吟遊詩人な日々 その11






37日目  シェイム

 東の森から宿屋に戻ったけれど。珍しく眠れなくて、夜中にふらふらと街の外に出た。なんとなくブリテイン第2銀行にやってきたら、ラヴィにあった。
 ラヴィは、かおりさんという女性と一緒だった。名前だけは知ってたので、挨拶をした。「ぴょんにいつも馬を渡してる方ですよね?」。ぴょんの乗ってる馬はいつもこのかおりさんから譲ってもらってて、馬の名前もかなり個性的なの。
 かおりさんもパーティを組んでいるらしい。仲間の人たちがこちらにやってきた。
 「姐御〜〜」
 「閣下参りました」
 かおりさんっていったい・・・。気さくな人だけど、ね。
 銀行の角にヘブンがいた。かおりさんたちに一言告げて、ヘブンの元に行く。
 「ヘブン」後ろから呼びかけた。
 「あぁ、ぺこ、リッチ行こうよ」来た早々それかぁ。だけどリッチはキライだから絶対行かないよ。
 「銀の三日月刀貸すから〜」ヤだ。
 「ぺこぉ、行こ〜よ〜。一人じゃやなんだもん。さみし〜よ〜」イヤ。行かない。執拗にリッチ狩りに誘ってくる。ここまで請われると行ってあげたいけど、リッチはヤなんだもん。
 と、ぴょんの姿が見えた。・・・ぴょんが行くなら。エレメントモンスターなら行ってもいい。突然指名を受けてぴょんはびっくりしてたけど。
 「え〜っ、エレメントモンスター?リッチ〜」だ〜か〜ら〜、リッチはヤだってば。
 「リッチは出番がないし、あそこは戦士が行くところ」とぴょんもリッチ行きはイヤがってる。ね、ぴょんもイヤがってるんだもん。シェイムにしようよ。それなら行くから。
 「ぴょん、じゃぁ、エレメントモンスターならどう?」とわたしは訊ねた。
 「土エレメントモンスターならいい」土エレメントモンスター限定なのね。でもわたしはそれでもいい。
 「じゃぁ、行こう。ぴょん〜、デートしようよぉ。ね」と勧誘。
 「シェイムでデート?デートにしてはあまりいいところじゃないけど」あら、洞窟の中は雰囲気抜群だよ。
 「じゃ、ヘヴントデートすればいいじゃん」とぴょん。ヘブンとはヤダと即答する。
 「や〜い、ヘブンふられてやんの」わたしの答えはぴょんにウケたらしい。反対にヘブンのキゲンを損ねてしまったけど。「ぺこのいぢわる〜。ふ〜んだ」しまった。ごめんね、ヘブン。冗談だから。
 でもぴょんはこれで一緒に行ってくれることになった。行き先はヘブンも納得して、シェイム。ただし、土エレメントモンスター限定狩り。
 ヘブンの友人でコウさんも一緒に行くことになった。う〜ん、どっかで会ったような気がするんだけど。コウさんの顔をまじまじと見つめて記憶を手繰り寄せるけれど、イマイチひっかからない。
 コウさんが不意に「ぺこさんって。オークキャンプで、一緒に・・」あぁ、思い出した。あの時のコウさんだ。お久しぶりですね。
 四人でシェイムに向かった。ゲートはぴょんが開いてくれた。
 実はわたしとぴょんが狩りをゴネたのには理由があるんだよね。噂でモンスターのスピードが上がってるらしいって聞いたから。これって逃げ切れないかもしれないし、危ないでしょ。
 洞窟に入って、土エレメントモンスターのいる四階に移動する。今回のターゲットの現れるポイントでわたしとぴょんが待機して、ヘブンとコウは、他のエレメントモンスターを狩りに行く。
 現れた。土エレメントモンスターはエレメントモンスターの中でも鈍足。のはずだったんだけど。はえぇぇぇ〜〜〜〜。なんだ、なんだ。すごい勢いで移動する。ぴょんを狙ったらしく、追いかけていく。そのスピードの速いこと。その後をわたしが追い掛けるけど、追いつかない。
 あの噂ホントだったんだ。はやすぎだよぉ。
 ぴょんも魔法を唱える余裕がないらしい。ひたすら走り回っている。
 インディをフルスピードで走らせ、モンスターに追いついた。剣をふりおろす。
 がきっ。硬い土エレメントモンスターの表皮を叩き壊す。その隙にぴょんが攻撃魔法を唱えた。
 はぁ。ふぅ。顔を見合わせた。なんとか倒したけれど。これは他のモンスターだともっとキツいんじゃ。限定にしておいてよかったかも。
 でもぴょんは正確には相手のスピードを測っていたらしい。タイミングを掴んだからもう大丈夫と頼もしい言葉を吐く。
 ヘブンとコウからゴーストになった人の蘇生を頼まれた。ぴょんはとわたしは二人の案内でその人の待つ場所に向かった。だけど、途中でみんなとはぐれた。仕方がないので、元の場所で待つことにして、引き返すことに決定〜。
 待ってる間退屈だったので、現れた土エレメントモンスターと遊んでもらうことにした。一体ずつ片付けて、合計二体倒した。更に同時に二体が姿を見せた。
 この二体も余裕で倒せるはずが、なぜか魔法の剣でダメージ0。どうやら倒している間におしゃかになったらしい。さすが鉱鉄がまじった表皮。硬さ抜群。ショックだ。
 みんなが戻ってきた。だけど、苦戦しているわたしを手助けしようか迷っているらしい。それはそうだよね。最近のわたしなら倒せる相手だもん。でもね。ヘブンとコウに剣のことを話して、戦線を離脱した。かわりに倒してもらう。
 コウがとっても同情してくれた。それはそうだろうなぁ。ノーブランドだけど、一応魔法剣だもん。うぅ。
 ぴょんが銀行をリコールで往復して、かわりの剣を持って来てくれた。ありがとぉ。
 ねこがやってきた。ぴょんがねこと血エレメントモンスターを狩りにでかけ、ヘブンとコウも新たなモンスターを狩りにでかけた。
 一人残されたわたしはぼや〜としてた。なんだか眠くなってきたので、そろそろ宿に戻ろうかな。
 一人残ってることに気づいたぴょんが、わたしを心配して戻ってきてくれた。ありがと。でも眠たくて。帰ろうと思う。そう伝える。
 とりあえずねこのところまで一緒に行った。ねこにも同じことを伝えた。するとぴょんとねこもそろそろ寝たいと言う。じゃぁ三人でブリテインに帰りましょう。
 ちなみにヘブンとコウの二人は、シェイムだと物足りないらしく、今度はデシートに行っちゃった。寝ないのかな。
 宿に戻って、ちょっとおしゃべりして休んだ。


