三項述語の二重量化「∀x,yS   P(x,y,z)」  

【ポイント】

・「x,yS  P(x,y,z)」 は、
 二つの対象を集合Sから選んで、変項x,yに代入すると、
 どの二対象を集合Sから選んで、変項x,yに代入しても、
 変項zは、x,yとのあいだの関係・条件P(x,y,z)を満たす
 という主張。

・集合Sが特定の対象に固定されている場合、
 「x,yS  P(x,y,z)」 は、zのみを変項とする1項述語。→詳細
    
 →例:n,n'Nnn' ⇒「《数列》の第n項」<「《数列》の第n'項」) 
 →例:n,n'Nnn' ⇒ 《数列》の第n'項 < 《数列》の第n項 ) 
 →例:n,n'Nnn' ⇒ 《数列》の第n項 ≦ 《数列》の第n'項 )
 →例:n,n'Nnn' ⇒ 《数列》の第n'項 ≦  《数列》の第n項 ) 




・集合Sが変項で、様々な対象が代入される場合、「x,yS  P(x,y,z)」 は、S,zを変項とする2項述語。→詳細  
 →例:x1,x2I ( x1x2f(x1)≦f(x2) ) / x1,x2Ix1<x2f(x1)<f(x2) ) / x1,x2I ( x1x2f(x1)≧f(x2) ) / x1,x2I ( x1x2f(x1)>f(x2) )

 【詳細】
  ・∀x,yS  P(x,y,z) :定義  / 意味 / 読み /
  ・バリエーション : x,y∈内包的に定義された集合  P(x,y,z)x,y∈外延的に定義された集合 P(x,y,z)  /    
  ・x,yS の定義に遡った「∀x,yS P(x,y,z)意味 
  ・「∀x,yS P(x,y,z)順序対・直積を用いた別表現 
 
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「∀x,yS   P(x,y,z)」  の定義 


要旨

・「x,yS  P(x,y,z)」 は、
  P(x,y,z)を2回普遍量化した
 「xSyS  P(x,y,z)」の略記。 

・この「xSyS  P(x,y,z)」は、

 【関連事項】
  ・「∀xSyT  P(x,y)」の定義   

 【具体例】
  ・n,n'Nnn' ⇒「《数列》の第n項」<「《数列》の第n'項」) 
  ・x1,x2I ( x1x2f(x1)≦f(x2) )
  ・x1,x2Ix1<x2f(x1)<f(x2) ) 


   「xS (yS  P(x,y,z) )」 「zは、SのなかのすべてのxSのなかのすべてのyにたいして、関係・条件Pを満たす。」
 の略記。





詳細 〜 Sが特定の対象に固定されている場合  


・「x,yS  P(x,y,z)」 とは、
 下記手順でつくった述語・命題関数 
  「xS (yS  P(x,y,z) )」 
 の略記。

  【step1:普遍量化1回目】  
 
  三項述語P(x,y,z)x,y,zは関係・条件Pを満たす
  の変項yを全称量化子で束縛して普遍量化し、






【具体例】
  ・n,n'Nnn' ⇒「《数列》の第n項」<「《数列》の第n'項」) 


  x,zを変項とする2項述語・2変項命題関数 「yS  P(x,y,z)」  「x,zは、Sのなかのすべてのyにたいして関係・条件Pを満たす
  をつくる。


  【step2:普遍量化2回目】  

  step1で得られた
  2項述語・2変項命題関数yS  P(x,y,z)」  「x,zは、Sのなかのすべてのyにたいして関係・条件Pを満たす」 
  の変項xも全称量化子で束縛して普遍量化

  得られたzのみを変項とする1項述語が、
   「xS (yS  P(x,y,z) )」 「zは、SのなかのすべてのxSのなかのすべてのyにたいして、関係・条件Pを満たす。」
 



