実数における乗法の性質 : トピック一覧 

・定義:逆数/  
・性質:結合則/可換則/1との積/逆数との積/自らによる商 
実数関連ページ:実数体・実数の定義/デデキントの連続性公理/実数体上の順序概念 
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定義:逆数

【設定】


 R
: 実数体 
 xy実数体の定義‐条件A-0より、Rに定義された乗法。  
 x-1xR{0}に対する乗法の逆元

【定義】


 「0を除く実数xの逆数
  すなわち、 xR{0}の逆数とは、
    「0を除く実数xR{0}に対する乗法の逆元x-1 のこと。







[文献]


 ・赤『実数論講義』定義2.2.3(p.41)               




実数体の定義‐条件A-3より、加法の単位元0を除く全ての実数に対して(すなわち、任意のxR{0}に対して)x-1は存在する。




   

定義:実数体における「商」  

【設定】


 R
: 実数体 
 xy実数体の定義‐条件A-0より、Rに定義された乗法。  
 x-1xR{0}に対する逆数

【定義】


  b実数aを0以外の実数とする。
  baによる商
   ba (ただしbR, aR{0}
  とは、
  「実数b」と「実数aに対する乗法の逆元a-1」との乗法 
    ba-1 
  のことをいう。
   




[文献]
 ・黒田『微分積分学』2.2.1四則演算(p.24)
 ・杉浦『解析入門I』1章§1実数(p.2)            


 ・赤『実数論講義』定義2.2.4(p.41)                  




 左記から、1/a = 1a-1 =a-1  ∵1との積






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実数における乗法の結合則

【設定】


 R
: 実数体 
 xy実数体の定義‐条件A-0より、Rに定義された乗法。  

【本題】


 どんなふうに、実数x,y,zを選んでも、 ( xy ) z = x ( yz ) が成り立つ。
 つまり、  x,y,zR にたいして、  ( xy ) z = x ( yz )
 

【なぜ?】


 実数体の定義-A-2-1より、
  ・( x,y,zX ) ( ( xy ) z = x ( yz ) )を満たす代数系Xを、
    実数体Rとよび 
  ・実数体R実数と呼ぶ
 のだから、
 ( x,y,zR ) ( ( xy )z = x ( yz ) )は必ず成り立つ。
 成り立たなければ、それらは実数ではない。 
   





[文献]
 ・黒田『微分積分学』2.2実数の四則演算と順序(pp.23-9);2.4.1連続性の公理(p.35)
 ・神谷浦井『経済学のための数学入門』2.1.1節(pp.53-65)          


 ・赤『実数論講義』第2章                 

実数における乗法の可換則

【設定】


 R
: 実数体 
 xy実数体の定義‐条件A-0より、Rに定義された乗法。  

【本題】


  どんなふうに、実数x,yを選んでも、 xy = yx が成り立つ。
  つまり、  x,yR にたいして、  xy = yx
 

【なぜ?】


  実数体の定義-A-2-2より、
   ・x,yXに対して、 xy = yxを満たす代数系Xを、
    実数体Rとよび 
   ・実数体R実数と呼ぶ
  のだから、
  x,yRに対して、xy = yxは必ず成り立つ。
  成り立たなければ、それらは実数ではない
   




[文献]
 ・黒田『微分積分学』2.2実数の四則演算と順序(pp.23-9);2.4.1連続性の公理(p.35)
 ・神谷浦井『経済学のための数学入門』2.1.1節(pp.53-65)          


 ・赤『実数論講義』第2章                 



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1との積の性質

【設定】


 R
: 実数体 
 xy実数体の定義‐条件A-0より、Rに定義された乗法。  

【本題】


  どんなふうに、実数xを選んでも、 1x=x が成り立つ。

  つまり、  xR にたいして、 1x=x

【なぜ?】


  実数体の定義A-2より、
   ・「単位元1: (xX) ( 1x = x かつ x1 = x )を満たす1X
    が存在する代数系Xを、
    実数体Rとよび 
   ・実数体R実数と呼ぶ
  のだから、
  ( xR ) ( 1x=x )は必ず成り立つ。
  成り立たなければ、それらは実数ではない。  






[文献]
 ・黒田『微分積分学』2.2実数の四則演算と順序(pp.23-9);2.4.1連続性の公理(p.35)
 ・神谷浦井『経済学のための数学入門』2.1.1節(pp.53-65)          


 ・赤『実数論講義』第2章                 

自らの逆数との積の性質

【設定】


 R
: 実数体 
 xy実数体の定義‐条件A-0より、Rに定義された乗法。  

【本題】


  どんなふうに、0以外の実数を選んでも、 その逆数との積は1。

  つまり、   xR{0} にたいして、x-1x =xx-1=1

【なぜ?】


  実数x逆数x-1、すなわち、実数xに対する乗法の逆元x-1の定義より、
  x-1x-1x =xx-1=1を満たす。




[文献]
 ・黒田『微分積分学』2.2実数の四則演算と順序(pp.23-9);2.4.1連続性の公理(p.35)
 ・神谷浦井『経済学のための数学入門』2.1.1節(pp.53-65)          


 ・赤『実数論講義』第2章                 



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商の性質

【設定】


 R
: 実数体 
 xy実数体の定義‐条件A-0より、Rに定義された乗法。  

【本題】


  どんなふうに、0以外の実数を選んでも、 それ自身とのは1。

  つまり、 xR{0} にたいして、 xx= 1

【なぜ?】


  の定義より xx=xx-1逆数の性質より、xx-1=1 。




[文献]
 ・黒田『微分積分学』2.2実数の四則演算と順序(pp.23-9);2.4.1連続性の公理(p.35)
 ・神谷浦井『経済学のための数学入門』2.1.1節(pp.53-65)          


 ・赤『実数論講義』第2章                 


reference

日本数学会編集『岩波数学辞典(第三版)』 岩波書店、1985年、項目156A.実数の公理系 (pp.417-418), 168.順序 (pp.440-441). 項目183数:E.実数 (p.475).
斉藤正彦『数学の基礎:集合・数・位相』東大出版会、2002年。第2章自然数から実数体の定義まで§5定義2.5.13(p.58)

【解析学テキストのなかで】

小平邦彦『解析入門I』(軽装版)岩波書店、2003年、§1.5-a上限下限(pp.36-7.)。
高木貞二『解析概論改訂第三版』岩波書店、1983年、§3.数の集合・上限・下限(pp.1-5.)
杉浦光夫『解析入門I』岩波書店、1980年、§1実数(pp.1-9).
笠原皓司『微分積分学』サイエンス社、1974年、1.1実数(pp.1-7).。
吹田・新保『理工系の微分積分学』学術図書出版社、1987年、pp.3-5.
黒田成俊『21世紀の数学1:微分積分学』共立出版株式会社、2002年、2.2実数の四則演算と順序(pp.23-9);2.4.1連続性の公理(p.35)。
赤攝也『実数論講義』SEG出版、1996年。
Walter Rudin,Principles of Mathematical Analysis,Mcgraw-Hill,1953-1976.
=ウォ−ルタ−・ルディン『現代解析学』共立出版、1971年、第1章。

【数理経済学テキストのなかで。】

神谷和也・浦井憲『経済学のための数学入門』東京大学出版会、1996年、pp.56-64


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