38日目  新人研修

 今日も楽しくおしゃべりに興じていると、若い男性に声をかけられた。またもや冒険初心者らしい。最近ホントによく会うなぁ。イグアナという名の戦士らしい。やっぱりうちのメンバで装備を整えてあげた。
 隊長が「ぺこ」と呼ぶ。
 はい?
 返事を返すと今日の予定を訊ねられた。「今日は北極にでも行こうかなと思ってるけど」と答えると「よし」だって。
 イグアナさんも一緒に行って、北極で戦闘訓練サポートらしい。じゃ、ってことで、ヘブンも含めて4人ででかけた。
 わたしは適当にしてていいと言われたので、調教に励むことにした。
 せいうちや北極くの相手をする。うん、なかなか今日は調子がいい。いつもは調教はできても、命令を聞いてくれないクマも今日は素直だった。
 ぷーと名づけて餌をやる。うん、かわいい。ぷーを連れて調教訓練。
 かなり訓練を積んだので、今日はレベルアップを兼ねて、雪豹に挑戦。ずっと相手にされなかったんだけど。
 今日はとりあえず調教はできるみたいだった。成功しないけど。
 何度も何度も一匹の豹に向かって、調教する。
 「怖がらないで、約束するから。友達になりたいの」優しく穏やかに呟く。
 失敗し続けつつ、ユキヒョウの調教をしていたわたしはばったり隊長とかなり訓練をしたと見えるイグアナに会った。
 隊長がわたしのくまを見て、リリースというので、理由はよくわかんないけど、開方した。ユキヒョウの調教に忙しかったともいうけど。
 そしたら、「殺すけど」だってぇ?うぇ〜〜ん。ごめんね。ぷ〜。
 隊長の餌食になってしまった。クマを倒した後しっかり立ち去ってしまったけど。
 かわりにというか雪豹の調教に成功した。でもすごい不機嫌なので、かばんから生肉を出して、やる。
 満足したみたいだった。初めての豹だ。うれし。
 隊長が帰るぞと迎えに来た。
 一緒に帰ると言って、隊長が開いたゲートをくぐる。もちろん雪豹も一緒に。
 まだ訓練するというイグアナと宿屋近くの橋でわかれた。もちろんいつもの場所を教えたよ。