詳細 〜 Sも変項である場合  


 「x,yS  P(x,y,z)」 とは、
 下記手順でつくった述語・命題関数 
    「xS (yS  P(x,y,z) )」 
 の略記。

  【step1:普遍量化1回目】  
 
  三項述語P(x,y,z)x,y,zは関係・条件Pを満たす
  の変項yを全称量化子で束縛して普遍量化し、



 【具体例】

  ・x1,x2I ( x1x2f(x1)≦f(x2) )
  ・x1,x2Ix1<x2f(x1)<f(x2) ) 
  ・x1,x2I ( x1x2f(x1)≧f(x2) ) 
  ・x1,x2I ( x1x2f(x1)>f(x2) )



  S,x,zを変項とする3項述語・3変項命題関数 「yS  P(x,y,z)」  「x,zは、Sのなかのすべてのyにたいして関係・条件Pを満たす
  をつくる。

  【step2:普遍量化2回目】  

  step1で得られた
  3項述語・3変項命題関数 「yS  P(x,y,z)」  「x,zは、Sのなかのすべてのyにたいして関係・条件Pを満たす」 
  の変項xも全称量化子で束縛して普遍量化

  得られた、S,zを変項とする2項述語が、
   「xS (yS  P(x,y,z) )」 「zは、SのなかのすべてのxSのなかのすべてのyにたいして、関係・条件Pを満たす。」





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「∀x,yS  P(x,y,z)」 の意味



 ・ P(x,y,z)は、変項xの議論領域X, 変項yの議論領域Yとするn項述語・n変数命題関数
 ・ Sは、「X部分集合」であり、かつ、「Y部分集合」でもある

 という設定のもと、

  「x,yS P(x,y,z)」とは、

  「《変項xの議論領域X,《変項yの議論領域Y部分集合S から、
   どの二対象を選んでも、
   一方を変項xへ、他方を変項yへ代入すると、
   変項zは、x,yとのあいだの関係・条件P(x,y,z)を満たす」

  という意味の述語・命題関数

 なお、

 集合Sが特定の対象に固定されている場合、
 「x,yS  P(x,y,z)」 は、zのみを変項とする1項述語

 集合Sも変項で、様々な対象が代入される場合、
 「x,yS  P(x,y,z)」 は、S,zを変項とする2項述語


【具体例】


 ・x1,x2I ( x1x2f(x1)≦f(x2) )
 ・x1,x2Ix1<x2f(x1)<f(x2) ) 
 ・x1,x2I ( x1x2f(x1)≧f(x2) ) 
 ・x1,x2I ( x1x2f(x1)>f(x2) )

   ・単調数列の定義 


関連事項:「∀xSyT  P(x,y)」の意味   

関連事項: 
 ・「∀xy  P(x,y)」 の意味
 ・「∃xS ∃yT P(x,y)意味/「∃xS ∀yT P(x,y)意味/「∀xS ∃yT P(x,y)意味 





【文献−数学一般】
 ・齋藤『日本語から記号論理へ』2章§2全称量化子による二重量化(pp.52-54);議論領域設定例あり
 ・中内『ろんりの練習帳』2.3(pp.89-93):"∀xX,∀yY":例2.3.3友人、例2.3.7大小;
 ・井関『集合と論理』1.2 (式2.1)(p.7脚注1): 「∀xRyR (x+y=y+x) 」「∀x,yR (x+y=y+x) 」
           (式2.3)「∀a,bR (a≠0⇒∃xR(ax+b=0) ) 」(p.8):
          例2(1)(p.11)「∀x,y∈R (x≠yかつx<y ⇒ ∃z∈R(x<z<y))」


 





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3項述語二重量化「x,yS   P(x,y,z)」の読み下し例




・「すべての『Sに属す対象』x,yに対して、P(x,y,z)

・「任意の『Sに属す対象』x,yに対して、P(x,y,z)

・「どんな『Sに属す対象』x,yをとっても、P(x,y,z)


