「集合系」ないし「広義の集合族」と「ベキ集合」 : トピック一覧 

 ・集合系の定義/ベキ集合の定義/部分集合系の定義/集合系の/直和分割/集合系の
 ・集合系の∪,∩の性質
関連ページ:集合の基本概念−定義と記号/集合の演算則/対応/写像/特性関数・定義関数/集合族と集合列/被覆/極限集合/集合関数・点関数 
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定義:集合系・広義の集合族 family of sets

定義

集合系とは、
  すべてのが集合である集合
  要するに「集合の集合」
 のこと。





[文献]
 ・松坂『集合・位相入門』第1章§2.E(p.17);
 ・『岩波数学辞典(第三版)』項目162B(pp.428-429), 163 (p.432);
 ・竹内『集合とはなにか―はじめて学ぶ人のために』2章-「集合の集合」(pp.60-61)


 ・伊藤『ルベーグ積分入門p.4.

[注]

 左欄で提示した「集合の集合」を集合族と呼ぶ場合もあるが、
 集合族という用語は、特に、添数づけられた集合族のみを指すこともあるので、
 松坂和夫にならってここでは、添数づけられた集合族と区別して、
 集合の集合を、集合系と呼ぶことにする。

下位概念:ベキ集合部分集合系 

A1, A2, A3が集合であるとすると、
 これらの集合の集合
  𝔄 {A1,A2,A3}
 は、集合系である。
A, B, Cが集合であるとすると、
 これらの集合の集合
  𝔅 {A,B,C}
 は、集合系である。

記号

集合系と、「集合系」にあたる集合とを、区別しやすいように、
 集合系を表す記号には、Fraktur[ドイツ文字]大文字を使い、
 「集合系」にあたる集合には、普通の英大文字を使うのが、
 慣例。

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定義:ベキ集合 power set

定義

集合Xのベキ集合とは、
 すべての「集合X部分集合」をとして集めた集合系(集合族)のこと。





[文献]
 ・斉藤『数学の基礎:集合・数・位相』1.1.12(p.7):定義,例0,例1.
 ・松坂『集合・位相入門』第1章§2.E(p.18):定義、例3,例0.
 ・中内『ろんりの練習帳』定義3.1.13;例3.1.14(p.136):ここでの例3
 ・志賀『集合への30講』3講(p.14):定義,例3,例2.
 ・志賀『大人のための数学3:集合論の誕生』3章-1-例4(p.54) :例3.
 ・一楽『集合と位相―そのまま使える答えの書き方』定義1.1.12;問題1.1.10(p.24):例2.
 ・神谷和也・浦井憲『経済学のための数学入門』定義1.3.5(p.31)
 ・『岩波数学辞典(第三版)』項目162B(pp.428-429), 163(p.432)
 ・ブルバキ『数学原論・集合論・要約』§1-10(p.5):定義。具体例なし。
 ・竹内外史『集合とはなにか―はじめて学ぶ人のために』2章(pp.70-71):「積集合」と呼んでいる。例2.
 ・DeLaFuente,Mathematical Methods and Models for Economists,I-1-1(p.3)








記号

集合Xのベキ集合は、
  𝔓(X)  , 𝔓X , 2X ,    
 などの記号で表す。

・つまり、 

 𝔓(X) { Y | YX } 
     [神谷浦井 p.31; DeLaFuente p.3]

例0

・集合X とすると、集合X部分集合は、で、全部だから、 
 集合Xのベキ集合  𝔓(X) {  }    ※ 𝔓(X)    ではない点に注意。

例1

・集合X {a} について考える。
 集合X部分集合は、, {a} で、全部。
 集合Xのベキ集合 𝔓(X) { , {a} } 

例2

・集合X {a,b} について考える。
 集合X部分集合は、, {a}, {b}, {a,b}で、全部。
 集合Xのベキ集合 𝔓(X) { , {a},{b},{a,b} } 

例3

・集合X {a,b,c} とすると、
 集合X部分集合は、, {a}, {b},{c}, {a,b}, {a,c}, {b,c}, {a,b,c} で、全部だから、 
 集合Xのベキ集合 𝔓(X) { , {a}, {b}, {c}, {a,b}, {a,c}, {b,c}, {a,b,c} }



性質

・集合Xが「n個のからなる有限集合ならば
 集合Xのベキ集合は2n個のを持つ。

[証明]松坂『集合・位相入門p.18

[日常生活のなかでの使用例:Perfume編]