39日目  全滅

 久しぶりにいつものところにはブラックがいた。隊長とすっかりメンバになってるイグアナも。
 本日の行き先は「北極」。そういったとき、隊長に「またかいっ(笑)」と言われちゃったけど。
 北極で訓練すると調教のスキルがおもしろいように上がるんだもん。隊長が狩りに夢中になってる間に抜いてやるもんね。
 その隊長は今日はデシートでリッチと火エレ狩りだって。ブラックは魔法をあげるから、そのあたりでうろうろするみたい。
 で、北極にいくならということでイグアナがついてくるらしい。う〜ん、ゲート出せないんだよね。そこまで魔法のスキルないもん。あぁ、魔法もあげなきゃだめなんだ。やることいっぱいで、なにからやっていいのかわかんないよ。
 結局ねこを呼び出してつれてってもらうことにした。ホント呼び立ててごめんね、ねこ。二人に見送られ3人で北極に行く。
 それぞれ、散会して行動する。北極だと、大丈夫だしね。死んだとしてもねこがいるし、いぐあなも大丈夫でしょ。
 雪豹で訓練できるようになったので、雪豹に狙いを定めて調教する。だけどものすごく成功率が低いんだけどね。一時間に二匹がいいところかな。
 やっと一匹の雪豹の調教に成功し、レオと名づけてつれまわすことにした。
 ところが、同じく調教にきている男性がわたしのレオの調教をしようとしてる。
 「これわたしのペットなんですけど?」
 「えっ、野生にかえってますけど?」
 が〜〜ん、動物学のスキルが低いから、命令きいてくれなかったんだ。落ち込みながら男性に向かって「動物学が低いから、命令きいてくれないんですよ」と呟く。「僕もですよ」とお互いにため息をつく。動物学ってあがらないんだよねぇ。
 また新たな雪豹を相手に調教をしていると、ねこがわたしの元に来た。調教しつつねことおしゃべり。
 「イグアナ、どう?」一応、引率者だし、気になってます。
 「クマはちょっとアブなそうだった」
 そうなんだ。ねこ、死んだら頼むわね。(無責任発言)。
 調教はあがった?ねこに訊かれた。うん、調教はね、でも動物学がさっぱり、命令訊かなくて困るわ。
 さておしゃべりしているうちに北極での訓練時間をおえたので、久しぶりに狩りにいこうと思い付いた。
 今の時間だと、オークキャンプかなと。イグアナも来る?死ぬかもしれないけど。コワイといいつつ興味津々で行くと答えるいぐあな。
 でも隊長にイグアナのことは許可をもらわなくちゃね。というわけで隊長に連絡をとる。了解を得たので、ねこにゲートを開いてもらって、
コーブの街に送ってもらう。
 ねことはここで分かれて二人でオークキャンプに出発。
 オークキャンプ前の道にエティンがいた。相手をしないで通り過ぎようと思ったら、わたしに狙いを定めたらしく追いかけられた。なんでいっつもこうかなぁ。
 とりあえずタイミングを計りつつ、逃げる。って、背中痛いぃ〜〜〜〜〜〜っ。エティンに傷つけられた傷が思いのほかキツい。
 なんでと思って、ハタと気づいた。わたし、防具つけてないような?? あぁ、着てないよ。そういえば。最近調教とか魔法とかばっかりで狩りしてなかったから。そうだ。服装もワンピとサンダル・・・。狩りっていうよりピクニックやっちゅーねん。
