![]() このブリタニアでは黒は特別な色なの。裁縫屋に行けば、染粉と染桶を買うことはできるけど。黒色だけは売ってないの。 モンスターを倒して運良く黒衣装を手に入れるか、数年前にイベントで配布されたという黒タブ(黒色専用染桶)を手に入れるか、 どちらかしかない。どちらにしてもレアアイテムであることには変わらないし、ね。 わたしは以前ぴょんにフェルッカのデパートで黒の洋服をいっぱい買ってもらって持ってるんだけどね。 「ね、これどうしたの?」 「黒タブ(黒色の染桶)がオープンになってた」 「えっ。すごいね〜。どこで?」 「ブリテインの三叉路のトコ」 ブリテインの三叉路に建ってる家が出入自由なオープンハウスで、しかもその家には黒タブが置かれている。そういうことなのね。 心の広い人の家なのかしら? 「で、裁縫出来る人知らない?」 確かに縫ってもらわないと、ただの布だもんね。 「ゆいながグランドマスター裁縫師だけど」 「別にGMじゃなくてもいい。それにゆいなはフェルッカだろ」 そっか。じゃぁね〜。 「ざなちゃんがいるじゃない」 「おぉ、それいいね」 じゃ、早速ざなちゃんに連絡とっちゃおう。うっれしぃな〜。しばらくして玄関をノックする音が聞こえた。来た、来た。 「来たよ〜」 いらっしゃぁい、ざなちゃぁん♪愛しのマイハニー♪逢いたかったよぉっ♪ 「で、何作る?」 えと、わたしは黒のワンピ。 「あぁ、今着てるのと、色違いってことだね」 うん。お願いします。 ざなちゃんは丁寧に布を切って、ちくちく縫い始めた。そうなの。このブリタニアでは全部手縫いなんだよ。 わたしとヘブンは黙ってその作業を見守った。規則正しい針の音が静かな室内に響く。 音が止んだあとには、黒いドレスがざなちゃんのひざに置かれていた。うわぁぁ、大好きなざなちゃんが「わたしのためだけに」 作ってくれた洋服。や〜ん、感激♪このブリタニアにたった一枚のワンピースだ。幸せぇ〜♪ ![]() 早速着替えよぉ。不可視の魔法を使って、姿を消した。この魔法って着替えるときに便利だよね。更衣室要らずだもん。 って、こういう使い方はダメ?思い切りよくピンクのワンピを脱いで、仕立てあがったばかりのワンピを着る。 うん、サイズぴったり。着心地も最高。さっすがざなちゃん。 ヘブンもいろいろ細かく注文をつけながら、ざなちゃんに仕立ててもらった。同じくヘブンも早速着替える。 うん、いいんじゃないかな。戦士にも魔法使いにも、職人にも見えないところがサイコー。 ホントにありがと、ざなちゃん。大切に着るからね。微笑んだざなちゃんの笑顔が眩しかった。や〜ん、ますます好きです♪ ![]() 橋を渡って、会場に向かう。会場に近づくにつれて、ざわめきが大きくなっていく。ドンドンという音も聞える。 うわぁ。やってる、やってる。大盛況だぁ。わ〜い、わ〜い。縁日も出てるんだぁ。あ、なんかいろいろあるぅ。 歩調を緩め、ゆっくり出店を回る。 あ、金魚すくいだ。やりた〜い。 「ねこ。あれ金魚すくいだよね?」 「うん。たぶん」 「じゃ、やりた〜い」 「え。ぺこちん、釣竿あるの?」 「ほえ?」 釣竿持参しないとダメなのぉ?が〜ん。そんな金魚すくい訊いたことないよぉ。くすん。 気を取り直して、出店を野次馬しながら会場の奥に向かう。 射的場の前を通ったら、直立不動のトロルの胸に的が貼り付けられてるのが目に入った。トロル捕まえてきたのかな。 途中で暴れ出したりしないのかな。 お面屋さんもあるじゃない。えと、かわいいお面あるかなぁ。熊マスク。バシネット。オークヘルム。・・・・・。 さ、次行こっと。 河原のほうに移動するにつれて、先ほどから聞える音も大きくなってきた。 「ぺこちん、花火だよ」 「あ、ホントだぁぁっ」 うわぁぁ、キレイ。キレイ。外は明るいけれど、十分キレイだよ。 河原にテーブルと長椅子が置かれていて、ここで屋台の料理や酒を楽しみながら眺められるようになってる。 すでにほろ酔いで談笑している戦士二人が腰掛けてた。 わたしはインディに跨ったまま、打ちあがる花火に見とれていた。インディ、キレイだね。 とんとん。肩を叩かれて、隣を見ると真紅の悪魔が立ってた。