集合関数の例2 R上区間の長さとその一般化

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R上区間の長さを定義する集合関数 
R上区間の長さを一般化した集合関数 
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               R上区間塊の長さR2上区間塊の面積R3上区間塊の体積、Rn上区間塊のn次元体積
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集合関数の例2-a 区間の長さ

 [伊藤『ルベーグ積分』I予備概念§3点関数と集合関数:例2(pp.13-4);高木『解析概論』113節Euclid空間区間の体積(pp.421-3).
  志賀『ルベーグ積分30講』2講(p.9-14);3講TeaTime(pp.22-3) ;9講(p.63);Halmos, Measure Theory8.Measure on intervals (pp.32-7).] 

(舞台設定) 

R : 実数の全体の集合。すなわち、R{ x| −∞ < x < +∞ } 
I : 下記5タイプの区間のひとつ
    type 1: 左半開区間(a,b]={ x | a<xb } (ただし−∞< a<b<+∞),
    type 2: (−∞,b]={ x | xb } (ただし−∞<b<+∞)、
    type 3: (a,∞)={ x | a<x } (ただし−∞<a<+∞)、
    type 4: (−∞, ∞)=実数の全体の集合R 
    type 5: 空集合φ 
       ※これらはすべて、R部分集合となっている。
 : 上記5タイプの区間Iとして考えられ得るもの全てを集めてきた集合系(族)
       ※上記5タイプの区間Iは、どれも、R部分集合だから、
        R部分集合系(族)となっている。 
       ※以上のように、I,を定義するとき、IRかつI は満たされている。 

(定義:集合関数Ψ) 

関数Ψを、
 (i) 区間Iが上記type1の区間であるとき、
      つまり、I=(a,b]={x| a<xb } (ただし−∞<a<b<+∞) であるとき、
     Ψ(I) = ba   
        ※a<bだから、常に、Ψ(I)=ba>0となる。
 (ii) 区間Iが上記type5の区間であるとき、つまり、I=φであるとき、  
      Ψ(φ) = 0
 (iii) 区間Iが上記type 2: (−∞,b], type 3: (a,∞), type 4: (−∞, ∞)いずれかの区間であるとき、
     Ψ(I) =+∞    
という値のとりかたをする関数と定義する。
・このΨ(I)が、一般に「左半開区間Iの長さ」と呼ばれるもの。
活用例:R上区間塊の長さ1次元ルベーグ外測度

(性質) 

1. 定義域が、実数R部分集合系(族)  となるので、
      この関数Ψは、Rで定義された-集合関数となる。 
2. 値域は「広義の実数R*上の区間[0, +∞]。つまり、0≦Ψ(I)≦+∞。Ψ(I)=0となるのはI=φのケースのみ。
  ※値域はあくまで「広義の実数」であって、実数ではない。
   「広義の実数」では、実数における演算が拡張されているので(特に+∞について)注意。
3. 平行移動による不変性 [志賀『ルベーグ積分30講』第2講(p.10)]  
 有限の左半開区間(a,b]を、hだけ平行移動して、(a+h,b+h] にうつしても、
 区間の長さはかわらない。Ψ((a,b])=Ψ((a+h,b+h])  
     なぜなら、Ψ((a,b])=ba、Ψ((a+h,b+h ])= (b+h)−(a+h)= ba   
4. 完全加法性  [志賀『ルベーグ積分30講』第2講(p.12)]
 左半開区間I=(a,b]を無限個に分割してできた左半開区間の列J1=(a,a1] , J2=(a1,a2] , J3=(a2,a3] , J4=(a3, a4] ,…に対して、



  Ψ(I)

Σ Ψ(Jn)

n=1

  [証明] 
  ・左半開区間J1=(a,a1] , J2=(a1,a2] , J3=(a2,a3] , J4=(a3,a4] ,…
   の右端点の値の数列a1, a2 , a3, a4,…は、bを上限とする有界な単調増大列であるから、
   上限であるbに収束する。()…(1)



k
Σ Ψ(Jn) lim Σ Ψ(Jn)
n=1


k→∞ n=1

lim {Ψ(J1)+Ψ(J2)+Ψ(J3)+Ψ(J4)+…+Ψ(Jk)}
k→∞

lim {Ψ((a,a1])+Ψ((a1,a2])+Ψ((a2,a3])+Ψ((a3,a4])+…+Ψ((ak-1,ak])}
k→∞

lim a1aa2a1a3a2a4a3+…+akak-1}  ∵Ψ()の定義
k→∞

lim aka)  ∵Ψ()の定義
k→∞
 
lim aklim a  ∵(1)より、数列の極限値の和の公式
k→∞k→∞
        =b-a          ∵(1)より  
        =Ψ((a,b]) =Ψ(I)    ∵Ψ()の定義    
               

