集合関数の例6 R上の区間塊の長さ

[トピック一覧]
 ・R上の区間塊の長さを定義する集合関数(定義性質) 
 ・R上の区間塊の長さを一般化した集合関数(定義性質) 
※関連ページ―上位概念:集合関数
※関連ページ―集合関数の例:リーマン積分区間の長さ矩形の面積直方体の体積Rn区間のn次元体積
              R上区間塊の長さR2上区間塊の面積R3上区間塊の体積、Rn上区間塊のn次元体積)
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集合関数の例6a R上の区間塊の長さを定義する集合関数 

設定

R上の区間塊Eに長さを与える関数μ(E)は、以下の舞台設定上で定義される。
 ・R :実数の全体の集合R{x|−∞<x<+∞ }であるが、
     ここでは特に、1次元ユークリッド空間の意味ももたせる。
 ・集合系(族)R上の区間塊として考えられ得るものすべてを集めてきた集合系(族)
    ※区間塊Eは、R部分集合だから、R部分集合系(族)となっている。
 ・Ψ(I):直線の長さを定義する集合関数Ψ
     すなわち、
     (i) I=(a,b] (−∞<a<b<+∞) ならば、Ψ(I)=ba   
     (ii) I=φ ならば、 Ψ(φ) = 0  
     (iii) I=(−∞,b], (a,∞), (−∞,∞)(−∞<a,b<+∞) ならば、Ψ(I)=+∞
     ※値域は「広義の実数R*上の区間[0,+∞]となる。

[文献]

 ・伊藤『ルベーグ積分』I予備概念§3点関数と集合関数:例3(pp.13-15) ;
 ・盛田『実解析と測度論の基礎』3.1節補題3.1(p.106);
 ・高木『解析概論』113節Euclid空間区間の体積(pp.421-3).

定義

(定義:集合関数μ)

に属す、すべてのEは、区間塊であるから、 
      type 1: 左半開区間(a,b]={x|a<xb} (ただし−∞<a<b< +∞),
      type 2: (−∞,b]={ x|xb } (ただし−∞<b<+ ∞)、
      type 3: (a,∞)={ x | a<x } (ただし−∞<a<+ ∞)、
      type 4: (−∞, ∞)=実数全体の集合R 
      type 5: 空集合φ  
 の5タイプの区間の有限個の直和として表す (=互いに素な有限個の上記5タイプの区間へ分割する)
 ことができる。  
 すなわち、
 に属す、すべてのEには常に、
  1以上の或る自然数nが存在して、
  E= I1In  (ただし、I1,…,Inは、上記5タイプいずれかの区間)
 と表せる。   ※自然数nは1以上とわざわざことわったのは、E= I1というケースも当然ありうるという意味。
・そこで、直線の長さを定義する 集合関数Ψを用いて、 
  μ(E)=Ψ(I1)Ψ(I2)Ψ(In)  
 と、関数μを定義する。 
 このμ(E)は、きれぎれの直線Eの長さの和となる。
  ※区間塊ですらないR上 の集合一般の長さを測るためには、1次元ル ベーグ外測度。 

性質

上記のとおり定義された、R上の区間塊Eに長さを与える関数μ(E)は、
以下の性質1、性質2、性質3:有限加法的測度、性質4,性質5,性質6性質7:完全加法性を有する。

性質1

・定義域がR部分集合系(族)  となるので、上記の関数μは、Rで定義された-集合関数となる。
 値域は「広義の実数R*上の区間[0,+∞]。
  →なぜなら、任意のEに対して、μ(E)は直線の長さを定義する集合関数Ψの有限和。 
      集合関数Ψは、常に0≦Ψ(I)≦+∞だから。
      広義の実数R*で定義された演算規則より、0≦μ(E)≦+∞ 。
  ※値域はあくまで「広義の実数」であって、実数ではない。
   「広義の実数」では、実数における演算が拡張されているので(特に+∞について)注意。

性質2

Rで定義された上記の実数値-集合関数 μの定義域は、有限加法族である。() 

性質3

Rで定義された上記の実数値-集合関数 μは、上の有限加法的測度である。
 ※なぜ?→証明 
 ゆえに、μは、上の有限加法的測度の性質を満たし、


n

n
有限加法性 E1,E2,…En)( EiEj =φ(ij)  μ(
Σ
Ei ) = 
Σ μ(Ei) 


i=1

i=1
単調性 E1,E2)(  E1E2  μ(E1)μ(E2) 


n

n
有限劣加法性 E1,E2,…En)( μ(
Ei ) ≦ 
Σ μ(Ei) 


i=1

i=1
 が成立する。

性質4

・  
  type 1: 左半開区間(a,b] (ただし−∞<a<b<+∞),
  type 2: (−∞,b] (ただし−∞<b<+∞)、
  type 3: (a,∞) (ただし−∞<a<+∞)、
  type 4: (−∞, ∞) 
  type 5: 空集合φ  
 のいずれかのかたちである限りで任意の区間Iと、区間Iにたいして任意にとったα<μ(I)にたいして、
  type 1: 左半開区間(a*,b*] (ただし−∞<a*<b*<+∞),
  type 5: 空集合φ    
 のいずれかのかたちをした、ある区間Jが存在して、
     [J]I かつ α<μ(J) 
 を満たす。
 すなわち、
 (a,b] (−∞,b] (a,∞) (−∞, ∞) φのいずれかのかたちをした区間をすべて集めた集合系をI
 (a*,b* ] φのいずれかのかたちをした区間をすべて集めた集合系をJとおくと、
   (∀I∈I) (∀α<μ(I)) (∃J∈J ) ( [J]Iかつα<μ(J) ) 
   
