集合関数の例7 R2上の区間塊の面積

[トピック一覧]
 ・R2上の区間塊の長さを定義する集合関数(定義性質) 
 ・R2上の区間塊の長さを一般化した集合関数(定義性質) 
※関連ページ―上位概念:集合関数
※関連ページ―集合関数の例:リーマン積分区間の長さ矩形の面積直方体の体積Rn区間のn次元体積
              R上区間塊の長さR2上区間塊の面積R3上区間塊の体積、Rn上区間塊のn次元体積)
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集合関数の例7-a R2上の区間塊の面積 

  [伊藤『ルベーグ積分I予備概念§3点関数と集合関数:3(pp.13-15) ;
   高木『解析概論113Euclid空間区間の体積(pp.421-3).] 
(舞台設定) 
R2    : 2つの「実数の全体の集合」R直積。すなわち、
          
R×R{ (x ,y ) |x Rかつy R }{ (x ,y ) | −∞<x<+∞かつ−∞<y<+∞ } 
集合系() : R2上の区間塊として考えられ得るものすべてを集めてきた集合系()
            ※
区間塊Eは、R2部分集合だから、 R2部分集合系()となっている。
Ψ
(I)    :R2上の左半開区間の面積を表す集合関数
       すなわち、
          
type 1: 左半開区間(a, b] ={ x | a<xb } (ただし−∞< a< b<+∞),
          type 2: (−∞, b] ={ x | xb } (ただし−∞< b<+∞)
          
type 3: (a , ) ={ x | a<x } (ただし−∞< a <+∞)
          
type 4: (−∞, )=実数全体の集合R 
          
type 5: 空集合φ    
        のいずれかのかたちの
R上区間の直積となるR2上区間Iに対して、
       
(i) I(a, b]×(a', b'] (−∞< a< b<+∞, −∞< a'< b'<+∞)ならば、Ψ(I) = (ba) (b'a') 
       
(ii) I=φならば、 Ψ(I) =Ψ(φ) = 0  
       
(iii) Iが上記以外〜つまり、(−∞, b]×(a' , )など非有界の矩形〜ならば、
          Ψ
(I) =+∞   
       
値域は、広義の実数R*上の区間[0, +∞]となる。
        「
広義の実数」では、実数における演算が拡張されているので(特に+∞について)注意。
(定義:集合関数μ) 
に属す、すべてのEは、R2上の区間塊であるから、 
      
type 1: 左半開区間(a, b]={ x | a<xb } (ただし−∞< a< b<+∞),
      type 2: (−∞, b]={ x | xb } (ただし−∞< b<+∞)
      
type 3: (a , )={ x | a<x } (ただし−∞< a <+∞)
      
type 4: (−∞, )=実数全体の集合R 
      
type 5: 空集合φ  
のいずれかのかたちの区間の
直積の有限個の直和として表す
(=
互いに素な有限個の「上記5タイプの区間の直積」へ分割する)
ことができる。  
すなわち、
に属す、すべてのEには常に、
  
1以上の或る自然数nが存在して、
  
E= I1In (ただし、I1,,Inは、上記5タイプいずれかの区間の直積で、互いに素
と表せる。   ※自然数
n1以上とわざわざことわったのは、E= I1というケースも当然ありうるという意味。
       例:下図緑の
区間塊は、互いに素な、3個の、R2上の有界な左半開区間
          
I1(a1 , b1] ×(c1 ,d 1], I2(a2 , b2] ×(c2 ,d 2] , I3(a3 , b3] ×(c3 ,d 3] 
                          (
a1 = a3, b1= a2= b3, c1= c2, d1= d2= c3) 
          の
直和として表せる。
       R2上の区間塊
そこで、
R2上の区間塊E面積を、
 μ
(E)=Ψ(I1)Ψ(I2)+…+Ψ(In) (Ψ: 区間Iの面積を表す集合関数
なる関数μで定義する。
  ※
区間塊ですらないR上の集合一般の面積を測るためには、2次元ルベーグ測度。    

