アルキメデスの原理 : トピック一覧

 ・アルキメデスの原理 

【関連事項】

 ・実数の定義と性質:実数・実数体の定義/実数体上の順序概念/加法/乗法/加法・乗法の関係/不等式/不等式と加法・乗法の関係 
 ・《コーシー完備アルキメデスの公理》《区間縮小法とアルキメデスの公理と同値な命題:
    実数の連続性公理/デデキントの連続性公理/有界単調増加数列の収束定理/ボルツァノ・ワイヤストラスの定理

総目次

定理:アルキメデスの原理

 
実数自然数について、次の同値な命題が成り立つ。

  【 命題P


   いかなる正の実数a,bに対しても、
     ある自然数nが少なくとも一つ存在して、
        「na>b」を満たす。

   論理記号で表すと、

      a,bR nN  (a,b> na>b )
 

  【 命題Q


   「自然数をすべてあつめた集合N
      「Rのなかで上に有界な集合」ではない
 

  【 命題Q’


   いかなる実数にたいしてでも、
         それより大きな自然数が存在する。 

   論理記号で表すと、

     cRnN (  cn ) 




 アルキメデスの原理コー シー完備や区間縮小法の原理とあわせた命題は、実数の連続性公理同値

 つまり、アルキメデスの原理は、実数の定義の核心部の別表現。

 →詳細








[文献]
 ・杉浦『解析入門I』定理3.2(p.19);
 ・笠原『微分積分学』定理1.5(p.7);
 ・赤『実数論講義』定理3.6.1;3.6.2(pp.81-2);
 ・黒田『微分積分学』定理2.3アルキメデス の原理(p.36)   
 ・加藤『微分積分学原論』 定理2.2系2.3(p.14)
 ・松坂『解析入門1』1.1数列-F「アルキ メデスの性質」(p.7)
 ・矢野『距離空間と位相構造』定理A.11アルキメデスの原理(p.243):証明付;
 ・吹田・新保『理工系の微分積分学』1章§1(D)(p.4);
 ・神谷浦井『経済 学のための数学入門』定理2.1.2Archimedesの公理(p.65)
 ・斎藤『数学の基礎:集合・数・位相』2.5.7(p.54);2.5.8;2.5.13(p.58).
 ・永倉・宮岡『解析演習ハンドブック[1変数関数編]』2.3.14(p.58):同値命題の列挙。証明なし。
 ・入谷久我『数理経済学入門』系2.2-3(p.31)「アルキメデスの原則」
 ・De La Fuente, Mathematical Methods and Models for Economists,Theorem6.10Archimedean propety (p.30)





 
  
 




 【 命題P 】 【 命題Q 】 【 命題Q’ 】 が同値であることの確認

・【 命題Q【 命題Q’ 】の確認

  命題Q「NRのなかで上に有界ではない」とは、「(Rのなかでの)Nの上界が存在しない」ということであり、
  これは、「いかなる自然数nにたいしてもnc」を満たす実数cが存在しないということ
   ¬ ( cR nN ( nc ) )   
  を意味する。
  ¬ ( cR nN (nc) ) は、
   cR ¬(nN (nc)) と書きかえられ(∵存在命題の否定)、
  さらに、これは、cR nN  ¬(nc ) と書きかえられ(∵全称命題の否定)、
  そして、これは、cR nN ( c<n ) と書きかえられるから、
  結局、【 命題Q【 命題Q’ 】となることがわかる。

・【 命題P 【 命題Q 】の確認

  赤『実数論講義』定理3.6.2(pp.82-3)を参照。aを1と置く。

・【 命題Q 【 命題P 】の確認

 斉藤『数学の基礎:集合・数・位相』2.5.7(p.54)は、【 命題P 【 命題Q 】 を主張しているが、証明が略されている。
 そこで、命題Q'命題Pを自力で考えてみた。
 まず、a,bR  (a,b >0  b/aR ) 
       ∵実数体の定義-条件A3より、 aR (a>0   a-1 = 1/aR )  
        これと、実数体の定義-条件A-0から。  
 したがって、命題Q'「 cR nN  ( c<n ) 」の仮定のもとで、 
   a,bR (a,b >0  b/aR  nN  ( b/a<n ) )  …(1)
 (1)は、
    a,bR  nN  (a,b >0  b/a<n ) …(2)
 と書いても同じ ()。 
 (2)にたいして、順序と乗法の基本性質(1)  x,y,z R ( x<y かつ 0<z  xz<yz )を用いて、
    a,bR  nN   (a,b >0  b/a<n (b/a)a=b<na ) 

 【 命題P 】 の証明

   笠原『微分積分学』定理1.5(p.7);杉浦『解析入門I』定理3.2(p.19);赤『実数論講義』定理3.6.1(p.82)をみよ。

 【 命題Q 】 の証明

  ・NR が「Rのなかで上に有界」だと仮定する。
   すると、実数の連続性の公理より、
   (Nの中にないかもしれないが) Rの中に上限αが存在することになる。…(※)
  ・α−1<αより、α−1<mなるmNが存在する。よって、α<m+1
  ・一方、自然数の公理系より、m+1N。ゆえに、(※)より、m+1α。
  これは矛盾である。

   cR  nN ( c<n ) ならば、  b/aR  nN ( n>b/a )  

          [吹田・新保『理工系の微分積分学』1章§1(D)(p.4)]









→[トピック一覧:アルキメデスの原理]
総目次