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・実数と自然数について、次の同値な命題が成り立つ。 【 命題P 】いかなる正の実数a,bに対しても、 ある自然数nが少なくとも一つ存在して、 「na>b」を満たす。 論理記号で表すと、 ∀a,b∈R ∃n∈N (a,b>0 ⇒ na>b )
【 命題Q 】
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※ 【 命題P 】 【 命題Q 】 【 命題Q’ 】 が同値であることの確認・【 命題Q 】⇔【 命題Q’ 】の確認命題Q「NはRのなかで上に有界ではない」とは、「(Rのなかでの)Nの上界が存在しない」ということであり、 これは、「いかなる自然数nにたいしてもn≦c」を満たす実数cが存在しないということ ¬ ( ∃c∈R ∀n∈N ( n≦c ) ) を意味する。 ¬ ( ∃c∈R ∀n∈N (n≦c) ) は、 ∀c∈R (¬(∀n∈N (n≦c))) と書きかえられ(∵存在命題の否定)、 さらに、これは、∀c∈R ∃n∈N ¬(n≦c ) と書きかえられ(∵全称命題の否定)、 そして、これは、∀c∈R ∃n∈N ( c<n ) と書きかえられるから、 結局、【 命題Q 】⇔【 命題Q’ 】となることがわかる。 ・【 命題P 】 ⇒ 【 命題Q 】の確認 赤『実数論講義』定理3.6.2(pp.82-3)を参照。aを1と置く。 ・【 命題Q 】 ⇒ 【 命題P 】の確認 斉藤『数学の基礎:集合・数・位相』2.5.7(p.54)は、【 命題P 】 ⇔ 【 命題Q 】 を主張しているが、証明が略されている。 そこで、命題Q'⇒命題Pを自力で考えてみた。 まず、∀a,b∈R (a,b >0 ⇒ b/a∈R ) ∵実数体の定義-条件A3より、 ∀a∈R (a>0 ⇒ a-1 = 1/a∈R ) これと、実数体の定義-条件A-0から。 したがって、命題Q'「 ∀c∈R ∃n∈N ( c<n ) 」の仮定のもとで、 ∀a,b∈R (a,b >0 ⇒ b/a∈R ⇒ (∃n∈N ( b/a<n )) ) …(1) (1)は、 ∀a,b∈R ∃n∈N (a,b >0 ⇒ b/a<n ) …(2) と書いても同じ (∵)。 (2)にたいして、順序と乗法の基本性質(1) ∀x,y,z ∈R ( x<y かつ 0<z ⇒ xz<yz )を用いて、 ∀a,b∈R ∃n∈N (a,b >0 ⇒ b/a<n ⇒ (b/a)a=b<na ) ※ 【 命題P 】 の証明 笠原『微分積分学』定理1.5(p.7);杉浦『解析入門I』定理3.2(p.19);赤『実数論講義』定理3.6.1(p.82)をみよ。 ※ 【 命題Q 】 の証明 ・N⊂R が「Rのなかで上に有界」だと仮定する。 すると、実数の連続性の公理より、 (Nの中にないかもしれないが) Rの中に上限αが存在することになる。…(※) ・α−1<αより、α−1<mなるm∈Nが存在する。よって、α<m+1 ・一方、自然数の公理系より、m+1∈N。ゆえに、(※)より、m+1≦α。 これは矛盾である。 ∀c∈R ∃n∈N ( c<n ) ならば、 ∀b/a∈R ∃n∈N ( n>b/a ) [吹田・新保『理工系の微分積分学』1章§1(D)(p.4)] |
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