 ・「3人あわせてPerfume」であるから、
  Perfume { 大本, 西脇, 樫野 }である。
 ・ゆえに、
  Perfumeのベキ集合とは、
   ・Perfumeとしての活動そのもの: { 大本, 西脇, 樫野 }        
   ・Perfumeのメンバーを組み合わせたサブユニットとして考えられるすべての活動: { 大本, 西脇 }, { 大本樫野 }, {  西脇, 樫野 }            
   ・Perfumeのメンバーのソロ活動として考えられるすべて: { 大本 }, { 西脇 }, { 樫野 }   
   ・無人テクノポップユニット:  
  をとする集合系のこと。
 ・すなわち、
   𝔓( Perfume ) { {大本,西脇,樫野}, {大本,西脇}, {大本,樫野}, {西脇,樫野}, {大本}, {西脇}, {樫野},  } 
 ・「3人あわせてPerfume」より、Perfume のメンバーは3人。
  つまり、Perfume は、「3個のからなる集合」である。
  よって、Perfume のベキ集合には、23=8の集合が属している

[日常生活のなかでの使用例: Flipper's Guitar 編]

 ・ flipper's guitar {  小沢健二, 小山田圭吾 } のベキ集合とは、
   ・flipper's guitarとしての活動そのもの: { 小沢健二, 小山田圭吾 }        
   ・flipper's guitarのメンバーのソロ活動として考えられるすべて: { 小沢健二 }, { 小山田圭吾 } Cornelius   
   ・無人操業:  
  をとする集合系のこと。
 ・すなわち、
   𝔓( flipper's guitar ) { {  小沢健二,小山田圭吾}{ 小沢健二 },{ 小山田圭吾 } ,  } 
 ・flipper's guitar のメンバーは2人なので、
  flipper's guitar のベキ集合には、22=4の集合が属している


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定義:部分集合系・広義の部分集合族 family Of subsets 

定義

集合Xの部分集合系とは、
 いくつかの「集合X部分集合」をとする集合系(集合族)のこと。
集合Xの部分集合系は、「集合Xベキ集合」の部分集合となる。

[文献]

 ・松坂『集合・位相入門』第1章§2.E(p.18);

下位概念(位相):開集合系閉集合系近傍系 
下位概念(測度論):有限加法族・σ加法族・ボレル集合族・乗法族・Dynkin族・単調族
cf. 添数づけられた部分集合族 
活用例:被覆 

例1

・集合X {a,b} について考える。
 集合X部分集合は、, {a}, {b}, {a,b}で、全部。
 だから、
 「集合Xベキ集合」は、𝔓(X) { , {a},{b},{a,b} } 
             [の数は、22=4個→ベキ集合の性質]
 すると、集合Xの部分集合系は、

    一つの部分集合とするもの:{  }, { {a} },{ {b} }, { {a,b} }  4通り。
    二つの部分集合とするもの:{ , {a} }, { , {b} }, { , {a,b} } , { {a},{b} }, { {a},{a,b} }, { {b},{a,b} }  全部で4C2通り=(4・3)/2=6通り。
    三つの部分集合とするもの:{ {a},{b},{a,b} }, { ,{b},{a,b} }, { ,{a},{a,b} }, { ,{a},{b} }  全部で4C3通り=(4・3・2)/3! =4通り。
    四つの部分集合とするもの:「集合Xベキ集合𝔓(X) { , {a},{b},{a,b} }  1通り。
 以上全部で、「2個のからなる集合X」の部分集合系は15通り作れる。
 