紅いデーモン。 「がおぉ〜」 デーモンが雄たけびをあげる。 「きゃ〜、きゃ〜」 誰が聞いてもちっとも怖がってない悲鳴をあげながら、わたしは河原を走り回った。 その後をねこの変身したデーモンが追いかけてくる。 「がおがおぉ」 「きゃ〜♪」 「が〜お〜っ」 「きゃ〜、きゃ〜、きゃ〜♪」 まさに鬼ごっこ。う〜ん、悪魔ごっこ!? 「デーモンと戯れる少女か」 「祭りならではだね」 テーブルで呑んでいる戦士達がわたし達を見ながら、話している。 くるり。逃げるのをやめて、わたしはデーモンに向き直った。 「怖がらないで。傷つけたりしないから」 「がお?」 微笑いながらデーモンの調教に挑戦してみた。 「お〜、今度は少女がデーモンを調教してるよ」 「さすが祭りだね」 すっかりわたし達を酒の肴にしてる戦士二人。二人の会話に耳をすましながら、デーモンの調教を続ける。 「良いデーモン。素敵なデーモン」 「がおがお?」 「約束するから」 「あなたを主人と認めたようです♪」 「やったぁ♪」 「お〜、主人と認めたらしいよ」 「祭りだからね」 この二人相当酔ってるんじゃ。いいけど、お祭りだしね。 主人と認めてくれたデーモンにわたしは一言命令をした。 「お手っ」 「ぐはっ」 三人の声が重なって聞えた。 ![]() 今日も大鹿を相手に調教。鶏を相手に挑発。移動するときは楽器の練習。と、いろんなことをしながら訓練時間を無事に過ごした。 自宅に帰る前に秘薬を買って帰ろうと、この街で一番大きな魔法ギルドに向かった。その途中、男性に会った。 こんな街外れで人に会ったのは初めて。 「どうなさったんですか?」 相手を驚かさないように気を遣いながら、声をかけた。男性はじっとわたしを見たまま何も言わない。 う〜ん、警戒されちゃってるのかな。まさかわたしがPKに見えるワケじゃないよね。こんなかわいくてか弱い淑女を捕まえて、ね。 って、うわぁ、BS唱えるのはナシですぅ。出さないでぇ〜。 もう一度、なるべく笑顔で声をかける。 「あの、どうなさったんですか?」 「あぁ、困ってるんですよ」 やっと話してくれた。でも困ってるって?? 「実は、トリンシックに行きたいんですが・・・」 あぁ。リコールできないんだ。こんな街外れじゃなくて、銀行の前で叫んでいれば誰かがゲートを出してくれるのに。 道に迷ってたのかな。 ん〜。そんなすがるような目で見つめられても。まだゲート出せた試しがないんだけどなぁ。 ヘブンもブラックもスキル的には問題なくゲートを出せるはずって太鼓判を押してくれているけれど。 何度か試したけど、自分の前じゃなくて、違う場所に出現させてばかりで。・・・。でも・・・・・。 「あの。良かったら、わたしにトリンシックまで送らせて下さいませんか?」 「おぉ、ホントですか?連れていってくれますか?」 「はい♪」 ヘブンとブラックの言葉を信じて。自分の魔力を信じて。がんばってゲートを出してみよう。 でももし失敗しちゃったら、銀行まで送りますから。てへ。 少し男性から離れた所に立って、目を閉じた。自分に暗示をかけるように瞑想する。よし。 ゲート魔法の呪文を詠唱する。静かな森にわたしの声が響く。こだまする。 ![]() 『やった〜。大成功。初ゲート♪』 心の中で万歳三唱しちゃった。 「さ、どうぞ、入って下さい」 男性がゲートに吸い込まれて姿を消した。わたしも続いてゲートに入る。 「お〜っ。ここはトリンシックですね。ありがとう、お嬢さん。ホントに助かりました。これはほんのお礼です。 どうぞ受け取って下さい」 男性はそう言って皮袋を手渡して、歩き去った。ずっしりと重い皮袋の中にはなんと300GPも入っていた。 うわぁ、こんなにもらっちゃっていいのかなぁ。らっき〜。てへ。 ![]() 「あ、そだ。レベル1の地図があるにゃ」 ねこの言葉に反応したのはわたし。 「トレハン行こう」 「にゃ。レベル1だったらこのメンバでも大丈夫にゃ」 うん。大丈夫だと思う、わたしも。まだまだ未熟な新人戦士のキール。能力はかなりの腕なのに、なぜかわたしより打たれ弱い 吟遊詩人のねこ。