吟遊詩人な日々






エピソード14 病めるときも健やかなるときも

 ゆっくりゆっくりヴァージンロードを歩く。介添のお師匠さまと並んで、ゆっくりゆっくり。この道の先にはわたしの大好きなヒトが待ってる。だから思いっきり駆けていきたいけど、だけどやっぱりゆっくりゆっくり歩いてく。
 ずっとこの日が来るのを待ってた。4月桜の木の下でプロポーズされたときから。ううん。花嫁さんに憧れていた少女の頃から。ねぇ。どきどき高鳴る心臓の音がみんなに聴こえてたらどうしよう?
 祭壇に立つぴょんがじっとこちらを見つめている。そんなに見つめられると緊張してるのに足がもつれて転んじゃうよ。わたし、ちゃんと歩けてる?
 祭壇のそばまで来ると、お師匠さまはわたしの元を離れ、介添席に向かい着席した。わたしはそのまま祭壇に上がり、ぴょんの左側に立った。一瞬ぴょんを見つめてから、正面に立つル・レクア牧師さまのほうを向いた。
 牧師さまが御言葉を述べ始めた。パレスに牧師さまの声が響く。
式開始 天地創造のお話や愛について語られている。流れるように美しく紡がれる御言葉が静かなパレスに響く。

 御言葉が途切れ、牧師さまがぴょんに聴いた。
 「まさひで、汝、この女子を娶り、神の定めに従いて夫婦とならんとす。健やかなるときも病めるときもこれを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命の限り固く節操を守らんことを誓いますか?」
 「誓います」
 ぴょんの言葉に牧師さまが頷き、わたしのほうを見た。
誓います。 「ぺこ、汝、この男子に嫁ぎ、神の定めに従いて夫婦とならんとす。健やかなるときも病めるときもこれを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命の限り固く節操を守らんことを誓いますか?」
 「誓います」
 声かすれてなかった?上ずってなかった?大丈夫だったかな。
 再び牧師さまが言った。
 「お二人の誓いの印として指輪の交換を行います」
 その言葉を受けて、お互いの左薬指に結婚指輪をはめた。式の始まる前に牧師さまが下さった金のリング。
 「では誓いのキスを」
*chu* 目を閉じて。神様の御前で、誓いのくちづけをした。
 「まさひでとぺこは夫婦たるの誓約をなせり」
 今、この瞬間わたし達は夫婦になったんだね。
 「ロードブリティッシュの祝福がありますように・・・」
 最後の言葉が紡ぎ出され、式は終わった。牧師さまが立ち去ったあと、わたしとぴょんも控室に戻った。
 緊張が一瞬にして解けた。カラダの力がふにゃっと抜けた。手は汗をかいてたし、ずっと立ったままの足は緊張で固まってた。
 「はぁ〜、こんなに緊張したのはじめてだよ」
 「わたしも〜。足つっちゃた」
 「指輪がなかなかとれなくてあせったし・・」
 「でも失敗せずに終わって良かったね♪」
 「そうだね」
 はじめて二人の間に笑みがこぼれた。
 「さ、みんなが待ってる。行こう?」
 「うん♪」
 会場外には参列してくれたみんながアーチを作ってまっていてくれた。
 ブレス魔法がライスシャワー代わり。ブリタニア式の祝福。おめでとうの言葉と光輝くブレス魔法の中をぴょんと並んで歩く。
 見知った顔、知らない顔、様々な人達が今日忙しい中来てくれた。とっても嬉しい。HKとLBのみんなが手伝ってくれた。
参列してくださったみなさん、ありがとう

























 今日結婚式を無事終えることができたのは、みんなのおかげです。ありがとう。素晴らしい友人達に囲まれて、わたし達幸せです。
 これから二人で生きていきます。
 死が二人を別つまで・・・。って、すぐに生きかえっちゃうんだけど、ね(笑)。


