実数の不等式の性質 : トピック一覧 

 ・反射律/反対称律1/反対称律2/推移律/比較可能性1/比較可能性2/狭義順序/狭義順序の推移律 
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総目次

実数の反射律 

【設定】

 R: 実数体 
 ≦: 実数体の定義‐条件B-1より、Rに定義された順序。  

【本題】

  どんな実数 xも、 xx を満たす。
  つまり、 ( xR ) ( xx )

【なぜ?】

  実数体の定義-条件B-1-1より、
   ・( xX) ( xx )を満たす集合Xを、実数体Rとよび 
   ・実数体R実数と呼ぶ
  のだから、
  ( xR ) ( xx )は必ず成り立つ。
  成り立たなければ、それらは実数ではない





[文献]
 ・黒田『微分積分学』2.2実数の四則演算と順序(pp.23-9);2.4.1連続性の公理(p.35)
 ・神谷浦井『経済学のための数学入門』2.1.1節(pp.53-65)          


 ・赤『実数論講義』§2.4                 

   

実数の反対称律(1)  

【設定】

 R: 実数体 
 ≦: 実数体の定義‐条件B-1より、Rに定義された順序。  

【本題】

 どんな実数x,yについても、
        x≠yならば
       xyyxのいずれか一方であって、
       両方は同時に成り立たない。

【なぜ?】

 実数体の定義-条件B-1-2より、
   ・「任意x ,y Xについて、
          x≠yならば
           x
yyxのいずれかであって、
           両方は同時に成り立たない」
    を満たす集合Xを、実数体Rとよび 
   ・実数体R実数と呼ぶ
 のだから、
 上記は必ず成り立つ。
 成り立たなければ、それらを実数と呼ばない。




[文献]
 ・黒田『微分積分学』2.2実数の四則演算と順序(pp.23-9);2.4.1連続性の公理(p.35)
 ・神谷浦井『経済学のための数学入門』2.1.1節(pp.53-65)          


 ・赤『実数論講義』§2.4                 



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実数の反対称律(2) 

【設定】


 R
: 実数体 
 ≦: 実数体の定義‐条件B-1より、Rに定義された順序。  

【本題】


 どんな実数x,yも、「xyかつyxならばx=y」を満たす。
  つまり、 ( x,yR ) ( xyかつyx x=y ) 

【なぜ?】

  反対称律(1)の対偶。




[文献]
 ・黒田『微分積分学』2.2実数の四則演算と順序(pp.23-9);2.4.1連続性の公理(p.35)
 ・神谷浦井『経済学のための数学入門』2.1.1節(pp.53-65)          


 ・赤『実数論講義』§2.4                 



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実数の推移律  

【設定】


 R
: 実数体 
 ≦: 実数体の定義‐条件B-1より、Rに定義された順序。  

【本題】


 どんな実数x,y,zについても、xyかつyzならばxz 
 つまり、 ( x,y,zR ) ( xyかつyz xz )

【なぜ?】

 実数体の定義-条件B-1-3より、
  ・( x,y,zX ) ( xyかつyz xz )を満たす集合X
   を実数体Rとよび 
  ・実数体R実数と呼ぶ
 のだから、
 上記は必ず成り立つ。
 成り立たなければ、それらを実数と呼ばない。




[文献]
 ・黒田『微分積分学』2.2実数の四則演算と順序(pp.23-9);2.4.1連続性の公理(p.35)
 ・神谷浦井『経済学のための数学入門』2.1.1節(pp.53-65)          


 ・赤『実数論講義』§2.4                 



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実数の順序−全順序性・比較可能性(1) 

【設定】


 R
: 実数体 
 ≦: 実数体の定義‐条件B-1より、Rに定義された順序。  

【本題】


 どんな実数x,yについても、
   xyyx の両方ないしいずれか一方が成り立つ。
 つまり、( x,yR ) ( xyまたはyx )

【なぜ?】

 実数体の定義-条件B-2より、
  ・( x,yX ) (  xyまたはyx )を満たす集合Xを、
   実数体Rとよび 
  ・実数体R実数と呼ぶ
 のだから、
 上記は必ず成り立つ。
 成り立たなければ、それらを実数と呼ばない。