 うわぁぁぁ。どうしよう。アタマがパニックになっているところにオークメイジの魔法攻撃よりにもよって毒。回復しなきゃと思っている間もなく、久しぶりに死んだ。イグアナが心配だけど、インディも心配だけど。とりあえずコーブに戻って、ヒーラーにあわないと。
 ヒーラーの元に走りつつ隊長に緊急連絡をいれた。
 「死んだ」
 返事は「ぐはぁ」(笑)。ごめんなさぁ〜い。そのあと、オーク禁止。撤退命令が即発行されたのは言うまでもありません。あぅ。
 復活して、元のところに戻る途中にゴーストのいぐあなにあった。あぁ、やっぱり死んだかぁ。心の中でお詫びしつつ、ヒーラーの場所を説明した。急いでいってきてね。
 そして元の死んだ場所に戻ると、なんと隊長がいた。わざわざ来てくれたんだ。うれしくて、じ〜んとなってしまう。
 「イグアナも死んだの?」
 「そうみたい、全滅です」
 「ぐはぁ」とりあえず自分の荷物を回収して、イグアナの荷物の回収にかかる。
 ってなんでこんなにもってんのよ。ポーション。隊長〜、もう重量オーバですが?と言ったら、隊長もとっくに重量オーバらしい。
 荷物をすべて回収し、動けないので、じっとしていたら。そういうときにエティンが。なんでいっつもエティン??
 で。さっき復活したとき、まだ回復まではしてなかったことに気づいたわたしは教われる前に自分を回復しようとした。でも重い荷物でもたついてしまう。動きまで遅いのよぉ。
 で。あっさり襲われて本日2回目の「死」。うぅ。
 またコーブに戻ってヒーラーに復活してもらっていると、ヘブンから連絡がきた。だから、ヘブンに今までの敬意を簡単に説明して、きてもらうことにした。
 キャンプに向かう森の橋でリコールで飛んできたヘブンにであった。まず回復してもらうことにした。ゴーストから復活した直後って、カバン携帯してないから、秘薬もないし、包帯もないし。回復手段ないんだもん。
 元のところに戻って、また自分の荷物を回収。
 復活してたイグアナにわたしが回収した荷物をかばんにいれてわたす。ちなみにかばんは緑色に染めてたタイプ。イグアナが色付のカバンにびっくりしつつ大喜びだった。また違う色にも染めてあげるからね。
 それから、ごめんね。一番イグアナに今日言いたかったのはそれだった。初心者のイグアナをつれてきて、死なせたのはわたしのせいだし。馬はおわびに買ってあげるからね。
 ふと見回すと隊長がいない。 ヘブンに隊長は?と訊くとそこにいるという返事。イグアナにも見えているらしい。
 わたしだけ見えてないの??
 隊長?
 隊長〜。
 た〜い〜ちょ〜。
 いくら呼んでも見えないし、現れてもくれない。うぅ。いぢわるだ。
 た〜い〜ちょ〜〜〜〜〜〜。むぅ。
 た〜い〜ちょ〜の〜ばぁ〜かぁ〜〜〜〜〜。
 案の定姿を現わす。
 「誰かなんかいってたよなぁ」というので、誰のことでしょ〜?記憶にございませぇ〜んと返事をした。
 と。「よしわかった。ぺこのことはもうしらん」
 が〜〜〜ん、あんまりだ。慌てて隊長のそばにかけよって「ごめんなさぁ〜〜い」半泣きである。
 「よし」。うぅ。口でもやっぱり勝てない。
 このやりとりを笑いながら見てたのはヘブンとイグアナ。
 まだ狩りにいくだろうヘブン達と分かれて隊長とリコールでブリテインに戻って、宿屋で休んだ。