エピソード13 結婚式直前

 刻一刻と近づく。だけど緊張はしていない。しょうこっちと愛鈴さんとおしゃべりをしているせいかな。わたし達がいるのは、ニュジェルンの街の南端にある広大な宮殿、通称「ニュジェルンパレス」の花嫁控室。
控室にて ちなみにまだウェディングドレスは着てません。汚したくないから、時間ギリギリまで着替えないつもり。実は花嫁衣裳をぴょんにすら披露していないの。当日びっくりさせようと思って。えへへ。しょうこっちと愛鈴さんにはすでにお披露目しちゃいました。とっても素敵って言ってくれたんだ〜。イネちゃんの仕立のおかげです。
 式開始まで3人でおしゃべりしててもいいんだろうか。花婿のぴょんですら忙しそうなのに。わたしだけがなぜか何もしないでこうしてるんだけど。
 しょうこっちと愛鈴さんはおしゃべりしてるけど、一応「花嫁の付添」担当だからお仕事とも言えるよね?
 今日の式はぴょんの所属ギルド「天国騎士団」が全面的に取仕切っている。ギルマスターナさんの指示のもと、ギルドメンバ全員が式場のあちこちで働いているんだと思う。もちろんLB有志もゆうちゃんをリーダーに、今日の参列客をブリテン2銀側の噴水でゲート輸送しているはず。
 今日の式にいったい何人来てくれるんだろ・・・。挨拶してる余裕あるかな。
 こうして井戸端会議に花を咲かせて過ごしていると、ぴょんがわたしを呼びに来た。わたしの介添をつとめるお師匠さまも一緒だ。
 「ぺこ、牧師さまが来たよ」
 「うん。わかった」
 式を司る牧師さまは女性だった。青いローブをまとい、白いカバーの書物を持っている。
 「今日の進行を務めますル・レクアと申します。本日はおめでとうございます」
 「ありがとうございます。今日はよろしくお願いします」
 牧師さまと打合せ♪牧師さまの言葉に、ぴょんと二人頭を下げる。
 「では式の説明をさせて頂きます」
 牧師さまは、式の手順について式場内を歩きながら説明してくれた。
 「以上なにか質問はありますか?」
 「いえ」
 「ところで服装ですが・・・」
 そう言って牧師さまはじっと介添役のお師匠さまを見つめた。
 「その格好は少々・・・・」
 「やっぱり・・・」
 ガクッと肩を落とすわたし達とは裏腹にはて〜さんはいきり立った。
 「なにぃっ!?」
 「新郎新婦が承諾されるのでしたらかまいませんけど・・・・」
 間髪いれずぴょんが言い放った。
 「服着てくださいっ!!」
 「なにぃっ!!!」
 裸戦隊ギルド所属で、ご自分の結婚式でも裸で参列したヒトなんだもん。わたしが言ってもきいてくれなかったんだよねぇぇ。
 だけど。牧師さまとぴょんの二人から強く言われ、しぶしぶ服を着始めた。ってもってきてるなら素直に最初から着て下さいっ!!どうしてこんなヒトが師匠なんだろ・・・。運命ってわかんないわ。はぁ。
立っているうーたんさんを見つけ、彼の話で盛り上がる師弟。う〜たんさん来てくれたんだ。 「では、そろそろ開場して下さい」
 牧師さまの許可が出た。式場前で受付担当のコカムさんに連絡が行き、やがて式場へ続く鉄扉の開く音が聞こえた。
 扉一枚隔てた向こう側がざわめき始めた。参列者が入ってきたんだ。覗きたい。思わず壁にへばりついて聞耳をたてた。扉を少し開けて、様子をうかがった。うわ、結構ヒトいっぱい・・・。
 一通り式場を見まわしていると、ちょうどわたしから右斜めに立っている人影が見えた。あ・・・う〜たんさんだ。来てくれたんだ。うれしい・・・。約束守ってくれたんだ。わたしが気づいたように師匠も気づいたようだった。思わず二人でう〜たんさんの話で盛り上がる。だってあこがれなんだもん♪今でも。えへへ。
 天国騎士団とLoveBitesが座る席に一般客が座ったりと、座席で騒動が起きているようだ。 牧師さまとの打合せに思いのほか時間がかかってしまったのに、更に開始時間が遅れてしまうな・・・。
 あ。静かになった。
 「どうやら収まったようですね。では始めましょう。まずわたしが行きますので、続いて新郎が入場して下さい。みなさん、リラックスしてがんばりましょう」
 いよいよ。式開始だ。
 って、まだ着替えてなかった。うわぁぁぁ。


