょっとした勇気と休みさえあれば十分ニューヨークでジャズを楽しめる。本当にジャズが好きなら是非一度は行ってみることをお勧めしたい。常にジャズの歴史の中心であり続けてきたニューヨークで体験するのはまた格別です。ジャズが好きな人なら3泊5日でジャズ・クラブ巡りを中心に過ごすなんていう旅行もアリでしょう。ほんの少しの勇気を出して、マンハッタンに行ってみてはどうでしょうか。