【具体例】

 ・x1,x2I ( x1x2f(x1)≦f(x2) )
 ・x1,x2Ix1<x2f(x1)<f(x2) ) 
 ・x1,x2I ( x1x2f(x1)≧f(x2) ) 
 ・x1,x2I ( x1x2f(x1)>f(x2) )

 ・単調数列の定義 
  

関連事項:「∀xSyT  P(x,y)」の読み下し例   

関連事項: 
 ・「∀xy  P(x,y)」 の読み
 ・「∃xS ∃yT P(x,y)の読み/「∃xS ∀yT P(x,y)の読み/「∀xS ∃yT P(x,y)の読み 





【文献】
 ・新井紀子『数学は言葉』例題4.2.2単調増加関数の定義 (pp.132-135):f,x,y3項述語の二重量化;
                  











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x,yS の定義に遡った「∀x,yS P(x,y,z)意味 



・「x,yS  P(x,y,z)」すなわち「xS (yS  P(x,y,z) )」とは、

 「x ( xS y ( yS P(x,y,z) ) )」の省略表現。  

なぜ?「yS  P(x,y,z)」「 xS  Q(x,z) 」のそもそもの定義に立ち返ると一目瞭然。

【集合Sが特定の対象に固定されている場合】

step1】「xS (yS  P(x,y,z) )xS ( y ( yS P(x,y,z) ) )」 

    「yS  P(x,y,z)」は「y ( yS P(x,y,z) )」の省略表現であるから、

     「xS (yS P(x,y,z) )」は、
      「 xS ( y ( yS P(x,y,z) ) ) 」  
    の省略表現。

step2】 「xS ( y ( yS P(x,y,z) ) )x ( xS y ( yS P(x,y,z) ) )

    「xS  Q(x,z)」は「x ( xSQ(x,z) )」の省略表現であるから、

    「xS ( y ( yS P(x,y,z) ) )」は、
 
    「x ( xS y ( yS P(x,y,z) ) )」の省略表現。

step3】 結論
 
    step1,step2でおこなった考察を合わせると、
    「xS (yT  P(x,y,z) )xS ( y ( yT P(x,y,z) ) )
                x ( xS y ( yT P(x,y,z) ) )

【集合Sも変項である場合】

step1】「xS (yS  P(x,y,z) )xS ( y ( yS P(x,y,z) )  )」 

    「yS  P(x,y,z)」は「y ( yS P(x,y,z) )」の省略表現であるから、

     「xS (yS P(x,y,z) )」は、
      「xS ( y ( yS P(x,y,z) )  ) 」  
    の省略表現。

step2】 「xS ( y ( yS P(x,y,z) )  )x ( xS y ( yS P(x,y,z) ) )

    「xS  Q(S,x,z)」は「x ( xSQ(S,x,z) )」の省略表現であるから

    「xS ( y ( yS P(x,y,z) )  )」は、
 
    「x ( xS y ( yS P(x,y,z) ) )」の省略表現。

step3】 結論
 
    step1,step2でおこなった考察を合わせると、
    「xS (yS  P(x,y,z) )xS ( y ( yS P(x,y,z) )  )」 

                x ( xS y ( yS P(x,y,z) ) )

 


関連事項:xSyTの定義に遡った「∀xSyT P(x,y)意味    

関連事項:
 ・xS,∃yTの定義に遡った「∀xS ∀yT P(x,y)意味  
 ・xS,∀yTの定義に遡った「∃xS ∀yT P(x,y)意味  
 ・xS,∃yTの定義に遡った「∀xS ∃yT P(x,y)意味 







【文献】
 ・井関『集合と論理』1.2 (式2.1)(p.7脚注1): 「∀xRyR (x+y=y+x) 」「∀x,yR (x+y=y+x) 」
           (式2.3)「∀a,bR (a≠0⇒∃xR(ax+b=0) ) 」(p.8):