例2

・集合X {a,b,c} とすると、
 集合X部分集合は、, {a}, {b},{c}, {a,b}, {a,c}, {b,c}, {a,b,c} で、全部だから、 
 「集合Xベキ集合」は、 𝔓(X) { , {a}, {b}, {c}, {a,b}, {a,c}, {b,c}, {a,b,c} }  [の数は、23=8個→ベキ集合の性質]
 すると、集合Xの部分集合系は、
    一つの部分集合とするもの:{  }, { {a} },{ {b} }, { {c} }, { {a,b} } , { {a,c} },{ {b,c} },{ {a,b,c} } 
                    以上、8通り。
    二つの部分集合とするもの:{ , {a}  }, { , {b} },  { ,  {c} },  { , {a,b}  }, { , {a,c} }, { ,{b,c} }, { ,{a,b,c} }
                   { {a}, {b}  }, { {a} ,{c} },  { {a}, {a,b} }, { {a} , {a,c}  }, { {a}, {b,c} }, { {a},{a,b,c} }
                   { {b}, {c}  }, { {b} ,{a,b} }, { {b}, {a,c} }, { {b} , {b,c}  }, { {b} ,{a,b,c} }
                   { {c}, {a,b} }, { {c}  ,{a,c} }, { {c}, {b,c} }, { {c} , {a,b,c} } 
                   { {a,b},{a,c} }, { {a,b},{b,c} }, { {a,b},{a,b,c} }
                   { {a,c},{b,c} }, { {a,c},{a,b,c} }
                   { {b,c},{a,b,c} }
                    以上、全部で8C2通り=(8・7)/2=28通り。
    三つの部分集合とするもの:(省略) 8C3通り=(8・7・6)/3! =56通り。
    四つの部分集合とするもの:(省略) 8C4通り=(8・7・6・5)/4! =(8・7・6・5)/(4・3・2)=70通り。  
    五つの部分集合とするもの:(省略) 8C5通り=(8・7・6・5・4)/5! =8・7 =56通り。   
    六つの部分集合とするもの:(省略) 8C6通り=(8・7・6・5・4・3)/6! =28通り。 
    七つの部分集合とするもの:{ {a}, {b}, {c}, {a,b}, {a,c}, {b,c}, {a,b,c} },  { , {b}, {c}, {a,b}, {a,c}, {b,c}, {a,b,c} }, { , {a}, {c}, {a,b}, {a,c}, {b,c}, {a,b,c} }, 
                   { , {a}, {b}, {a,b}, {a,c}, {b,c}, {a,b,c} }, { , {a}, {b}, {c}, {a,c}, {b,c}, {a,b,c} },  { , {a}, {b}, {c}, {a,b}, {b,c}, {a,b,c} },
                   { , {a}, {b}, {c}, {a,b}, {a,c}, {a,b,c} },  { , {a}, {b}, {c}, {a,b}, {a,c}, {b,c} }
                    以上、全部で8C7通り=(8・7・6・5・4・3・2)/7!=8通り。    
    八つの部分集合とするもの:「集合Xベキ集合𝔓(X) { , {a}, {b}, {c}, {a,b}, {a,c}, {b,c}, {a,b,c} } 1通り。
 だから、「3個のからなる集合X」の部分集合系は、全部で、8+28+56+70+56+28+8+1=255通り作れる。

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定義: 集合系の和集合

定義

集合系𝔄の和集合
 集合系𝔄に属すすべての集合の和集合
 とは、
 「集合系𝔄に属す集合」に属すをすべてあつめた集合
 のこと。

[文献]

 ・松坂『集合・位相入門』第1章§2.F(p.19);

記号

集合系𝔄の和集合は、 
  ∪𝔄 
  ∪{A|A𝔄} 





A

A𝔄

 等の記号で表す。

[例]

 集合系𝔄 {A, B, C, D, E, F} で、
 集合A, B, C, D, E, Fが下図のようになっているならば、
 ∪𝔄は、下図青色部分となる。
        集合系の和集合

定義

論理記号を使って定義すると、
  集合系𝔄の和集合𝔄  { x|(A𝔄)(xA) } 
         [松坂『集合・位相入門』第1章§2.F(p.19)]
    「xが属す『集合系𝔄として属す集合』が、
      ゼロ個にならず、
      1個ないし複数個存在する」
    という基準でxをあつめた集合。
・僕なりに咀嚼すると…
  (A𝔄)(xA)とは、(A)(A𝔄かつxA)の意味で、
             (A𝔄かつxA)とは、要するに、xA𝔄
  だから、上記の松坂の定義は、
  ∪𝔄 {x|(A)(xA𝔄) } 
  としても、同じこと。

・これは、
   「『xA𝔄』という関係を成立させる『集合系𝔄として属す集合』Aが少なくとも一つ以上は存在する」ように、
    xをあつめた集合 
 と理解できる。  

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定義:直和分割 decomposition,partition  

定義

・「集合A部分集合系𝔄直和分割である」とは、
  集合Aが、 部分集合系𝔄に属す集合の直和となっていること。
論理記号を使うと、
 「集合A部分集合系𝔄直和分割である」とは、
   (𝔄A) かつ (C,C'𝔄) (C≠C'CC')    

[文献]

 ・松坂『集合・位相入門』第1章§6.B例4 (p.55);
 ・『岩波数学辞典(第三版)』項目162D(p.430);
 ・西田『線形代数学』付録A.1類別・類(p.200

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定義:集合系・集合族の積集合

定義

集合系𝔄の積集合共通部分
 集合系𝔄に属すすべての集合の積集合・共通部分
 とは、
 すべての「集合系𝔄に属す集合」に共通なをすべてあつめた集合
 のこと。

[文献]