第40日目  東の森

 今日は魔法のスキルを上げる予定だった。
 だから銀行に行って、お金をおろした。ついでに預けてある荷物も整理した。わたしが銀行に預けている主なものは洋服・武器防具・秘薬・お金。最近はこの洋服の部分が大きく占めていたりする。
 秘薬代を少し多めに持った。魔法ギルドに行く前に鍛冶屋に行くことにした。先日の土エレのときにダメになったマジックソードを修理してもらうつもりだった。ついでに盾と、予備の剣も。
 鍛冶屋の前は相変わらずの人と炉の熱気で溢れてた。その中にいつもと同じ位置に黒い衣装を纏った女性が立っている。迷わずわたしはフェリスさんに声をかけた。修理をお願いした。あっという間に完璧に直って戻ってきた。
 反対に魔法ギルドの中は珍しく空いていた。秘薬を買い占めるチャンスと販売員に声をかけた。っが。秘薬も二種類しかなかったし、買い占める程の量もなかった。が〜ん。どうして毎回毎回ここって秘薬を置いてないんだろうね。
 今日の練習でかなり消費するのは今から分かってることだし。悩んだ末、リコールでムーングロウに移動した。魔法使いの街と言われるだけあって、品物も豊富に置いてあるから。確かに秘薬は豊富にあったけれど、今日わたしが一番消費するだろう秘薬だけが置いてなかった。がっくり。やっぱりあまり人気のない街とかのほうが意外においてあるのかなぁ。ふぅ。
 肩を落して、ブリテインに戻った。もちろんいつもの橋でみんなを待つ。でも隊長とブラックはデシートに行ってると聞いてるから、来ないと思うけれど。
 目の前にブラックが現れた。まずは挨拶をする。隊長とデシートに狩りに行ってたんじゃないのと訊くと、小休止とのこと。隊長も戻ってきていて、銀行に寄ってるらしい。
 ブラックがこの後は魔法をあげる練習をするという。そういえばブラックって今魔法どれくらいなんだろう。ゲートも出せるし、結構高いような気がする。
 訊くとやっぱり短期間にかなり上がってた。どうしたらそんなに上がるのか知りたかったので、訊いてみる。
 雷の攻撃魔法であげたの?そうなんだ。じゃ、わたしも今日からそれでやってみようかな。ぴょんから剣の精霊を召喚して訓練したらいいって言われてるから、この二つでがんばってみよう。
 戻ってきた隊長とも挨拶を交わし、三人でおしゃべりする。ここで話をしているとたまに知らない人が話の輪に加わっていることがある。だけど、わたし達の誰もそんなことを気にしないで会話を続けちゃう。加わった本人が自ら名前くらい訊いてとか誰かつっこんでとか申告するというオチが多い。
 誰も気にしないのは、きっとメンバの誰かの知り合いなんだろうと思っているから、なんだよね。集合時間までの間、解散後、それぞれ別なことをしているし、その間に知り合った人かも知れないでしょ?だから、増えても気にならないんだよね。
 イグアナがやってきた。ヘブンのことを開口一番に訊ねる。ヘブンをアニキと慕ってるのかな、悪いトコまで似なければいいけど。しっかりわたしを男と間違えた辺り、かなり心配。
 だ〜か〜ら〜。どうしてこんなにかわいい格好をしてるのに間違うワケ?黒の膝上丈のノースリーブのミニワンピに、ふくらはぎまで編み編みのサンダルに、ピンクのベレー帽。鎧着てないから、そんなにごつくはないし。そりゃあ、馬に乗ったり、モンスターと戦える程度の筋肉はついてるけど。声だって、野太くないし。大体マスクもしてない素顔を見てるでしょうに。ってヘブンのときと全く同じ憤り。むぅ。
 前回と同じく隊長にこのことを涙ながらに訴えた。
 ぺこはかわいいよ。
 まぁ。隊長ってば。や〜ん、うれし〜〜。両手を組んで、瞳をキラキラしてしまう。
 っが。 「嘘」。むぅ。確かに月日の流れを感じるわ。こういう間の取り方って今までならなかったもん。
 1時間ほど立ち話をしていたけれど、そろそろ今日の予定に移らなくちゃ。隊長はデシートで狩りの続き。ブラックは北極で魔法訓練。
 わたしも人の少ない北極で魔法の訓練をするつもりだったけど。リコールの使えないイグアナを置いていくわけにもいかないしね。イグアナは一人で大丈夫っていうけれど、でも、やっぱりまだまだ心配だから。少なくともクマ相手にヤバい状態の戦士を放っていけるほどじゃないもん。
 隊長の言葉を受け止めて、東の森にイグアナを連れて行くことにした。あそこは人も多いし、冒険初心者には比較的良いところだと思う。