下記未確認

 ・中内『ろんりの練習帳』2.3(pp.89-93):"∀xy",";2.5(pp.100-2):"∃xy";2.6(pp.103-5):∀∃,∃∀;
 


 



※井関『集合と論理』1.2 (式2.1)(p.7脚注1):「x,yS  P(x,y)」は、「x,y ( xS かつyS P(x,y) ) 」の省略表現。  





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集合S,Tが内包的に定義された場合の「∀x,yS  P(x,y,z)意味 


 集合Sの内包S'であるとき、 つまり、 S{ x | S'(x) } であるとき、 

  「x,yS P(x,y,z)」 は、

 「x ( S'(x) y ( S'(y) P(x,y,z) ) )

 に言い換えてよい。

※関連事項:
 ・集合S,Tが内包的に定義された有限集合である場合の「∃xS ∃yT P(x,y)意味  
 ・集合S,Tが内包的に定義された有限集合である場合の「∃xS ∀yT P(x,y)意味  
 ・集合S,Tが内包的に定義された有限集合である場合の「∀xS ∃yT P(x,y)意味 





【文献−数学一般】



 



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集合Sが外延的に定義された有限集合である場合の「∀x,yS P(x,y,z)意味 


 S有限集合 { s1 , s2 , … , sn }
 であるとき、 

 「 x,yS P(x,y,z)」 すなわち 「xS (yS  P(x,y,z) )」 は、

 「『P( s1 , s1 , z ) かつ P( s1 , s2 , z ) かつかつ P( s1 , sn , z )
  かつ
  『P( s2 ,s1 , z ) かつ P( s2 ,s2 , z ) かつかつ P( s2, sn, z )
  かつ 
  :
  かつ 
  『P( sn ,s1 , z ) かつ P( sn ,s2 , z ) かつかつ P(sn , sn , z )』」

 に言い換えてよい。

 なぜ?



 ・この設定の下では、 S有限集合 { s1 , s2 , … , sn } とされているので、
  
  「 「x,yS P(x,y,z)」 すなわち 「xS (yS  P(x,y,z) )」 は、
  
   「 xS ( P( x , s1 , z ) かつ P( x , s2 , z ) かつかつ P( x , sn , z ) ) 」…(式1)
       
   に言い換えてよい。(∵有限集合の範囲でのn項述語普遍量化より、yS  P(x,y,z)は、 「P( x , s1 , z ) かつ P( x , s2 , z ) かつかつ P( x , sn , z ) 」を意味するから)。 

 ・この設定の下では、S有限集合 { s1 , s2 , … , sn } とされているので、
  
  (式1) 「 xS ( P( x , s1 , z ) かつ P( x , s2 , z ) かつかつ P( x , sn , z ) ) 」は、
   
  「『P( s1 , s1 , z ) かつ P( s1 , s2 , z ) かつかつ P( s1 , sn , z )
   かつ
   『P( s2 ,s1 , z ) かつ P( s2 ,s2 , z ) かつかつ P( s2, sn, z )
   かつ 
   :
   かつ 
   『P( sn ,s1 , z ) かつ P( sn ,s2 , z ) かつかつ P(sn , sn , z )』」…(式2)

  に言い換えてよい。()。


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「∀xSyT P(x,y,z)別表現  〜 順序対・直積を用いて。 



・「 x,yS P(x,y,z)」  は、

 「(x,y) S2  P(x,y,z)

 と表現してもよい。

※なぜ? → 2項述語を1項述語として解釈〜順序対    


※具体例

 ・x1,x2I ( x1x2f(x1)≦f(x2) )
 ・x1,x2Ix1<x2f(x1)<f(x2) ) 
 ・x1,x2I ( x1x2f(x1)≧f(x2) ) 
 ・x1,x2I ( x1x2f(x1)>f(x2) )

 
関連:「∃xS ∃yT P(x,y)のケース





【文献】


   ・松井知己『だれでも証明がかける−眞理子先生の数学ブートキャンプ』5.1(pp.143-4)





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