エピソード12 結婚

 目が覚めた。窓の外はまだ暗い。ブリタニアも初夏を迎え、日が長くなってきたけど。まだ夜明けには早い時間らしい。
 もう一度眠る気にはなれなかった。窓をほんの少し開けた。潮風が頬をくすぐる。保養所に潮騒の音が響く。寄せては返す波の音が耳に心地良い。
 とうとうこの日がやってきた。プロポーズされてから約二ヶ月。
 今夜、わたしは結婚する。ブリタニアの大地に降り立ったあの日出逢った青年と。
 すべてはあの日から始まったんだね。
 それにしても。あの頃のわたしは想像もしてないだろうな。わたしと同日ヘイブンの街に到着した地元の魔法学校を卒業したばかりだったぴょんと結婚するなんて、ね。
 二人で隊長のうしろをくっついて、隊長の行動に憧れて。隊長は最初からわたし達には「隊長」だったな〜。
 ヘイブンの街を離れてからは、首都ブリテンを拠点に東の森や沼地でよく狩りした。
 まだまだ貧乏でぴょんの秘薬や魔法の巻物を拾いながらダンジョンを歩いたこともあった。拾うのに夢中になってしまって迷子になったわたしを探しに来てくれたのはいつもぴょんだった。
 ダンジョンだけじゃなくて、帰り道でも迷子になって森の中まで迎えにきてくれたこともあったっけ。
 大滝や動物園を見に行ったり。デパートでお買い物したり。
 ドラゴンをダンジョンに見物に行ってヒドい目に遭ったこともあったな〜。しかもドレイクしかいなかったんだよねぇ。
 ケンカして、怒って、泣いて。絶交したり。お互いに違う誰かと恋をしたこともあったね。スレ違う心に胸が痛んで。気持ちが通じなくて、泣き喚いたことも。
 だけど。最後までわたしのそばにいてくれる。
 一番わたしがほっとする人。恋しい人。
 わたし。今日。ぴょんのお嫁さんになります。


エピソード11 名声上げ

 ロード&レディの称号で結婚式を挙げようね。ぴょんとそう約束したから。称号を上げるために、毎日狩りに行った。
 あれから一ヶ月が経った。でもまだレディになれない。血エレだけじゃなくて、アイスダンジョンにいる青閣下やシェイムダンジョンのエルダーゲイザーまで狩りに行ったのに。
なんとか「Glorious」まで辿り着いたけど。そこから先にちっとも進まない。次が念願のレディだというのに。
 明日なんだよね、実は。あのプロポーズからあっという間だったな。
 ウェディングドレスとお色直し用のドレスは、一週間前に友人のGM裁縫師いねちゃんことイネ・ド・オムから受取ったし。
 ぴょんのギルド「天国騎士団」が全面サポートしてくれることになってるから、なんの憂いもない。LBからも親しい友人達ゆうちゃん、ボビン、ベクチン、うらん、さなちゃんが自ら手伝いを買って出てくれた。
 介添はお師匠さまに頼んだし。明日はわたしのそばにはしょうこっちと愛鈴さんがずっとついててくれるらしいし。
 結婚前夜って、どうすごせばいいんだろう。
 気持ちが高ぶって眠れない。
 そういえば。なんだかんだと招待客は200人を越えちゃったな。実際都合とかあるから全員が来られるとは思ってないけれど。それでも何人来るんだろう。
 来てくれた人にぴょんと二人で引き出物を用意したけど、足りるかなぁ。
 わたしとぴょんの結婚をこんなに沢山の人がお祝いしてくれるなんて、思ってなかった。
 天国騎士団の人達は「全員式にはロードまたはレディで参列」なんて気合入ってるし。LBを抜けた元メンバ達は式の日だけはLBに復帰したいって言ってくれたし。2銀ズや今まで出会ったさまざまな人達が祝ってくれる。
 ありがと。みんな。