 ブリテインを二分するブリテイン川を渡って、東側にある森に向かう。森を抜ける道には行かず、入り口の右手の森に入る。ここから南に降りて、海岸沿いの広場とわたし達が呼ぶ草原が今日の目的地。
 魔法の訓練しながら、この辺りにいるからね。危なくなったら絶対逃げること。いい?イグアナに念を押す。
 強いヤツは現れますか、なんて心配そうな顔で質問してくる。ここらへんだと、トロル、エティン、ガーゴイル、水エレメントモンスターくらいかな。魔法で攻撃してくるモンスターもいるから、とにかく逃げてね。
 了解と笑顔で返事をして、狩りに向かうイグアナの背中を見送るけど、う〜〜ん心配だな。視界は良好だし、危なくなったら助けに行きますか。今日はいつでも戦闘態勢に入れる準備はしてきたから、大丈夫だし。
 とりあえずイグアナを気にかけつつ、魔法訓練に入ることにした。攻撃魔法を受けてくれそうなモングバット程度のモンスターはいない。う〜〜ん。
 エティンだ。眼が合ってしまった。案の定こっちに向かってくる。もぅ。どうしてこうモンスターに追い回されるんだろう。別に先制攻撃をしかけたとかそういうことは全くないのに。はぅ。
 逃げ回っていては、魔法の訓練さえする時間がなくなりそうだったので、思い切ってエティン相手に雷攻撃をしかけてみた。呪文を唱えると天から一筋の稲妻が走り、大音響と共にエティンの上におちる。かすり傷ほどもダメージなし。うぅ。やっぱりまだまだ力不足なのね〜〜。
 だけど、エティンを怒らすには充分だったらしい。あの巨大な腕がわたしの頭を狙って振り下ろされた。咄嗟に盾で防いだけれど、腕がじんじんする。っつ〜。そのままうしろに下がってエティンと間合いを取る。
 そしてマジックソードを引き抜いた。フェリスさんに直してもらったばかりのマジックソード。悪いけど、最初の犠牲者になってもらうからね。
 剣をかさがけに振り下ろす。インディと一身同体の動きでエティンとの距離をとりながら、攻撃を繰り返す。短時間であっさりエティンを片付け戦利品を頂いた。
 剣だとこうも簡単なのに、どうして魔法はうまくいかないのかな。とほほ。
 南に下がり、広場の海側を横切ろうとしたとき、植物性モンスターがいるのに気づいた。チャンス。これはいいかもしれない。このモンスター相手に攻撃魔法を試す。うん、なかなか良い調子。威力が弱いので、ほとんどダメージは与えてないけど。
 訓練には丁度いいターゲットだった。ところがこのモンスターはしっかり魔法で反撃してきた。もちろん威力は格段に違う。傷の回復魔法を唱えつつ、攻撃魔法なんて、とてもじゃないけど、無理だったので、退散することにした。
 また違うモンスターを探しては、ダメージを与えられない攻撃魔法を唱える。それでモンスターの怒りに火を注いでは、結局剣で倒す。我ながらよくわかんないことをしているなと思いつつ時間を過ごした。
 秘薬が切れたところで訓練を終え、イグアナの姿を探す。いた、いた。
 ところが、イグアナの様子がおかしい。呼びかけても返事がない。意識失ってる。ナニやってるんだか。
 イグアナの馬とイグアナをモンスターから守らなければ。
 と。突如、オークキャンプが広場に出現した。うそぉ!?今までそんなことなかったのに。なんで?今日に限って!?その上、そのすぐそばに水エレ、ガーゴイルまで。なんで急にわいてくるのかなぁ。
 大量発生したオーク相手に戦うけど、とてもじゃないけど、イグアナのフォローはできなくて。ごめんね。イグアナはゴーストになっちゃいました。せめて馬だけでも守りきることにする。
 イグアナの馬を庇いながら、オークを倒す。と、イグアナが現れた。ヒーラーの元から帰ってきたんだ。
 すいませんと謝るイグアナに恐縮するのはわたしなんだけど。
 街に戻るわたしとは反対に、まだ森でがんばるというイグアナ。意外に命知らずな性格だったのね。ヘブンと似てるわ。そのうち死にマニアになったりして。ふふ。
 イグアナに急に森がキケンになってるから、と言ったけど、怖がってる割にがんばると言い張る。なら、とにかく逃げるんだよと言って分かれた。
 リコールで1銀前に戻ったわたしは同じくデシートから帰ってきてた隊長とともに宿屋に帰る。
 デシートでかなり訓練できたらしい隊長はとてもゴキゲンだった。うらやまし。


