フォーメーションG

 GGGGutsy Galaxy Guardの最終作戦コード。国連事務総長とGGG長官双方の承認を経て、初めて発動が可能となる。その実態は長らく秘匿されてきたが、複製地球圏でのソール11遊星主との戦いにおいて、遂にその全貌が明らかとなった。すなわちそれは、新型ディビジョンフリートツクヨミヒルメタケハヤによるグラヴィティショックウェーブジェネレイティングディビジョンツールゴルディオンクラッシャーの構成と、GGG機動部隊主力・ガオファイガー(作戦決行時は現地にて調達されたジェネシックガオガイガーが実行に当たっている)によるその使用、つまりGGGの総力を一機のメカノイドに集約して行う、超広域破壊ツールによる敵性体の殲滅である。全長20kmにも及ぶ範囲に形成される重力衝撃波フィールドは、ひとたび形成されればこれを防ぐ方法はなく、確実に勝利をもたらす、正しく最後の切り札とも言うべき最終作戦なのである。
 しかし、その大規模な作戦の性格上、多くの困難が存在することは否めない。まず全長300〜500mを有する三隻のディビジョンフリートが変形合体することによる、信頼性の問題、同時に変形合体を完了するまでの猶予時間、さらにはかつてない超広域に展開される重力衝撃波フィールドの維持制御、大雑把にでもこれだけが挙げられる。
 まず第一に信頼性の問題であるが、当然のごとくフォーメーションGが展開されるのは、惑星規模の殲滅対象が存在するきわめて危険な領域であり、形成した重力衝撃波フィールドを殲滅対象に直接接触させるというフォーメーションGの性格上、殲滅対象となる敵性体に可能な限り接近することが求められる。もちろんその途上で敵性体による防衛行動、つまり攻撃が予想されるのだが、この時、ゴルディオンクラッシャーを構成するディビジョンフリート三隻のいずれにか致命的な損傷が生じれば、それだけでフォーメーションGは頓挫してしまう。また致命的とはいかずとも、ゴルディオンクラッシャー構成時の主要な機関、経路に問題が生じれば、やはりゴルディオンクラッシャーは使用できない。また、全長300〜500mという巨大な構造物であるディビジョンフリート三隻を連結して全長1kmにおよぶ巨大ツールとするが、これは人類史上紛れもなく最大の「武器」である。精密機械か、氷細工のようにのように慎重に扱うものではない。振るい、叩きつける「武器」なのだ。その巨大さゆえのコンディションコントロールの困難さ、そして武器ゆえに生じる過酷な運用と、もたらされるであろう衝撃を思うとき、これが全く正常に稼動する保障を、誰がすることができるだろう。
 第二に、その巨大さゆえに必要とされる変形合体にいたるまでに必要とされる猶予時間を如何に確保するべきか、という問題である。上述したことだが、人類史上かつてないこの巨大構造物を完成させるためには、もちろんそれ相応の時間を要する。最重要機密に属するため、その所要時間は明らかにされていないが、この間殲滅対象である超巨大敵性体による攻撃から作戦展開上にある三隻のディビジョンフリートならびにガオファイガーの保護を最優先とせねばならない。もちろんGGGが擁する機動部隊の戦力はそれを遂行するに十分なものを備えていると判断されてはいるが、しかし高コストゆえに少数精鋭となっているGGG機動部隊の戦力に大きな余力が存在しないこともまた事実として指摘されなければなるまい。
 第一、第二の問題点は主にハード面に生じるが、第三点はソフト面、すなわち三隻のディビジョンフリートのGSライドと直結されたレプトントラベラー全出力が重力衝撃波フィールドの形成に用いられているが、この莫大な出力のエネルギィを維持制御するためのAIおよび運用主体であるガオファイガーの搭乗者・獅子王凱への負荷の問題である。これらのエネルギィの結合と運用には、まず実戦においてグラヴィティショックウェーブジェネレイティングツールゴルディオンハンマーの運用を一手に担ってきた実績を活かして、GGG機動部隊隊長・獅子王凱とツール制御を行ってきたゴルディーマーグがその主体となる。しかし、振るう武器が最大ならば、それにより生じるエネルギィもまた人類史上最大のものとなるこの作戦において、全てを消滅させうる重力衝撃波の制御を誤ることは絶対に許されない。ひとたび重力衝撃波フィールドの拘束が解ければ、拡散した衝撃波は敵性体どころか、作戦に当たっているGGG艦隊はもとより、周囲に点在する惑星や衛星などにも影響を与えることは避けられず、またこの巨大なエネルギィによるゴルディオンクラッシャーおよびガオファイガーへの負荷もまた、制御を誤れば、自爆、自沈の恐れがあるのである。