[文献]
 ・黒田『微分積分学』2.2実数の四則演算と順序(pp.23-9);2.4.1連続性の公理(p.35)
 ・神谷浦井『経済学のための数学入門』2.1.1節(pp.53-65)          


 ・赤『実数論講義』§2.4                 



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実数の順序−全順序性・比較可能性(2) 

【設定】


 R
: 実数体 
 ≦: 実数体の定義‐条件B-1より、Rに定義された順序。  

【本題】


 どんな実数x,yについても、
   x=y,x<y,x>y のなかのどれか一つのみが成り立つ。

【なぜ?】

 実数体の定義-条件B-2より、
 上記は必ず成り立つ。
 成り立たなければ、それらを実数と呼ばない。




[文献]
 ・黒田『微分積分学』2.2実数の四則演算と順序(pp.23-9);2.4.1連続性の公理(p.35)
 ・神谷浦井『経済学のための数学入門』2.1.1節(pp.53-65)          


 ・赤『実数論講義』§2.4定理2.4.3               



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実数での順序と狭義順序の関係

【設定】


 R
: 実数体 
 ≦: 実数体の定義‐条件B-1より、Rに定義された順序。  
 <: 実数体の定義‐条件B-1より、
     「x<y(x≦yかつx≠y)」としてRに定義された狭義順序 

【本題1】


 どんな実数x,yについても、x<y (xyかつx≠y)     


【なぜ?】


 狭義順序「<」の定義そのもの。

【本題2】


 どんな実数x,yについても、xy(x<yまたはx=y)    

【なぜ?】


 ・なぜ「 xy x<yまたはxy 』」なのか?
   xy であるケースは、(i) x≠y と (ii) x=y のいずれかである。
  (i) x≠y の場合、xy かつ x≠y。これは、【本題1】より、x<yを意味する。
  したがって、xy 「(i)x<y または(ii)x=y」      

 ・なぜ「 『x<yまたはx=y xy 」 なのか?
  ・ x<y  xyかつx≠y  ∵【本題1】でみた狭義順序の定義 
       xy       
  ・反射律より、 x≦x  だから、 x=y x≦x=y
   つまり、x=y x≦y 。 
  ・よって、 『x<yまたはx=y xy 





[文献]          

 ・赤『実数論講義』§2.4定理2.4.1               

 

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実数の狭義順序における推移律

【設定】


 R
: 実数体 
 ≦: 実数体の定義‐条件B-1より、Rに定義された順序。  
 <: 実数体の定義‐条件B-1より、
     「x<y(x≦yかつx≠y)」としてRに定義された狭義順序 

【本題】


1.どんな実数x,y,zについても、
  xyかつy<z  x<z が成り立つ。 
     (  x,y,zR ) ( x≦yかつy<z  x<z )

2.どんな実数x,y,zについても、x<yかつyz  x<z 
     (  x,y,zR ) ( x<yかつyz  x<z )

3.どんな実数x,y,zについても、x<yかつy<z  x<z 
     (  x,y,zR ) ( x<yかつy<z  x<z )
  

【なぜ?】






[文献]          

 ・赤『実数論講義』§2.4定理2.4.2(p.47)             