(性質) (R2上の区間塊Eの面積を定義する)関数μ(E)は、以下の性質をもつ。 
性質1.
 定義域がR2部分集合系() となるので、関数μ(E)は、R2で定義された-集合関数となる。 
 値域は「
広義の実数R*上の区間[0,+∞]
   →なぜなら、
任意Eに対して、μ(E)左半開区間の面積を表す集合関数Ψの有限和。 
       集合関数
Ψは、常に0Ψ(I)+∞だから。 
       
広義の実数R*で定義された演算規則より、0≦μ(E)+∞ 。
  
値域はあくまで「広義の実数」であって、実数ではない。
   「
広義の実数」では、実数における演算が拡張されているので(特に+∞について)注意。  
性質2.
 R2で定義された-集合関数μ(E)の定義域は、有限加法族である。() 
性質3.
 R2で定義された-集合関数μ(E)は、上の有限加法的測度である。なぜ?→証明 
 ゆえに、μは、上の有限加法的測度の性質を満たし、



n

n
有限加法性 E1,E2,…En)( EiEj =φ(ij)  μ(
Σ
Ei ) = 
Σ μ(Ei) 


i=1

i=1
単調性 E1,E2)(  E1E2  μ(E1)μ(E2) 


n

n
有限劣加法性 E1,E2,…En)( μ(
Ei ) ≦ 
Σ μ(Ei) 


i=1

i=1
 が成立する。


性質4.  [伊藤『ルベーグ積分I-§4有限加法的測度:定理4.2証明内(pp.19-20);]

 type 1: 左半開区間(a, b] (ただし−∞< a< b<+∞),
 type 2: (−∞, b] (ただし−∞< b<+∞)
 
type 3: (a , ) (ただし−∞< a <+∞)
 
type 4: (−∞, ) 
 
type 5: 空集合φ  

のいずれかのかたちのR上区間の直積である限りで任意の区間Iと、
区間
Iにたいして任意にとったα<μ(I)にたいして、
  
(a*, b* ]×(a'*, b'* ] (ただし−∞< a*< b*<+∞ , −∞< a'*< b'*<+∞ )
  空集合φ    
のいずれかのかたちをした、ある区間
Jが存在し、
    
[J]I かつ α<μ(J) 
を満たす。
すなわち、
 
(a, b] , (−∞, b] , (a , ) , (−∞, ) , φのいずれかのかたちのR上区間の直積をすべて集めた集合系をI
 
(a*, b* ]×(a'*, b'* ], φのいずれかのかたちをした区間をすべて集めた集合系をJとおくと、

   (II) (α<μ(I)) (JJ ) ( [J]I かつ α<μ(J) )  

(詳細)
Iが空集合φ以外のケース 
  
(a, b] , (−∞, b] , (a , ) , (−∞, )直積である限りで任意の区間Iと、
  この
Iにたいして任意にとったα<μ(I)に対して、 
  ある有界区間
J=(a*, b*]×(a'*, b'*] (−∞< a*< b*<+∞, −∞< a'*< b'*<+∞)
  が存在して、
   
[J]=[a*, b*]×[a'*, b'*]I かつ α<μ(J) =(b*a*) (b'*a'*) 
  を満たす。
Iが空集合φのケース  
  区間
I=φ と、区間I=φにたいして任意にとったα<μ(I)=μ(φ)=0に対して、 
    
J=φは、[J] I=φ かつ α<μ(J) を満たす 

 なぜ?→証明     
 
活用例→性質5の証明 

性質5.  [伊藤『ルベーグ積分I-§4有限加法的測度:定理4.2証明内(p. 20); 小谷『測度と確率1』補題4.1(p.72)]
 R2上の任意区間塊E と、Eにたいしてとった任意のα<μ(E)にたいして、
 ある有界な
区間塊Fが存在して、 
       
[F]E かつ α<μ(F)  
 を満たす。
 
( E ) ( α<μ(E) ) (F) ( [F]E かつ α<μ(F) )
 なぜ?→証明     
 
活用例→性質6の証明 

性質6.  [伊藤『ルベーグ積分I-§4有限加法的測度:定理4.2証明内(pp. 20-21) ; 小谷『測度と確率1』補題4.1(p.72)]
R2
上の任意区間塊E と、この区間塊E覆う任意の「矩形の可算被覆」{In}に対して、
μ
( )は、次の不等式を満たす。