エピソード10 竜使い

 ブリテン第2銀行前、通称2銀の扉近くの壁際に立った。今日はここでぴょんと待ち合わせしている。
 メイン銀行である1銀に比べると、人もまばらで、のんびりした雰囲気がある。だけどわたし達はここが大好き♪
 ぴょん、早く来ないかな。まだかな。あの日から数日が過ぎたというのに。今も幸福の中にいます。えへ。友人みんなに祝福されて嬉しくて。なんかいいです、こういうの。
 「ぺこ」
 あ、来た来た。
 「じゃ、称号上げ行こうか?」
 へ?ぴょんの言葉に一瞬顔がひきつる。この間黒閣下で称号上げ失敗したばっかりなのに。
 わたしの顔色で察したらしいぴょんが安心させるようにこう言った。
 「血エレなら大丈夫でしょ?」
 「うん」
 コクンと首を振った。血エレなら大丈夫。前もよく一人で狩りに行ってたもん。
 「パールで狩るから大丈夫」
 わたしの愛馬。パートナー。あんまり言うこと聞かないけど。パールなら血エレくらい余裕だよ。
 「あ。メアもいいけどさ、ドラゴンで行こうよ」
 えぇぇぇ!?ドラゴンで!?
 「そりゃ・・・ドラゴンは厩舎にいるけど・・・でも・・・まだ一回も使ったことないし。言うこと聞くとは思えないし・・・」
 制御しきれず貰った当日から封印した茶ドラゴン。あの日から少しは調教師として成長したとは思うけど、なんとなく自信がなくて狩りに連れて行かないまま時間だけが過ぎた。そのドラゴンで狩り?
 「大丈夫だよ。ベクトはぺこより低いスキルでドラ操ってたから」
 「ベクチンが??」
 「うん」
 ベクトはわたしの所属ギルドLBの第6世代入隊組で、調教師志望の青年。そういえばこの間ブリタニア銀行トリンシック支店でドラゴン連れて歩いてるトコ見た。
 「じゃ・・・大丈夫かな?」
 「大丈夫だよ。さ、厩舎行こう?」
 「うん」
 ゲートを開いて、トリンシックの街にある小さな厩舎に向かった。
 ブリタニアの厩舎はとっても不思議。銀行と同じ仕組みになってて、どこの街の厩舎でもペットの出入が出来るの。どうやって転送してるんだろうね。
 厩舎の人に声をかけて、茶ドラゴンを呼び出した。天井まで届く巨体が厩舎内に現れた。久しぶりの外気に咆哮をあげる。
 とりあえず用意していた生肉を口に放りこんやる。おいしそうに食べた。それにしてもこの巨体に肉一切れで足りるのかな。もっとやったほうがいいのかな。
 あ。パールは厩舎に預けよ。血エレのいる場所はシェイムの地下四階。パールが死んだらイヤなんだもん。代わりのモヒ種のナイトメアを厩舎から取り出し、跨った。名前はムーン。実はメア二頭所有してるんです。えへへ。
 「じゃ、行こうか」
 「うん」
 ぴょんが用意してくれた血エレの現れるポイントにゲートを開いてもらう。青いゲートが現れたのを見計らって、ドラゴンに命令した。ちゃんと言うこと聞きますように。ちなみにドラゴンの名前は「どら」と言います。
 「どら、ついておいで!」
 ぎゃぅ。どらが吠えた。
 「・・・・・」
 やっぱり言うこときかない。もう一回。
 「どら、ついておいで!!!」
 がぉぉぉぉ。さっきとは明らかに違う鳴き方。あ、言うこときいた。良かった。ゲートが消える前に移動できそうだ。
 「大丈夫?」
 ぴょんが心配そうに声をかけてくれた。
 「うん。大丈夫」
 どらを連れてゲートをくぐった。
 血エレの現れるポイントには他にもドラゴンを連れた狩人がいた。他の人に迷惑をかけたくなかったから、人のいない方へ移動した。あんまり考えたくないんだけど、暴走するかもしれないし・・・。
 橋を渡って、洞窟湖前に立つ。早速血エレが一体現れた。
 「お。早速」
 「うん」
 どきどきする。緊張する。どうかどうか言うこと聞きますように。
 「どら、あの血エレを殺してきなさい!」
 がぉぉぉぉ。洞窟内に響く咆哮をあげて、茶ドラゴンは血エレに襲いかかった。
どらVS血エレ 「ぴょん、回復お願いします」
 「はいはい」
 調教師が自分のペットを治癒するために必要な動物学の勉強が足りないせいで。わたしの治癒力はかなり低いの。だからぴょんにそのお手伝いしてもらわないと、間に合わないの。二人ならなんとかなるでしょ。
 圧倒的な強さでドラゴンが血エレを倒した。さすが強い。ドラゴンが倒した血エレからお金や魔法アイテムを回収する。
 次々現れる血エレや火エレに噛み付いては倒していく。
 「これはサポートいらないね〜」
 「うん。そうみたい」
 治癒を施す必要もあんまりないみたい。ドラゴンってホントに強いんだなぁ。
 「ところで。称号上がってる?」
 「うん、上がってる」
 普通は自分でモンスターを倒して上げるんだけど。調教師は使役したペットが戦って倒して称号を上げるんです。他力本願デス。
迫力あるかな 1時間で「Good(いい人)」から「Admirable(感嘆すべき人)」になった。速い。
 竜使い初日ということもあって今日はこれで終了。厩舎にどらを預けて保養所に戻った。
 「ぴょん、今日はありがと」
 「うん」
 お金も貯まるし、称号も上がるし、うれしいな。レディになれそうな予感がする。
 え。なんで称号上げることになったか?えとね。結婚式までにロード&レディになろうって決めたからなんです。結婚式まであと一月。


 

ペコーに励ましの一言待ってま〜す。


あなたは 人目のお客様です。(10月22日設置)



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