第41日目  スキル上げ

 ちょっと早めについたにも関わらず、隊長がすでに待っていた。
 またなんかおかしな格好をしている。ホントにいつもの隊長と比べる必要もないほど怪しさ爆発である。どうみてもロビンフッドも裸足で逃げ出す変質者にしか見えない。本人曰く「夜の王子様」なんだそうだけど、王子様にしては品のない格好だなぁ。
 思わず正直なキモチを言ってしまったわたしって、素直だなぁ。って、隊長、クロスボウの先がわたしに向いてますけど!?
 本気みたいで、目が殺気立ってる。うわぁぁ、ヤバい。失言でした。ごめんなさぁい。謝りに謝って、許してもらった。うぅ。怖い。
 後からやって来たざなちゃんだって、「夜の王子様」発言にかなりウケてた。フェルッカに行ったら速攻殺されるよとまでツッコんでる。なのに。どうしてざなちゃんにはクロスボウ向けないのぉ。うぅ。扱いに差があるような気がする〜。ざなちゃんを敵に回すと、ざなちゃんお手製の矢を作ってもらえなくなるという弱みがあるとはいえね〜。
 ところで。所用があるざなちゃんと入れ違いにやってきたラヴィが、隊長とわたしの会話を聞いて「漫才コンビ」と言ったのはなぜかなぁ。いつもこんな感じなんだけど。
 ブラックもやって来たから、しばらくおしゃべり。しばらくしてブラックは魔法訓練に移動しちゃったけどね。それでも1時間はみんなでおしゃべりしたかな。
 わたしも今日の予定はどうしようか。う〜ん。隊長はデシートに行くんだって。最近ずっと隊長達と別行動だったし。よし、久しぶりに一緒に行くと答えた。
 隊長に死んでも蘇生魔法できないけどいい?って、確認されちゃった。大丈夫、ラヴィは看護婦さんだし、蘇生魔法もばっちりだもん。って、ラヴィ一緒にいってくれるでしょ?
 にっこり笑顔で答えてくれた。ありがとう、ラヴィ。
 準備があるから先に行ってというラヴィを置いて、リコールで北極まで移動して、隊長と一緒に洞窟の中に入る。
 今日の相手はあのリッチじゃなくて、骨騎士。だからたぶん大丈夫だと思うんだけどなぁ。
 骨騎士のいる奥の間に到着すると先客が何人かいた。もう隊長とは顔見知りのようで、挨拶が交わされる。だから、わたしもちゃんと挨拶しました。
 骨騎士が現れて、戦士達が群がる。とりあえず遠巻きに見守っていると、隊長が「ぺこもいれてもらい」。
 いいのかなぁ。狩りが目的じゃなくて、訓練目的できてるから、戦利品にも興味ないんだけど。
 遠慮なくどうぞ、というお言葉に混じらせてもらった。
 同じように訓練目的の人が多いようで、強い武器禁止なんだって。わざと威力のない武器で時間をかけて、骨騎士を倒しているらしいの。
 強い武器は止めてくださいって、声があちこちできこえる。しまった。わたしの武器は魔法がついてる特別な剣なんだけど。その上予備の剣も同じく魔法の剣だったりして。う〜ん、急遽、ラヴィに普通の剣を借りる。ふぅ。
 骨騎士一体に八人ほど相手をするのに、倒すまでの時間が長い。これは骨騎士が強いんじゃなくて、弱い武器で、へろへろ戦ってるから。だけど。当たり前だけど。とっても訓練になる。自分の剣の腕があがるのがよくわかる。攻撃。防御。まわりの人の戦い方も目に焼き付けて覚える。
 骨騎士が出現するまでの間は魔法の訓練をした。まずは自分にむかって雷の攻撃魔法をかける。あぅ。身体を稲妻が貫く。激痛が全身を駆ける。心臓がきしむ。痛っ。魔法と魔法耐性をあげるためとはいえ、これは効くかも。うぅ。
 今度は毒をかけてみた。このときだけは、ラヴィと隊長がすごい勢いで飛んできて、争うように解毒をかけにきた。ちょっとコワかった。あの、仲良く順番にしてね、とお願いした。二人とも笑ってたけど、看護婦と包帯術に燃えてる隊長だもんねぇ。仕方ないか。でもわたしにも解毒の訓練をたまにはさせてね。
 1時間ほど訓練をした頃、とっても眠くなってきた。馬上でうとうとしてしまう。気づいたら、居眠りをしてた。
 隊長が「帰る?」と声をかけてくれたので、素直に肯く。ん。帰る。
 「あともう少し待ってくれる?」という言葉にこっくり首を縦にふって、部屋の隅で隊長を待つことにした。
 このときもしっかり居眠り。よくインディからおちなかったものだ。きっとインディが極力動かないようにしてくれたからだね。ありがと、インディ。大好きだよ。
 みんなに挨拶して、ブリテインにリコールで飛んだ。意識が半分眠ってたので、呪文を唱えそこなりながら、だったけれど。
 宿屋に戻った途端、あっという間に眠ってしまった。ホント眠い。お休みなさ〜い。


第42日目  スキル上げ

ぺこ、です。
特別公開。ってほどでもないけど。

最近のぺこです。
手に持っているのは、魔法呪文書。

ぴょんに買ってもらった黒のミニワンピにピンクのベレー帽がかわいいでしょ?