 これら幾重もの困難により、フォーメーションGが失敗に終わったとき、そこにはエネルギィを放出しつくし浮遊する巨大ツールと、一体のメカノイドがあるばかりである。あるいは、すでに制御を失った重力衝撃波により、GGGそのものが消滅しているかもしれない。確かに発動すれば勝利は確実、しかし発動に失敗したとき、GGG、ひいては人類には文字通り後はないのだ。かかる困難を乗り越えてなお、なぜフォーメーションGが行われなければならないのか。
 端的に応えるなら、その時既に人類に後がないからだ。

 逆説的だが、惑星クラスの敵性体を完全に消滅させなければ人類に未来はない。その時、起死回生を期した最後の手段としてフォーメーションGは存在するのだ。ゆえにその発動に関しては国連事務総長、およびGGG長官の承認、ならびに二本の起動キィ―勝利の鍵(一本はGGG長官が、いま一本は事務総長によりアメリカGGGに貸与・保管されている)が必要となり、更にタケハヤの多次元コンピュータによる戦況解析と、ガオファイガーはもとより、ツクヨミ、ヒルメ、タケハヤ各艦の各セクションにおいて、セーフィティの解除が必要とされるという、過剰ともいえるプロセスを敢えて設けているのである。
 もちろん、上記の数々の困難に対して、GGGは数々の対策を講じている。作戦行動中は可能な限りディビジョンフリートを後方へ下げ、かつオービットベースに搭載されているものと同型のプロテクトシェード発生装置を各艦に装備、攻撃による破損を避けている。またゴルディオンクラッシャー形成時に重要となる各機関・経路は損傷の可能性が低い艦体中央に設置され、なおかつ一部が破損しても運用に支障がないよう、緊急バイパスや予備機関を充実させている。変形合体に時間を要することも、万が一誤ってゴルディオンクラッシャーが起動してしまった際には、却って緊急制御を行いやすくしている面もあるだろう。機動部隊の配置にも配慮がなされており、重装甲と高出力バリアによる高い防御能力を備えた最前線のガオファイガーはもとより、中盤にはガオファイガーの直接のサポートおよび後方の防御を担当する氷竜炎竜超竜神)を配し、後方には打撃力と防御能力に優れたコンビネーションを発揮する光竜闇竜天竜神)、さらに固定砲台としてゴルディータンクがあたる。強襲能力に優れ、高い攻撃力を有する風龍雷龍撃龍神)は遊撃戦力となり、更には状況によっては諜報部からボルフォッグも戦線に投入されることになる。これら三重の防御陣が敵性体の攻撃を可能な限り迎撃することで、後方への危険はきわめて減殺される。保護すべきガオファイガーを際前面に押し出すことについては異論もあるだろうが、ガオファイガーの高い防御能力と攻撃力はむしろ前面にあって十全に発揮されることで、敵性体行動を抑止できるのである。ソフト面では、ガイとゴルディーマーグに、三隻のディビジョンフリートの管理コンピュータと、コンピュータ制御に卓越した手腕を持つ猿頭寺耗助諜報部主任オペレーター、センシングマインドを持つパピヨン・ノワール、世界十大頭脳のひとりである獅子王雷牙博士、さらにアメリカGGGの主力研究員たるスタリオン・ホワイトスワン・ホワイトらを総動員してこの補佐に当たらせる。そしてこれらを束ね効率的な管理運用を行うことを可能にしたオペレーションシステムプログラムは、かつてGGGにおいてきわめて優秀な協力者であった、とある少女によって開発されたものである。文字通りGGGの総力が結集する究極のハイパーツール、それがゴルディオンクラッシャーなのである。
 これらを経てなお、フォーメーションG完遂にはさらにさまざまな困難を伴う。しかし繰り返しになるが、これを成功させない限り、人類に未来はなく、手にするべきは勝利しかない。ゆえに作戦発動時、二本の起動キィが差し込まれる一対の起動装置は、変形し、とある言葉をそこに表すのだ。すなわち、「勝利」と―。