(1の証明)    [赤『実数論講義』§2.4定理2.4.2(p.47);] 
・仮定の言換え
 x≦yかつy<z x≦yかつyzかつy≠z  ∵狭義順序と順序の関係から、y<zyzかつy≠z   
・仮定が成り立てば… 
 x≦yかつyzかつy≠zx≦zかつy≠z    ∵順序の推移律 
            x<zまたはx=zかつy≠z
                 ∵狭義順序と順序の関係から、xzx<zまたはx=z 
            x<zかつy≠zまたはx=zかつy≠z )  ∵論理の分配律 
  以上から、
  「x≦yかつy<zx≦yかつyzかつy≠z「(x<zかつy≠zまたはx=zかつy≠z )」 
・「x≦yかつy<z ならば、x=zかつy≠z )」はありえない。
  x≦yかつy<z がなりたっている、
   つまり、x≦yかつyzかつy≠z …(1)
   が成り立っており、
   なおかつ、x=zかつy≠zが成り立っているとすると、…(2)
   (2)のx=zを(1)のxに代入して、z≦yかつyzかつy≠z とできることになるが、
   反対称律より、z≦yかつyzy=z であるから、
   z≦yかつyzかつy≠z は、そもそも、矛盾を含んだ、ありえない命題なのであって、
   したがって、「x≦yかつy<z ならば、x=zかつy≠z )」もありえない想定である。 
だから、結局、xyかつy<z  x<z となる。   
(2の証明)  
x<yかつy≦z
x≦yかつx≠yかつyz  ∵狭義順序と順序の関係から、x<yxyかつx≠y   
   x≦zかつx≠y    ∵順序の推移律 
     (x<zまたはx=z)かつx≠y  ∵狭義順序と順序の関係から、xzx<zまたはx=z 
     (x<zかつx≠y)または(x=zかつx≠y )  ∵論理の分配律 
x<yかつy≦z ならば、(x=zかつx≠y )はありえない。
  x<yかつy≦z がなりたっている、
   つまり、x≦yかつx≠yかつyz …(1)
   が成り立っており、
   なおかつ、x=zかつx≠yが成り立っているとすると、…(2)
   (2)のx=zを(1)のzに代入して、x≦yかつx≠yかつyxとできることになるが、
   反対称律より、x≦yかつyxx=y であるから、
   x≦yかつx≠yかつyx は、そもそも、矛盾を含んだ、ありえない命題なのであって、
   したがって、「x<yかつy≦z ならば、(x=zかつx≠y )」もありえない想定である。 
だから、
結局、x<yかつy≦z   x<z となる。   
(3の証明)   
x<yかつy<z
x≦yかつx≠yかつyzかつy≠z
       ∵狭義順序と順序の関係から、「x<yxyかつx≠y」「y<zyzかつy≠x」  
  x≦zかつx≠y かつy≠z   ∵順序の推移律 
     (x<zまたはx=z)かつx≠yかつy≠z ∵狭義順序と順序の関係から、xzx<zまたはx=z 
     (x<zかつx≠yかつy≠z)または(x=zかつx≠yかつy≠z )  ∵論理の分配律 
x<yかつy<z ならば、(x=zかつx≠yかつy≠z)はありえない。
  x<yかつy<z がなりたっている、
   つまり、x≦yかつx≠yかつyzかつy≠z …(1)
   が成り立っており、
   なおかつ、x=zかつx≠yかつy≠zが成り立っているとすると、…(2)
   (2)のx=zを(1)のzに代入して、x≦yかつx≠yかつyxかつy≠zとできることになるが、
   反対称律より、x≦yかつyxx=y であるから、
   x≦yかつx≠yかつyxかつy≠z は、そもそも、矛盾を含んだ、ありえない命題なのであって、
   したがって、「x<yかつy<z ならば、(x=zかつx≠yかつy≠z)」もありえない想定である。 
だから、
結局、xyかつy<z  x<z となる。   



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reference

日本数学会編集『岩波数学辞典(第三版)』 岩波書店、1985年、項目156A.実数の公理系 (pp. 417-418), 168.順序 (pp.440-441). 項目183数:E.実数 (p. 475).
斉藤正彦『数学の基礎:集合・数・位相』東大出版会、2002年。第2章自然数から実数体の定義まで§5定義2.5.13 (p.58)

【解析学テキストのなかで】

小平邦彦『解析入門I』(軽装版)岩波書店、2003年、§1.5-a上限下限(pp.36-7.)。
高木貞二『解析概論改訂第三版』岩波書店、1983年、§3.数の集合・上限・下限(pp.1-5.)
杉浦光夫『解析入門I』岩波書店、1980年、§1実数(pp.1-9).
笠原皓司『微分積分学』サイエンス社、1974年、1.1実数(pp.1-7).。
吹田・新保『理工系の微分積分学』学術図書出版社、1987年、pp.3-5.
黒田成俊『21世紀の数学1:微分積分学』共立出版株式会社、2002年、2.2実数の四則演算と順序(pp.23-9);2.4.1連続性の公理(p.35)。
赤攝也『実数論講義』SEG出版、1996年。
Walter Rudin,Principles of Mathematical Analysis,Mcgraw-Hill,1953-1976.
=ウォ−ルタ−・ルディン『現代解析学』共立出版、1971年、第1章。

【数理経済学テキストのなかで】

神谷和也・浦井憲『経済学のための数学入門』東京大学出版会、1996年、pp.56-64

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