μ(E) ≦ 
Σ μ(In) 


n=1

     つまり、 μ(E)≦μ(I1)+μ(I2)+μ(I3)+… が成り立つ。
R2上の任意区間塊E が、非有界である場合 





μ(E) = 
Σ μ(In) = ∞ 


n=1

  となるが、この、等号「=」は、広義の実数R*で定義された演算規則「∞=a+∞」の意味での等号「=」であって、
  実数の枠内で普通にいう等号「
=」の意味でではない。    

ただし、ここでいう、E覆う「矩形の可算被覆」とは、
 次の
2条件を満たす可算無限個の「2次元ユークリッド空間R2上の矩形の列」{ I1 , I 2 , I 3 ,…}を指す。 
  
(条件1) 矩形の列の要素I1 , I 2 , I 3 ,…はすべて、以下のいずれかのかたちのR上区間の直積であること。
      
type 1: 左半開区間(a, b] ={ x | a<xb } (ただし−∞< a< b<+∞),
      type 2: (−∞, b] ={ x | xb } (ただし−∞< b<+∞)
      
type 3: (a , ) ={ x | a<x } (ただし−∞< a <+∞)
      
type 4: (−∞, )=実数全体の集合R 
      
type 5: 空集合φ  
  
(条件2) E被覆すること、つまり、 




E

In

n=1

      を満たすこと。  

 なぜ?→証明 
 
活用例→性質7の証明 

性質7.  [伊藤『ルベーグ積分I-§4有限加法的測度:定理4.2(p.19);高木『解析概論113 (pp.422-3);長さに限定.]
   R2で定義された-集合関数μ(E)は、有限加法族上の完全加法的測度となる。
   
なぜ?→証明 
活用例:R2上の任意の集合のルベーグ外測度



集合関数
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集合関数の例7-b R2上の区間塊の面積を一般化した集合関数 

[伊藤『ルベーグ積分I予備概念§3点関数と集合関数:3(pp.13-15) ;高木『解析概論113Euclid空間区間の体積(pp.421-3).] 
(舞台設定) 
 
R2    : 2つの「実数の全体の集合」R直積。すなわち、
          
R×R{ (x ,y ) |x Rかつy R }{ (x ,y ) | −∞<x<+∞かつ−∞<y<+∞ } 
集合系() : R2上の区間塊として考えられ得るものすべてを集めてきた集合系()
            ※
区間塊Eは、R2部分集合だから、 R2部分集合系()となっている。
f1 (x)f2 (x) : R上の実数値関数(つまり、f1,f2: RR)で、R単調増加関数。以下のΦに組み込まれる。
Φ
(I)    : R2上の区間の面積を一般化した集合関数
        すなわち、
         
type 1: 左半開区間(a, b] ={ x | a<xb } (ただし−∞< a< b<+∞),
         type 2: (−∞, b] ={ x | xb } (ただし−∞< b<+∞)
         
type 3: (a , ) ={ x | a<x } (ただし−∞< a <+∞)
         
type 4: (−∞, )=実数全体の集合R 
         
type 5: 空集合φ    
        のいずれかのかたちの
R上の区間の直積となるR2上の区間Iに対して、
       
(i) I(a, b]×(a', b'] (−∞< a< b<+∞, −∞< a'< b'<+∞)ならば、Φ(I) ={ f1 (b)f1 (a) } { f2 (b')f2 (a') } 
       