そして「死にマニア」(念のため言うけど、わたしは認めてないんだから〜)のわたし。 これ以上にないくらい頼りないメンバである。 解読した地図を元にねこが行った。 「スカラブレイまでゲート開いて」 「うん。わかった」 でも昨日出来たばかりなんだけどな〜。ねこのほうが確実なのに。がんばってゲートを開いた。スカラブレイの銀行の前に到着し、 スカラブレイの街を北上する。海岸に出たところでねこが舟を浮かべる。 「乗って〜」 順に舟に乗り込んで、いよいよ出発。岸を静かに舟が離れていく。舟に乗っている間、楽器の練習をする。 海の上ならあんまり他の人の迷惑にならないし。少しずつ上達してきた腕前を海と空に披露する。うん。いい音。 島が見えてきた。今回の目的地だ。舟を接岸して、上陸。わ〜い、到着。 「キール、今回はキールが頼りなんだからね。レディが二人もいるんだから、ちゃんと守ってね」 なぜか返事をしないで、じーっとわたしを見つめる。む。なんだか反抗的な目なんだけど。もう一度言わないとダメかな。 「てめ〜、守れよっ」 「脅かすし」 ぼそっと横でねこの呟きが聞えた。脅してないっちゅーねん。 「あのね、ホントに頼りにしてるんだよ。戦士はキールだけなんだから」 やっと納得したキールがこくんと首を縦に振った。うん。これで憂いなし、と。思ったその時。 「ぎゃ。ここ場所違う〜」 「ほぇ?」 「は?」 「地図はスカラブレイじゃないらしいにゃ〜」 ぐはっ。こんなことで宝箱を無事見つけることができるのでしょうか。 改めてねこと二人で地図を眺めた。これってどこかなぁ。う〜ん。う〜ん。 「あ、ジェローム」 ねこが地図をじーっと見つめながら呟いた。うん。そうかも。舟で戻るのもタイヘンなので、 ここからリコールで直接移動することになった。 ジェロームに集合したわたし達一行は再度舟に乗って、 今度こそお宝の隠し場所である北西の島に渡った。 南国情緒あふれる島内に降り立つと同時にねこがワニに襲われた。あや。逃げるねこ。ホントに打たれ弱い。傷が増えてく一方だよ。 「キール、ぼーっとしてないでワニ倒して〜」 はっとわれにかえったキールがねこを襲うワニにやっと攻撃を始めた。さっき。あれほど。守ってね、と。言ったのに。もぅ。 「ねこ、大丈夫だった?」 「にゃ♪」 回復呪文を唱えて、ねこの傷を治癒。 3人でジャングルの奥に向かって歩き始めた。10分ほど歩いて、ねこが立ち止まった。 「ここ?」 「うん」 早速シャベルで地面を掘り始めたねこ。ところが。 「掘れない」 えっ、なんで?シャベルじゃダメなの?ツルハシじゃないとダメ? 「わからないけど。ツルハシとってくる。ぺこ、マークしてくれる?」 うん。いいよ。空ルーンをねこから受け取り、マーク魔法で宝箱のあるこの場所をルーンに記憶させる。 ねこがリコールでツルハシを取りに行った直後。 「オレ、ツルハシ持ってるけど」 あのね〜、キール、言うの遅いって。 ツルハシを持ってねこが戻ってきた。今度はこれで掘り始めた。 「やっぱり、掘れない」 掘り始めて直にねこが呟いた。 「場所、合ってるよね?」 「うん」 なんでかなぁ。 「もしかして賞味期限とかあるのかな?」 ねこが地図に目を落としたまま疑問を口にした。トレハンの地図に有効期限があるなんて聞いたことないけどなぁ。 「もしかしたらフェルッカの地図だったのかも」 ねこが新たな可能性を示唆する。うん。可能性はないとは言えないけど。じゃ、フェルッカ行ってみよっか。 かばんの中に大量に常備してあるフェルッカ行の月石をねこに渡して、フェルッカへのゲートを開いてもらう。 3人で順番に入る。出たら、いきなりPKいたりして(汗)。心配は杞憂に終わった。一見トラメルと何もかわりなく、 そこにジャングルがあった。着いて、すぐにねこは地図の場所を掘った。 「やっぱり、この地図トラメルのみたい」 うん。て、ことは。 「戻ろう」 「ねこ、トラメル石持ってるの?」 「ううん」 キールの顔が一瞬土気色になった。ま、帰れないかもしれないもんね。わたしはこっちに本来の自宅があるせいか割と冷静です。 一人でも来るし、慣れかな。もちろんPKに対する恐怖心はキール以上だけど。