[伊藤『ルベーグ積分』I-§4有限加法的測度:定理4.2証明内(pp.19-20);]   



(詳細)
Itype 1: (a, b] (−∞< a< b<+∞) のケース
  任意の区間
I=(a, b] (−∞< a< b<+∞) と、このI=(a, b]にたいして任意にとったα<μ(I) =b-aに対して、 
  ある有界区間
J= (a*, b* ] (−∞< a*< b*<+∞) が存在して、
     
[J]=[a*, b*](a, b] かつ α<μ(J) = b*- a* 
  を満たす。
I type 2: (−∞, b] (−∞< b<+∞) のケース 
  任意の区間
(−∞, b] (−∞< b<+∞) と、任意の実数αに対して、 
  ある有界区間
J= (a*, b* ] (−∞< a*< b*<+∞) が存在して、
     
[J]=[a*, b*](−∞, b] かつ α<μ(J) 
  を満たす。
Itype 3: (a , ) (−∞< a <+∞) のケース 
  任意の区間
(a , ) (−∞< a<+∞) と、任意の実数αに対して、 
  ある有界区間
J= (a*, b* ] (−∞< a*< b*<+∞) が存在して、
     
[J]=[a*, b*](a , ) かつ α<μ(J) 
   を満たす。
Itype 4: (−∞, )のケース  
  任意の実数αに対して、 
  ある有界区間
J= (a*, b* ] (−∞< a*< b*<+∞) が存在して、
     
[J]=[a*, b*](−∞, ) かつ α<μ(J) 
  を満たす。
Itype 5: 空集合φのケース  
  区間
I=φ と、区間I=φにたいして任意にとったα<μ(I)=μ(φ)=0に対して、 
    
J=φは、[J] I=φ かつ α<μ(J) を満たす 

 ※なぜ?→証明     
 ※活用例→性質5の証明 


性質5.

R上の任意区間塊E と、Eにたいしてとった任意のα<μ(E)にたいして、
       [F]E かつ α<μ(F)  
 を満たす有界な区間塊Fが存在する。
 ( ∀E∈ ) ( ∀α<μ(E) ) (∃F∈ ) ( [F]E かつ α<μ(F) )
 ※なぜ?→証明     
 ※活用例→性質6の証明 

[文献]

 ・伊藤『ルベーグ積分』I-§4有限加法的測度:定理4.2証明内(p. 20);
 ・小谷『測度と確率1』補題4.1(p.72)。

性質6.

R上の任意の区間塊E と、
 この区間塊E覆う任意の「区間の可算被覆」{In}に対して、
 μ( )は、次の不等式を満たす。




μ(E) ≦ 
Σ μ(In) 


n=1
     つまり、 μ(E)≦μ(I1)+μ(I2)+μ(I3)+… が成り立つ。
 ※R上の任意の区間塊E が、非有界である場合
      (たとえば、(−∞,b] , (a,∞) とその直和や (−∞,∞) ) 




μ(E) = 
Σ μ(In) = ∞ 


n=1
  となるが、
  この等号「=」は、
  広義の実数R*で定義された演算規則「∞=a+∞」の意味での等号「=」であって、
  実数の枠内で普通にいう等号「=」の意味でではない。    
※ただし、ここでいう、Eを覆う「区間の可算被覆」とは、
 次の2条件を満たす可算無限個の「1次元ユークリッド空間R上の区間の列」
   { I1 , I2 , I3 ,…}
 を指す。 
  (条件1) 区間列の要素I1 , I2 , I3 ,…はすべて、
      以下のかたちの区間のいずれかであること。
      type 1: 左半開区間(a,b]{ x | a<xb } 
                (ただし−∞<a<b<+∞),
      type 2: (−∞,b]{ x | xb } 
                (ただし−∞<b<+∞)、
      type 3: (a, ∞){ x | a<x } 
                (ただし−∞<a<+∞)、
      type 4: (−∞, ∞)=実数全体の集合R
      type 5: 空集合φ  
  (条件2) E被覆すること、つまり、



E

In

n=1

      を満たすこと。
 ※なぜ?→証明 
 ※活用例→性質7の証明 

[文献]

 ・伊藤『ルベーグ積分』I-§4有限加法的測度:定理4.2証明内(pp. 20-21) ;
 ・小谷『測度と確率1』補題4.1(p.72)。

性質7.

Rで定義された上記の実数値-集合関数μは、
 上の完全加法的測度となる。
※なぜ?→証明 
※活用例:R上の任意の集合のルベーグ外測度

[文献]

 ・伊藤『ルベーグ積分』I-§4有限加法的測度:定理4.2(p.19);
 ・小谷『測度と確率1』補題4.1(p.72);
 ・高木『解析概論』113節 (pp.422-3);長さに限定.