(ii) I=φならば、 Φ(φ) = 0  
       
(iii) Iが上記以外(つまり、(−∞, b]×(a' , )など非有界の矩形)ならば、
          
Iに含まれる任意の区間J=(a, b]×(a', b'](−∞< a< b<+∞, −∞< a'< b'<+∞)に対して、 
          Φ
(I) = sup {Φ( J ) }= sup { { f1 (b)f1 (a) } { f2 (b')f2 (a') }} 
         ※
f1 (x)= f2 (x)= xとしてf (x)を組み込んだΦ(I)= (ba) (b'a')が、
          「
R2上区間(矩形)I面積」Ψ(I)
(定義:集合関数μ) 
に属す、すべてのEは、R2上の区間塊であるから、 
      
type 1: 左半開区間(a, b]={ x | a<xb } (ただし−∞< a< b<+∞),
      type 2: (−∞, b]={ x | xb } (ただし−∞< b<+∞)
      
type 3: (a , )={ x | a<x } (ただし−∞< a <+∞)
      
type 4: (−∞, )=実数全体の集合R 
      
type 5: 空集合φ  
のいずれかのかたちの区間の
直積の有限個の直和として表す
(=
互いに素な有限個の「上記5タイプの区間の直積」へ分割する)
ことができる。  
すなわち、
に属す、すべてのEには常に、
  
1以上の或る自然数nが存在して、
  
E= I1In (ただし、I1,,Inは、上記5タイプいずれかの区間の直積で、互いに素
と表せる。   ※自然数
n1以上とわざわざことわったのは、E= I1というケースも当然ありうるという意味。
       例:下図緑の
区間塊は、互いに素な、3個の、R2上の有界な左半開区間
          
I1(a1 , b1] ×(c1 ,d 1], I2(a2 , b2] ×(c2 ,d 2] , I3(a3 , b3] ×(c3 ,d 3] 
                          (
a1 = a3, b1= a2= b3, c1= c2, d1= d2= c3) 
          の
直和として表せる。
       
R2上の区間塊
そこで、面積を一般化した集合関数Φを用いて、 
 μ
(E)=Φ(I1)Φ(I2)+…+Φ(In) 
と、関数μを定義する。 
 このうち特に、
f1 (x)= f2 (x)= x として Φ(I)=(ba) (dc)とした際のμ(E)は、
 
R2上の区間塊E面積となる。
(性質) 上記のとおり定義された関数μは、以下の性質をもつ。 
性質1. 定義域がR2部分集合系() となるので、関数μは、R2で定義された実数値E-集合関数となる。 
性質2. R2で定義された上記の実数値-集合関数μの定義域は、有限加法族である。() 
性質3. R2で定義された上記の実数値-集合関数μは、上の有限加法的測度である。
   
なぜ?→証明 

性質4.  [伊藤『ルベーグ積分I-§4有限加法的測度:定理4.2(p.19);高木『解析概論113 (pp.422-3);長さに限定.]
   R2で定義された上記の実数値-集合関数μが、有限加法族上の完全加法的測度となるとは限らない。
   
R2で定義された上記の実数値-集合関数μが、有限加法族上の完全加法的測度となるための必要十分条件は、
   
Φ(I)に組み込まれている単調増加関数f1 (x)f2 (x)R右連続であることである。
   すなわち、以下の
命題P命題Q1かつ命題Q2
     
命題P: R2で定義された上記の実数値-集合関数μは、有限加法族上の完全加法的測度
     
命題Q1: Φ(I)に組み込まれている単調増加関数f1 (x)R右連続。   
     
命題Q2: Φ(I)に組み込まれている単調増加関数f2 (x)R右連続。   
   
面積は、f1 (x)= f2 (x)= xとしたときのΦ(I), μ(E)だったが、f1 (x)= f2 (x)= xR右連続だから、
    
R2上の区間塊Eの面積は、有限加法族(R2上の区間塊)完全加法的測度となる。
   ※なぜ?→証明 

 

集合関数
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reference

 日本数学会編集『岩波数学事典(第三版)』 岩波書店、1985年。項目162A(pp428-429), 163 (p.432)
伊藤清三『ルベーグ積分』I予備概念§3点関数と集合関数(p.11-3)
高橋一『経済学とファイナンスのための数学』新世社、1999年。 pp.1-4.
Cramer, Harald,1946 Mathematical Methods of Statistics, Princeton UP.
=クラメール『統計学の数学的方法:第1巻』東京図書、1973年、6.2集合関数と点関数(pp.47-48)。
高木貞治『解析概論:改訂第3版』岩波書店、1983年、第9章Lebesgue積分,II.Lebesgueの測度および積分, 113Euclid空間区間の体積(pp.421-3).