勝利の鍵

 ゴルディオンクラッシャー起動用キィの俗称。
 ゴルディオンクラッシャーは起動に際して国連事務総長による全世界規模の危機的状況の認定と、それに対するあくまで最終対抗手段としてのゴルディオンクラッシャー起動の承認が必要である。これを受けてGGG最高司令長官―すなわちGGGオービットベース長官がフォーメーションGを発令、超翼射出司令艦ツクヨミ艦橋に設置された一対の起動装置に音声コード入力と共に、それぞれ対応した「勝利の鍵」、つまりゴルディオンクラッシャー起動用キィを差込み、回転させることでフォーメーションGの実行シークエンスが開始され、ツクヨミの他、タケハヤヒルメが展開、ドッキングしてゴルディオンクラッシャーが完成するのである。
 すなわち「勝利の鍵」はゴルディオンクラッシャー起動のための最終安全装置であり、これなくして史上最大のツール完成はありえないのである。一対の勝利の鍵は一方を緑石の、いま一方は紅玉のブローチに偽装されており、平時においては日本GGGとアメリカGGGに分割保管されている。ブローチにはめ込まれた宝石はそれぞれGストーンJジュエルを構成していた結晶体で造られており、遠目には判別しづらいが数十の小さなブロックからなる。スイッチと指定された人物の声紋、及び指紋照合によってこのブロックが自動的に展開、移動してキィ本体を形成するのである。無限情報サーキットの素材であるこれらの物質は、結晶構造そのものが情報回路を形成して情報を蓄積できるという特性があるため、起動キィにはこれを利用した様々な照合用のデータが組み込まれており、起動装置がこれらを読み取ることで初めてフォーメーションGが展開される。つまり、この「勝利の鍵」を複製し、ゴルディオンクラッシャーを使用しようとするならば、GGG内でも最高機密に属するGストーンおよびJジュエルの結晶構造及びその構成物質の情報を物理的、またはデータ的に入手し、キィを複製し、かつ内部に書き込まれた膨大な照合情報を完全に複写し、かつ指紋と声紋を書き換え、更にツクヨミ、ヒルメ、タケハヤを占拠する必要があるのである。
 ゴルディオンクラッシャーの使用に関して、こうまで厳重なセキュリティが課されているのはその使用目的がZマスター級の敵性体が出現した際に、これを完全に消滅させることにあるからである。ゴルディオンハンマーの重力衝撃波発生現象を全長20kmに達する重力波エネルギィフィールドにおいて再現することで惑星サイズの目標に対する最終攻撃として使用されるハイパーツール、それがゴルディオンクラッシャーなのであり、これ以外の目的での使用はそもそも想定されない。つまり惑星サイズの敵性体が出現するという、全世界的規模の危機的状況こそがゴルディオンクラッシャー起動の唯一最終要件なのである。運用を誤れば惑星規模の破壊的影響を及ぼしかねない、核兵器に匹敵する危険性を秘めているからこそ、過剰なまでのセキュリティ。その要が「勝利の鍵」なのである。
 ゴルディオンハンマーを遥かに凌駕する強力かつ広域の重力衝撃波と、ディビジョンフリート三艦分、全長1kmに達する大質量を有するこのハイパーツールを防御、あるいは回避することは困難を極める。すなわち、いかなる危機的状況であれゴルディオンクラッシャーが起動するという事実が、GGGの勝利を約束するに等しいのである。翻って言えばゴルディオンクラッシャーを起動させ、目標を消滅させない限り人類に明日はないという危機的状況において目指すものは勝利以外ありえない。ゴルディオンクラッシャー起動用キィが「勝利の鍵」と呼ばれるのは、ゴルディオンクラッシャー起動そのものが勝利を約束し、かつ何があろうと勝利しなければならない、そんな状況にこそ使用されるのがゴルディオンクラッシャーというツールだからなのである。