 ・松坂『集合・位相入門』第1章§2.F(pp.19-20);

記号

集合系𝔄の積集合は、 
  ∩𝔄 
  ∩{A|A𝔄} 





A

A𝔄

 等の記号で表す。

[例]

    集合系𝔄 {A, B, C, D, E} で、
    集合A, B, C, D, Eが右図のようになっているならば
    ∩𝔄は、右図青色部分となる。 
       集合系の和集合

定義

論理記号を使って定義すると、
  集合系𝔄の積集合𝔄 {x|(A𝔄)(xA) } 
         [松坂『集合・位相入門』第1章§2.F(p.19)]
  そのまま書き下すと、
  「すべての『集合系𝔄属す集合』に属す」をあつめた集合
  となる。
・僕なりに咀嚼すると…
  (A𝔄)とは、(A)(A𝔄かつxA)の意味で、
             (A𝔄かつxA)とは、要するに、xA𝔄
  だから、上記の松坂の定義は、
  ∩𝔄 {x|(A)(xA𝔄) } 
  としても、同じこと。

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集合系の和集合・積集合の性質 

1.

すべての「集合系𝔄に属す集合」を含む様々な集合のなかで、𝔄が最小。
 ・𝔄は、すべての「集合系𝔄に属す集合」を含む
     論理記号で表すと、(S𝔄)((𝔄)S)  

[文献]

 ・松坂『集合・位相入門』第1章§2.F(式2.17-8) (p.20);


 ・集合Zが、すべての「集合系𝔄に属す集合」を含むならば
  集合Zは、𝔄含む。 
     論理記号で表すと、((S𝔄)(ZS))Z(𝔄))
集合系の和集合は最小



 (例)
  集合系𝔄 {A, B, C, D, E, F}  で、
  集合A, B, C, D, E, F が右図のようになっているならば、
  𝔄は、右図青色部分となる。 
  集合A, B, C, D, E, Fすべてを含む様々な集合(たとえば、右図Z)のうちで
  最小のものは、
  確かに、𝔄であるようだ。

 →A∪Bは、AとBの両方を含む様々な集合のなかで、「最小」

2.

すべての「集合系𝔄に属す集合」に含まれる様々な集合のなかで、
 𝔄が最大。

[文献]

 ・松坂『集合・位相入門』第1章§2.F(式2.17-8) (p.20);

 ・𝔄は、すべての「集合系𝔄に属す集合」に含まれる
   論理記号で表すと、(S𝔄)((𝔄)S
 ・集合Zが、すべての「集合系𝔄に属す集合」に含まれるならば
  集合Zは、𝔄に含まれる
   論理記号で表すと、((S𝔄)(ZS))Z(𝔄)) 

 (例)
  集合系𝔄 {A, B, C, D, E} で、
  集合A, B, C, D, Eが右図のようになっているならば、
  𝔄は、右図青色部分となる。 
  集合A, B, C, D, Eのすべてに含まれる様々な集合
   (たとえば、下図のピンク部分)のうちで最大のものは、
  確かに、𝔄であるようだ。 

 →A∩Bは、AとBの両方に含まれている様々な集合のなかで、「最大」。  
集合系の積集合は最大



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reference

日本数学会編集『岩波数学事典(第三版)』 岩波書店、1985年。項目162A(pp428-429), 163 (p.432)
中内伸光『数学の基礎体力をつけるためのろんりの練習帳』共立出版株式会社、2002年、第3章集合と写像、3.1集合。
松坂和夫『集合・位相入門』岩波書店、1968年、第1章§2.E-F(pp.1-11)。
彌永昌吉・彌永健一『岩波講座基礎数学:集合と位相I・II』 岩波書店、1977年。
Chiang, Fundamental Methods of Mathematical Economics:Third Edition, McGraw Hill,1984. pp. 11-15,18-20,757.
高橋一『経済学とファイナンスのための数学』新世社、1999年。 pp.1-4.
矢野・田代『社会科学者のための基礎数学:改訂版』裳華房、1993年.一四〇頁。(直積について)
吉田・栗田・戸田『昭和63年度用 高等学校数学I』啓林館、1987年、pp.44-49, 62, 。
薩摩順吉『理工系の数学入門コース7 確率・統計』岩波書店、1989年、p.6。
吉田耕作・栗田稔・戸田宏『平成元年3/31文部省検定済高等学校数学科用 高等学校 確率・統計 新訂版』啓林館.p.10
佐藤坦『はじめての確率論 測度から確率へ』共立出版、1994。
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