集合関数
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集合関数の例6b R上の区間塊の長さを一般化した集合関数 

[伊藤『ルベーグ積分』I予備概念§3点関数と集合関数:例3(pp.13-15) ;高木『解析概論』113節Euclid空間区間の体積(pp.421-3).] 
(舞台設定) 
R     :実数の全体の集合。すなわち、R{ x| −∞ < x < +∞ } 
集合系(): R上の区間塊として考えられ得るものすべてを集めてきた集合系()
            ※
区間塊Eは、R部分集合だから、R部分集合系()となっている。
f (x)    : R上の実数値関数(つまり、f: RR)で、R単調増加関数。以下のΨに組み込まれる。
Ψ
(I)    : 直線の長さの一般化である集合関数Ψ
       すなわち、
       
(i) I=(a, b] (ただし−∞< a< b<+∞)ならば、 Ψ(I) = f (b)f (a)   
       
(ii) I=φならば、 Ψ(φ) = 0  
       
(iii) それ以外ならば、Iに含まれる任意の区間J=(a', b'] (ただし−∞< a'< b'<+∞)に対して、 
          Ψ
(I) = sup { Ψ( J ) }= sup { f (b')f (a') }
         ※f (x)= xとしてf (x)を組み込んだΨ(I)が、一般に「左半開区間I長さ」と呼ばれるもの。 
(定義:集合関数μ) 
に属す、すべてのEは、区間塊であるから、 
      
type 1: 左半開区間(a, b]={ x | a<xb } (ただし−∞< a< b<+∞),
      type 2: (−∞, b]={ x | xb } (ただし−∞< b<+∞)
      
type 3: (a , )={ x | a<x } (ただし−∞< a <+∞)
      
type 4: (−∞, )=実数全体の集合R 
      
type 5: 空集合φ  
5タイプの区間の有限個の直和として表す(=互いに素な有限個の上記5タイプの区間へ分割する)
ことができる。  
すなわち、
に属す、すべてのEには常に、
  
1以上の或る自然数nが存在して、
  
E= I1In (ただし、I1,,Inは、上記5タイプいずれかの区間)
と表せる。   ※自然数
n1以上とわざわざことわったのは、E= I1というケースも当然ありうるという意味。
そこで、
直線の長さの一般化である集合関数Ψを用いて、 
 μ
(E)=Ψ(I1)Ψ(I2)Ψ(In) 
と、関数μを定義する。 
 このうち特に、
f (x)= x として Ψ (I)= baとした際のμ(E)は、きれぎれの直線E長さの和となる。
(性質) 上記のとおり定義された関数μは、以下の性質をもつ。 
性質1.
   定義域がR部分集合系()  となるので、上記の関数μは、Rで定義された実数値-集合関数となる。
性質2.
   Rで定義された上記の実数値-集合関数μの定義域は、有限加法族である。() 
性質3.
   Rで定義された上記の実数値-集合関数μは、上の有限加法的測度である。
   
なぜ?→証明 
性質4.  [伊藤『ルベーグ積分I-§4有限加法的測度:定理4.2(p.19);高木『解析概論113 (pp.422-3);長さに限定.]
   Rで定義された上記の実数値-集合関数μが、有限加法族上の完全加法的測度となるとは限らない。
   
Rで定義された上記の実数値-集合関数μが、有限加法族上の完全加法的測度となるための必要十分条件は、
   
Ψ (I)に組み込まれている単調増加関数f (x)R右連続であることである。
   すなわち、以下の
命題P命題Q
     
命題P: Rで定義された上記の実数値-集合関数μは、有限加法族上の完全加法的測度
     
命題Q:Ψ(I)に組み込まれている単調増加関数f (x)R右連続。  
   
長さは、f (x)= xとしたときのΨ(I), μ(E)だったが、f (x) = xR右連続だから、
    
R上の区間塊(きれぎれの直線)Eの長さは、有限加法族(R上の区間塊)完全加法的測度となる。
   

   ※なぜ?→証明 
※活用例:R上の任意の集合のルベーグ・スチルチェス外測度


集合関数
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reference

日本数学会編集『岩波数学事典(第三版)』 岩波書店、1985年。項目162A(pp.428-429), 163 (p.432)
伊藤清三『ルベーグ積分』I予備概念§3点関数と集合関数(pp.11-3)
盛田健彦『数学レクチャーノート基礎編4:実解析と測度論の基礎』培風館、2004年。
高橋一『経済学とファイナンスのための数学』新世社、1999年。 pp.1-4.
Cramer, Harald,1946 Mathematical Methods of Statistics, Princeton UP.
=クラメール『統計学の数学的方法:第1巻』東京図書、1973年、6.2集合関数と点関数(pp.47-48)。
高木貞治『解析概論:改訂第3版』岩波書店、1983年、第9章Lebesgue積分,II.Lebesgueの測度および積分, 113Euclid空間区間の体積(pp.421-3).
小谷真一『測度と確率1』岩波書店、1997年、4章。