だって怖がりだもん。 「モングバットをいっぱい叩いて、トラメル石を見つけよう」 「うん」 ねことキールは肯きあって、モングバットを探して歩き始めた。はぁぁ。彼らの背中に向かって声をかけた。 「わたし、持ってるよ」 くるり、振り返った二人の目にキラキラお星様が視えた気がした。 「ぺこ、すご〜い」 ホントは常備してるだけなんだけど。帰る前にわたしの家に寄って、ねこを友達登録しておこうっと。 ゲートを開いて二人に入るように促した。二人が入ったのを確認して、自分も移動する。 ゲートが消えたわたしの家の前にいたのは、ねこだけ。あれ?キールは?確かに入ったような気がしたんだけど。・・・・・。 キールからゲートにはじかれて入れなかったと連絡が入る。うわぁ。迎えに行かないと。 「でも、さっきの場所のルーンないよ」 ねこの鋭いツッコミ。うわぁ、そうだった。どうしよう? 危うし、キール。ジャングルでたった独り。しかもフェルッカ。がんばれ〜。 キールをジャングルに残して来てしまったねことわたし。一刻も早くキールを迎えに行かなくちゃ。 到着した時の様子ではPKが出ることはなさそうだけど。あの島って銀蛇が出るらしいから。・・・。 レビ達と行ったトレハンの忌まわしい記憶が脳裏によぎる。ぐ。よし、早く迎えに行こぉ。そうしよう。お〜。 とはいったものの。キールのいる場所へのルーンはないし。迎えに行く方法は一つだけ。 「トラメルに帰るにゃ」 ねこの言葉にわたしも大きく頷く。行きと同じ方法で行くしかないよね。トラメルへのゲートを開く。 到着した先で更にあのマークしたルーンを使って宝箱のある場所に戻った。 「じゃ、キール迎えに行ってくるね」 ねこにそう言い置いて、今度はフェルッカ石を取出した。 「いってらっしゃい」 金色のゲートが開いたと同時に、ゲートに飛び込んだ。ふぅ。 「キール〜、迎えに来たよ〜」 辺りを見回しながら、大声で呼びかけた。返事がない。 「キール〜。ど〜こ〜ぉ〜」 う〜ん。どこ行ったんだろ。ホントに銀蛇に殺られたなんてことはないと思うんだけど。それだったらわたしもヤバイし(汗)。 でも死体は見当たらないから。ふ〜む。 そう思ったとき、ブリテン第2銀行にいると連絡が入った。もちろんフェルッカの、だけど。さっさと移動してたとは。 やられた。じゃ、わたしも移動しないと。フェルッカ版ブリテイン第2銀行のルーン持ってたよね、確か。 あ、あった。じゃ、早速リコール。第2銀行の真横に到着した。さて。キールは、と。んと。あ、いた。 「ぺこ〜〜〜」 なんか心なしか泣きそうな顔だけど。 「ごめ、ごめ。さ、トラメル帰ろ」 第2銀行から少し離れた所でトラメル石を取出して、地面に埋める。ゲートが現れた。今度はキールの姿が消えるのを慎重に 確認してからわたしも続く。そしてねこの待つところに戻った。 「キール、来たし。今度こそ掘るにゃ」 「掘れるの?」 「うん、大丈夫」 じゃ、今度こそキール頼んだからね。宝箱が現れると同時にモングバットとねずみ男が出現した。今回は守護モンスターは2体。 わたしとねこはキールが戦うのを見守った。回復する必要もなくあっさり2体を地に沈めた。 ねこが宝箱の蓋を勢いよく持ち上げた。 「あ〜、なんかイマイチ」 ひどくがっかりしている。 「ゴミばっかり。秘薬だけでいい」 秘薬だけを取り上げて、ねこが宝箱から離れた。他の武器や防具はキールが気に入ったものを取った。わたしは残りをすべて かばんに詰めた。ギルドハウスのチェストに入れとこ〜。お金はねこが放棄したので一人500GP。 レベル1だからあまりたいした物はないけれど、その中に魔法の指輪があった。それも2つも。両方とも貰って、 一つを身につけた。光にかざすと金色に輝く。えへ。うれし。でもこの指輪にはどんな効果があるのかな。 「地図手に入れたら、とっといてね」 「で、またトレハン行こう」 うん。へっぽこトリオのトレハンはこんなカンジで終わりました。てへ。とりあえず大団円。だよね? 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