 ちょっと早めに宿屋を出て、東の森にやってきた。
 最近の魔法訓練で秘薬を大量に使ってるせいで、秘薬代のために貯金が見る間に減っていってる。このままだと魔法訓練そのものが出来なくなっちゃうよ。ということで今日はお金を稼ぎに狩りに来たワケなの。
 近頃の森はなんだか物騒で、わりと強めのモンスターもよく出現するようになったし。ダンジョンよりは安全だし。ちょっといいかな、と思ったんだよね。
 狩りに行く前に鍛冶屋でフェニスさんに修理もしてもらったし。最近ちょっと修理にマメだったりして。
 この際だからモングバットなどの弱いモンスターも倒した。なんとか今日の秘薬代分だけ稼いでブリテインに引き上げた。
 魔法ギルドに行き、秘薬を買う。幸い、客はポーション目当ての客以外いなかった。これはチャンスだ。買い占めちゃえ、と秘薬の在庫をすべて頂くことにした。ところが、こういうときに限って、ほとんど売ってなかった。あぅ。
 チャージの残りが少ないのでムーングロウまで買い出しにもいけないし。今のわたしって、片道通行しかできないの。行ったら行ったまま。リコールスクロール売ってたら必ず買うようにはしてるけれど、一巻50Gは高いわ。
 ホントはニュジェルムという街に行きたかったんだけど。吟遊詩人のギルドがあるって聞いてたから。だけど、一方通行のリコールじゃね。ブリテインに戻ってこられないんだもん。
 というわけで、また森に戻って狩り。
 東の森の南側。海沿いの高原がわたしの狩り場。わたし達の間で通称広場。先日もイグアナを案内したトコロ。
 今日の狩りは基本的には訓練を兼ねて魔法で戦う。なるべく魔法のみで戦いたいんだけど、ね。なかなか威力がないから、結局剣を抜く羽目になってる。
 植物モンスターをみかけた。これ幸いと、魔法で攻撃する。だって動かない相手だも〜ん。
 ところがハーピーが森の影から現れた。むぅ。邪魔なハーピーを先に倒してから、植物モンスターを倒すとするか。
 ハーピーと向き合って、剣を抜いた。っが。ハーピーの後ろには、なんとエティンの姿が。げっ。いつの間にいたんだろ??
 よくみると、その更に後ろには骨男。モングバットぉ!?
 いくらなんでも一度にそんなに相手をできるわけないでしょうが。今日もやっぱり(ハーピーにすら)何もしかけていないのに、四体のモンスターに一人追いかけられる。森には他にも人がいるっていうのに、モンスターは目もくれないで、わたしを狙う。
 なぜ?なぜなの?いつもいつもぉ〜〜〜〜っ。インディ、ごめんだけど、フルスピードでお願い。インディに声をかけて、とりあえず全力で逃げた。
 森の入り口辺りまで走り、しばらく休憩。あぁ〜。疲れた。
 ほとぼりがさめたかな、というくらいに広場に戻る。先ほどのモンスター達はいない、よかった。ふぅ。今度こそのんびり魔法攻撃で一体ずつモンスターを倒す。
 水エレメントモンスターがあらわれた。らっき。エレはお金持ってるし。まずはすっかりうまくなった雷の攻撃呪文を唱えた。でも。何も起こらない。あれ??もう一度。・・・。
 げっ。秘薬切れ。仕方ない。剣を抜いて、挑む。水でできた透けた身体に魔法剣で切りつける度に水蒸気があがる。っと、こちらのダメージも相手が相手だけに相当キツい。回復魔法を唱えようにも秘薬が切れてるし。うぅむ。困った。
 ギリギリのダメージのまま、水エレから距離をとる。じりじりと後ろに下がるわたし。もちろん水エレは、止めを刺すべく近寄ってくる。
 これまでかな。そう思った瞬間、戦士が通りかかった。思わず叫んでしまう。
 「回復お願いできます?」無言で回復してくれた。全快。おっけ、これなら余裕で勝てる。
 魔法剣を握り直し、水エレの正面に立つ。軽く息をすいこんで、足でインディに合図を送る。
 インディが水エレ目がけて駆ける。わたしはタイミングを計りながら、剣を袈裟かけに振り下ろした。刹那、水蒸気が辺り一面に立ち上り、水エレは消滅した。水エレのいた場所にはお金の山。ふぅ。
 回復してくれた男性にお礼を言いながら駆け寄った。
 ありがとう。助かりました。この戦利品持っていってください。あなたがいなければ、助からなかったから。
 だけど、そんなつもりじゃないから、と受け取ってくれない。それは理解ってます。
 何度もやり取りをしたけど、受け入れてくれない。
 参りました。わたしはそう言って、戦利品を自分のかばんに直した。
 わたしのその言葉で、初めてファンさんは笑顔を見せてくれた。また会ったら声を掛け合いましょうと約束して、今日はお別れした。
 疲れて歩くのが面倒だったので、ラストチャージで街に戻った。あぁ、これでしばらく魔法でしか移動できないなぁ。


 

ペコーに励ましの一言待ってま〜す。