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集合関数の例2-b 区間の長さの一般化

 [伊藤『ルベーグ積分』I予備概念§3点関数と集合関数:例2(pp.13-15);高木『解析概論』113節Euclid空間区間の体積(pp.421-3).] 

(設定) 

R : 実数の全体の集合。すなわち、R{ x| −∞ < x < +∞ } 
I : 下記5タイプの区間のひとつ
    type 1: 左半開区間(a,b]={ x | a<xb } (ただし−∞< a<b<+∞),
    type 2: (−∞,b]={ x | xb } (ただし−∞<b<+∞)、
    type 3: (a,∞)={ x | a<x } (ただし−∞<a<+∞)、
    type 4: (−∞, ∞)=実数の全体の集合R 
    type 5: 空集合φ 
       ※これらはすべて、R部分集合となっている。
 : 上記5タイプの区間Iとして考えられ得るもの全てを集めてきた集合系(族)
       ※上記5タイプの区間Iは、どれも、R部分集合だから、
        R部分集合系(族)となっている。 
       ※以上のように、I,を定義するとき、IRかつI は満たされている。 

f(x): : R上の実数値関数(つまり、f:RR)で、R単調増加関数

(定義:集合関数Ψ) 

関数Ψを、
 (i) 区間Iが上記type1の区間であるとき、
      つまり、I=(a,b]{ x | a<xb } (ただし−∞<a<b<+∞) であるとき、
     Ψ(I) = f(b)−f(a)   
        ※ f(x)は単調増加関数で、a<bだから、常に、Ψ(I)=f(b)−f(a)>0となる。
 (ii) 区間Iが上記type5の区間であるとき、つまり、Iφであるとき、  
      Ψ(φ) = 0
 (iii) 区間Iが上記type 2: (−∞,b], type 3: (a,∞), type 4: (−∞, ∞)いずれかの区間であるとき、
     Iに含まれる任意のtype1の区間J=(a',b']={ x|a'<xb' } (ただし−∞<a'<b'<+∞) 
     に対して、 
     Ψ(I) = sup { Ψ( J ) }= sup { f (b')−f (a') }    
        ※f(x)は単調増加関数で、a<bだから、常に、Ψ(I) = sup { f(b')−f(a') }>0となる。
という値のとりかたをする関数と定義する。
・このうち特に、f(x)=x とした際のΨ(I)が、一般に「左半開区間Iの長さ」と呼ばれるもの
(性質) 
・定義域が、Rの部分集合系(族)  となるので、
      この関数Ψは、Rで定義された実数値-集合関数となる。 
・常に、Ψ(I)≧0で、Ψ(I)=0となるのはI=φのケースのみ。
R上区間塊の長さを一般化した集合関数1次元ルベーグ・スチルチェス外測度

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reference

日本数学会編集『岩波数学事典(第三版)』 岩波書店、1985年。項目162A(pp428-429), 163 (p.432)
伊藤清三『ルベーグ積分』I予備概念§3点関数と集合関数(p.11-3)
志賀浩二『ルベーグ積分30講』朝倉書店、1990年、第2講(p.9-14);第3講TeaTime(pp.22-3)。
Paul R. Halmos, Measure Theory, Springer, 1974, ChapterII-8.Measure on intervals (pp.32-7).
高橋一『経済学とファイナンスのための数学』新世社、1999年。 pp.1-4.
Cramer, Harald,1946 Mathematical Methods of Statistics, Princeton UP.
=クラメール『統計学の数学的方法:第1巻』東京図書、1973年、6.2集合関数と点関数(pp.47-48)。
高木貞治『解析概論:改訂第3版』岩波書店、1983年、第9章Lebesgue積分,II.Lebesgueの測度および積分, 113Euclid空間区間の体積(pp.421-3).

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